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「ピチピチバニー特盛り号」
「【ピチピチバニーとれとれおっぱい特盛り号】ですよ、ホメロスさま。中途半端な略称よくないです」
「下劣な言葉など口にしては、オレの品位が下がるだけだ」
デルカダールの兵士にだってお昼休みはもちろんある。
今日は天気が良く気温もちょうどいい感じなので、木陰でランチだ。
城下町で人気を博している店のパンを齧りながらくだんの本を眺める。
色々な意味でマルティナさんには及ばずとも、かなり美人なバニーのお姉さんがカメラ目線でウインクをしていた。
この【ピチピチバニーとれとれおっぱい特盛り号】をよりによってグレイグさまの部屋の前で偶然見つけてしまい、そして思わず持ってきてしまったのだ。
悪気はもちろんない。
というかあればむしろそのまま触らず放っておいてる。
とはいえその後のことを全く考えておらずすっかり困ってしまったので、こうして剣の幽霊ことホメロスさまに相談している次第だ。
お陰で今日は独りのランチ。
これは完全完璧にイレギュラーであり、決して一緒にお昼を食べる同僚がいないわけではない……。
「で、お前それをどうするつもりだ」
「グレイグさまに返したいのは山々なんだけど……。
正直、『これ落ちてましたよー!』って渡し辛くて。私が誤解してるだけかも知れないし」
「たしかに、グレイグのものだとはまだ確定していないな。とはいえ思い切り奴の趣味丸出しなのだが」
えっそうなんですか。
とグレイグさまの性癖トーク方面に舵を切ろうとしたけれど、ホメロスさまの嫌悪感に満ち満ちた表情を見て思い止まる。
そういえばこの方、ゴリアテさん以上にこの手の話には潔癖だった。
「とにかく、同じ男性のホメロスさまなら、グレイグさまがこの場合どうしてほしいかわかるかなーって」
「……。一つ訊くが。この場にゴリアテがいたとしても、同じことが言えるか?」
「言えるわけないでしょ。ていうか、セクハラになるじゃないですか、そんなことしたら」
なんでここでゴリアテさんが出てくるのかわからなかった。ホメロスさまってこんな頓珍漢なこと言うキャラだっけ。
少し考え、まあいいやと思考を放棄。この方が難しいテーマを突然投げてくるのは割といつものことだ。いちいち相手にしていたらキリがない。
さてと。ご飯を終わらせないと、と思う。だって昼休みは決して長くないのだ。
そんなことを思いながら水筒の水で喉を潤してから店名のロゴが印字してある茶色の紙袋から新たな白パンを取り出し、 頬張る。
味付けはいたってシンプル。そのほのかな甘みが癖になる。
「もういい。その本がグレイグのものだという前提で言うならばだ。簡単な話だ、黙って部屋に戻しておけばよかろう。
あいつは馬鹿だから、自室にも関わらずしょっ中鍵をかけ忘れている。チャンスはいくらでもある」
しかし、とホメロスさまは付け足す。
「いい加減奴も不注意が過ぎるな。
ここらで改善せねば、その内まずい問題も浮上しそうだ。ただでさえ姫様が帰還召され、近頃は女性兵も増えている」
「その内あの方セクハラで訴えられそうですね。いよいよ」
ちなみに女性に直接性的ないやがらせをしなくとも、こういったものを誰かの目につくところに置いておくだけでセクハラとして成立しかねないので油断はできない。
対男性も同様だ。そのあたりのコンプライアンスは研修も含めて異様にしっかりしていた。
堅物と呼ばれるまでに真面目なグレイグさまは、誰よりも真剣に講義を聞いていた。
その姿がとても格好良かったと、先輩女性兵士たちからは大変好評だったようなのだが。
それにも拘らず、このうっかり具合を見てしまったらどれほど落胆するのだろうかと残念な気持ちになる。
戦場では恐ろしいくらい抜け目がないのに、なんでこの方はこうなんだ。
知っている人たちから、愛されているといえば愛されている部分ではあるのだけれど……。
「……いくらグレイグとはいえ、そのような結末は忍びない」
「確かに」
以前にグレイグさまを陥れようとしたホメロスさまですらこの言い分。
そんな彼の決して素直とは言えないながらも温かな意外性も、次の発言の前におそろしい勢いで崩れて言ったのだが。
「よし、お前。この本を持ってグレイグに注意しろ」
「はあ!?」
「育ちの悪いお前とて、世話になった相手がこんなつまらんことで躓くのは嫌だろう?
ましてや目の前で、だ。出来損ないでもそれくらいはできるよな?」
言ってることはわかる。むしろ正論だ。
【ピチピチバニーとれとれおっぱい特盛り号】に目を落とす。
確かに今注意できるのは原状私だけだろう。マルティナさんにチクリを入れるのはさすがに気の毒だし。
もちろんホメロスさまにはできない。
…というよりも、それにはグレイグさまに精神体である彼の姿を見えるようにするため、まず魔力の媒介となる私の付き添いが必須になる。
つまり結局文字通りの本末転倒。難なら悪化すらしていた。
「…何を悩んでいる。簡単なことではないか。その本を持ちグレイグの自室に行く。
『こんなものを放り出すな。きちんと管理しろ。出したものはしまえ』これを言うだけだ。ハッキリ言うが、ドラゴン退治よりはよほど楽な仕事だぞ」
まるでベッドの下からエロ本を見つけたお母さんの言動だった。
さてはホメロスさま、生前にもこういう場面に遭遇してるな、とすごくどうでもいい憶測を立てる。
「いやドラゴン退治の方が楽でしょ、実際」
「ほう。なぜそう思う?」
「ホメロスさまに話したら絶対ばかにされそうなんだけど……」
「かまわん、話してみろ」
あからさまにおよび腰の私を嘲笑うでもなく、真剣に、無駄に頼り甲斐を見せられる。
促されるままに私は喋りはじめていた。
正直に、あの日の、プチトラウマを。
「【ピチピチバニーとれとれおっぱい特盛り号】ですよ、ホメロスさま。中途半端な略称よくないです」
「下劣な言葉など口にしては、オレの品位が下がるだけだ」
デルカダールの兵士にだってお昼休みはもちろんある。
今日は天気が良く気温もちょうどいい感じなので、木陰でランチだ。
城下町で人気を博している店のパンを齧りながらくだんの本を眺める。
色々な意味でマルティナさんには及ばずとも、かなり美人なバニーのお姉さんがカメラ目線でウインクをしていた。
この【ピチピチバニーとれとれおっぱい特盛り号】をよりによってグレイグさまの部屋の前で偶然見つけてしまい、そして思わず持ってきてしまったのだ。
悪気はもちろんない。
というかあればむしろそのまま触らず放っておいてる。
とはいえその後のことを全く考えておらずすっかり困ってしまったので、こうして剣の幽霊ことホメロスさまに相談している次第だ。
お陰で今日は独りのランチ。
これは完全完璧にイレギュラーであり、決して一緒にお昼を食べる同僚がいないわけではない……。
「で、お前それをどうするつもりだ」
「グレイグさまに返したいのは山々なんだけど……。
正直、『これ落ちてましたよー!』って渡し辛くて。私が誤解してるだけかも知れないし」
「たしかに、グレイグのものだとはまだ確定していないな。とはいえ思い切り奴の趣味丸出しなのだが」
えっそうなんですか。
とグレイグさまの性癖トーク方面に舵を切ろうとしたけれど、ホメロスさまの嫌悪感に満ち満ちた表情を見て思い止まる。
そういえばこの方、ゴリアテさん以上にこの手の話には潔癖だった。
「とにかく、同じ男性のホメロスさまなら、グレイグさまがこの場合どうしてほしいかわかるかなーって」
「……。一つ訊くが。この場にゴリアテがいたとしても、同じことが言えるか?」
「言えるわけないでしょ。ていうか、セクハラになるじゃないですか、そんなことしたら」
なんでここでゴリアテさんが出てくるのかわからなかった。ホメロスさまってこんな頓珍漢なこと言うキャラだっけ。
少し考え、まあいいやと思考を放棄。この方が難しいテーマを突然投げてくるのは割といつものことだ。いちいち相手にしていたらキリがない。
さてと。ご飯を終わらせないと、と思う。だって昼休みは決して長くないのだ。
そんなことを思いながら水筒の水で喉を潤してから店名のロゴが印字してある茶色の紙袋から新たな白パンを取り出し、 頬張る。
味付けはいたってシンプル。そのほのかな甘みが癖になる。
「もういい。その本がグレイグのものだという前提で言うならばだ。簡単な話だ、黙って部屋に戻しておけばよかろう。
あいつは馬鹿だから、自室にも関わらずしょっ中鍵をかけ忘れている。チャンスはいくらでもある」
しかし、とホメロスさまは付け足す。
「いい加減奴も不注意が過ぎるな。
ここらで改善せねば、その内まずい問題も浮上しそうだ。ただでさえ姫様が帰還召され、近頃は女性兵も増えている」
「その内あの方セクハラで訴えられそうですね。いよいよ」
ちなみに女性に直接性的ないやがらせをしなくとも、こういったものを誰かの目につくところに置いておくだけでセクハラとして成立しかねないので油断はできない。
対男性も同様だ。そのあたりのコンプライアンスは研修も含めて異様にしっかりしていた。
堅物と呼ばれるまでに真面目なグレイグさまは、誰よりも真剣に講義を聞いていた。
その姿がとても格好良かったと、先輩女性兵士たちからは大変好評だったようなのだが。
それにも拘らず、このうっかり具合を見てしまったらどれほど落胆するのだろうかと残念な気持ちになる。
戦場では恐ろしいくらい抜け目がないのに、なんでこの方はこうなんだ。
知っている人たちから、愛されているといえば愛されている部分ではあるのだけれど……。
「……いくらグレイグとはいえ、そのような結末は忍びない」
「確かに」
以前にグレイグさまを陥れようとしたホメロスさまですらこの言い分。
そんな彼の決して素直とは言えないながらも温かな意外性も、次の発言の前におそろしい勢いで崩れて言ったのだが。
「よし、お前。この本を持ってグレイグに注意しろ」
「はあ!?」
「育ちの悪いお前とて、世話になった相手がこんなつまらんことで躓くのは嫌だろう?
ましてや目の前で、だ。出来損ないでもそれくらいはできるよな?」
言ってることはわかる。むしろ正論だ。
【ピチピチバニーとれとれおっぱい特盛り号】に目を落とす。
確かに今注意できるのは原状私だけだろう。マルティナさんにチクリを入れるのはさすがに気の毒だし。
もちろんホメロスさまにはできない。
…というよりも、それにはグレイグさまに精神体である彼の姿を見えるようにするため、まず魔力の媒介となる私の付き添いが必須になる。
つまり結局文字通りの本末転倒。難なら悪化すらしていた。
「…何を悩んでいる。簡単なことではないか。その本を持ちグレイグの自室に行く。
『こんなものを放り出すな。きちんと管理しろ。出したものはしまえ』これを言うだけだ。ハッキリ言うが、ドラゴン退治よりはよほど楽な仕事だぞ」
まるでベッドの下からエロ本を見つけたお母さんの言動だった。
さてはホメロスさま、生前にもこういう場面に遭遇してるな、とすごくどうでもいい憶測を立てる。
「いやドラゴン退治の方が楽でしょ、実際」
「ほう。なぜそう思う?」
「ホメロスさまに話したら絶対ばかにされそうなんだけど……」
「かまわん、話してみろ」
あからさまにおよび腰の私を嘲笑うでもなく、真剣に、無駄に頼り甲斐を見せられる。
促されるままに私は喋りはじめていた。
正直に、あの日の、プチトラウマを。