エピソード1 タタル渓谷からバチカル
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
森の奥まで行くと大きな木が立っていて、その付近にはチーグルがいた。
「みゅ、みゅみゅみゅぅ、みゅう!」
掴みやすそうな大きな耳をして、愛くるしい声で木の根元の洞窟の奥に向かって鳴いている。
「あれが、チーグルか?」
ルークが聞くとイオンが頷いた。
「まだ子供みたいだな…」
ニッドがチーグルと見つめて呟くと隣のティアから「かわいい…」という声が聞こえた。
ニッドはしっかりと聞いたが、ティアは咳払いし素っ気ない表情に変わった。
イオンは辺りを見渡し、草むらからリンゴを拾い上げた。
「リンゴですね…」
ニッドはイオンの隣からリンゴを見た。リンゴを回すと何かの印がついていた。
「このリンゴ、エンゲーブの焼き印がついています」
「やっぱりこいつらが犯人か!」
ルークは手のひらを拳に打ち付けるが、誰も返事をしなかった。
イオンは洞窟を見つめる。
「やはり、ここが巣のようですね。チーグルは樹の幹を 住処にしていますから」
そう言って、イオンは洞窟の入り口をくぐる。
「導師イオン!危険です!」
ティアが止めるがイオンは止まらず、洞窟の奥に消えた。
「イオン様、待ってください」
ニッドはイオンを追いかけて洞窟に入り、続いてルークたちも洞窟に入った。
洞窟のなかは、意外に明るく、さまざまな色のチーグルが何十匹も集まってイオンの行く手を阻んでいた。
「あの通してください…」
そう言ってもチーグルたちはみゅみゅみゅぅ鳴いているだけだ。
「魔物に言葉なんて通じるのかよ」
ルークが剣のつかに手を添えながら聞いた。
「チーグルは始祖であるユリア・ジュエと契約し力を貸したと聞いていますが…」
「通じてねぇみたいだな」
ニッドは少し悩んだが、背をかがめて膝をついてチーグルを見つめ鳴き真似をした。
「みゅみゅみゅぅ、みゅみゅ」
すると、チーグルたちは道を開けた。
「よーしいいぞー」
何事もなかったかのようにニッドは言ったが、他の三人は驚いていた。
「ニッド…今のは一体…」
イオンが聞こうとしたが、奥からまた別のチーグルの鳴き声がした。
「みゅみゅーみゅうみゅう」
今までのチーグルの鳴き声とは違い老成した声だ。
暗がりから一匹のチーグルが現れる。耳は垂れ下がり目も毛に覆われている、そして腰には金の輪っかをつけている。
「…ユリア・ジュエの縁者か?」
そのチーグルは静かに問う。
それにルークは驚いた。
「魔物が喋った!」
さすがのティアも驚きを隠せないようだ。
「それは、ソーサラーリングだな?」
老チーグルはニッドの問いにこくりと頷く。
「ユリアとの契約で与えられたリングの力だ」
そして、もう一度聞いた。
「…おまえたちはユリア・ジュエの縁者か?」
イオンは礼をする。
「はい。僕はローレライ教団の導師イオンと申します。あなたはチーグルの長とお見受けします」
「いかにも」
「おい、魔物!おまえらエンゲーブで食べ物を盗んだだろ!」
ルークがすばり聞いた。
チーグルの長はルークをちらりと見た。
「なるほど、それで我らを退治しにきたというわけか」
ニッドはしゃがんだまま、チーグルの長を見た。
「教えてほしい、何故草食のチーグルが人間の食べ物を必要としている?」
「我らが食べるのではない…」
チーグルの長の声は震えている。
「半月ほど前だ、我らの仲間が北の地で火事を起こした」
「なるほど、火事で住処をなくしたライガはこの森に移動してきた」
ニッドの目を見て長は頷いた。
「うむ、我らを餌とするためにな」
「では、村の食糧を奪ったのは仲間が食べられないため?」
イオンの言葉にチーグルの長は再び頷く。
「定期的に食糧を届けぬと、奴らは我の仲間を攫って食う」
「ひどい…」
ティアが小さく呟く。
ニッドは顔をしかめて難しい顔になる。
「知ったことか、弱いもんが食われるのは当たり前だろ。縄張り燃やされれば、そりゃ頭にも来るだろーよ」
ルークは鼻を鳴らす。
「確かにそうだ、ライガも生きていくため…だけど、それが正しいとは言えんな」
イオンもニッドに同意する。
「ええ、本来の食物連鎖とは言えません…」
ニッドはルークを振り返る。
「さて、ルーク。犯人はチーグルと判明した。きみはこのあとどうするんだ?」
「どうって、こいつらを村に突き出して…」
「でも、そうしたら、今度は餌を求めてライガがエンゲーブを襲うでしょうね」
「あんな村どうなろうと知ったことか!」
「おいおい、そんなこと言っていいのか。この村がなくなったらルークの家に食料が届かなくなるぞ」
「ニッドのいう通りです。エンゲーブの食料はこのマルクト帝国だけでなく、キムラスカ王国はもちろん、世界中に出荷されています。エンゲーブがなくなれば食糧の値段は高騰し、争いの火種になるでしょう」
「じゃあ、どうするんだよ」
そう聞いたルークに、
「ライガと交渉しましょう」
イオンは当然のように言った。
その場の全員が沈黙する。ライガと交渉する、イオンはそう言い放ったが問題は山積みである。
「そのライガってのもしゃべれるのか」
ルークが沈黙を破る。
「僕たちでは無理ですが、、チーグル族を一人連れていけば…」
イオンはチーグルの長を見る。
「では、通訳のものにわしのソーサラーリングを貸し与えよう」
チーグルの長が鳴くと、何匹かのチーグルが奥へ消えたかと思うと小さなチーグルを一匹連れて戻ってきた。
「この子どもが北の地で火事を起こした我が同胞だ、これを連れて行ってほしい」
チーグルの長はソーサラーリングを子どもに渡すと、子どもはリングを腰に固定して、しゃがんだままのニッドの膝にちょこんと乗った。
「ぼくはミュウですの!よろしくお願いするですの!」
あまりのかわいさにその場が和んだ。さすがのティアも「かわいい…」と呟くほどだ。
「はーい、よろしくミュウ」
ニッドも思わず笑顔になって挨拶を返す。
しかし、ルークだけは違うようで…。
「…おい、なんかムカつくぞこいつ!」
「ごめんなさいですの!ごめんなさいですの!」
ミュウと名乗ったチーグルはニッドの陰に隠れながら謝っている。その後も、ルークがミュウに対して焼いて食うなどなんだの言っていて、ティアがそれを宥めている。
ニッドは土を払いながら立ち上がる。
「さて、ライガの住処に向かうか」
「はい。二人とも落ち着いてください」
イオンの言葉で言い合いも止まり、ミュウの案内に案内してもらいライガの住処へと出発した。
