第一回デルカダール軍特別会議
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その日一介の下っぱ兵士でありながら、私はマルティナ姫の私室に呼び出された。
何事だろうとも、なにか無礼でも働いたかなとも考えた。
けれどそれでも冷静なのは、たとえどちらであってもなんというか今更感満載だったからだ。
つまり、前者で呼び出されたのであれば大方彼女の自由人っぷりが成せる横暴ないし理不尽だろう。
…後者であれば謝り倒すしかないけれど。
ない頭で考えても仕方ないと適当に肚を決め、姫の部屋のドアをノックする。
「兵士エルザです。目通りお許し願えますか?」
と名乗るとどうぞーと気のない返事が返ってきた。
マルティナ姫の私室は恐らく、世の姫と呼ばれる方々とは一線を画すものだ。
真っ赤なふかふかの絨毯、豪奢なシャンデリア、透明度があまりにも高いクリスタルを贅沢にあしらったテーブルなど。
庶民には価値すら見繕えなさそうなほど高価な調度品の数々は、いかにも大国のお姫様の部屋、という感じなのだ。
しかしその中にも無骨なトレーニング機器の数々が見え隠れしている。
というか隠す気などそもそもない感じだった。
ふっかふかの絨毯にダンベルが無造作に埋まっている。
これを作った職人がこの事実を知ったら泣きそうな話だ。
「来たわね、エルザ。まあ座りなさい」
部屋の主はソファにもたれかかり、にやりと笑う。多分本人の好みの問題だろう。
マルティナさんのドレスは比較的シンプルながらも身体のラインがしっかり出るかなり露出度の高いものだ。
相当自分に自信がなければ着られない。
そして確かにとってもよく似合っていた。
「失礼します」
と断り、彼女と向かい合う位置のソファに座る。
そっと腰を降ろしたはずなのに驚くぐらい尻が埋まった。蕩けそうな座り心地である。
途端、マルティナさんは大袈裟にため息を吐いた。
「エルザも変わったわねー。ついに私を姫扱いかー」
「いや私一応あなた方の国に仕えてるからね?リアル姫に無礼働いて打ち首みたいなのマジで勘弁なんだけど」
「つっまんないこと言わないで。最近本当に退屈で仕方ないのよ。忙しかった割に」
「あー、邪神討伐記念パーティーとかそういうやつ?公務じゃない」
「そう公務!邪神を倒して平和を勝ち取ったけど――不謹慎な話あの頃の方が充実していた気はするのよね」
膝の上で頬杖をつき、マルティナさんはまたため息を吐いた。
馴れない仕事にすっかり気が滅入っているようだ。
確かに彼女は楚々ととお姫様をするより、武闘家としてモンスターや闘士相手に暴れまわっている方が性に合うだろうし似合う気がする。
だけど。
「それが平和ってことでしょ。お陰さまで私は幸せだよ」
「エルザはそうでしょうね、エルザは。あ、【シルビアさん】との惚気話はいらないわよ」
ばれたかと舌を出す。
幸せだ、とは言ってもあの頃に比べてゴリアテさんと会う頻度は減っていたかも知れない。
それに本当は、あちこち渡り歩いていた以前の方が私も人生充実していたと思わなくもないが、邪神を討伐した人間の手前言えるはずもない。
というか、そもそも別に不満というほどでもない。
それどころかゴリアテさんに本名呼びを許してもらえたという一点でとっても幸せだった。
……未だにたまにシルビア呼びが出るけど。
そうしてしばらく他愛のない雑談を続けていると、また別の目通りの許可を願い出る者が現れる。
聞き覚えのある低音が名乗り、マルティナさんはつまらなさそうに返事した。
「入ります」
彼女がいかにも嫌いそうなかた苦しい声でその人物――グレイグ将軍は入室してくる。
給仕用の台車を押すメイドさんを伴って。
華奢な印象を与える彼女は恭しくマルティナ姫にお辞儀をすると、洗練された美しくも素早い動作で三人分の紅茶とお茶菓子を置いていく。
こちらが手伝おうとする暇すら与えず。
そして仕事をするだけすると、もう一度お辞儀をして、すぐに出ていってしまった。
何事だろうとも、なにか無礼でも働いたかなとも考えた。
けれどそれでも冷静なのは、たとえどちらであってもなんというか今更感満載だったからだ。
つまり、前者で呼び出されたのであれば大方彼女の自由人っぷりが成せる横暴ないし理不尽だろう。
…後者であれば謝り倒すしかないけれど。
ない頭で考えても仕方ないと適当に肚を決め、姫の部屋のドアをノックする。
「兵士エルザです。目通りお許し願えますか?」
と名乗るとどうぞーと気のない返事が返ってきた。
マルティナ姫の私室は恐らく、世の姫と呼ばれる方々とは一線を画すものだ。
真っ赤なふかふかの絨毯、豪奢なシャンデリア、透明度があまりにも高いクリスタルを贅沢にあしらったテーブルなど。
庶民には価値すら見繕えなさそうなほど高価な調度品の数々は、いかにも大国のお姫様の部屋、という感じなのだ。
しかしその中にも無骨なトレーニング機器の数々が見え隠れしている。
というか隠す気などそもそもない感じだった。
ふっかふかの絨毯にダンベルが無造作に埋まっている。
これを作った職人がこの事実を知ったら泣きそうな話だ。
「来たわね、エルザ。まあ座りなさい」
部屋の主はソファにもたれかかり、にやりと笑う。多分本人の好みの問題だろう。
マルティナさんのドレスは比較的シンプルながらも身体のラインがしっかり出るかなり露出度の高いものだ。
相当自分に自信がなければ着られない。
そして確かにとってもよく似合っていた。
「失礼します」
と断り、彼女と向かい合う位置のソファに座る。
そっと腰を降ろしたはずなのに驚くぐらい尻が埋まった。蕩けそうな座り心地である。
途端、マルティナさんは大袈裟にため息を吐いた。
「エルザも変わったわねー。ついに私を姫扱いかー」
「いや私一応あなた方の国に仕えてるからね?リアル姫に無礼働いて打ち首みたいなのマジで勘弁なんだけど」
「つっまんないこと言わないで。最近本当に退屈で仕方ないのよ。忙しかった割に」
「あー、邪神討伐記念パーティーとかそういうやつ?公務じゃない」
「そう公務!邪神を倒して平和を勝ち取ったけど――不謹慎な話あの頃の方が充実していた気はするのよね」
膝の上で頬杖をつき、マルティナさんはまたため息を吐いた。
馴れない仕事にすっかり気が滅入っているようだ。
確かに彼女は楚々ととお姫様をするより、武闘家としてモンスターや闘士相手に暴れまわっている方が性に合うだろうし似合う気がする。
だけど。
「それが平和ってことでしょ。お陰さまで私は幸せだよ」
「エルザはそうでしょうね、エルザは。あ、【シルビアさん】との惚気話はいらないわよ」
ばれたかと舌を出す。
幸せだ、とは言ってもあの頃に比べてゴリアテさんと会う頻度は減っていたかも知れない。
それに本当は、あちこち渡り歩いていた以前の方が私も人生充実していたと思わなくもないが、邪神を討伐した人間の手前言えるはずもない。
というか、そもそも別に不満というほどでもない。
それどころかゴリアテさんに本名呼びを許してもらえたという一点でとっても幸せだった。
……未だにたまにシルビア呼びが出るけど。
そうしてしばらく他愛のない雑談を続けていると、また別の目通りの許可を願い出る者が現れる。
聞き覚えのある低音が名乗り、マルティナさんはつまらなさそうに返事した。
「入ります」
彼女がいかにも嫌いそうなかた苦しい声でその人物――グレイグ将軍は入室してくる。
給仕用の台車を押すメイドさんを伴って。
華奢な印象を与える彼女は恭しくマルティナ姫にお辞儀をすると、洗練された美しくも素早い動作で三人分の紅茶とお茶菓子を置いていく。
こちらが手伝おうとする暇すら与えず。
そして仕事をするだけすると、もう一度お辞儀をして、すぐに出ていってしまった。