獣たちの宴
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「き…、貴様どうやってここに入ってきた!?」
「どうやってって、フツーにここの玄関から入ってきたわよ。宿屋の店主ちゃんにもきちんと挨拶したし」
「そういうことを聞いているのではない!貴様旅芸人だろう!?
いつからスタイリストとやらに」
「やあね、ホメロスちゃん」
くすくすと優しく微笑したゴリアテさんは、私をそっと抱き寄せてくる。
「アタシ、この子専属のスタイリストなの」
暖かい、久しぶりの感覚。
甘い花のにおいがする。
ゴリアテさんが好んでよく付けている、私もとっても好きな香水だ。
浮気容疑がかけられている真っ最中に関わらず、ひどく安心感に包まれ、瞼が落ち、蕩けてしまいそうになる。
その様子を見てますますホメロスさまは怒った。
「誰が変態夫婦の話をしているか!」
私が言うのも難だが、ゴリアテさんとホメロスさまは非常に相性が悪い。
なんというかむしろちょっと想像に易すぎるとは思うけれど、ホメロスさまの嫌いぷりはそれ以上なようだった。
…まあダーハルーネであれだけコケにされりゃトラウマにもなるか。
「真面目に答えよ、ゴリアテ殿」
「ホメロスちゃん。アタシはいつだって真面目よ」
ぎゅっとゴリアテさんが私を抱き締める腕に力がこもる。
…ホメロスさまに見せつけるかのように。
「どこがだ。いい加減にしろよ貴様。私がこの様でなければ今すぐにでも斬っ」
「へえ。じゃあ真面目に聞くわよ。
アナタどうして、アタシのエルザちゃんが余所の男の部屋に、止めるどころか行くようにそそのかしてくれたのかしら?」
珍しく食い込むように入ったゴリアテさんから
笑みが消え、そして異様なほどにトーンが低かった。
瞬時に適温だったはずの空気が凍るのがわかる。
ホメロスさまの顔が青ざめて息を呑むのを見て、さすがに口を挟まざるを得なかった。
浮気する気はないけど……こうなったことに関しては私も悪いし。
「…ごめんなさい、ゴリアテさん。
あの王子が怪しいと知ってしまった以上、とても見過ごすことができなかったの。
ホメロスさまは、…私の気づきや考えをまとめてくれただけ」
「エルザちゃん…」
ゴリアテさんは、私がホメロスさまを毛嫌いしていることを知っている。
そんな私が彼をフォローするような発言をしたのだ。
だからゴリアテさんもホメロスさまも、同じような呆気にとられた顔をしたのが少しおかしかったけれど、ここで笑ったら死ぬと思って必死に我慢した。
「…とにかく、話を戻したいんだけどその前に。
ゴリアテさん、本当にどうやってここに来られたんですか?」
「…偶然よ。
サマディーでショーがあるからアタシがここにいる、っていうのはエルザちゃんも知ってのことだと思うけど、それはとにかくとして。
…アタシも見ちゃったのよ、あの御前試合」
つまり、私がほとんど何もできず負けたところを見られてしまったわけか。
沈みそうになる気持ちを、しかしゴリアテさんは無理矢理引っ張り上げてくる。
「ファーリスちゃんの力は圧倒的だったわ。
真正面からだと、アタシでも勝てるか怪しいくらい。
…その割に型としてはまるでなっていないというか……、でも前のへっぴり腰とは全然違う。
なんていうか、ずいぶんと野性的になっていたの」
ゴリアテさんは、私やホメロスさまとは全く違う切り口から王子の不自然さを説いた。
確かにあの獣を思わせる立ち振舞といい、優れた身体能力に任せて剣を振るう姿は、カミュくんのような我流の天才を思わせる。
優男めいた外見からも、騎士の国の王子という名門中の名門の生い立ちからしても、はっきり言ってあまりにも不似合いだった。
「その後アナタが王子ちゃんに呼ばれたって兵士ちゃんたちが喋ってるのを聞いて、アタシもういてもたってもいられなくて!
それで駆けつけたってわけ」
「ちなみに、スタイリストさんっていうのは」
「…ああ、本来ここに来るはずだった彼女は急用が入っちゃったから、これ幸いにアタシが代わってもらったのよ」
屈託なく笑うシルビアさんに、薄ら寒いものを感じる。
いやだってふつう王族からの仕事より重要なものってあまりない。
「ゴリアテ…貴様、一体…!?」
ドン引きするホメロスさまに、ゴリアテさんはけろりとした顔で言った。
「やあね、ホメロスちゃん。
アタシが女の子に乱暴なことをするわけないじゃない!
あの子も知名度があがるから良いだろうって随分買い叩かれたみたいでね……ちょっとお小遣いを乗せてあげたら、快く代わってくれたわ!」
「よりによって金か!!」
ホメロスさまは頭を抱える。
堕ちたとはいえこの人もかつては騎士だったので、ゴリアテさんの破天荒ぷりは受け付けないのだろう。
多少気持ちはわかる。けれど。
「ホメロスさま。ゴリアテさんは平和的かつ効率的な手段を選んだの。
私この人のそういうとこすっごく好き!!」
「頼むから貴様は黙れ!!!!!」
「わかってくれて嬉しいわエルザちゃん!」
「貴様は自分のやったことを省みてみろ!!」
「どうやってって、フツーにここの玄関から入ってきたわよ。宿屋の店主ちゃんにもきちんと挨拶したし」
「そういうことを聞いているのではない!貴様旅芸人だろう!?
いつからスタイリストとやらに」
「やあね、ホメロスちゃん」
くすくすと優しく微笑したゴリアテさんは、私をそっと抱き寄せてくる。
「アタシ、この子専属のスタイリストなの」
暖かい、久しぶりの感覚。
甘い花のにおいがする。
ゴリアテさんが好んでよく付けている、私もとっても好きな香水だ。
浮気容疑がかけられている真っ最中に関わらず、ひどく安心感に包まれ、瞼が落ち、蕩けてしまいそうになる。
その様子を見てますますホメロスさまは怒った。
「誰が変態夫婦の話をしているか!」
私が言うのも難だが、ゴリアテさんとホメロスさまは非常に相性が悪い。
なんというかむしろちょっと想像に易すぎるとは思うけれど、ホメロスさまの嫌いぷりはそれ以上なようだった。
…まあダーハルーネであれだけコケにされりゃトラウマにもなるか。
「真面目に答えよ、ゴリアテ殿」
「ホメロスちゃん。アタシはいつだって真面目よ」
ぎゅっとゴリアテさんが私を抱き締める腕に力がこもる。
…ホメロスさまに見せつけるかのように。
「どこがだ。いい加減にしろよ貴様。私がこの様でなければ今すぐにでも斬っ」
「へえ。じゃあ真面目に聞くわよ。
アナタどうして、アタシのエルザちゃんが余所の男の部屋に、止めるどころか行くようにそそのかしてくれたのかしら?」
珍しく食い込むように入ったゴリアテさんから
笑みが消え、そして異様なほどにトーンが低かった。
瞬時に適温だったはずの空気が凍るのがわかる。
ホメロスさまの顔が青ざめて息を呑むのを見て、さすがに口を挟まざるを得なかった。
浮気する気はないけど……こうなったことに関しては私も悪いし。
「…ごめんなさい、ゴリアテさん。
あの王子が怪しいと知ってしまった以上、とても見過ごすことができなかったの。
ホメロスさまは、…私の気づきや考えをまとめてくれただけ」
「エルザちゃん…」
ゴリアテさんは、私がホメロスさまを毛嫌いしていることを知っている。
そんな私が彼をフォローするような発言をしたのだ。
だからゴリアテさんもホメロスさまも、同じような呆気にとられた顔をしたのが少しおかしかったけれど、ここで笑ったら死ぬと思って必死に我慢した。
「…とにかく、話を戻したいんだけどその前に。
ゴリアテさん、本当にどうやってここに来られたんですか?」
「…偶然よ。
サマディーでショーがあるからアタシがここにいる、っていうのはエルザちゃんも知ってのことだと思うけど、それはとにかくとして。
…アタシも見ちゃったのよ、あの御前試合」
つまり、私がほとんど何もできず負けたところを見られてしまったわけか。
沈みそうになる気持ちを、しかしゴリアテさんは無理矢理引っ張り上げてくる。
「ファーリスちゃんの力は圧倒的だったわ。
真正面からだと、アタシでも勝てるか怪しいくらい。
…その割に型としてはまるでなっていないというか……、でも前のへっぴり腰とは全然違う。
なんていうか、ずいぶんと野性的になっていたの」
ゴリアテさんは、私やホメロスさまとは全く違う切り口から王子の不自然さを説いた。
確かにあの獣を思わせる立ち振舞といい、優れた身体能力に任せて剣を振るう姿は、カミュくんのような我流の天才を思わせる。
優男めいた外見からも、騎士の国の王子という名門中の名門の生い立ちからしても、はっきり言ってあまりにも不似合いだった。
「その後アナタが王子ちゃんに呼ばれたって兵士ちゃんたちが喋ってるのを聞いて、アタシもういてもたってもいられなくて!
それで駆けつけたってわけ」
「ちなみに、スタイリストさんっていうのは」
「…ああ、本来ここに来るはずだった彼女は急用が入っちゃったから、これ幸いにアタシが代わってもらったのよ」
屈託なく笑うシルビアさんに、薄ら寒いものを感じる。
いやだってふつう王族からの仕事より重要なものってあまりない。
「ゴリアテ…貴様、一体…!?」
ドン引きするホメロスさまに、ゴリアテさんはけろりとした顔で言った。
「やあね、ホメロスちゃん。
アタシが女の子に乱暴なことをするわけないじゃない!
あの子も知名度があがるから良いだろうって随分買い叩かれたみたいでね……ちょっとお小遣いを乗せてあげたら、快く代わってくれたわ!」
「よりによって金か!!」
ホメロスさまは頭を抱える。
堕ちたとはいえこの人もかつては騎士だったので、ゴリアテさんの破天荒ぷりは受け付けないのだろう。
多少気持ちはわかる。けれど。
「ホメロスさま。ゴリアテさんは平和的かつ効率的な手段を選んだの。
私この人のそういうとこすっごく好き!!」
「頼むから貴様は黙れ!!!!!」
「わかってくれて嬉しいわエルザちゃん!」
「貴様は自分のやったことを省みてみろ!!」