Nightmare On
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教養のない私では、たとえ己自身にあった出来事でも説明するとなると中々困難だった。
ただでさえ複雑な上、そもそも話として不十分な点も少なくなかったと思う。
しかも泣きながらの説明だったのでますますわかり辛かったに違いない。
それでもシルビアさんは途中で遮ることなく話を聞いてくれた。
それがとてもありがたくてまた泣いた。
そうしていても、話はいつか終わりを迎える。この戦闘が終わったのと同じように。
「私のことと、私が知っていることは、これで全部。…もし思い出せることがあればまた話すよ」
「そう、よく話してくれたわね。それにしても…」
何か考え込むように黙り込む。
あまりに唐突で少し不自然な気すらして、思わず問いかけてしまう。
「シルビアさん…?」
「え、いえね、デルカダールの兵士ちゃんも随分と心が狭いのねって、思って…」
嘘だ、即断ずる。
自分で言うのも難だがダーハルーネでやらかしたことは、かなりの大罪である。
要はそういう問題ではないわけだ。
それをシルビアさんがわからないはずもないから、そんなことを思ったのは嘘である。
…かといって私にそれを追及する資格などないのだが。
「…一緒に船ちゃんに乗っていればこんなことには」
ふと、シルビアさんがそんなことを口にする。
後悔している様子だった。こちらには嘘は含まれていないように見えた。
基準がよくわからない。
「無理ですよ。私、ダーハルーネで次の日仕事のアポ取ってたし。すっぽかせないよ」
「しっかりしてるわねぇ」
「それで結局ポカして捕まって、お客さんには悪いことしちゃったけど」
信用ガタ落ち、嫌になる話だと愚痴りたいが、
自分の置かれている状況を思うとそういう場合でもなかった。
「…シルビアさん。ありがとうございます…だいぶ落ち着きました」
少し名残惜しいがずっと抱きしめていてくれた彼からそっと離れる。
「どういたしまして」
と微笑むシルビアさんに笑い返し、これからの意向を思いつくままに話す。
「私、このままデルカダールに帰ってもどうせ処刑されるから。
…だからこの隙に、このまま逃げようと思ってます」
「確かに今がチャンスかしらね」
一緒に勇者様の仲間たちを襲ったデルカダール兵士たちは、
把握しているだけでもすでに大半がやられている。
おまけに戦闘力が圧倒的に最強のグレイグ将軍は悪魔の子探しに躍起になっている。
今は夜。小康状態に入ったとはいえ雨も降っている。こんなチャンスはなかった。
「今度は失敗しない。また会いましょう。みんなには次に会えたら、改めて謝るから…」
「ええ」
「だから、手を離してください」
いつの間にか、そしてなぜかシルビアさんにしっかり手首を掴まれていた。
その意図がわからなくて困惑して、そんな懇願しかできない。
胸騒ぎのように心臓が鳴る。さっきからなんでだ、と思う。
シルビアさんは恩人だ。けれどそれ以上でも以下でもない。
いやきっと。彼はイケメンだからドキドキしているのだ。
服装以外はまるで王子様みたいに気品もある。
そんな人に急に抱き締められて手まで握られたら、女性ならきっと誰でもテンパる。
そう、私も例外なく。
なぜかそんな言い訳じみたことを心で羅列していた。
「違うの、これは」
そしてシルビアさんの口調は思ったよりも固く、ひどく真面目で。
「ねえ、もしエルザちゃんさえ良かったら――」
「シルビアさん!!生きてる!?」
威勢のいい少女の声が雰囲気を容赦なく切り裂いた。
「あ、良かった。無事だったのね…で、なんでいちゃついてんの」
ベロニカちゃんは私たちの様子を見て顔をしかめる。
そうか、彼女にはそういう風に見えたのか。
なんて思いながらシルビアさんを見る。彼は苦笑して私の手を解放した。
「別にそういうわけじゃないのよ、ベロニカちゃん。アタシ、この子を説得してただけだもの」
「そうよね!シルビアさん、カミュと違ってまじめだもん!で、結果はどうだったの?」
ベロニカちゃんはシルビアさんに謎の厚い信頼を見せつつ私を睨んだ。
完全に怒らせたらしいというのは明白で、とにかく私は頭を下げなければならなかった。
「さっきはひどいことして、本当にごめん!もうしない…っていうか、しろって言われても無理」
「ふうん」
ベロニカちゃんは少し考えた素振りを見せ。
「悪いって思ってるなら今度何か奢りなさいよね」
と、感情豊かな彼女にしてはずいぶんと素っ気なく返してきた。
「ありがとう…」
「別に。まだ許してないし」
ぷいっと拗ねたようにそっぽを向くベロニカちゃんに、あらあらとシルビアさんは微笑むのだった。
ただでさえ複雑な上、そもそも話として不十分な点も少なくなかったと思う。
しかも泣きながらの説明だったのでますますわかり辛かったに違いない。
それでもシルビアさんは途中で遮ることなく話を聞いてくれた。
それがとてもありがたくてまた泣いた。
そうしていても、話はいつか終わりを迎える。この戦闘が終わったのと同じように。
「私のことと、私が知っていることは、これで全部。…もし思い出せることがあればまた話すよ」
「そう、よく話してくれたわね。それにしても…」
何か考え込むように黙り込む。
あまりに唐突で少し不自然な気すらして、思わず問いかけてしまう。
「シルビアさん…?」
「え、いえね、デルカダールの兵士ちゃんも随分と心が狭いのねって、思って…」
嘘だ、即断ずる。
自分で言うのも難だがダーハルーネでやらかしたことは、かなりの大罪である。
要はそういう問題ではないわけだ。
それをシルビアさんがわからないはずもないから、そんなことを思ったのは嘘である。
…かといって私にそれを追及する資格などないのだが。
「…一緒に船ちゃんに乗っていればこんなことには」
ふと、シルビアさんがそんなことを口にする。
後悔している様子だった。こちらには嘘は含まれていないように見えた。
基準がよくわからない。
「無理ですよ。私、ダーハルーネで次の日仕事のアポ取ってたし。すっぽかせないよ」
「しっかりしてるわねぇ」
「それで結局ポカして捕まって、お客さんには悪いことしちゃったけど」
信用ガタ落ち、嫌になる話だと愚痴りたいが、
自分の置かれている状況を思うとそういう場合でもなかった。
「…シルビアさん。ありがとうございます…だいぶ落ち着きました」
少し名残惜しいがずっと抱きしめていてくれた彼からそっと離れる。
「どういたしまして」
と微笑むシルビアさんに笑い返し、これからの意向を思いつくままに話す。
「私、このままデルカダールに帰ってもどうせ処刑されるから。
…だからこの隙に、このまま逃げようと思ってます」
「確かに今がチャンスかしらね」
一緒に勇者様の仲間たちを襲ったデルカダール兵士たちは、
把握しているだけでもすでに大半がやられている。
おまけに戦闘力が圧倒的に最強のグレイグ将軍は悪魔の子探しに躍起になっている。
今は夜。小康状態に入ったとはいえ雨も降っている。こんなチャンスはなかった。
「今度は失敗しない。また会いましょう。みんなには次に会えたら、改めて謝るから…」
「ええ」
「だから、手を離してください」
いつの間にか、そしてなぜかシルビアさんにしっかり手首を掴まれていた。
その意図がわからなくて困惑して、そんな懇願しかできない。
胸騒ぎのように心臓が鳴る。さっきからなんでだ、と思う。
シルビアさんは恩人だ。けれどそれ以上でも以下でもない。
いやきっと。彼はイケメンだからドキドキしているのだ。
服装以外はまるで王子様みたいに気品もある。
そんな人に急に抱き締められて手まで握られたら、女性ならきっと誰でもテンパる。
そう、私も例外なく。
なぜかそんな言い訳じみたことを心で羅列していた。
「違うの、これは」
そしてシルビアさんの口調は思ったよりも固く、ひどく真面目で。
「ねえ、もしエルザちゃんさえ良かったら――」
「シルビアさん!!生きてる!?」
威勢のいい少女の声が雰囲気を容赦なく切り裂いた。
「あ、良かった。無事だったのね…で、なんでいちゃついてんの」
ベロニカちゃんは私たちの様子を見て顔をしかめる。
そうか、彼女にはそういう風に見えたのか。
なんて思いながらシルビアさんを見る。彼は苦笑して私の手を解放した。
「別にそういうわけじゃないのよ、ベロニカちゃん。アタシ、この子を説得してただけだもの」
「そうよね!シルビアさん、カミュと違ってまじめだもん!で、結果はどうだったの?」
ベロニカちゃんはシルビアさんに謎の厚い信頼を見せつつ私を睨んだ。
完全に怒らせたらしいというのは明白で、とにかく私は頭を下げなければならなかった。
「さっきはひどいことして、本当にごめん!もうしない…っていうか、しろって言われても無理」
「ふうん」
ベロニカちゃんは少し考えた素振りを見せ。
「悪いって思ってるなら今度何か奢りなさいよね」
と、感情豊かな彼女にしてはずいぶんと素っ気なく返してきた。
「ありがとう…」
「別に。まだ許してないし」
ぷいっと拗ねたようにそっぽを向くベロニカちゃんに、あらあらとシルビアさんは微笑むのだった。