Nightmare On
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「エルザ!?今エルザって言ったわよね!?」
しかし今一度戦闘は中断される。
私がロウさんに斬りかかったことを契機に各々戦闘が始まっていた。
そういうわけで直前、イオの爆発があったためだ。
その比較的近くにいた私もロウさんも直撃こそしていないが、
爆風に煽られたせいで一度体勢を立て直す必要があった。
イオを唱えた本人がそれを意図していたのかはわからない。
いずれにしてもその表情は驚きと憂いで満ちている。
「声は確かに似てるって思ったけどまさか…。ねえなんで?
ダーハルーネではあたしたちを助けてくれたじゃない!?」
自称大魔法使い・ベロニカちゃん。
魔物の呪いのせいで小さな子どもの姿になってしまったというけれど、
そこについてだけは正直あまり信用していない。
だがしかし、その泣きそうな幼い姿はこちらの裏切りに対する罪悪感を煽るのには十分すぎた。
「なんと。知り合いであったか、お主たち」
「ちょっとした事情があって」
困惑するロウさんに説明するのはこんなもので良いだろう。
本当に大した話ではない。
ダーハルーネにおいて、デルカダール軍に捕まったカミュくんを助ける勇者様たちのの手伝いをした。
手段は主に陽動、時にはデマを用いて軍を引っ掻き回して彼らを動きやすいように工作した。
動機はシルビアさんへの恩返し、それだけ。
かくして彼らは無事船に乗ってどこかへ逃げおおせた。
しかしその一方で私はへまをして捕まってしまい、
命と引き換えに今こうして彼らの前に立ちふさがっている。
「私はね、今デルカダールに雇われてるの」
初対面で、どこの馬の骨かもわからない私にも良くしてくれた彼らに責任を感じてほしくなかった。
何より悲劇のヒロインになどなりたくなかった。
だから喋らなくていい。私の情報はいらない。剣を構える。
二対一。
ロウさんだけでも苦戦しているのに、これはあまりにも不利が過ぎる。
…いや、むしろチームとしてはプラスだ。
厄介な魔法系を二人も足踏みさせられると考えるのだ、ポジティブに考えなきゃ。
バイキルトとピオリムを自分に唱える。
ついでに周囲を見渡す。
敵の倍以上いたはずのデルカダールの兵士たちは、だいぶその数を減らしている。
「ほら、私傭兵だから。こういうのは仕方ないんだよ。
自然の摂理つーか、これが仕事だし」
ベロニカちゃんは純粋だ。
自分たちより金を選ばれたのだと理解するや否やみるみる顔が怒りに染まる。
実際にはもちろんそんなこと思ってはいないのだけど――いや、変な言い訳はみっともないか。
「信じらんない!絶対許さない!!カミュ!!手、空いてるんでしょう!?」
それでも攻撃魔法主体の自分では私相手には不利だという分別は残っていたのだろう。
大声で物理攻撃が得意な仲間の名を呼びながら踵を返す。
明らかな判断ミスだ。
「…敵に背中見せるとか、ずいぶんと余裕ね」
ギラでベロニカちゃんの行く手を遮る。
彼女は子どもらしからぬ表情で歯噛みして向き直る。
「お主も、の」
とほぼ同時、私もベロニカちゃんと同じミスを犯していたらしい。
ロウさんに背後をとられていた。
「まっ――!」
とはいえ乱戦は得意分野であり、そんな迂闊なことを私はしない。
このおじいさん、ただ者ではない雰囲気さえ殺して私の背後に忍び寄ったのだ。
暗殺者かよ!!
「待たぬ」
杖で殴り飛ばされる。
その力たるや、一瞬身体が宙に浮いたくらい。
それでも頭をぶつけることはなんとか避け、代わりに肩を強く地面に打ち付ける。
激痛に悶えながらも、起き上がる。
本当はすでに休みたかったが、追い打ちをかけられては堪らない。
「…もう止さんか?ただでさえワシに勝つには実力がまだまだ足りぬ。
その上エルザ、お主の剣からは迷いしか感じられん」
「マジでやめてロウさんそういうの」
魔力の保有量に関しては凡人の範疇には決して収まらないものがあるという自負の一方で、
私はその一割も自発的には活用できない。
もっと直接的にいえば私は自分のレベルに反し上級呪文はほぼ使えないし、
回復呪文に至ってはホイミすらできない。
だからって戦意を喪失するわけにはいかなかった。
「迷ってようとなんだろうと、こっちは止まれないんだ」
剣をかまえる。失敗即死という言葉がのしかかる。
…けれども本当にこれで良いのだろうかという疑念も確かにあって。
違うだろ、と強く自分に言い聞かせる。
生き汚くなれ、自己中心的であれ。
そうでなければ、死ぬのは私だ。
単純に処刑されるだけならまだマシな方で、これでも悪魔の子と繋がっていた身。
あの残酷なホメロス将軍が、今更タダで死なせてくれるとは到底思えない。
そんなプレッシャーに圧し潰されかけていた時だった。
「ロウちゃん、ベロニカちゃん。ここからはこの子のお相手はアタシがするわよ」
…私は今度こそ絶望する羽目になる。
しかし今一度戦闘は中断される。
私がロウさんに斬りかかったことを契機に各々戦闘が始まっていた。
そういうわけで直前、イオの爆発があったためだ。
その比較的近くにいた私もロウさんも直撃こそしていないが、
爆風に煽られたせいで一度体勢を立て直す必要があった。
イオを唱えた本人がそれを意図していたのかはわからない。
いずれにしてもその表情は驚きと憂いで満ちている。
「声は確かに似てるって思ったけどまさか…。ねえなんで?
ダーハルーネではあたしたちを助けてくれたじゃない!?」
自称大魔法使い・ベロニカちゃん。
魔物の呪いのせいで小さな子どもの姿になってしまったというけれど、
そこについてだけは正直あまり信用していない。
だがしかし、その泣きそうな幼い姿はこちらの裏切りに対する罪悪感を煽るのには十分すぎた。
「なんと。知り合いであったか、お主たち」
「ちょっとした事情があって」
困惑するロウさんに説明するのはこんなもので良いだろう。
本当に大した話ではない。
ダーハルーネにおいて、デルカダール軍に捕まったカミュくんを助ける勇者様たちのの手伝いをした。
手段は主に陽動、時にはデマを用いて軍を引っ掻き回して彼らを動きやすいように工作した。
動機はシルビアさんへの恩返し、それだけ。
かくして彼らは無事船に乗ってどこかへ逃げおおせた。
しかしその一方で私はへまをして捕まってしまい、
命と引き換えに今こうして彼らの前に立ちふさがっている。
「私はね、今デルカダールに雇われてるの」
初対面で、どこの馬の骨かもわからない私にも良くしてくれた彼らに責任を感じてほしくなかった。
何より悲劇のヒロインになどなりたくなかった。
だから喋らなくていい。私の情報はいらない。剣を構える。
二対一。
ロウさんだけでも苦戦しているのに、これはあまりにも不利が過ぎる。
…いや、むしろチームとしてはプラスだ。
厄介な魔法系を二人も足踏みさせられると考えるのだ、ポジティブに考えなきゃ。
バイキルトとピオリムを自分に唱える。
ついでに周囲を見渡す。
敵の倍以上いたはずのデルカダールの兵士たちは、だいぶその数を減らしている。
「ほら、私傭兵だから。こういうのは仕方ないんだよ。
自然の摂理つーか、これが仕事だし」
ベロニカちゃんは純粋だ。
自分たちより金を選ばれたのだと理解するや否やみるみる顔が怒りに染まる。
実際にはもちろんそんなこと思ってはいないのだけど――いや、変な言い訳はみっともないか。
「信じらんない!絶対許さない!!カミュ!!手、空いてるんでしょう!?」
それでも攻撃魔法主体の自分では私相手には不利だという分別は残っていたのだろう。
大声で物理攻撃が得意な仲間の名を呼びながら踵を返す。
明らかな判断ミスだ。
「…敵に背中見せるとか、ずいぶんと余裕ね」
ギラでベロニカちゃんの行く手を遮る。
彼女は子どもらしからぬ表情で歯噛みして向き直る。
「お主も、の」
とほぼ同時、私もベロニカちゃんと同じミスを犯していたらしい。
ロウさんに背後をとられていた。
「まっ――!」
とはいえ乱戦は得意分野であり、そんな迂闊なことを私はしない。
このおじいさん、ただ者ではない雰囲気さえ殺して私の背後に忍び寄ったのだ。
暗殺者かよ!!
「待たぬ」
杖で殴り飛ばされる。
その力たるや、一瞬身体が宙に浮いたくらい。
それでも頭をぶつけることはなんとか避け、代わりに肩を強く地面に打ち付ける。
激痛に悶えながらも、起き上がる。
本当はすでに休みたかったが、追い打ちをかけられては堪らない。
「…もう止さんか?ただでさえワシに勝つには実力がまだまだ足りぬ。
その上エルザ、お主の剣からは迷いしか感じられん」
「マジでやめてロウさんそういうの」
魔力の保有量に関しては凡人の範疇には決して収まらないものがあるという自負の一方で、
私はその一割も自発的には活用できない。
もっと直接的にいえば私は自分のレベルに反し上級呪文はほぼ使えないし、
回復呪文に至ってはホイミすらできない。
だからって戦意を喪失するわけにはいかなかった。
「迷ってようとなんだろうと、こっちは止まれないんだ」
剣をかまえる。失敗即死という言葉がのしかかる。
…けれども本当にこれで良いのだろうかという疑念も確かにあって。
違うだろ、と強く自分に言い聞かせる。
生き汚くなれ、自己中心的であれ。
そうでなければ、死ぬのは私だ。
単純に処刑されるだけならまだマシな方で、これでも悪魔の子と繋がっていた身。
あの残酷なホメロス将軍が、今更タダで死なせてくれるとは到底思えない。
そんなプレッシャーに圧し潰されかけていた時だった。
「ロウちゃん、ベロニカちゃん。ここからはこの子のお相手はアタシがするわよ」
…私は今度こそ絶望する羽目になる。