Hevenly sun
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それからほどなくしてビビアンくんとサイデリアくんは現れた。
運がいいのか悪いのかなんとも言えないが、正直明日になるんじゃないかと思っていたし、このような状況においてはとかく感謝しかない。
「積もる話もあるだろうが、今はものすごく急いでいる。
だから何も聞かずこの絵にMPパサーをしてくれないか、ビビアンくん」
来たばかりのレディにいきなりの頼みごとはかなり不躾だと思ったが、そうも言っていられない。
ボクだってエルザくんのことは心配なのだ。
「あらん?王子ったら慌ててるの。エルザがいないから?」
今何が起きているのかビビアンくんに説明していない以上理解できないのも無理はない。
しかしながらいいから早く、と急かそうとするより先に彼女はにっこりと笑った。
「いいわよ。ロウちゃまししょーとの修行の成果見せたげるっ」
「…ビビアン、あんたそんなのいつやってたんだい?」
「うふっ。こないだの仮面武闘会の待機時間よ」
それは修行と言うのだろうか。一同がそんなことを思うのも気にせず、ビビアンくんは杖をかざす。
「ビビアンちゃんはこれでも専門だからひと目見てわかったけど、王子は魔法も使えないのにその答えまで行きつけたのはさすがね。
褒めたげるわ」
彼女はそんな雑談をしながら絵に魔力の塊をぶつける。
…何も起らない。
しかしそんなことは気にせず二発目。
ボクの手持ちの魔法の聖水を飲んでもらい、三発目の魔力の塊を打ち出す。
「…何も起きないじゃないか?」
「やん。ラゴスったら、ちゃんと見て」
そう言ってビビアンくんはぴったりとラゴスもといハンサムくんの腕に抱きついた。
胸がどう見ても当たっていたがなぜか羨ましくなかった。
ビビアンくんは美人なのに不思議だ。閑話休題。
「な、なんだこれ…」
ハンサムくんは唖然としていた。当然だ。あるはずのないものがそこにはあったのだから。
絵の前に発生している魔力の渦は、いつだったか文献で見た『旅の扉』に酷似している。
もちろん本物は見たことはない。ボクでさえこれがまったく初めてだ。
「言ったろう。扉が開く条件さえわかれば、犠牲を払う必要なんてないんだ。
それを満たす状況を、『高密度の魔力の塊』という合鍵を作り出せば良い。
人間には、それを思いつく知恵がある。…実行できる者は限られるがね」
ハンサムくんは、圧倒されたように頷く。
「さ、とにかく扉は開いたわ。行きましょ」
いやビビアンくんに限ってはわからないが。
「ここに飛び込むのか?」
サイデリアくんが少し声を震わせる。彼女が怖がるのも当然だ。
これを味方が作り、安全が保障されていても不気味な存在であることには変わりない。
ボクだってぶっちゃけ怖い。
「だーいじょうぶよ、サイデリア!これはね、ビビアンちゃんが作った異世界への入り口で」
「基本的には安全だ。それを証明するため、ボクが前を行こう」
ビビアンくんが説明および説得するよりも、この中でもっともダメなヤツだと自他共に認められているボクが真っ先に行って、安全を証明する方が手っ取り早かった。
「ちょっと王子!これ自体は安全だけど、行った先で魔物が待ち構えてる可能性はあるわよ!」
「それもそうだな。…だがまあ」
ビビアンくんがさすがに慌てて制止してくる。その通りだった。
一応これでも一国の王子なので、何かあったらことではある。色んな意味で今更だけどね。
「そこはほら、キミたちが助けてくれるって、ボクは信じているよ」
笑いかける。
我ながらなんとも言えない発想だが、サイデリアくんが安心してくれるならそれで良かった。
一人歩を出す。
そうは言ってもずいぶん緊張はしたが、今度こそ口だけにはならないように証明してみせる所存だ。
「おい、ファーリス」
覚悟を決めたボクを呼び止めたのはハンサムくんだった。
「なんだい?止める必要は――」
「ないんだろう。そんなことはわかっている。だが、ビビアンの言うことはもっともだ」
肩を叩かれた。
「ボクがお前の後ろにつく。魔物は任せろ。…あとさっきはやはり言い過ぎた、すまなかったな」
異様に小声の謝罪だっただし、視線も全く合わない。素直という言葉とは程遠いものだったことは間違いない。
でも、それでもボクは良かった。
「ハンサムくん、ありがとう。よろしく頼むよ」
恐怖心も気づけばなくなっていた。
むしろ勇ましい気分にすらなっていた。
ボクたちならばやれると、この時誰もが確信していたに違いない。
けれどもこれが、必ずしも良いこととは限らなかっただなんて、この時ボクは想像すらできなかったんだ。
運がいいのか悪いのかなんとも言えないが、正直明日になるんじゃないかと思っていたし、このような状況においてはとかく感謝しかない。
「積もる話もあるだろうが、今はものすごく急いでいる。
だから何も聞かずこの絵にMPパサーをしてくれないか、ビビアンくん」
来たばかりのレディにいきなりの頼みごとはかなり不躾だと思ったが、そうも言っていられない。
ボクだってエルザくんのことは心配なのだ。
「あらん?王子ったら慌ててるの。エルザがいないから?」
今何が起きているのかビビアンくんに説明していない以上理解できないのも無理はない。
しかしながらいいから早く、と急かそうとするより先に彼女はにっこりと笑った。
「いいわよ。ロウちゃまししょーとの修行の成果見せたげるっ」
「…ビビアン、あんたそんなのいつやってたんだい?」
「うふっ。こないだの仮面武闘会の待機時間よ」
それは修行と言うのだろうか。一同がそんなことを思うのも気にせず、ビビアンくんは杖をかざす。
「ビビアンちゃんはこれでも専門だからひと目見てわかったけど、王子は魔法も使えないのにその答えまで行きつけたのはさすがね。
褒めたげるわ」
彼女はそんな雑談をしながら絵に魔力の塊をぶつける。
…何も起らない。
しかしそんなことは気にせず二発目。
ボクの手持ちの魔法の聖水を飲んでもらい、三発目の魔力の塊を打ち出す。
「…何も起きないじゃないか?」
「やん。ラゴスったら、ちゃんと見て」
そう言ってビビアンくんはぴったりとラゴスもといハンサムくんの腕に抱きついた。
胸がどう見ても当たっていたがなぜか羨ましくなかった。
ビビアンくんは美人なのに不思議だ。閑話休題。
「な、なんだこれ…」
ハンサムくんは唖然としていた。当然だ。あるはずのないものがそこにはあったのだから。
絵の前に発生している魔力の渦は、いつだったか文献で見た『旅の扉』に酷似している。
もちろん本物は見たことはない。ボクでさえこれがまったく初めてだ。
「言ったろう。扉が開く条件さえわかれば、犠牲を払う必要なんてないんだ。
それを満たす状況を、『高密度の魔力の塊』という合鍵を作り出せば良い。
人間には、それを思いつく知恵がある。…実行できる者は限られるがね」
ハンサムくんは、圧倒されたように頷く。
「さ、とにかく扉は開いたわ。行きましょ」
いやビビアンくんに限ってはわからないが。
「ここに飛び込むのか?」
サイデリアくんが少し声を震わせる。彼女が怖がるのも当然だ。
これを味方が作り、安全が保障されていても不気味な存在であることには変わりない。
ボクだってぶっちゃけ怖い。
「だーいじょうぶよ、サイデリア!これはね、ビビアンちゃんが作った異世界への入り口で」
「基本的には安全だ。それを証明するため、ボクが前を行こう」
ビビアンくんが説明および説得するよりも、この中でもっともダメなヤツだと自他共に認められているボクが真っ先に行って、安全を証明する方が手っ取り早かった。
「ちょっと王子!これ自体は安全だけど、行った先で魔物が待ち構えてる可能性はあるわよ!」
「それもそうだな。…だがまあ」
ビビアンくんがさすがに慌てて制止してくる。その通りだった。
一応これでも一国の王子なので、何かあったらことではある。色んな意味で今更だけどね。
「そこはほら、キミたちが助けてくれるって、ボクは信じているよ」
笑いかける。
我ながらなんとも言えない発想だが、サイデリアくんが安心してくれるならそれで良かった。
一人歩を出す。
そうは言ってもずいぶん緊張はしたが、今度こそ口だけにはならないように証明してみせる所存だ。
「おい、ファーリス」
覚悟を決めたボクを呼び止めたのはハンサムくんだった。
「なんだい?止める必要は――」
「ないんだろう。そんなことはわかっている。だが、ビビアンの言うことはもっともだ」
肩を叩かれた。
「ボクがお前の後ろにつく。魔物は任せろ。…あとさっきはやはり言い過ぎた、すまなかったな」
異様に小声の謝罪だっただし、視線も全く合わない。素直という言葉とは程遠いものだったことは間違いない。
でも、それでもボクは良かった。
「ハンサムくん、ありがとう。よろしく頼むよ」
恐怖心も気づけばなくなっていた。
むしろ勇ましい気分にすらなっていた。
ボクたちならばやれると、この時誰もが確信していたに違いない。
けれどもこれが、必ずしも良いこととは限らなかっただなんて、この時ボクは想像すらできなかったんだ。