エピソード1 タタル渓谷からバチカル
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今度は立派な家に案内された。
「失礼します」
「おや、今度は好青年が入ってきたねぇ」
「彼は私の部下のニッド・バーゼライド准将です。・・・准将、彼女はローズさんです」
ジェイドがそう紹介してくれた。
「どうも」と一礼し、ジェイドの隣へ行く。
そんなところへ扉が開いて数人の男たちに引っ立てられて入ってきたのは見たことのある赤い髪の少年と少女が現れた。
「ローズさん大変だ!」
「こら!今軍のお偉いさんが来てるんだ!おとなしくおしよ」
ローズが一喝する。
「おとなしくなんてしてられねぇ、ローズさん!食料泥棒を捕まえたんだ!」
その声にローズは一括する。
「違うって言ってるだろうが!」
その様子にニッドの顔が引き攣る。
また漆黒の翼と間違えられてる・・・・。
ついには逮捕と言い出す始末。ニッドはあまり顔を合わせないようになるべく背を向ける。
「だぁー!俺は泥棒じゃねぇって言ってんだろー!!こちとら、食いもんに困るような生活は送 ってねぇんだよ!」
ニッドの背後で少年がついにキレた。
「おやおや、威勢がいい坊やだね。とにかく皆落ち着いとくれ」
ローズさんはそんな様子見て豪快に笑い、そう言った。
「そうですよ、皆さん」
ジェイドは笑いながら、椅子から立ち上がった。その途端誰もが口をつぐんだ。
「ニッドもそう思いません?」
ジェイドにそう振られたニッドは無理矢理玄関のほうを向かされる。
「あ、お前!」
赤い髪の少年が指差して大きな声を出す。
「貴方!軍人だったの…」
あの少女も戸惑っている。
「お前、なんで黙ってたんだよ!」
少年は怒りを隠せないようだ。
「別に騙したつもりはないし、言う必要もなかっただろう。それに君たちも自分たちのことを言ってなかったじゃないか」
ニッドにそう返され、少年は舌打ちし隣のジェイドを見た。
「なんなんだよ、あんたら…」
「私はマルクト軍第三師団所属ジェイド•カーティス大佐です」
その後にニッドは姿勢を正して名乗った。
「同じくマルクト軍第三師団所属ニッド•バーぜライド」
ジェイドは中指で眼鏡の位置を直して少年に問うた。
「それで、貴方は?」
「俺はルーク。ルー ク•フォン…」
そこまで言ってルークと名乗った少年は少女に強く引き寄せられた。
何やら話している様子だ。ニッドの眉間に微かに皺が寄る。
「どうかしましたか?」
隣のジェイドが微かに首を傾ける。
彼女はルークの腕を放してジェイドとニッドに向き直り一礼した。
「失礼しました、カーティス大佐、バーゼライド准将。彼はルーク、私はティアと申します。私たちはケセドニアに向かう途中でしたが、辻馬車を乗り違えてここに来ました」
「おや、では貴方も漆黒の翼と疑われている彼の仲間ですか?」
「私たちは漆黒の翼ではありません。本物の漆黒の翼はマルクト軍がローテルロー橋の向こうへ追いつめていたはずですが…准将もご存知のはずです」
「ああ、なるほど。先ほどの馬車に貴方たちも乗っていたんですね?」
「どういうことですか?大佐」
ローズは話が見えないようで、そう聞いた。
「いえ、実はティアさんの仰った通り、漆黒の翼らしき盗賊はキムラスカ王国のほうへ逃走したんですよ、ローテルロー橋を破壊して」
その後をニッドが引き継いで言った。
「だから二人は漆黒の翼ではないですよ」
「ほら見ろ!」
それを聞いたルークは吠える。
「だけどそれは!」
一人の村人が反論する。
「こいつらが漆黒の翼じゃないってだけだ!食料泥棒じゃないって証明にはならねぇ!」
他の男たちもそれに同意して頷いている。
「なんだと!」
「ーいえ、彼の仕業ではないと思いますよ」
そんな柔らかい声がした。
緑の髪の白の法衣の少年が通ると、皆が自然と道を開ける。
「イオン様」
ジェイドがそう呼び、ニッドもその少年を見た。
「少し気になったので、食糧庫を調べさせていただきました。そうしまら、部屋の隅にこんなものが落ちていました」
少年イオンは青緑色をした毛を摘まんで皆に見せる。
「こいつは聖獣チーグルの抜け毛?」
ローズの問いにイオンが答えた。
「あまり考え難いことですが、チーグルが食糧庫を荒らしたのでしょう」
『チーグルが…そんなはずは…』
ニッドの背中のノルンが呟くのが聞こえた。
「ほ ら見ろ!だから泥棒じゃねぇって言ってんだろ!」
ルークは勝ち誇ったように言った。
「でもお金を払う前にリンゴを食べたのは事実よ。疑われる行動を取ったことを反省するべきだわ」
「し、仕方ねえだろ。金払うなんて知らなかったんだから」
「だったら村の人たちも仕方ないよね。チーグルの仕業だなんて知らなかったんだから」
「ーちっ」
ルークは舌打ちした。
ローズは場を和ませるかのように笑って言った。
「どうやら一件落着のようだね。ーあんたたちもこの坊やたちに言うことがあるんじゃないのかい?」
村の男たちは顔を見合わせ、その中の一人が出て来て謝罪した。
「すまない、このところ盗難騒ぎが続いて気が立 っててな。悪かった」
ローズはティアたちを振り返る。
「坊やたち、許してくれるかい?」
「俺は坊やじゃない」
「ああ、ごめんよルークさん。そうだ。今夜の宿代はこちらで持とうじゃないか。どうだい、それで水に流してくれるかい?」
「別に。どうでもいいさ」
「そいつは良かった。ーさて、あたしは大佐と准将と話がある。チーグルのことは何らかの防衛手段を考えてみるから、今日のところは皆帰っとくれ」
ローズがそう言いながら腕を振ると、男たちは家を出て行き、ルークとティアもそれに続いた。
***
そのあともチーグルの食糧庫荒らしの事件についてなどをローズと話し合い、夕方にはタルタロスでジェイドにタタル渓谷の調査報告をした。
もちろん、気にかかっていることも。
夜中にようやく一息つける。ニッドは自分の部屋のベッドにダイブした。
「ジェイドの意地悪」
『はは…まぁそう言ってやるな』
隣に置いた譜銃剣から声がした。
「ノルン…」
『ニッド、チーグルのこと』
「それは今日対策が決まっただろう」
『だが、チーグルが人間のものに手を出すのは…』
「…うーんだから…zzz」
『寝てしまったか』
ノルンは優しく笑って、窓から見える星空を見上げた。
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