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「その剣はお前が持って行け」
「嫌ですよ。それじゃ私墓泥棒じゃないですか」
「他ならぬオレがかまわんと言っている。それに下賤のエルザ殿には、泥棒など全く相応しい肩書きだろう」
はあ、と幽霊に生返事して片手剣を手にする。
ホメロスさまは先程のセンチメンタリズムはどこへやら、いつもの大層嫌な奴に戻っていた。
もっとも、私もその方がずっと気が楽でよかったけれど。
「グレイグさまになんて言おう」
とはいえ基本的に彼は私のことを忌み嫌う。
今だって不幸になれと文字通り怨念のように感じるし。早速嫌味も言われたし。
私もやっぱりこの人は嫌いだ。
「どうも何も」
それでも、僅かにホメロスさまの態度が柔らかくなっているような気がした。
「正直に言えばよいではないか。
ホメロスさまの剣があまりに魅力的でつい持ち出してしまいましたとな」
「……ホメロスさまが墓地でぼっちで泣いて寂しがってたから話し相手になったらお礼にくれました。
…ですね。わかりましたそうします」
「やめろくびり殺すぞ貴様」
「死人に口なし。できるものならどうぞ」
さらりと流す。ホメロスさまは怖い顔をするがしょせん実体はない。
ゾンビ系のモンスターや、悪魔の類ほどは恐ろしいとはさすがに感じなかった。
「…ほう」
片手剣を腰に帯く。
今まで装備してきた中で圧倒的に重い。色んな意味で。
馴れが必要だと強く感じると同時に、かつてこの剣と、グレイグさまともに戦場を駆け抜けてきた偉大な軍師・ホメロスさまを思う。
「馬子にも衣装…いやこの場合は愚女にもプラチナソード。
これでようやく、外面だけは見られる水準だな」
…やっぱりやめた。
「よくそんなポンポン暴言が出ますね。斬って良いです?」
「やってみろ。やれるものならな」
意趣返しと言わんばかりに、ホメロスさまは底意地悪く笑う。
生者と死者。
もはや住む世界が違うのだなぁと思うと、いくら心底嫌いな相手でも少し思うところがあった。
そこに同情したり、かわいそうだとは思わないけれど、少しだけ感傷的になる。
「これ、ありがとうございます。大切にします」
「ふん。手入れだけは怠るな。そいつはがさつなエルザ殿と違って繊細なんだ」
昼間に幽霊を見かけたという話は聞かない。
たぶんホメロスさまと話ができる時間ももうすぐ終わる。夜明けが来るから。
「…また来ますね。覚えてたら」
「別に来なくて良い。お前など来ても不快だ」
ぷいっとホメロスさまはそっぽを向く。
尋問の時も先ほど暴言を吐きあったときも、この方はまっすぐ自信たっぷりに私を見据え見下して来たのに。
おかしかったけど、笑うのはさすがに我慢した。
「あ、お礼じゃないけど余ったパンお供えして行きますね。最近デルカダールで人気なんですよ。
もし仮に万が一にも生まれ変われたらぜひ焼き立てを食べてみてください最高なんですああホメロスさまそもそも生まれ変われないんでしたっけ」
その代わり、変わらず嫌味を言う。
ホメロスさまは顔を顰める。
たぶん私たちの関係は意味もなく心底嫌いあうのがちょうどいい。
「いずれ貴様を道連れにしてやる。覚悟しておけ」
そんな嫌いな男の身体が、薄くなってくる。
空の端が白み始めていた。
その後案の定プラチナソードを墓から持ち出したことを当然ながらグレイグさまに滅茶苦茶怒られたので、本当のことを話さざるを得なくなった。
とはいえ本人の元に連れて行くことで、グレイグさまは納得してくれた。
しかしながら、今度はホメロスさま(プラチナソードのことは擁護してくれたものの、基本グレイグさまとは話したくないらしく、ほとんど黙って佇んでいたのが最高に笑えた)の怒りを買って呪われた。
「嫌ですよ。それじゃ私墓泥棒じゃないですか」
「他ならぬオレがかまわんと言っている。それに下賤のエルザ殿には、泥棒など全く相応しい肩書きだろう」
はあ、と幽霊に生返事して片手剣を手にする。
ホメロスさまは先程のセンチメンタリズムはどこへやら、いつもの大層嫌な奴に戻っていた。
もっとも、私もその方がずっと気が楽でよかったけれど。
「グレイグさまになんて言おう」
とはいえ基本的に彼は私のことを忌み嫌う。
今だって不幸になれと文字通り怨念のように感じるし。早速嫌味も言われたし。
私もやっぱりこの人は嫌いだ。
「どうも何も」
それでも、僅かにホメロスさまの態度が柔らかくなっているような気がした。
「正直に言えばよいではないか。
ホメロスさまの剣があまりに魅力的でつい持ち出してしまいましたとな」
「……ホメロスさまが墓地でぼっちで泣いて寂しがってたから話し相手になったらお礼にくれました。
…ですね。わかりましたそうします」
「やめろくびり殺すぞ貴様」
「死人に口なし。できるものならどうぞ」
さらりと流す。ホメロスさまは怖い顔をするがしょせん実体はない。
ゾンビ系のモンスターや、悪魔の類ほどは恐ろしいとはさすがに感じなかった。
「…ほう」
片手剣を腰に帯く。
今まで装備してきた中で圧倒的に重い。色んな意味で。
馴れが必要だと強く感じると同時に、かつてこの剣と、グレイグさまともに戦場を駆け抜けてきた偉大な軍師・ホメロスさまを思う。
「馬子にも衣装…いやこの場合は愚女にもプラチナソード。
これでようやく、外面だけは見られる水準だな」
…やっぱりやめた。
「よくそんなポンポン暴言が出ますね。斬って良いです?」
「やってみろ。やれるものならな」
意趣返しと言わんばかりに、ホメロスさまは底意地悪く笑う。
生者と死者。
もはや住む世界が違うのだなぁと思うと、いくら心底嫌いな相手でも少し思うところがあった。
そこに同情したり、かわいそうだとは思わないけれど、少しだけ感傷的になる。
「これ、ありがとうございます。大切にします」
「ふん。手入れだけは怠るな。そいつはがさつなエルザ殿と違って繊細なんだ」
昼間に幽霊を見かけたという話は聞かない。
たぶんホメロスさまと話ができる時間ももうすぐ終わる。夜明けが来るから。
「…また来ますね。覚えてたら」
「別に来なくて良い。お前など来ても不快だ」
ぷいっとホメロスさまはそっぽを向く。
尋問の時も先ほど暴言を吐きあったときも、この方はまっすぐ自信たっぷりに私を見据え見下して来たのに。
おかしかったけど、笑うのはさすがに我慢した。
「あ、お礼じゃないけど余ったパンお供えして行きますね。最近デルカダールで人気なんですよ。
もし仮に万が一にも生まれ変われたらぜひ焼き立てを食べてみてください最高なんですああホメロスさまそもそも生まれ変われないんでしたっけ」
その代わり、変わらず嫌味を言う。
ホメロスさまは顔を顰める。
たぶん私たちの関係は意味もなく心底嫌いあうのがちょうどいい。
「いずれ貴様を道連れにしてやる。覚悟しておけ」
そんな嫌いな男の身体が、薄くなってくる。
空の端が白み始めていた。
その後案の定プラチナソードを墓から持ち出したことを当然ながらグレイグさまに滅茶苦茶怒られたので、本当のことを話さざるを得なくなった。
とはいえ本人の元に連れて行くことで、グレイグさまは納得してくれた。
しかしながら、今度はホメロスさま(プラチナソードのことは擁護してくれたものの、基本グレイグさまとは話したくないらしく、ほとんど黙って佇んでいたのが最高に笑えた)の怒りを買って呪われた。