君はオルタナティブ
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「そっか!攻撃魔法か!」
頭を捻りひねった結果、弾き出した攻略法はごく単純なもの。
『そうだ、それしかない。出来のよろしいエルザ殿でも、メラゾーマくらいはできるだろう?』
そしてホメロスさまはたっぷりの皮肉のスパイスをまぶして私を賞賛してきた。
ぱちんぱちんと嫌味ったらしい拍手を交えながら。
「メラゾーマ?できないよ」
ホメロスさまの手が止まった。
『マヒャド』
「無理」
『ドルモーアは』
「それって基本的に賢者しかできないんじゃないの?使おうと思ったこともない」
『上司に似てポンコツか。よくそれで魔法戦士が名乗れたものだな…』
嫌味でも罵倒でもなく、ホメロスさまは愕然としたようだった。正直一番刺さった。
補助専門のイマドキ魔法戦士だからなんて言い訳じみた反論すらできなかった。
『まあいい、最悪のパターンだ。せいぜい後悔しろ。こうなっては、やむを得ん』
幽霊のくせにホメロスさまはめまいを感じるらしい。
目頭を押さえて2秒、その次には剣を持った私の手が、ブラックドラゴンを真っ直ぐ指した。
『ここで何の攻撃呪文も出ぬと言うのであれば、今すぐ魔法戦士の名を返上したまえ』
私と同じポーズをとるホメロスさま。…いや逆だ。彼に身体を操られているのだと自覚する。
ダーハルーネで逮捕され尋問された時のような、冷たく恐ろしいホメロスさまの声。
気圧されながら、答える。
「メラミなら…」
『唱えろ』
掘り返されるトラウマに逆らえなかった。高速詠唱。
プラチナソードの切っ先から飛び出た炎の弾丸、鋭く、素早く――……見たこともないほどの巨大。
あるいはベロニカちゃんのそれより強力かも知れないと思ってしまうほどのおよそメラミとは違う何かが、ブラックドラゴンの翼の皮膜をふっ飛ばした。
ぎゃお、と敵は絶叫する。
『ふん。高速詠唱といい、持っている魔力にだけは恵まれているようだな』
ホメロスさまは不機嫌に鼻を鳴らす。
その瞬間に身体の束縛が解けた。
途端、先までとは違う意味の疲労感に突然、しかも一気に襲われ、膝から崩れ落ちる。
「ホメロスさま…これは…」
『お前の身体を乗っ取り、脳の機能の一部を強制的に解放した。
火事場の馬鹿力を無理矢理発揮させたようなものだと思えば良い。
オレが精神体であり、そして気に食わんがお前とはよく波長が合うからできることだ。…ただし』
彼の言葉が耳に入らない。聞こえてはいるのに。
デルカダール軍に入ってからグレイグさまに幾度となく鍛えられたが、あの時の疲労とですら比べ物にならない。
…倒れて、いますぐ寝たくなる。
『身体にとってあらゆる無理をして能力を行使するがゆえに、たった一度でこのように衰弱するのも致し方ないことだが…。
戦闘は終わっていない。まだ眠ってくれるなよ』
すでに意識が朦朧とする私に再び嗜虐的な笑みを浮かべたホメロスさまが憑依する。
無理矢理立たされ、先ほどと同じポーズ……攻撃呪文の詠唱準備をさせられた。
『さあ、エルザ殿。もう一度やってみようか』
どこか慈愛すら感じる指示。
「む……り……」
『そう言うな。やらねば死ぬぞ?もっとも、やっても死ぬかも知れんがな』
そう言われるのもやはり正論で、ゆえに私は必死の思いでメラミを唱える。
先ほどと負担も威力も寸分違わぬメラミの弾丸が、今度は火吹き龍の顔を焦がした。
悲鳴。
『次だ』
メラミ。ブラックドラゴンの右手が飛ぶが、即座に傷口が焼けたせいで出血はほとんどないらしい。
『次』
メラミ。今度は左手が飛ぶ。
『まだいけるな?』
メラミ。その詠唱スペル以外の言葉はすべて忘れた気持ちになっている。
目の前の黒いやつの白い腹が赤黒く焦げる。
今私ががくがくと震えている二本の足で立てている理由がわからない。
これだけ、恐ろしく疲れているのに。
もういい、眠らせてくれ。
『くそ、まだか』
冷たい氷のような。声。
「ちょっと、エルザちゃん!?一体何が…」
反して、焦ってはいるが暖かい声が押し流す。私はこの声がとても好きだった気がする。
「ああもうとにかく!こいつを何とかするのが先ね!!」
頭を捻りひねった結果、弾き出した攻略法はごく単純なもの。
『そうだ、それしかない。出来のよろしいエルザ殿でも、メラゾーマくらいはできるだろう?』
そしてホメロスさまはたっぷりの皮肉のスパイスをまぶして私を賞賛してきた。
ぱちんぱちんと嫌味ったらしい拍手を交えながら。
「メラゾーマ?できないよ」
ホメロスさまの手が止まった。
『マヒャド』
「無理」
『ドルモーアは』
「それって基本的に賢者しかできないんじゃないの?使おうと思ったこともない」
『上司に似てポンコツか。よくそれで魔法戦士が名乗れたものだな…』
嫌味でも罵倒でもなく、ホメロスさまは愕然としたようだった。正直一番刺さった。
補助専門のイマドキ魔法戦士だからなんて言い訳じみた反論すらできなかった。
『まあいい、最悪のパターンだ。せいぜい後悔しろ。こうなっては、やむを得ん』
幽霊のくせにホメロスさまはめまいを感じるらしい。
目頭を押さえて2秒、その次には剣を持った私の手が、ブラックドラゴンを真っ直ぐ指した。
『ここで何の攻撃呪文も出ぬと言うのであれば、今すぐ魔法戦士の名を返上したまえ』
私と同じポーズをとるホメロスさま。…いや逆だ。彼に身体を操られているのだと自覚する。
ダーハルーネで逮捕され尋問された時のような、冷たく恐ろしいホメロスさまの声。
気圧されながら、答える。
「メラミなら…」
『唱えろ』
掘り返されるトラウマに逆らえなかった。高速詠唱。
プラチナソードの切っ先から飛び出た炎の弾丸、鋭く、素早く――……見たこともないほどの巨大。
あるいはベロニカちゃんのそれより強力かも知れないと思ってしまうほどのおよそメラミとは違う何かが、ブラックドラゴンの翼の皮膜をふっ飛ばした。
ぎゃお、と敵は絶叫する。
『ふん。高速詠唱といい、持っている魔力にだけは恵まれているようだな』
ホメロスさまは不機嫌に鼻を鳴らす。
その瞬間に身体の束縛が解けた。
途端、先までとは違う意味の疲労感に突然、しかも一気に襲われ、膝から崩れ落ちる。
「ホメロスさま…これは…」
『お前の身体を乗っ取り、脳の機能の一部を強制的に解放した。
火事場の馬鹿力を無理矢理発揮させたようなものだと思えば良い。
オレが精神体であり、そして気に食わんがお前とはよく波長が合うからできることだ。…ただし』
彼の言葉が耳に入らない。聞こえてはいるのに。
デルカダール軍に入ってからグレイグさまに幾度となく鍛えられたが、あの時の疲労とですら比べ物にならない。
…倒れて、いますぐ寝たくなる。
『身体にとってあらゆる無理をして能力を行使するがゆえに、たった一度でこのように衰弱するのも致し方ないことだが…。
戦闘は終わっていない。まだ眠ってくれるなよ』
すでに意識が朦朧とする私に再び嗜虐的な笑みを浮かべたホメロスさまが憑依する。
無理矢理立たされ、先ほどと同じポーズ……攻撃呪文の詠唱準備をさせられた。
『さあ、エルザ殿。もう一度やってみようか』
どこか慈愛すら感じる指示。
「む……り……」
『そう言うな。やらねば死ぬぞ?もっとも、やっても死ぬかも知れんがな』
そう言われるのもやはり正論で、ゆえに私は必死の思いでメラミを唱える。
先ほどと負担も威力も寸分違わぬメラミの弾丸が、今度は火吹き龍の顔を焦がした。
悲鳴。
『次だ』
メラミ。ブラックドラゴンの右手が飛ぶが、即座に傷口が焼けたせいで出血はほとんどないらしい。
『次』
メラミ。今度は左手が飛ぶ。
『まだいけるな?』
メラミ。その詠唱スペル以外の言葉はすべて忘れた気持ちになっている。
目の前の黒いやつの白い腹が赤黒く焦げる。
今私ががくがくと震えている二本の足で立てている理由がわからない。
これだけ、恐ろしく疲れているのに。
もういい、眠らせてくれ。
『くそ、まだか』
冷たい氷のような。声。
「ちょっと、エルザちゃん!?一体何が…」
反して、焦ってはいるが暖かい声が押し流す。私はこの声がとても好きだった気がする。
「ああもうとにかく!こいつを何とかするのが先ね!!」