Hevenly sun
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「ここがグロッタ!あれがグレイグ像!噂には聞いていたが一度お目にかかりたかった!
で、最近カジノができたんだったか!?まったく、個性的で面白い町じゃないか!!」
「うるせえぞ兄ちゃん!!」
「ひっすみません!」
はしゃぐファーリス王子がそこら辺の荒くれに嗜められてサマディーからグロッタへの旅は一応完了となる。
っていうか普段は本当に威厳がないな、この人と思う。
マルテイナさんなんか理由もなくあの堂々とした風格を纏っているのに――なんて比較をしても仕方ない。
ただ、王族という肩書を持ちながらあり得ないくらい取っつきやすいのが彼の良いところではある。
「…とりあえず孤児院に向かうか」
「そうだな。ハンフリーもいるのか?」
「そのはずさ。あいつ以外に誰が子どもたちの面倒を見るっていうんだい」
そんなグロッタの住民二名の会話を聞きつつ、現地まで案内される。
大きな教会兼孤児院は地下にあった。
元々私は地上にしか出入りしないから、そんなところがグロッタの街にあるなど知らなかった。
けれどそれが信じがたくなるほどに施設としての規模も大きく、それ以上に孤児の数も多い。
しかもその内の半分近くの顔が暗く沈み、比較的平和な街の様子に反して涙を流して嗚咽を洩らしている。
最近加わることになった新たな住人なんだろうと推察せざるを得なかった。
「いかに自分が呑気に生きていたか、改めて思い知らされたな」
先ほどまでのはしゃぎ様が嘘のようにファーリス王子は重苦しく呟いた。
誰にというわけではなく、多分独り言。
返事するのも迷惑かと思い、小さく頷くに留める。
行方不明になった者も含めて、この子達の命だけはせめて守らねばならない。
これ以上不幸にしてはいけないと、心を凍らせるように決意を新たにする。
「やあ、マスク・ザ・ハンサム。数日ぶりだな」
教会スペースで待機していると間もなく、サイデリアちゃんが大柄な男を引き連れて戻ってきた。
髪型を作る時間も惜しいと言わんばかりにただ切り揃えたような黒髪に、
頭を覆うように巻いたオレンジ色のバンダナが眩しい。
鍛えぬかれた武闘家然とした体格を野性味溢れる無法者装備で飾るが、それに反して人の良さが現れた顔つき。
仮面武闘会のヒーロー・ハンフリーその人である。
「ああ、宿敵にして仮面武闘会の英雄ハンフリー!
再び相まみえるとはこのマスク・ザ・ハンサム感激の極み!」
「…無理しなくていいぞ、ハンサム。本名すら知らずに言うのも難だが、少なくともキャラじゃないだろ」
「そうか…」
こうして気遣われるというある意味最悪の結末を彼は迎えることとなってしまった。
「で、そちらのお嬢さん方は?」
「ふっふっふ、ハンフリー聞いて驚くな。
事件についての収穫こそなかったが、強力な助っ人を連れてきたのさ!」
「なんでお前が自慢げなんだ」
サイデリアちゃんドヤ顔するのを、早速素に戻ったハンサムが嗜める。
しかしそれを気にすることなく彼女は私たちの紹介をしてくれた。
「勇者様と共にグロッタを救ってくれたあのエルザと!サマディーの王子ファーリス様さ!!」
私はともかく突然の王子の来訪に、さすがのチャンピオンも驚いたようだ。
彼の善良さを象徴するような糸目は見開かれ、元に戻るまで若干時間がかかる。
「まさか王族の方まで見えるとは…大袈裟な話になってきたな」
そう苦笑いするハンフリーに、ファーリスはごく友好的にほほ笑みかけた。右手を差し出しながら。
「そうでもないさ。世界の危機はサマディーの危機、そしてキミたちの危機はボクの危機だ。
できる限り協力させてもらうよ」
「そう言っていただけて光栄です、ファーリス王子」
「王子なんて堅苦しい呼称はよしてくれ。これから同じ事件に立ち向かう仲間じゃないか」
「…そうだな、よろしく。ファーリス」
こうして打ち解けた二人の男は固く握手を交わした。それからハンフリーは、こちらに向き直る。
「それで…キミがエルザか」
はい、と返事をする。仮面武闘会不動のチャンピオンハンフリー。
機動力を活かす爪武闘家としてはやや動きは鈍重。
だが、その分一撃が重くしかもタフな生粋のパワーファイター。
…いや、その捉え方も違う。
戦士が武闘家に近い素早さを手に入れたとも言える。
両者のいい所どりなその戦闘スタイルはまさにバトルマスターとまで言っても大袈裟ではない。
そしてその圧が今私に――。
「どうした?ぼーっとしているが、旅の疲れが出たのか?」
「いいいいえ!お会い出来て嬉しいですチャンピオン!」
まさか脳内の仮面武闘会闘士図鑑を詳らかにしていたなどと言えるはずもなく、声がひっくり返る。
唯一察したハンサムがわざとらしくため息をついた。
「あ、ああ。オレもキミに会えて嬉しいよ。
グロッタを救ってくれて、孤児院と闘士を代表して改めて礼を言う。ありがとう」
「私は勇者様たちのお手伝いをしただけです。…今回もぜひ力になれればと思います」
サイデリアちゃんの時ほど驚きはなかったので、そのぶん冷静に振る舞うことができた。
だからちょっぴり謙遜する余裕を持ちつつ、私も憧れのチャンピオンと握手を交わす。
やばい。大きく力強く、ごつごつした手。これはしばらく手が洗えないかも知れない。
「さて、これ以上の話は子どもたちに聞かせるには刺激が強いだろう。
ゆえに一旦オレの部屋に移動したいんだが…いいか?」
ハンフリーの提案に、その場にいる大人たちが頷く。
その時だった。
「ラゴスー!!」
「うおっ!?」
バーンと勢いよく教会の大きな扉が開き。
新入者が謎の名前を呼びながらマスク・ザ・ハンサムに抱きついた。
腐っても強キャラの彼がいとも容易く捕まり、そして転びこそしなかったもののバランスを崩す。
何事かと思ったが、その犯人は即座に判明した。
「帰って来てたのに、なんでビビアンちゃんに教えてくれなかったのぉ!?
ラゴスに会えないなんてさーみーしーかったー!」
頭のうさみみバンドをかわいらしくゆらゆら揺らしながら、バニーはハンサムに迫る。
「やめろ!ボクはキミには興味ない!!まずラゴスという名前でもない!!」
そんな彼女を、ハンサムはバッサリと切り捨て無理矢理振り払う。
「ラゴスったら相変わらずツレナイわねー」
そんなことはお構いなく微笑むバニー。
…いや、見た目と言動に騙されてはいけない。
仮面武闘会の花。お色気美人コンビの片割れであるビビアンちゃん。
多分人気はあのサイデリアちゃんを抑えて一位になるのではないだろうか。
相方の彼女とは対象的に華奢な身体つきだが。
ただ肉弾戦を行えば恐らく最弱級だが、彼女の真の武器は強力な魔法にある。
ベギラマとベホイミを使いこなすまさに賢者の卵といったところだろうか。
彼女のサポートはとにかく巧みで、組んだ相手は最低でも予選を突破させる。
かわいくて魅力たっぷりの甘さと、味方をうまく操り敵を翻弄するしたたかさのギャップこそが、
ビビアンちゃんの不動の人気の秘訣だ。
「ツレるわけないだろ。大体、ボクにはシルビアさんという人がいてだな」
「あら、見慣れない人たちがいるわね。二人とも有名人だけど」
「聞けよ」
結局ビビアンちゃんはハンサムが好きなのかそうでもないのか、
という判断がつかないままにもう一度ファーリスと共に自己紹介をする。
なんだかこの流れ結構疲れてきたねと、彼と目配せした。
で、最近カジノができたんだったか!?まったく、個性的で面白い町じゃないか!!」
「うるせえぞ兄ちゃん!!」
「ひっすみません!」
はしゃぐファーリス王子がそこら辺の荒くれに嗜められてサマディーからグロッタへの旅は一応完了となる。
っていうか普段は本当に威厳がないな、この人と思う。
マルテイナさんなんか理由もなくあの堂々とした風格を纏っているのに――なんて比較をしても仕方ない。
ただ、王族という肩書を持ちながらあり得ないくらい取っつきやすいのが彼の良いところではある。
「…とりあえず孤児院に向かうか」
「そうだな。ハンフリーもいるのか?」
「そのはずさ。あいつ以外に誰が子どもたちの面倒を見るっていうんだい」
そんなグロッタの住民二名の会話を聞きつつ、現地まで案内される。
大きな教会兼孤児院は地下にあった。
元々私は地上にしか出入りしないから、そんなところがグロッタの街にあるなど知らなかった。
けれどそれが信じがたくなるほどに施設としての規模も大きく、それ以上に孤児の数も多い。
しかもその内の半分近くの顔が暗く沈み、比較的平和な街の様子に反して涙を流して嗚咽を洩らしている。
最近加わることになった新たな住人なんだろうと推察せざるを得なかった。
「いかに自分が呑気に生きていたか、改めて思い知らされたな」
先ほどまでのはしゃぎ様が嘘のようにファーリス王子は重苦しく呟いた。
誰にというわけではなく、多分独り言。
返事するのも迷惑かと思い、小さく頷くに留める。
行方不明になった者も含めて、この子達の命だけはせめて守らねばならない。
これ以上不幸にしてはいけないと、心を凍らせるように決意を新たにする。
「やあ、マスク・ザ・ハンサム。数日ぶりだな」
教会スペースで待機していると間もなく、サイデリアちゃんが大柄な男を引き連れて戻ってきた。
髪型を作る時間も惜しいと言わんばかりにただ切り揃えたような黒髪に、
頭を覆うように巻いたオレンジ色のバンダナが眩しい。
鍛えぬかれた武闘家然とした体格を野性味溢れる無法者装備で飾るが、それに反して人の良さが現れた顔つき。
仮面武闘会のヒーロー・ハンフリーその人である。
「ああ、宿敵にして仮面武闘会の英雄ハンフリー!
再び相まみえるとはこのマスク・ザ・ハンサム感激の極み!」
「…無理しなくていいぞ、ハンサム。本名すら知らずに言うのも難だが、少なくともキャラじゃないだろ」
「そうか…」
こうして気遣われるというある意味最悪の結末を彼は迎えることとなってしまった。
「で、そちらのお嬢さん方は?」
「ふっふっふ、ハンフリー聞いて驚くな。
事件についての収穫こそなかったが、強力な助っ人を連れてきたのさ!」
「なんでお前が自慢げなんだ」
サイデリアちゃんドヤ顔するのを、早速素に戻ったハンサムが嗜める。
しかしそれを気にすることなく彼女は私たちの紹介をしてくれた。
「勇者様と共にグロッタを救ってくれたあのエルザと!サマディーの王子ファーリス様さ!!」
私はともかく突然の王子の来訪に、さすがのチャンピオンも驚いたようだ。
彼の善良さを象徴するような糸目は見開かれ、元に戻るまで若干時間がかかる。
「まさか王族の方まで見えるとは…大袈裟な話になってきたな」
そう苦笑いするハンフリーに、ファーリスはごく友好的にほほ笑みかけた。右手を差し出しながら。
「そうでもないさ。世界の危機はサマディーの危機、そしてキミたちの危機はボクの危機だ。
できる限り協力させてもらうよ」
「そう言っていただけて光栄です、ファーリス王子」
「王子なんて堅苦しい呼称はよしてくれ。これから同じ事件に立ち向かう仲間じゃないか」
「…そうだな、よろしく。ファーリス」
こうして打ち解けた二人の男は固く握手を交わした。それからハンフリーは、こちらに向き直る。
「それで…キミがエルザか」
はい、と返事をする。仮面武闘会不動のチャンピオンハンフリー。
機動力を活かす爪武闘家としてはやや動きは鈍重。
だが、その分一撃が重くしかもタフな生粋のパワーファイター。
…いや、その捉え方も違う。
戦士が武闘家に近い素早さを手に入れたとも言える。
両者のいい所どりなその戦闘スタイルはまさにバトルマスターとまで言っても大袈裟ではない。
そしてその圧が今私に――。
「どうした?ぼーっとしているが、旅の疲れが出たのか?」
「いいいいえ!お会い出来て嬉しいですチャンピオン!」
まさか脳内の仮面武闘会闘士図鑑を詳らかにしていたなどと言えるはずもなく、声がひっくり返る。
唯一察したハンサムがわざとらしくため息をついた。
「あ、ああ。オレもキミに会えて嬉しいよ。
グロッタを救ってくれて、孤児院と闘士を代表して改めて礼を言う。ありがとう」
「私は勇者様たちのお手伝いをしただけです。…今回もぜひ力になれればと思います」
サイデリアちゃんの時ほど驚きはなかったので、そのぶん冷静に振る舞うことができた。
だからちょっぴり謙遜する余裕を持ちつつ、私も憧れのチャンピオンと握手を交わす。
やばい。大きく力強く、ごつごつした手。これはしばらく手が洗えないかも知れない。
「さて、これ以上の話は子どもたちに聞かせるには刺激が強いだろう。
ゆえに一旦オレの部屋に移動したいんだが…いいか?」
ハンフリーの提案に、その場にいる大人たちが頷く。
その時だった。
「ラゴスー!!」
「うおっ!?」
バーンと勢いよく教会の大きな扉が開き。
新入者が謎の名前を呼びながらマスク・ザ・ハンサムに抱きついた。
腐っても強キャラの彼がいとも容易く捕まり、そして転びこそしなかったもののバランスを崩す。
何事かと思ったが、その犯人は即座に判明した。
「帰って来てたのに、なんでビビアンちゃんに教えてくれなかったのぉ!?
ラゴスに会えないなんてさーみーしーかったー!」
頭のうさみみバンドをかわいらしくゆらゆら揺らしながら、バニーはハンサムに迫る。
「やめろ!ボクはキミには興味ない!!まずラゴスという名前でもない!!」
そんな彼女を、ハンサムはバッサリと切り捨て無理矢理振り払う。
「ラゴスったら相変わらずツレナイわねー」
そんなことはお構いなく微笑むバニー。
…いや、見た目と言動に騙されてはいけない。
仮面武闘会の花。お色気美人コンビの片割れであるビビアンちゃん。
多分人気はあのサイデリアちゃんを抑えて一位になるのではないだろうか。
相方の彼女とは対象的に華奢な身体つきだが。
ただ肉弾戦を行えば恐らく最弱級だが、彼女の真の武器は強力な魔法にある。
ベギラマとベホイミを使いこなすまさに賢者の卵といったところだろうか。
彼女のサポートはとにかく巧みで、組んだ相手は最低でも予選を突破させる。
かわいくて魅力たっぷりの甘さと、味方をうまく操り敵を翻弄するしたたかさのギャップこそが、
ビビアンちゃんの不動の人気の秘訣だ。
「ツレるわけないだろ。大体、ボクにはシルビアさんという人がいてだな」
「あら、見慣れない人たちがいるわね。二人とも有名人だけど」
「聞けよ」
結局ビビアンちゃんはハンサムが好きなのかそうでもないのか、
という判断がつかないままにもう一度ファーリスと共に自己紹介をする。
なんだかこの流れ結構疲れてきたねと、彼と目配せした。