デルカダールのはずれの墓地に、最近幽霊が出るという話は聞いていたが、まさか調査を依頼されるとは思わなかった。
今日の依頼主は城下町の子どもたち。
みんなで少ないお小遣いを出し合ったと聞けばちょっといやかなり断り辛い。
そんなわけで今晩の私の値段は1180ゴールド。
噂の共同墓地で最近気に入りの人気店で買ったパンを囓りながら幽霊を待つことにした。
おそらく、というかせいぜいさまようよろいとか腐った死体みたいなアンデッドモンスターが住み着いてしまっていたというところだろう。
…もっともそれはそれで問題なので、ついでに退治しておくべきである。

とは言うものの。

「出ないな」

暇を持て余すことしばし。
大量に買ったパンも底をつきかけ。
しかし何も変化はない。

「やっぱり、断るべきたったかなー」

なんて真剣に考える。
こう夜闇が深いと本も読めずにまず暇で、そして何よりここは墓地でありたとえ魔物がいなくても雰囲気は満点、不気味の一言。
そもそも『出る』とのいわく付き。
…仕事じゃなければ長時間いたい場所ではない。
しょせんオカルト、そこまで幽霊が怖いとは思わないが、かといって大好きなわけでもないのでまあなんか、ほんと。

「帰りたい」

散々躊躇ってきたが、ここでようやく腰をおろす。

「ハズレ引いちゃったなぁ」

とか愚痴りつつも、時間が経過するのをひたすら待つことにした。
いやほんと帰りたい。