Nightmare On
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ユグノア王国跡地にたどり着いたのは日が沈んでからだった。
そのままの流れで悪魔の子らの捜索が始まる。
と言っても比較的すぐに彼らは発見された(逃亡者の自覚がないのか、
堂々と何らかの儀式を行っていたらしい)のだけど。
悪魔の子を捕らえるために編成されたのは部隊の人数は30人弱。
内グレイグさまを含めた15名程度は、先ほど目標に向かって行ってしまった。
取り残された私たちその他の兵隊たちはグレイグ将軍が出陣前に残した命令に従うこととなる。
『悪魔の子の仲間たちを探し出し捕らえよ』
とはいうものの、仲間たちもやはりすぐに見つかった。
カミュくん、ベロニカちゃん、セーニャさんにシルビアさん。あと知らないおじいさんが増えていた。
人数的には圧倒的にこちらが有利だが、ダーハルーネでの彼らの戦いぷりを見るに油断は決してならない。
ガルシア副隊長が声を張る。
「囲め!断じて逃がすな!!自分の首が大事ならばな!!」
ボリュームこそ非常にやかましいが、しかし真理。悪魔の子討伐はおそらくデルカダール軍でも最優先事項。
何せグレイグさまもホメロスさまも、あの虫も殺せなさそうないかにも無害な男の子を捕らえるのに
躍起になっているのだ。
こんなバカらしい話はないが、しかしそんな仕事を現に負わされている
そして今任務を達成する大チャンスというわけだ。
それを失敗したら多大な責任を負わされることは子どもでもわかる。
うん、絶対に失敗できないやつだこれ。
無実の兵士たちはせいぜい失職くらいで済むのだろう。
一方私は以前にダーハルーネでこの人たちを助けた罪で、本当の意味で首が飛ぶのだ。
「ほっほ。ゆっくりと感傷にも浸らせてくれんとは。…ずいぶんと無粋なやつらじゃの」
たっぷりと蓄えた髭を弄りながらおじいさんは笑う。
しかし目は全くの素――いや、怒りを湛えてさえいる。
そしておもむろにガルシア副隊長に杖を向けた。
電撃のように予感が走る。
「くそっ!」
避けて、なんて言えなかった。
それよりもガルシア副隊長とおじいさんの間に飛び込むように割って入った方がはるかに早かった。
結果として、おじいさんのドルマの闇は私を穿つ。身体を内部から焼かれる感覚に、顔が歪む。
痛みこそある、が――。
「アタマを叩けば手っ取り早いと思ったが…いやはや、中々ホネのあるのがいるようじゃ」
生まれつきの体質で、私は攻撃呪文全般にかなり強い。
当然痛みまで消えるわけではないが、味方を戦闘不能にするよりはマシだ。
そして目論見どおり私はほとんど無傷だった。
ガルシア副隊長はぽかんとしていたがすぐ我に返る。
短くすまんと言われた。仮にも私は罪人だというのに律儀なことだ。
「お褒めに預かり光栄です、おじいさん」
「おじいさんなどと他人行儀な呼び方はやめておくれ別嬪さん。ロウでよい」
「ベッピンだなんて、ロウさんお上手!」
おもむろに振った剣をロウと名乗ったおじいさんはやすやすとその杖で受けた。
恰幅の良い体格をしているとは思ったが、腕力の方も想像以上のものがある。
「して、お主の名前も聞いてよろしいか?」
攻め手だったはずの私の剣はあっさりと弾かれてしまう。
そこからはロウさんのターン。次々と振りまわされる杖を剣で受け、時には躱しながら後退する。
予想すらしていなかった猛攻に半ばパニックになる。
「わっ…ちょ」
名乗るどころではない。
やがて、背中に何かが当たる。岩盤。
後退はこれ以上できない。
「ワシの見立てじゃとお前さんにラリホーは効かん。悪いが少し痛い思いをしてもらうぞ」
ロウさんが杖を振り上げる。
この瞬間しかなかった。
悲鳴をあげるようにメラを唱える。
威力こそ低いが虚はつかれたのだろう。直撃したロウさんが僅かに怯んだ。
その隙に、転がるように彼の間合いから逃げる。
「…呪文耐性に高速詠唱か。中々おもしろい才能に恵まれておるようじゃの」
私の方に向き直りながら、ロウさんはそんなことを言う。
「ロウさん分析はやーい。大抵こっちから説明しなきゃだめなんだけど」
本音だった。私は生まれつき魔力量だけは相当多い。
といってもほとんど自発的には生かせないのだけど。
ロウさんが指摘した能力は、そのいずれもそれに追随するおまけのようなものである。
さらに言えば彼の言う通りあまり一般的ではない特性だ。
「年寄りをナメるでない。…しかしここでその才能を摘んでしまうことが残念じゃ」
ロウさんが穏やかに笑い、そして構える。
当初こそ魔法使いか賢者の物腰だったが、今はどちらかというと武闘家の雰囲気を纏っていた。
杖も多少短いだけの棍のように見える。
ただ者ではないことはやはり明確。
まあ、勇者さまたちと一緒にいるくらいだしなと思いつつ私も剣を構える。
「…名乗り遅れました。私、デルカダールのエルザ。しがない傭兵やってます!」
「お主ほどの魔法戦士が、そんなわけなかろ!」
剣と杖がぶつかる。痺れる衝撃。
さっきは高齢だからとなめていたのもあって遅れをとったが、同じ轍は踏まない。
しかし、近接職の人間が近接職用の武器を使って先手を打ってまで、
杖一本で迎撃する老人相手に互角までにしか持ち込めない。
なんとも情けない話だった、しかしやり直しはできない。
ていうかなんで誰も助けてくれないんだと思ったが、
よく考えたらデルカダール兵も含め誰も私を助ける義理なんてなかった。
四面楚歌というやつか。ははは笑えない。
そのままの流れで悪魔の子らの捜索が始まる。
と言っても比較的すぐに彼らは発見された(逃亡者の自覚がないのか、
堂々と何らかの儀式を行っていたらしい)のだけど。
悪魔の子を捕らえるために編成されたのは部隊の人数は30人弱。
内グレイグさまを含めた15名程度は、先ほど目標に向かって行ってしまった。
取り残された私たちその他の兵隊たちはグレイグ将軍が出陣前に残した命令に従うこととなる。
『悪魔の子の仲間たちを探し出し捕らえよ』
とはいうものの、仲間たちもやはりすぐに見つかった。
カミュくん、ベロニカちゃん、セーニャさんにシルビアさん。あと知らないおじいさんが増えていた。
人数的には圧倒的にこちらが有利だが、ダーハルーネでの彼らの戦いぷりを見るに油断は決してならない。
ガルシア副隊長が声を張る。
「囲め!断じて逃がすな!!自分の首が大事ならばな!!」
ボリュームこそ非常にやかましいが、しかし真理。悪魔の子討伐はおそらくデルカダール軍でも最優先事項。
何せグレイグさまもホメロスさまも、あの虫も殺せなさそうないかにも無害な男の子を捕らえるのに
躍起になっているのだ。
こんなバカらしい話はないが、しかしそんな仕事を現に負わされている
そして今任務を達成する大チャンスというわけだ。
それを失敗したら多大な責任を負わされることは子どもでもわかる。
うん、絶対に失敗できないやつだこれ。
無実の兵士たちはせいぜい失職くらいで済むのだろう。
一方私は以前にダーハルーネでこの人たちを助けた罪で、本当の意味で首が飛ぶのだ。
「ほっほ。ゆっくりと感傷にも浸らせてくれんとは。…ずいぶんと無粋なやつらじゃの」
たっぷりと蓄えた髭を弄りながらおじいさんは笑う。
しかし目は全くの素――いや、怒りを湛えてさえいる。
そしておもむろにガルシア副隊長に杖を向けた。
電撃のように予感が走る。
「くそっ!」
避けて、なんて言えなかった。
それよりもガルシア副隊長とおじいさんの間に飛び込むように割って入った方がはるかに早かった。
結果として、おじいさんのドルマの闇は私を穿つ。身体を内部から焼かれる感覚に、顔が歪む。
痛みこそある、が――。
「アタマを叩けば手っ取り早いと思ったが…いやはや、中々ホネのあるのがいるようじゃ」
生まれつきの体質で、私は攻撃呪文全般にかなり強い。
当然痛みまで消えるわけではないが、味方を戦闘不能にするよりはマシだ。
そして目論見どおり私はほとんど無傷だった。
ガルシア副隊長はぽかんとしていたがすぐ我に返る。
短くすまんと言われた。仮にも私は罪人だというのに律儀なことだ。
「お褒めに預かり光栄です、おじいさん」
「おじいさんなどと他人行儀な呼び方はやめておくれ別嬪さん。ロウでよい」
「ベッピンだなんて、ロウさんお上手!」
おもむろに振った剣をロウと名乗ったおじいさんはやすやすとその杖で受けた。
恰幅の良い体格をしているとは思ったが、腕力の方も想像以上のものがある。
「して、お主の名前も聞いてよろしいか?」
攻め手だったはずの私の剣はあっさりと弾かれてしまう。
そこからはロウさんのターン。次々と振りまわされる杖を剣で受け、時には躱しながら後退する。
予想すらしていなかった猛攻に半ばパニックになる。
「わっ…ちょ」
名乗るどころではない。
やがて、背中に何かが当たる。岩盤。
後退はこれ以上できない。
「ワシの見立てじゃとお前さんにラリホーは効かん。悪いが少し痛い思いをしてもらうぞ」
ロウさんが杖を振り上げる。
この瞬間しかなかった。
悲鳴をあげるようにメラを唱える。
威力こそ低いが虚はつかれたのだろう。直撃したロウさんが僅かに怯んだ。
その隙に、転がるように彼の間合いから逃げる。
「…呪文耐性に高速詠唱か。中々おもしろい才能に恵まれておるようじゃの」
私の方に向き直りながら、ロウさんはそんなことを言う。
「ロウさん分析はやーい。大抵こっちから説明しなきゃだめなんだけど」
本音だった。私は生まれつき魔力量だけは相当多い。
といってもほとんど自発的には生かせないのだけど。
ロウさんが指摘した能力は、そのいずれもそれに追随するおまけのようなものである。
さらに言えば彼の言う通りあまり一般的ではない特性だ。
「年寄りをナメるでない。…しかしここでその才能を摘んでしまうことが残念じゃ」
ロウさんが穏やかに笑い、そして構える。
当初こそ魔法使いか賢者の物腰だったが、今はどちらかというと武闘家の雰囲気を纏っていた。
杖も多少短いだけの棍のように見える。
ただ者ではないことはやはり明確。
まあ、勇者さまたちと一緒にいるくらいだしなと思いつつ私も剣を構える。
「…名乗り遅れました。私、デルカダールのエルザ。しがない傭兵やってます!」
「お主ほどの魔法戦士が、そんなわけなかろ!」
剣と杖がぶつかる。痺れる衝撃。
さっきは高齢だからとなめていたのもあって遅れをとったが、同じ轍は踏まない。
しかし、近接職の人間が近接職用の武器を使って先手を打ってまで、
杖一本で迎撃する老人相手に互角までにしか持ち込めない。
なんとも情けない話だった、しかしやり直しはできない。
ていうかなんで誰も助けてくれないんだと思ったが、
よく考えたらデルカダール兵も含め誰も私を助ける義理なんてなかった。
四面楚歌というやつか。ははは笑えない。