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「じゃ、リベンジでも挑もうかな。サシで」
そして私はひとり前に出た。
この提案には誰もが驚いたはずだが、それでもカンダタほどではなかっただろう。
「あ?エルザ…テメー正気か?」
「正気でーす」
この先はカンダタだけに聞こえるように声をひそめる。
「悪魔からの信用落ちてるのよ。わかるでしょ?」
「お、おう…俺様より余裕でやばいだろあの姉ちゃん」
「だから人質戦法なんかやめとけって言ったのに」
先ほどの壮絶な光景を思い出したのか、カンタダは胸を悪くしたような顔をする。
マルティナさんは決して悪ではない。『オシオキ』ですら悪気はおそらくほとんどない。
ただ彼女は性格がちょっと悪魔じみているだけなのだ。あとめっちゃサディスト。
10数年流狼の旅に生きてきたから仕方ないという前提はあるにせよ、
友だちは私たち以外にいるのか激しく疑問である。
「アラヤダ、エルザちゃんったら誘拐犯ちゃんとわかりあっちゃってるの?
アタシちょっぴり寂しいわぁ」
カンダタと内緒話をしていると、
シルビアさんが背後から優雅に両肩に手を置いてそんなことを言ってきた。
「うわテメーの彼氏また個性が渋滞起こしてんな!」
「カンダタちゃんには言われたくないわん」
さり気なく、カンダタと距離を取らされる。
改めて人質にされても面倒だし、当然の処置といえばそのとおりだ。
「それに、アタシはエルザちゃんのカレシじゃなくてカノジョよ!」
「おいエルザこいつ思ったより面倒くせえぞ」
「放っておいてあげて」
何の目的もなくシルビアさんが口を挟むとは思えない。
大方、カンダタとサシでやると言い出した私を止めに来たのだろう。
たしかに、正面からまともにぶつかっていたのでは勝算は低い。
この海賊と実力差があることなんて、私が一番わかっていた。
しかしいくらシルビアさんでもこの物言いはちょっと無粋というものだろう。
彼が何か言い出す前に剣を抜く。
「やるしかねえってか…気は進まんが」
カンダタが斧を構える。悪人たる彼とて完全に人非人ではないのだろう。
私に多少の情が芽生えているらしい。
「さっきも言ったけど、尻叩かれてるからね。
…カンダタさんが勝ったら子分さんたち共々逃がすことを勇者様たちに提案してもいいよ」
「おいエルザ」
勝手な発言に対しグレイグさまがさすがに抗議の声をあげる。当たり前だ。
せっかく助けに来てくれてせっかく悪党を捕えたというのに、
それを勝手な判断で無下にしようと言うのだから失礼な話だ。
「ごめんなさい、グレイグさま。…みなさん」
勇者様たちに短く謝罪をする。
「やっぱり悔しいから」
そして剣を構える。
「…良いんじゃない?勝算はあるみたいだし」
人間体に戻っていたマルティナさんがいたずらっぽく笑う。
いやこうなったの大体あんたのせいだよ。
「そうか。なら…、遠慮はいらねぇなあ!!」
不意打ちだった。
その図体からは想像もつかない速さでカンダタは迫り来る。
しかし、だ。
驚くほどのことでもない。
だって私は、こいつがこういうことをする男だと知っている。
「まあ聞いてよカンダタさん」
斧を受けようと思えば受けられる疾さだったが、下手にそんなことをすれば腕が駄目になる。
だからそういう風に声をかけた。
現状彼は割と私に同情的である。
そして気が進まないというのは、少なくとも本音なのだろう。
斧は私の目の前でぴたりと止まる。
内心叫び出したいほど怖いのを無理矢理抑えてでも、笑みを見せる。
動物が吠えるのと同じだ。少しでも自分を強く底しれぬように、演じる。
「ここにいる誰もが、もちろん私も含めて。わかってはいるのよ。私よりカンダタさんの方が強いって。
…でも私は今あえてあなたに挑んでいる。なんでかわかる?」
「まさか俺様に気があって逃がすために」
「必勝の!自信が!あるからです!!」
彼自身冗談で言ったのだろうが、イラッとして、つい大きな声が出た。
そのついでにこれ肯定したらどうするんだろという若干の好奇心がわいたが、
それ以上に答えがどうでも良かった。
「…こんなところで披露するのもシャクなんだけど」
まあいいか。悪魔ウケはしそうだ、なんて一番の敵を想う。
正直もうマルティナさんは天敵認定していた。
やり返しても怒らないし、素敵な人というセーニャさんの弁も肯定はできるけれど。
結局なんだ、喧嘩友達みたいな。
そんなことより。
雑念を押し流し、魔力を練り上げる。
ふっと息を吹き込むと、それは大いに膨らむ。
カンダタが怪訝にする頃には、もう遅い。
「とにかく、カンダタさん」
「あ?」
「確かに、あなたは肉弾戦では私よりずっと強いです。
あの時全然太刀打ちできなかったしそれは認めます。でもね」
カンダタさんの後ろを指し示す。
それを見てなんだあれと最初に声をあげたのはカミュくんだったけれど。
「私の本領って魔法なんだよね」
魔法というのもおこがましい何かが、空にもんまりと漂う。
その巨大な長球からは、四つの円柱が手足のように突き出している。
それが生物であると認めることができたのは、
その身体のおよそ3分の2ほどをあまりにも巨大な口が占めていたからだ。
ビジュアルは不細工かつ不気味。
生物は生物でも、間違いなく化け物の類である。
「エルザ、て、てめー!なんだありゃあ?!一体何をしやがった!?」
経験豊富な勇者様たちですら戸惑っている。
カンダタに至ってはパニックに陥るのも致し方ないだろう。
優越感すら覚えながら、悠々と答えた。
「作ったの。私のペット。名前はビットくん」
『魔法生物【ビットくん】召喚』
こんな不気味な容姿になってしまったのは、一重に私に美的センスがないからで。
それでも、この場にいる私以外の全員がたじろぐのであれば、むしろ成功と見做していい。
これはそういう【魔法】だ。
酷薄な笑みを貼り付けて、新世紀の化け物について紹介を続ける。
「性格は従順、特技は丸呑み」
「なあ、おい、ウソだろ…?」
がくがくと震えだすカンダタをよそに、私は命を下す。
「召し上がれ」
手を振り下ろすやいなや、ビットくんはカンダタの巨体を頭から呑む。
いくら彼が人間離れした体格をしているからとはいえ、ビットくんは更に巨大だ。
難なく、ぞろりとやはり巨大な臼歯が揃った巨大な口に納める。
凄惨な光景に、みな黙り込む。
その一方で私は剣を持ち、直前までカンダタがいた所へ、歩み寄る。
ビットくんの方に向かい、かまえる。
「エルザ?」
その様子に疑問を抱いたのはマルティナさんだった。
カンダタは倒したはずなのにどうして、と言いたげだ。
彼女には魔法の素養はないおかげで、見事にひっかかってくれたらしい。
「…これ、要はただの手品みたいなものでさ」
ビットくんの魔力でできた巨大な身体が突如破裂する。
破裂、といっても周囲にはなんの被害もない見せかけのものだ。
魔力が霧散し、きらきらと消えてなくなる。
その中心にいたのは、まるで無傷のカンダタ。
ただし自分の身に何が起きたかわかっていないらしく、目を丸く呆然としていた。
そんな彼の喉元に、自分の剣を突きつける。
「魔力を練って作ったって言っても、風船みたいなもの。
危険どころか、何の殺傷能力もないの。
つまり、ただの一発芸。
カンダタさんは私の『やばい切り札を持ってる』ってハッタリに乗せられたってわけ」
「あたしは途中で気づいたわ。エルザもやるじゃない」
と、ドヤ顔のベロニカちゃん。
確かに子供騙しにもならない小技だが、まさか本当に騙せなかったんだと思うと、
褒め言葉も素直に受け入れられない。
でも、まあ、騙したい相手を騙せたのだからそれで良いのだろう。
「く、そ…」
「ごめんねカンダタさん。私を止めたかったらマホトーンくらいは使うべきだったんだ」
「ちくしょう」
一度は勝利した、それも格下であるはずの相手に負けた大海賊は力なく呻く。
そしてそんな彼の生殺与奪を握った私の思惑は、すでに決まっていた。
そして私はひとり前に出た。
この提案には誰もが驚いたはずだが、それでもカンダタほどではなかっただろう。
「あ?エルザ…テメー正気か?」
「正気でーす」
この先はカンダタだけに聞こえるように声をひそめる。
「悪魔からの信用落ちてるのよ。わかるでしょ?」
「お、おう…俺様より余裕でやばいだろあの姉ちゃん」
「だから人質戦法なんかやめとけって言ったのに」
先ほどの壮絶な光景を思い出したのか、カンタダは胸を悪くしたような顔をする。
マルティナさんは決して悪ではない。『オシオキ』ですら悪気はおそらくほとんどない。
ただ彼女は性格がちょっと悪魔じみているだけなのだ。あとめっちゃサディスト。
10数年流狼の旅に生きてきたから仕方ないという前提はあるにせよ、
友だちは私たち以外にいるのか激しく疑問である。
「アラヤダ、エルザちゃんったら誘拐犯ちゃんとわかりあっちゃってるの?
アタシちょっぴり寂しいわぁ」
カンダタと内緒話をしていると、
シルビアさんが背後から優雅に両肩に手を置いてそんなことを言ってきた。
「うわテメーの彼氏また個性が渋滞起こしてんな!」
「カンダタちゃんには言われたくないわん」
さり気なく、カンダタと距離を取らされる。
改めて人質にされても面倒だし、当然の処置といえばそのとおりだ。
「それに、アタシはエルザちゃんのカレシじゃなくてカノジョよ!」
「おいエルザこいつ思ったより面倒くせえぞ」
「放っておいてあげて」
何の目的もなくシルビアさんが口を挟むとは思えない。
大方、カンダタとサシでやると言い出した私を止めに来たのだろう。
たしかに、正面からまともにぶつかっていたのでは勝算は低い。
この海賊と実力差があることなんて、私が一番わかっていた。
しかしいくらシルビアさんでもこの物言いはちょっと無粋というものだろう。
彼が何か言い出す前に剣を抜く。
「やるしかねえってか…気は進まんが」
カンダタが斧を構える。悪人たる彼とて完全に人非人ではないのだろう。
私に多少の情が芽生えているらしい。
「さっきも言ったけど、尻叩かれてるからね。
…カンダタさんが勝ったら子分さんたち共々逃がすことを勇者様たちに提案してもいいよ」
「おいエルザ」
勝手な発言に対しグレイグさまがさすがに抗議の声をあげる。当たり前だ。
せっかく助けに来てくれてせっかく悪党を捕えたというのに、
それを勝手な判断で無下にしようと言うのだから失礼な話だ。
「ごめんなさい、グレイグさま。…みなさん」
勇者様たちに短く謝罪をする。
「やっぱり悔しいから」
そして剣を構える。
「…良いんじゃない?勝算はあるみたいだし」
人間体に戻っていたマルティナさんがいたずらっぽく笑う。
いやこうなったの大体あんたのせいだよ。
「そうか。なら…、遠慮はいらねぇなあ!!」
不意打ちだった。
その図体からは想像もつかない速さでカンダタは迫り来る。
しかし、だ。
驚くほどのことでもない。
だって私は、こいつがこういうことをする男だと知っている。
「まあ聞いてよカンダタさん」
斧を受けようと思えば受けられる疾さだったが、下手にそんなことをすれば腕が駄目になる。
だからそういう風に声をかけた。
現状彼は割と私に同情的である。
そして気が進まないというのは、少なくとも本音なのだろう。
斧は私の目の前でぴたりと止まる。
内心叫び出したいほど怖いのを無理矢理抑えてでも、笑みを見せる。
動物が吠えるのと同じだ。少しでも自分を強く底しれぬように、演じる。
「ここにいる誰もが、もちろん私も含めて。わかってはいるのよ。私よりカンダタさんの方が強いって。
…でも私は今あえてあなたに挑んでいる。なんでかわかる?」
「まさか俺様に気があって逃がすために」
「必勝の!自信が!あるからです!!」
彼自身冗談で言ったのだろうが、イラッとして、つい大きな声が出た。
そのついでにこれ肯定したらどうするんだろという若干の好奇心がわいたが、
それ以上に答えがどうでも良かった。
「…こんなところで披露するのもシャクなんだけど」
まあいいか。悪魔ウケはしそうだ、なんて一番の敵を想う。
正直もうマルティナさんは天敵認定していた。
やり返しても怒らないし、素敵な人というセーニャさんの弁も肯定はできるけれど。
結局なんだ、喧嘩友達みたいな。
そんなことより。
雑念を押し流し、魔力を練り上げる。
ふっと息を吹き込むと、それは大いに膨らむ。
カンダタが怪訝にする頃には、もう遅い。
「とにかく、カンダタさん」
「あ?」
「確かに、あなたは肉弾戦では私よりずっと強いです。
あの時全然太刀打ちできなかったしそれは認めます。でもね」
カンダタさんの後ろを指し示す。
それを見てなんだあれと最初に声をあげたのはカミュくんだったけれど。
「私の本領って魔法なんだよね」
魔法というのもおこがましい何かが、空にもんまりと漂う。
その巨大な長球からは、四つの円柱が手足のように突き出している。
それが生物であると認めることができたのは、
その身体のおよそ3分の2ほどをあまりにも巨大な口が占めていたからだ。
ビジュアルは不細工かつ不気味。
生物は生物でも、間違いなく化け物の類である。
「エルザ、て、てめー!なんだありゃあ?!一体何をしやがった!?」
経験豊富な勇者様たちですら戸惑っている。
カンダタに至ってはパニックに陥るのも致し方ないだろう。
優越感すら覚えながら、悠々と答えた。
「作ったの。私のペット。名前はビットくん」
『魔法生物【ビットくん】召喚』
こんな不気味な容姿になってしまったのは、一重に私に美的センスがないからで。
それでも、この場にいる私以外の全員がたじろぐのであれば、むしろ成功と見做していい。
これはそういう【魔法】だ。
酷薄な笑みを貼り付けて、新世紀の化け物について紹介を続ける。
「性格は従順、特技は丸呑み」
「なあ、おい、ウソだろ…?」
がくがくと震えだすカンダタをよそに、私は命を下す。
「召し上がれ」
手を振り下ろすやいなや、ビットくんはカンダタの巨体を頭から呑む。
いくら彼が人間離れした体格をしているからとはいえ、ビットくんは更に巨大だ。
難なく、ぞろりとやはり巨大な臼歯が揃った巨大な口に納める。
凄惨な光景に、みな黙り込む。
その一方で私は剣を持ち、直前までカンダタがいた所へ、歩み寄る。
ビットくんの方に向かい、かまえる。
「エルザ?」
その様子に疑問を抱いたのはマルティナさんだった。
カンダタは倒したはずなのにどうして、と言いたげだ。
彼女には魔法の素養はないおかげで、見事にひっかかってくれたらしい。
「…これ、要はただの手品みたいなものでさ」
ビットくんの魔力でできた巨大な身体が突如破裂する。
破裂、といっても周囲にはなんの被害もない見せかけのものだ。
魔力が霧散し、きらきらと消えてなくなる。
その中心にいたのは、まるで無傷のカンダタ。
ただし自分の身に何が起きたかわかっていないらしく、目を丸く呆然としていた。
そんな彼の喉元に、自分の剣を突きつける。
「魔力を練って作ったって言っても、風船みたいなもの。
危険どころか、何の殺傷能力もないの。
つまり、ただの一発芸。
カンダタさんは私の『やばい切り札を持ってる』ってハッタリに乗せられたってわけ」
「あたしは途中で気づいたわ。エルザもやるじゃない」
と、ドヤ顔のベロニカちゃん。
確かに子供騙しにもならない小技だが、まさか本当に騙せなかったんだと思うと、
褒め言葉も素直に受け入れられない。
でも、まあ、騙したい相手を騙せたのだからそれで良いのだろう。
「く、そ…」
「ごめんねカンダタさん。私を止めたかったらマホトーンくらいは使うべきだったんだ」
「ちくしょう」
一度は勝利した、それも格下であるはずの相手に負けた大海賊は力なく呻く。
そしてそんな彼の生殺与奪を握った私の思惑は、すでに決まっていた。