エピソード1 タタル渓谷からバチカル
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ケセドニアに着いた一行。ヴァンとはここで別れることになった。ニッドは先ほどの言葉の意味をヴァンに問いただしたい気持ちを抑え、土が入らないように-視界だけは開けて-ノルンを布で巻いて担ぎ直した。
ルークは突然やる気を出して歩き始める。そんなルークを見ながら悶々と考えていたら、キレイな女性がルークに近づいてくる。
「あら、この辺りには似つかわしくない品のいいお方…ダ・イ・ナ・シですわヨ?」
「なんだよ…」
その女性はルークに体を寄せてくる。
「きゃうぅ!アニスのルーク様が年増にぃ!」
アニスが目を丸くすると女性はルークから離れる。
「(スリか…ジェイドもティアも気づいたな…)」
女性がルークから財布を盗るのをニッドは見逃さなかった。
「あらん?ごめんなさいネ、お嬢ちゃん…お邪魔みたいだから行くわネ」
女性はくすりと笑い歩いていこうとする。
「…待て」
ニッドは刃を出したノルンを突き出して行く手を阻む。
「あらん?何かしら?」
「気づいていないと思っているのか?盗ったものを返せ」
ニッドがそう言うと女性の表情ががらっと変わる。
ルークは自分の懐を探り…
「あー!財布がねえ!」
ようやく財布を盗られたことに気づく。
「はん、ぼんくらばっかりじゃなかったか!ヨーク!」
どこからか痩せた男が出てくる、盗られた財布はそのヨークという男に投げらる。
「へい!ノワール姉さん!」
ノワールと呼ばれた女性は隙を見て建物の上へ逃げる。ニッドはノルンを持ち上げる。
「てめえ!俺の財布!」
ルークが動くより先に、ノルンがヨークの足元に投擲される。そのせいでヨークは転ぶ。ティアがナイフを手にする。
「動かないで、盗った物を返せば見逃してあげるわ」
ヨークはティアに財布を渡し、またも隙をついて建物の上に逃げる。逃げた先にはノワールと丸い男が立っていた。
「俺たち『漆黒の翼』を敵に回すとはいい度胸だなあ。覚えておきなそこの兄ちゃん」
ヨークはニッドを振り返ってそう言い、姿を消した。
「あれが漆黒の翼か」
冷静に呟いてニッドは地面に突き刺さったノルンを抜いた。
「知ってりゃもう、ぎったぎたにしてやったのに!」
「財布をすられた人の発言とは思えないわね」
悔しがっているルークにティアはそう言って財布を渡し、ジェイドを振り返る。
「ところで大佐はどうしてルークがすられるのを黙って見逃したんですか?准将が対処してくれなかったからルークは気づかないままだったと思いますよ」
「やーばれてましたか。面白そうだったのてつい」
ジェイドはニコニコしている。
「教えろよバカヤロー…」
「それにニッドが止めてくれると、思っていましたから」
「ジェイド…まったくもう」
ニッドはやれやれと言った感じで息をつく。皆は歩いていったが、ティアは市場のほうを見る。ニッドが振り返る。
「どうしたんだ?」
「わ、私少し買い物をしてきます。ルークも一緒に」
「お、おい…!」
そう言って彼女はルークを引っ張って走っていった。ニッドは唖然としながもそれを見送った。ティアはタタル渓谷で会った馭者に声をかける。
「すみません」
「やあ、あんたたちか!あぁ…あの兄ちゃんは一緒じゃないのか、まあ伝えてくれ。礼が言いたかったんだ」
「何がだ?」
ルークは何か礼を言われることをしたのだろうかとぽかんとしている。
「橋が壊れて帰れなかったんだが、あの時の宝石をグランコクマで売ったら船代にお釣りが出てね」
「う…売ったんですか…?」
ティアは驚く。
「ああ、ほんとにありがとな。またいつでも馬車を利用してくれ。ま、橋が直ってからだがな」
そう言って馭者が歩いていく。
「どうしよう…准将の髪飾り…」
「おい、どうした?」
「ううん、なんでもない」
ルークは首を傾げ、ティアは頭を抱えながら戻ってきた。
「ティア?どうしたんだ?」
ニッドが聞いた。
「な、なんでもありません。行きましょう」
ティアたちは皆の後を追った。
その後、キムラスカ領事館へ向かい船の準備までアスターという商人の屋敷で音譜盤を解析してもらうことになった。応接間で待っているとアスターが入ってきた。
「これはこれはイオン様。前もってお知らせいただければ盛大にお迎えさせていただきましたものを…」
「よいのです。忍びの旅ですから。ところでアスター、頼みがあるのですが」
「我らケセドニア商人ギルド、イオン様のためなら何なりと」
「この音譜盤を解析したいんだ」
「お任せ下さい。誰か!この音譜盤を解析して届けろ」
アスターが呼ぶと使用人が入ってきてガイから音譜盤を受け取って部屋を出て行く。
しばらくして使用人が音譜盤と解析結果を持って戻ってくる。
「これが解析結果です」
「ありがとう」
ガイが受け取るが、かなりの量で分厚い本になっている。
「すごい量だな」
それを見たルークが思わず呟く。
「船の上で読もう」
「行きましょう、お世話になりました」
ジェイドが挨拶し、皆で屋敷を出る。そこへキムラスカ兵が走ってくる。船の準備ができたらしい。
歩き出したところへ、ニッドの背中にかけてられているノルンの声が突然響く。
『後ろから来るぞ!気をつけろ!』
振り返るとシンクが走ってくる。狙いはガイの持っている音譜盤と書類だ。
「危ない!」
ティアが叫ぶ。ガイは音譜盤を奪われてしまうが、即座に書類を集める。
「それを寄越せ!」
ニッドはガイの前に出てノルンでシンクの回し蹴り、踵落としの攻撃を交わす。
「走って!ここで戦ってはダメだ!」
「ええ!ここで諍いを起こしては迷惑です!船へ!」
シンクから目を離さずにニッドとジェイドは声を上げ、ルークたちは走り出す。
「あんたはどうするんだ!?」
ガイが振り返る。
「なんとかする!書類持って走れ!」
ニッドは振り返らずに答え、ガイもルークたちを追う。だが、シンクは諦めない。
「死竜、アンタが相手?ここでアンタを足止めできればダアトまで連れていくこともできそうだね」
「それはお断りさせてもらおうか!」
シンクが間合いに入ろうとするが、その度にニッドはノルンを振るう。攻撃を避けてルークたちを追おうとするが、シンクは足止めしてくる。
人混みの少ないところでニッドは振り返って構える。
「お前たちはどこまで知ってるんだ!」
「さあ?知りたければこっちに来れば?」
シンクの曖昧な答えにニッドは苛立つ。
「冗談じゃない…邪魔されたら“ここ”に来た意味がない…!」
『この子を教団には行かせない。ニッド!砂に向かって撃て!』
「ノルン、わかった!」
シンクから距離をとって砂地の地面に銃を向ける。
『クラスターショット!』
銃口が開き、放たれた銃弾は地面で爆発し砂が舞い上がる。
「くっ…!」
砂が煙幕がわりになり、シンクもそれ以上は追いかけることはできなかった。
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