Hevenly sun
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マスク・ザ・ハンサムや女の子たちとファーリスには孤児院に留守番してもらうことにした。
これから会いに行く相手の危険性を思えば、刺激になるためあまりぞろぞろと人数は連れていけない。
また、控え目に言ってかなりの悪党であることは間違いないので、王族とも下手に接触させない方がいい。
そんなわけでカジノへ向かうのはその人物を知る私と、ハンフリーのみとなった。
これから交渉ごとをするならば手堅い人選と言えるだろう。
「すみません、ハンフリーさん。わざわざ付き合ってもらって」
「いいんだ、町を離れられないオレにできることは何もないと思っていた。
それがあんたの役に立てるというのだから、光栄というものさ」
人好きのする笑顔のハンフリーだが、私の意図には気づいているようだ。
私はこの人の知名度を利用しようとしている。
相手は海賊という職業柄、情報通としての一面も持っている。
情報というものは時として何よりも大きな武器になるのだ。
それに私にも経験があるが、無法者である彼らには常に逮捕という危険が付きまとう。
故に情報収集は怠らないし、だからこそハンフリーとは仲良くなっておきたいはずだ。
所詮町内チャンピオンと言えばそれまでだが、それでもグロッタではかなりの信頼を得ている。
逃走に加担はしなくとも、かなり信頼度の高い情報が彼には期待できるだろう。
…ゆえに交渉材料になり得ると踏んだ。
「ありがとうございます、チャンピオン」
私は謝罪の意味も同時に込めて礼を言い、頭を下げる。
「それでエルザ。あんたの言う心当たりっていうのは一体――?」
「あの人です」
指差す。ハンフリーはその人物の予想外の出で立ちに呆気に取られた。
カジノの酒場なんていうものはそもそも無法者だらけだし、シルビアさんに奇抜さという一点のみにおいては、
負けず劣らずの格好をしているものも少なくない。
しかし彼はその中でも一際目立っていた。何せ上半身は裸、パンツ一丁のブッ飛んだ出で立ち。
それだけでもインパクト抜群なのに、袋みたいな覆面まで被っているのだ。
筋肉ダルマの名をほしいままにしてそうな彼――カンダタは椅子にもたれかかり、
酒を片手に子分たちやその他知り合いと下卑た声で談笑している。
「な、なんだあいつらは?…おい!?」
品行方正なチャンピオンとはまるで住む世界が違う、ある種の魔物。
といっても、私自身どちらかというとそちら側だが。
ハンフリーが制止するのも聞かず、つかつかとそのテーブルに歩み寄る。
ずしっとしたゴールド(自腹)が入った袋を、おもむろにそこに叩きつけた。
どよめき、困惑、怒声。そういったものがあふれる中、さすがカンダタはカシラなだけあり冷静なものだ。
「なんだ…?テメー?」
「海賊カンダタ。お噂はかねがね聞いています。あなたの力を貸してほしい」
カンダタは無言で私を睨めつける。気にいらないようにも、品定めしているようにも見える。
負けずに私も睨み返した。こういうのは先に引いた方が負けなのだとどこかの宿屋の本で読んだことがある。
本当はさすが海賊団のリーダーだけあって迫力満点で怖かったけれども。
「…まるでダメだ、話にならねえ」
この睨み合いをあえて勝ち負けという概念に照らし合わせれば私が勝利したのだと一応言えるだろう。
しかし、そもそも勝敗という型に嵌めるものではなかった。何せカンダタは私を観察していただけなのだ。
しかも話にならんとの結論まで早速いただいてしまった。
「理由を聞いても?」
「てめーの胸にでも聞いた方が早えだろうよ、嬢ちゃん。
それっぽっちのはした金でよくこの俺様が動くと思ったな、ええ?オイ。…それより」
がたんと大きな音を立てつつ立ち上がり、ぬっと巨体で迫ってくる。
ソルティコ近海を主な根城とする海賊カンダタの悪名は、幼少期をスラムで過ごしたデルカダールでも
時折耳にした。
それほどの人物が醸し出す迫力というものは、尋常ではない。
恐怖に任せて後ずさりでもしたかったが、これ以上彼の失望を買うわけにはいかなくて、
なんとか踏みとどまる。
「テメーのせいでうまい酒が台無しだ。どう責任とってくれるか、聞かせてもらおうか」
唾を飲み込む音すら立てるのを躊躇した。
それくらい、カンダタという人物は恐ろしかった。
金品の強奪はもちろん人さらいまで躊躇なく行う悪人集団。
やはり彼らに助けを乞うのは無理が――。
「そのあたりにしてもらえないか?」
そこに口を挟んだのはハンフリーだ。
見るにみかねたらしい彼を見て、カンダタは覆面の下で僅かに笑ったようだった。
「これはこれは、仮面武闘会のチャンピオン様のお出ましか。
てめえの正義感を振りかざしたようだが、ここじゃ俺様がルールだ。
この女は俺様の『領海』を侵した。引っ込んでな」
「…悪いがそうもいかないんだ。彼女はオレの連れでね」
さすが闘士たちのリーダーだけあり、ならず者の相手も慣れたものなのだろう。
殺気を隠しもしない海賊相手にハンフリーは一歩も引かなかった。
それどころか、肩を竦めて笑ってみせる余裕すら見せる。
「なるほど、テメーらグルってことか」
「私たちは同じ目的で手を組んでる。私はともかく、ハンフリーと仲良くしておいて損はないと思うけど?」
「それが真の報酬ってことかい」
カンダタは鼻を鳴らし、どかりと再び椅子に腰掛ける。
喧騒の中ではいくらハンフリー付きだろうが普通に話しかけても相手にしてもらえる可能性は低かっただろう。
だからあえて喧嘩腰に声をかけたのだが、うまくいったらしい。
めっちゃ怖かったけど。めっちゃ怖かったけど。
間もなく、話を受け入れる体制がカンダタ側でも整ったようだ。
「つきな。俺様はこれでも心が広え。話だけでも聞いてやろうじゃあねえか」
それは実質命令とも言えた。ハンフリーと私、二人の招かれざる客の近くに座っていた子分が席を譲ってくる。
ちゃっかりお言葉に甘えると、ふんぞり返ったカンダタが問うてきた。
これから会いに行く相手の危険性を思えば、刺激になるためあまりぞろぞろと人数は連れていけない。
また、控え目に言ってかなりの悪党であることは間違いないので、王族とも下手に接触させない方がいい。
そんなわけでカジノへ向かうのはその人物を知る私と、ハンフリーのみとなった。
これから交渉ごとをするならば手堅い人選と言えるだろう。
「すみません、ハンフリーさん。わざわざ付き合ってもらって」
「いいんだ、町を離れられないオレにできることは何もないと思っていた。
それがあんたの役に立てるというのだから、光栄というものさ」
人好きのする笑顔のハンフリーだが、私の意図には気づいているようだ。
私はこの人の知名度を利用しようとしている。
相手は海賊という職業柄、情報通としての一面も持っている。
情報というものは時として何よりも大きな武器になるのだ。
それに私にも経験があるが、無法者である彼らには常に逮捕という危険が付きまとう。
故に情報収集は怠らないし、だからこそハンフリーとは仲良くなっておきたいはずだ。
所詮町内チャンピオンと言えばそれまでだが、それでもグロッタではかなりの信頼を得ている。
逃走に加担はしなくとも、かなり信頼度の高い情報が彼には期待できるだろう。
…ゆえに交渉材料になり得ると踏んだ。
「ありがとうございます、チャンピオン」
私は謝罪の意味も同時に込めて礼を言い、頭を下げる。
「それでエルザ。あんたの言う心当たりっていうのは一体――?」
「あの人です」
指差す。ハンフリーはその人物の予想外の出で立ちに呆気に取られた。
カジノの酒場なんていうものはそもそも無法者だらけだし、シルビアさんに奇抜さという一点のみにおいては、
負けず劣らずの格好をしているものも少なくない。
しかし彼はその中でも一際目立っていた。何せ上半身は裸、パンツ一丁のブッ飛んだ出で立ち。
それだけでもインパクト抜群なのに、袋みたいな覆面まで被っているのだ。
筋肉ダルマの名をほしいままにしてそうな彼――カンダタは椅子にもたれかかり、
酒を片手に子分たちやその他知り合いと下卑た声で談笑している。
「な、なんだあいつらは?…おい!?」
品行方正なチャンピオンとはまるで住む世界が違う、ある種の魔物。
といっても、私自身どちらかというとそちら側だが。
ハンフリーが制止するのも聞かず、つかつかとそのテーブルに歩み寄る。
ずしっとしたゴールド(自腹)が入った袋を、おもむろにそこに叩きつけた。
どよめき、困惑、怒声。そういったものがあふれる中、さすがカンダタはカシラなだけあり冷静なものだ。
「なんだ…?テメー?」
「海賊カンダタ。お噂はかねがね聞いています。あなたの力を貸してほしい」
カンダタは無言で私を睨めつける。気にいらないようにも、品定めしているようにも見える。
負けずに私も睨み返した。こういうのは先に引いた方が負けなのだとどこかの宿屋の本で読んだことがある。
本当はさすが海賊団のリーダーだけあって迫力満点で怖かったけれども。
「…まるでダメだ、話にならねえ」
この睨み合いをあえて勝ち負けという概念に照らし合わせれば私が勝利したのだと一応言えるだろう。
しかし、そもそも勝敗という型に嵌めるものではなかった。何せカンダタは私を観察していただけなのだ。
しかも話にならんとの結論まで早速いただいてしまった。
「理由を聞いても?」
「てめーの胸にでも聞いた方が早えだろうよ、嬢ちゃん。
それっぽっちのはした金でよくこの俺様が動くと思ったな、ええ?オイ。…それより」
がたんと大きな音を立てつつ立ち上がり、ぬっと巨体で迫ってくる。
ソルティコ近海を主な根城とする海賊カンダタの悪名は、幼少期をスラムで過ごしたデルカダールでも
時折耳にした。
それほどの人物が醸し出す迫力というものは、尋常ではない。
恐怖に任せて後ずさりでもしたかったが、これ以上彼の失望を買うわけにはいかなくて、
なんとか踏みとどまる。
「テメーのせいでうまい酒が台無しだ。どう責任とってくれるか、聞かせてもらおうか」
唾を飲み込む音すら立てるのを躊躇した。
それくらい、カンダタという人物は恐ろしかった。
金品の強奪はもちろん人さらいまで躊躇なく行う悪人集団。
やはり彼らに助けを乞うのは無理が――。
「そのあたりにしてもらえないか?」
そこに口を挟んだのはハンフリーだ。
見るにみかねたらしい彼を見て、カンダタは覆面の下で僅かに笑ったようだった。
「これはこれは、仮面武闘会のチャンピオン様のお出ましか。
てめえの正義感を振りかざしたようだが、ここじゃ俺様がルールだ。
この女は俺様の『領海』を侵した。引っ込んでな」
「…悪いがそうもいかないんだ。彼女はオレの連れでね」
さすが闘士たちのリーダーだけあり、ならず者の相手も慣れたものなのだろう。
殺気を隠しもしない海賊相手にハンフリーは一歩も引かなかった。
それどころか、肩を竦めて笑ってみせる余裕すら見せる。
「なるほど、テメーらグルってことか」
「私たちは同じ目的で手を組んでる。私はともかく、ハンフリーと仲良くしておいて損はないと思うけど?」
「それが真の報酬ってことかい」
カンダタは鼻を鳴らし、どかりと再び椅子に腰掛ける。
喧騒の中ではいくらハンフリー付きだろうが普通に話しかけても相手にしてもらえる可能性は低かっただろう。
だからあえて喧嘩腰に声をかけたのだが、うまくいったらしい。
めっちゃ怖かったけど。めっちゃ怖かったけど。
間もなく、話を受け入れる体制がカンダタ側でも整ったようだ。
「つきな。俺様はこれでも心が広え。話だけでも聞いてやろうじゃあねえか」
それは実質命令とも言えた。ハンフリーと私、二人の招かれざる客の近くに座っていた子分が席を譲ってくる。
ちゃっかりお言葉に甘えると、ふんぞり返ったカンダタが問うてきた。