エピソード1 タタル渓谷からバチカル
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川を離れて3日ほどでカイツールに到着した。カイツールの空気がピリピリしていてもニッドは気にもとめず、アリエッタの放った言葉のほうが気になっていた、そのためノルンもニッドも口数が少ない。
「ん?あれ、アニスじゃねえか?」
ルークの声にニッドは顔を上げた。大きな門の前で女の子が兵士に哀願するように身を揉んでいる。
「証明書も旅券もなくしちゃったんですぅ、通してください、お願いしますぅ」
「残念ですがお通しできません」
「ふゅみぅ〜」
ガックリと肩を落としてこちらへ歩いてくる。次の瞬間…。
「月夜ばかりと思うなよ」
凄みのある声に変わる。
「アニス、ルークに聞こえちゃいますよ」
イオンに声をかけられたアニスはまたまた一変する。
「きゃわーん♡アニスの王子様ー!」
「女ってこぇぇ…」
ガイが一歩後ずさりする。
「大変でしたね、アニス」
イオンがアニスを見て微笑む。
「もう少しで心配するところでしたよ」
ジェイドが言う。
「ぶー、最初から心配してくださいよう」
「してましたよ?親書がなくては話になりませんから」
「大佐って意地悪ですぅ」
アニスは口を尖らせる。
「アニスなら大丈夫だって信じてたよ」
ニッドが言うとアニスは嬉しそうだ。
「わはっ!准将はやっぱり優しいですね〜大佐〜?」
「なぜ私に振るんです?」
にこにこしてるジェイド#にニッド#は「まあまあ」と宥める。
「親書はニッドに渡しますから」
ニッドの懐にジェイドが無理矢理親書をねじ込むようにして入れる。
「えー」
「しっかり持っていてくださいね」
「あ、はい…」
ジェイドの有無を言わさない雰囲気に押されてやむなく了承するニッド。
「魔物と戦ってタルタロスから墜落したって?」
ルークが抱きついているアニスに聞いた。
「そうなんです…アニス、ちょっと怖かったてへへ♪」
「そうですよね、「ヤローてめえ、ぶっ殺す!」って悲鳴上げてましたもんね」
ルークとアニスの間にイオンが入っていく。
「イオン様は黙っていてください!」
アニスはイオンに釘をさしにいく。
ガイの自己紹介を済ませてこれからを話し合う。
「ところでどうやって国境を超えますか?私もルークも旅券がありません」
ティアがそう言い、ニッドもジェイドも考え始めたところへ何かが飛んでくる。
「ここで死ぬ奴にそんなものいらねぇよ!」
ルークに向かって剣が飛んでくる。ルークは反応できず態勢を崩して吹き飛ばされる。
「(あれは六神将…鮮血のアッシュか…アッシュとルーク…やっぱりジェイドの推測は正しいのか…)」
その一瞬の間に誰かが割って入る。
「どういうつもりだ!アッシュ!私はお前にこんな命令を下した覚えはない!退け」
「ちっ」
アッシュは剣を抜いてすぐさま立ち去った。
「師匠!」
「ルーク、今の避け方は無様だったな」
ひっくり返ったままのルークにヴァンは振り返って言った。
「ちぇー会っていきなりそれかよ」
ようやくルークは立ち上がる。
「ヴァン!」
ティアはナイフを構えている。
「ティア、武器を収めなさい。おまえは誤解しているのだ」
「誤解?」
「頭を冷やせ。そして私の話を落ち着いて聞く気になったら、宿まで来るがいい」
ティアはヴァンにナイフを投げなかった。
「ヴァン師匠!助けてくれて…ありがとう」
「苦労したようだな、ルーク。しかしよく頑張った。さすがは我が弟子だ」
「へへへっ!」
ルークは嬉しそうに頭を掻いた。ヴァンは宿屋へ向かい、姿が見えなくなった。
『師匠とやらに対しては随分と素直なんだな、坊やは』
「あの懐きよう…心配になるな…」
皆は何か話してるようだったがニッドには聞こえなかった。
ナイフを握ったままのティアにイオンが優しくそして強く話しかる。
「ティア。ここはヴァンの話を聞きましょう。分かり合えるチャンスを捨てて戦うことは、愚かなことだと僕は思いますよ」
「イオン様のお心のままに」
ティアはナイフを仕舞った。
