仮面武闘会distortion
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出発日は改めて連絡すると残し麗しの戦士マスク・ザ・ハンサムはお帰り遊ばした。
朝からびっくりするくらい疲れる来客だったという他ない。再び一人になった部屋でカップを洗い、もう一度お茶をいれ直す。
先ほどハンサムが粗茶と言ったそれだが、私にとってはやっぱり高級な味がした。
「育ちが違うなぁ」
と、独りごちる。そういえば仮面武闘会でもあの男は一人身なりのレベルが違った。荒くれたちの中では突出して上等なものを身に着けていたあたり、やはりそれなりに経済力はある方なのだろう。
「だからこんな真似ができるのか」
嫌いな相手にもその先のメリットを見据えた上でフェア以上の取引。損して得とれ。一見器が小さそうなのにすごいなぁなんて若干失礼なことを思う。
「本当に出場する気か?」
話がややこしくなることが目に見えていたからだろう。ハンサムがいる時にはことりとも言わなかったホメロスさまが今になって姿を現す。
「あ、はい、気は進まないけど」
そして闇堕ちしたとはいえ本職の人を前にこれを言うのは躊躇われたけれど。
「騎士に二言はないっていうか」
カップをソーサーに戻すなり、頭を抱える。
完全完璧に勢いしかない発言だった。
ゆえに思い切り後悔はしていた。なにせグロッタ名物・仮面武闘会の最大の特徴といえば、その無法っぷり。凶器攻撃や状態異常攻撃すらも禁止されていなければ、精神攻撃にいたっては基本中の基本だ。その他に類を見ない過激さが、闘士も観客も熱狂させてきたわけで、私もその一人で。…ただし自分が出場するとなるとやはり二の足は踏まざるを得ない。出ると言った以上、今更の話だが。
「…まず教えておいてやるが、『騎士に二言はない』などという言葉はそう軽々しく使うものではない」
「えっ。でも、ゴリアテさんが…」
「ソルティコの連中は別だ。その言葉は、あの少々頭のネジが緩い連中の気風そのものだからな」
「よくわからないけど、ゴリアテさんが素敵っていうことはわかった!」
「…貴様と縁が切ることができる日が、オレはつくづく楽しみで仕方がない」
そう皮肉を言ったホメロスさまの表情はどこまでも無だった。
「話を戻そう。マスク・ザ・ハンサムといったか。なんとも戯けた名前の受け付けぬ男だが、信頼に値するのか?」
「受け付けない人マジで多いですね」
と、彼の受け付けない人間の代表例である私が指摘するもホメロスさまはスルー。生前はきっとよっぽど友だちがいなかったのだろうと予想するのはあまりに容易かった。
…それにしても数少ない親友すら裏切ってのけた彼の人生はさぞかし猜疑心に塗れたものだったに違いない。
「まあ、とにかく。ハンサムはなんていうかわからないけど、きっとすごく信用できる…」
だからきっと私が感じる根拠を説明したとこで理解が得られるはずもないとは思う。
それどころか自分で言って難だが説明ですらないし。
「感情論か。どこまでもくだらん女だ」
そう斬って捨てたホメロスさまをやはり好きにはなれない。生まれながらにして性格がとことん合わないし、それについてはとっくにある種の諦めもついている。けれど、このどこまでも説明のつかないシンパシーすら何の感情もなく否定されたことに対しては、腹が立つより先に寂しさを覚えた。
「…まあいい。エルザ。オレがやめろ、と言ったところでどうせお前は聞かぬだろう」
どこか何かを悟ったようにホメロスさまはため息を吐く。短く肯定すると、彼はこれみよがしと言わんばかりに更に深くため息を吐き、こめかみを押さえた。
「出場することはかまわん。今のお前ならば、オレが与えた力を使わずともそれなりに善戦できるだろう。…だから極力お前はあのレンジャーのサポートに徹しろ。上級呪文も、回復呪文も使うな」
「なんでですか?」
一応理由を聞く。そんなこともわからないのかと小馬鹿にされるかと思ったら、意外とホメロスさまは素直に持論を展開してくれた。
「考えるまでもなかろう。 出来損ないとはいえ、元々お前の貯めこんだ魔力は頭抜けている。…オレのお陰とはいえそれを今や勇者のごとく高い水準で行使できるのだ。そんなものをあの様な場で披露してみろ。忽ち大騒ぎだ」
正論か、と仮面武闘会の面子を思い出しながら考える。あそこの闘士たちは所詮あらくれ、と言いつつもレベルが高い。ハンサムももちろん、 賢者枠でビビアンちゃんなんていうのもいる。彼女の魔法は器用で手広く、ロウさんとまではいかずとも万能のすご腕という扱いだ。
そんな実力派アイドル闘士より魔力が圧倒的に高いとあっては、少々都合が悪いかも知れない。…現状でさえグレイグ将軍の秘蔵っ子だなどと分不相応な注目を浴びつつあるのだ。これ以上目立つのは勘弁被りたかった。
「…幸いと言うべきか、お前の身体能力はせいぜい並だ。仮面の闘士ども相手なら本気でやっても釣りが来る。実力を確認するいい機会になるだろうさ」
結局、結論としては参加しろということで良いのだろうか。
っていうか今更だけどすっかり師匠面になったなぁ。なんなんだこいつ。
朝からびっくりするくらい疲れる来客だったという他ない。再び一人になった部屋でカップを洗い、もう一度お茶をいれ直す。
先ほどハンサムが粗茶と言ったそれだが、私にとってはやっぱり高級な味がした。
「育ちが違うなぁ」
と、独りごちる。そういえば仮面武闘会でもあの男は一人身なりのレベルが違った。荒くれたちの中では突出して上等なものを身に着けていたあたり、やはりそれなりに経済力はある方なのだろう。
「だからこんな真似ができるのか」
嫌いな相手にもその先のメリットを見据えた上でフェア以上の取引。損して得とれ。一見器が小さそうなのにすごいなぁなんて若干失礼なことを思う。
「本当に出場する気か?」
話がややこしくなることが目に見えていたからだろう。ハンサムがいる時にはことりとも言わなかったホメロスさまが今になって姿を現す。
「あ、はい、気は進まないけど」
そして闇堕ちしたとはいえ本職の人を前にこれを言うのは躊躇われたけれど。
「騎士に二言はないっていうか」
カップをソーサーに戻すなり、頭を抱える。
完全完璧に勢いしかない発言だった。
ゆえに思い切り後悔はしていた。なにせグロッタ名物・仮面武闘会の最大の特徴といえば、その無法っぷり。凶器攻撃や状態異常攻撃すらも禁止されていなければ、精神攻撃にいたっては基本中の基本だ。その他に類を見ない過激さが、闘士も観客も熱狂させてきたわけで、私もその一人で。…ただし自分が出場するとなるとやはり二の足は踏まざるを得ない。出ると言った以上、今更の話だが。
「…まず教えておいてやるが、『騎士に二言はない』などという言葉はそう軽々しく使うものではない」
「えっ。でも、ゴリアテさんが…」
「ソルティコの連中は別だ。その言葉は、あの少々頭のネジが緩い連中の気風そのものだからな」
「よくわからないけど、ゴリアテさんが素敵っていうことはわかった!」
「…貴様と縁が切ることができる日が、オレはつくづく楽しみで仕方がない」
そう皮肉を言ったホメロスさまの表情はどこまでも無だった。
「話を戻そう。マスク・ザ・ハンサムといったか。なんとも戯けた名前の受け付けぬ男だが、信頼に値するのか?」
「受け付けない人マジで多いですね」
と、彼の受け付けない人間の代表例である私が指摘するもホメロスさまはスルー。生前はきっとよっぽど友だちがいなかったのだろうと予想するのはあまりに容易かった。
…それにしても数少ない親友すら裏切ってのけた彼の人生はさぞかし猜疑心に塗れたものだったに違いない。
「まあ、とにかく。ハンサムはなんていうかわからないけど、きっとすごく信用できる…」
だからきっと私が感じる根拠を説明したとこで理解が得られるはずもないとは思う。
それどころか自分で言って難だが説明ですらないし。
「感情論か。どこまでもくだらん女だ」
そう斬って捨てたホメロスさまをやはり好きにはなれない。生まれながらにして性格がとことん合わないし、それについてはとっくにある種の諦めもついている。けれど、このどこまでも説明のつかないシンパシーすら何の感情もなく否定されたことに対しては、腹が立つより先に寂しさを覚えた。
「…まあいい。エルザ。オレがやめろ、と言ったところでどうせお前は聞かぬだろう」
どこか何かを悟ったようにホメロスさまはため息を吐く。短く肯定すると、彼はこれみよがしと言わんばかりに更に深くため息を吐き、こめかみを押さえた。
「出場することはかまわん。今のお前ならば、オレが与えた力を使わずともそれなりに善戦できるだろう。…だから極力お前はあのレンジャーのサポートに徹しろ。上級呪文も、回復呪文も使うな」
「なんでですか?」
一応理由を聞く。そんなこともわからないのかと小馬鹿にされるかと思ったら、意外とホメロスさまは素直に持論を展開してくれた。
「考えるまでもなかろう。 出来損ないとはいえ、元々お前の貯めこんだ魔力は頭抜けている。…オレのお陰とはいえそれを今や勇者のごとく高い水準で行使できるのだ。そんなものをあの様な場で披露してみろ。忽ち大騒ぎだ」
正論か、と仮面武闘会の面子を思い出しながら考える。あそこの闘士たちは所詮あらくれ、と言いつつもレベルが高い。ハンサムももちろん、 賢者枠でビビアンちゃんなんていうのもいる。彼女の魔法は器用で手広く、ロウさんとまではいかずとも万能のすご腕という扱いだ。
そんな実力派アイドル闘士より魔力が圧倒的に高いとあっては、少々都合が悪いかも知れない。…現状でさえグレイグ将軍の秘蔵っ子だなどと分不相応な注目を浴びつつあるのだ。これ以上目立つのは勘弁被りたかった。
「…幸いと言うべきか、お前の身体能力はせいぜい並だ。仮面の闘士ども相手なら本気でやっても釣りが来る。実力を確認するいい機会になるだろうさ」
結局、結論としては参加しろということで良いのだろうか。
っていうか今更だけどすっかり師匠面になったなぁ。なんなんだこいつ。