「エルザ、ちょっといいか」

私もあとに続こうとした時、不意にハンフリーに呼び止められる。

「…どうしたんですか」

「あ、いや。水を差して悪いんだが、一つあんたに頼んでおきたいことがある」

ハンフリーはそれで一度大げさにつばを飲みこんだ。
先ほどまでの堂々とした振る舞いとは真逆の態度だったと思う。

「ベロリンマンという闘士を知っているか。
あいつはよくうちの子たちと遊んでくれているんだが、近頃めっきり見かけなくてな」

「心配ってことですか」

「ああ。ついででいい、もし会うことがあればそう伝えておいてくれ」

わかりました、と素直に返事する。
その割に彼は微妙な顔をしている。

それは少なくとも、ただ友の安否を憂えているだけという風には、私にはとても見えなかった。