Hevenly sun
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ファーリス王子とマスク・ザ・ハンサムと、そして私。
即席で完成したサバクくじら討伐パーティは馬場に集まっていた。
今日朝一でレースに出場するため待機したまま放っておかれたらしい数頭の馬たちは、
やはり異変を敏感に感じ取っていたらしく怯えている。
どうどうとそれを宥めながらファーリスは説明を始めた。
「作戦は単純だ。
サバクくじらは非常に強力な魔物だが、毒餌によって退治されたという資料がいくつか見られた。
これをベースに考え、可哀想だが成績の悪い馬に犠牲になってもらって……」
「待て待て待て待て!!!」
ハンサムが勢い良く食って掛かる。
「犠牲ってなんだ!!可哀想だと思うならするな!!今まで可愛がってきた馬だろうが!!!」
今まで見た中でも一番すごい剣幕だった。
彼に嫌われているはずの私だってここまで怒鳴られたことはない。
ファーリスは圧倒されながら、反論する。
「し、しかし…命の大樹陥落による混乱で有耶無耶にはなっていたが、元は処分予定だった馬で…」
「処分だと!?こんなにもかわいい馬を処分だと!?お前に人の心はないのかファーリス!!
馬を使うならボクは絶対お前の作戦には乗らない!乗るものか!!」
「…まいったな」
ファーリスは困ったように頭を掻く。
ハンサムが馬が大好きだったというのはさすがに予想していなかったのだろう。
できるわけがない。
…いやむしろ、命を大事にするからこそ彼はレンジャーたり得るのかも知れないのだけれど。
「なら仕方がない。危険はより伴うがプランDでいこう。毒餌は準備に時間がかかるしね」
それでもファーリス自身はこうなることはある程度承知していたのか。
ハンサムの怒りに引き気味でこそあったが、冷静なまま新たな作戦案を出す。
地味に作戦BとCの存在が気になったがどちらも馬を犠牲にする戦法だったのだろうか。
「悪いが、エルザくんにはもっとも危険の伴う最前線に出てもらう。
役割を簡潔にまとめる。陽動と、ハンサムくんの補助だ」
返事をする前にハンサムをちらりと見る。無表情。この瞬間彼の中では『馬>エルザ』であることが判明した。
私は畜生以下かと地味にショックを受けながら返事をする。
「で、中堅兼アタッカーはハンサムくん。ボクが合図を出すまでは傷ついたエルザくんの回復が中心だ」
「合図?お前はどうするんだ」
もはや一国の王子に対する態度ではなく、偉そうに腕を組みながらハンサムはファーリスに問う。
「ボクはこれだ」
恐怖心はあるのだろう。
かすかに震えるその手にはボウガンがあった。そのまま続ける。
「作戦の立案者たる自分が一番安全圏にいるというのも恥ずかしい話だが、この中で一番実力も低く、
何より適役適所ということで勘弁してくれ。
ボクはこれで毒矢を射る。ハンサムくん、ここまで言えばわかるよな?」
「タナトスハントか!!」
得心がいったように、ハンサムは声をあげる。
そうだ、とファーリスは頷き更に続けたが今の所私は話にまったくついて行けてない。
「毒餌を使わないならばこのやり方が最も安全で効率的だろう。
しかし、相手はかなり巨大なモンスターだから、毒の周りが遅いかもしれない。
また周ったかもしれないがわかり辛い場合もある。そこでこれを使う」
今度は彼は別に道具を出した。
「望遠鏡…?」
一見してただの布を巻いただけの望遠鏡だったが、よく見ると何か文字のようなものが刻まれている。
「うちの家宝の一つにして今回の切り札だ。父上に売られそうになったのを阻止した一品だが、
これを使うとなんと」
そう言いながらファーリスは望遠鏡を覗き込む。
「ふむ…。エルザくん、キミはずいぶん攻撃魔法に強いみたいだ。強い魔力がキミを包んでいる。
こんなの見たのは初めてだな」
「すごい!確かに私は妙に魔力多くて、溢れたやつが守ってくれてる。
…例えるなら常にマジックバリアを張ってる状態みたいなものらしいんだけど…なんでわかったの!?」
驚くあまり妙に説明口調になってしまった。
ファーリスはそうだろうと得意気に笑って、望遠鏡について語る。
「このように、これで見た相手の状態がわかる不思議な望遠鏡。
古代技術の産物らしく使うには少し研究が必要だったが、しかしボクはやったよ。
これでサバクくじらの状態が見破れる」
「確かにお前にしかできない役割だな…」
ハンサムもようやく納得できたらしい。
でも落ち着いていても王子をよりによってお前呼ばわりである。
「ありがとう。毒が回ったことが確認でき次第合図する、そして」
「タナトスハント、だな」
「ああ。サバクくじらが倒れるまで基本的にはこれを繰り返す。
エルザくんもなるべくこのタイミングで支援魔法とフォースを頼む。土属性以外ならなんでも大丈夫だ」
「りょーかいです!」
ごく無礼な相棒の代わりに敬礼する。
といってもそもそもファーリス王子はハンサムの態度を気にする様子もなかったけれど。
実は相当巨大な器の持ち主なのかも知れない。
「…では作戦も確認したところでそろそろ行くか。怖いのが正直なところだが」
臆病な気質を隠さずファーリスは外に出す。
前回みたいに変に気負われるよりは恐らくマシだ。
そもそも彼は自分というものを相当客観的に把握できているように思われるので、
そんなこともないのだろうが。
政治的なことはもちろんわからないが、少なくともこの男はゆるい雰囲気に反して案外大物だと思う。
打算的に考えれば、仲良くしておくに越したことはない。
「大丈夫ですよ、王子。この傭兵エルザ、ボディーガード業務は慣れてます」
この戦いから生き残れたら、だけど。
すでに何度も感じている死への恐怖を改めて噛みしめつつも、そんな言葉で王子を励ます。
そして覚悟を決め、私が先頭に立つ。
「話は聞かせてもらったよ!」
威勢のいい声がしたのはその時だ。
「誰だ!?」
危機察知能力が優れていると言うのだろうか。ファーリスが一番に反応して、振り返る。ついで、私。
そしてすぐに、驚きに口を覆う。嬉しくて思わずにやけてしまったからだ。
「うそ…!サイデリアちゃんだこんなところで会えるなんて…!!」
「知り合いなのかい?」
「ううん、私ただのファン」
グロッタ名物仮面武闘会の有名美人闘士の一人。剣士サイデリア。
鍛えあげるも女性らしさを忘れない艶やかな肉体を、露出度の高いビキニアーマーで覆うセクシー戦士。
その肢体から放たれる華やかな剣技もさることながら。
セクシーアンドワイルド、しかもキュートな容姿からの投げキッスに悩殺される闘士もファンも多い。
私もされた。だって本当にかわいいんだもの。シルビアさんに出会う前のことだけど。
「おお!我が好敵手にして盟友!サイデリア!!このようなところで会えるとは運命の導きか!!」
そしてそれなりに交流はあるらしい。
両手を広げて大げさな芝居口調でサイデリアちゃんを歓迎してみせるマスク・ザ・ハンサム。
しかしサイデリアちゃんは冷めていた。
「ハンサム。あんたさっき素で喋ってたろ。そういうのいいから、普通でいいから」
「あ、ああ」
そういえばハンサムって仮面武闘会ではあんな口調で喋ってたっけ。…喋ってたっけ?
誰かさんの影響を受けまくったんだろうな。
そして明後日の方に設定が作られていってしまったんだろう。たしかにあのキャラは凡人なら持て余す。
「で、アレの収穫の方はどうだ?」
「…全然さ。ま、せいぜいわかったことは、サマディーにはまだ被害は出てないってことくらいだ」
お互いにざっくばらんとした口調で情報を交わす。アレとは言うまでもなく子ども消失事件のことだろう。
ファーリスは当然そのやり取りに当然ながら反応した。
「サマディー?被害?一体どういうことだい、説明してくれないか?」
サイデリアちゃんは興味なさそうに一瞥すると、盟友(笑)に向き直る。
「…ハンサム、こいつは?」
「この国の王子、ファーリス様だ」
一応様をつけたハンサムに内心拍手を送った。彼はついで、私の方を顎でしゃくる。
「で、ついでだがこっちはエルザ、不本意ながら今組んでいる」
「エルザ?エルザってあのエルザかい!?」
サイデリアちゃんは驚いた様子だった。
とととっと駆け寄り、私の手を取る。
「あんたが妖魔軍王からグロッタを救ったうちの一人、エルザか。噂は聞いてるよぉ!
その節はありがとうね!」
間近でみるとサイデリアちゃんはもっとかわいかった。心臓が高鳴り始める。
「え、えへへどうも…。よかったらあとでサインとかくれると…」
「もちろんだよ!あたいもあんたのがほしいし、交換しようじゃないか!」
と、大好きな女の子が笑顔で応えてくれる。やばいマジでニヤける口許を必死で正していると、ハンサムからツッコミが入った。
「サイデリア、エルザ、やめろそれ以上ははいよいよ収拾がつかなくなる。
ファーリス、この話はサバクくじら戦が終わったら詳しく話させてもらう」
「つまり、それが目的でボクを訪ねたんだね?」
「…そうだ」
ファーリスの問いにハンサムは言葉短く頷くと、サイデリアちゃんが引き継いだ。
「あのレース場にいる巨大な魔物を退治するんだろ?あたいも参加するよ」
「…良いのか?」
「良いよ。妖魔軍王の時はビビっちまったんだ。
これはあたいなりの、あんたやビビアンたちへの贖罪ってヤツさね」
ハンサムの問いに屈託なく答え、サイデリアちゃんはこちらにぱちんとウインクをしてきた。
「それに、エルザだけじゃ盾が足りないだろう?」
尊かった。一瞬、ほんの一瞬だがシルビアさんのことも忘れときめいてしまいかけた。
そしてそれをハンサムが見逃すはずもなかった。
「…良いんじゃないか、エルザ。ボクはお似合いだと思うぞ」
初めて見るレベルの優しい笑顔だった。
「そんなんじゃないから!」
強くハンサムを睨みつけ、すぐに頭を切り替えて前を見る。隣にサイデリアちゃんがつく。
それを確認し、ファーリスが勇ましく声をあげた。
「これよりサバクくじら討伐作戦を開始する!総員進め!!」
即席で完成したサバクくじら討伐パーティは馬場に集まっていた。
今日朝一でレースに出場するため待機したまま放っておかれたらしい数頭の馬たちは、
やはり異変を敏感に感じ取っていたらしく怯えている。
どうどうとそれを宥めながらファーリスは説明を始めた。
「作戦は単純だ。
サバクくじらは非常に強力な魔物だが、毒餌によって退治されたという資料がいくつか見られた。
これをベースに考え、可哀想だが成績の悪い馬に犠牲になってもらって……」
「待て待て待て待て!!!」
ハンサムが勢い良く食って掛かる。
「犠牲ってなんだ!!可哀想だと思うならするな!!今まで可愛がってきた馬だろうが!!!」
今まで見た中でも一番すごい剣幕だった。
彼に嫌われているはずの私だってここまで怒鳴られたことはない。
ファーリスは圧倒されながら、反論する。
「し、しかし…命の大樹陥落による混乱で有耶無耶にはなっていたが、元は処分予定だった馬で…」
「処分だと!?こんなにもかわいい馬を処分だと!?お前に人の心はないのかファーリス!!
馬を使うならボクは絶対お前の作戦には乗らない!乗るものか!!」
「…まいったな」
ファーリスは困ったように頭を掻く。
ハンサムが馬が大好きだったというのはさすがに予想していなかったのだろう。
できるわけがない。
…いやむしろ、命を大事にするからこそ彼はレンジャーたり得るのかも知れないのだけれど。
「なら仕方がない。危険はより伴うがプランDでいこう。毒餌は準備に時間がかかるしね」
それでもファーリス自身はこうなることはある程度承知していたのか。
ハンサムの怒りに引き気味でこそあったが、冷静なまま新たな作戦案を出す。
地味に作戦BとCの存在が気になったがどちらも馬を犠牲にする戦法だったのだろうか。
「悪いが、エルザくんにはもっとも危険の伴う最前線に出てもらう。
役割を簡潔にまとめる。陽動と、ハンサムくんの補助だ」
返事をする前にハンサムをちらりと見る。無表情。この瞬間彼の中では『馬>エルザ』であることが判明した。
私は畜生以下かと地味にショックを受けながら返事をする。
「で、中堅兼アタッカーはハンサムくん。ボクが合図を出すまでは傷ついたエルザくんの回復が中心だ」
「合図?お前はどうするんだ」
もはや一国の王子に対する態度ではなく、偉そうに腕を組みながらハンサムはファーリスに問う。
「ボクはこれだ」
恐怖心はあるのだろう。
かすかに震えるその手にはボウガンがあった。そのまま続ける。
「作戦の立案者たる自分が一番安全圏にいるというのも恥ずかしい話だが、この中で一番実力も低く、
何より適役適所ということで勘弁してくれ。
ボクはこれで毒矢を射る。ハンサムくん、ここまで言えばわかるよな?」
「タナトスハントか!!」
得心がいったように、ハンサムは声をあげる。
そうだ、とファーリスは頷き更に続けたが今の所私は話にまったくついて行けてない。
「毒餌を使わないならばこのやり方が最も安全で効率的だろう。
しかし、相手はかなり巨大なモンスターだから、毒の周りが遅いかもしれない。
また周ったかもしれないがわかり辛い場合もある。そこでこれを使う」
今度は彼は別に道具を出した。
「望遠鏡…?」
一見してただの布を巻いただけの望遠鏡だったが、よく見ると何か文字のようなものが刻まれている。
「うちの家宝の一つにして今回の切り札だ。父上に売られそうになったのを阻止した一品だが、
これを使うとなんと」
そう言いながらファーリスは望遠鏡を覗き込む。
「ふむ…。エルザくん、キミはずいぶん攻撃魔法に強いみたいだ。強い魔力がキミを包んでいる。
こんなの見たのは初めてだな」
「すごい!確かに私は妙に魔力多くて、溢れたやつが守ってくれてる。
…例えるなら常にマジックバリアを張ってる状態みたいなものらしいんだけど…なんでわかったの!?」
驚くあまり妙に説明口調になってしまった。
ファーリスはそうだろうと得意気に笑って、望遠鏡について語る。
「このように、これで見た相手の状態がわかる不思議な望遠鏡。
古代技術の産物らしく使うには少し研究が必要だったが、しかしボクはやったよ。
これでサバクくじらの状態が見破れる」
「確かにお前にしかできない役割だな…」
ハンサムもようやく納得できたらしい。
でも落ち着いていても王子をよりによってお前呼ばわりである。
「ありがとう。毒が回ったことが確認でき次第合図する、そして」
「タナトスハント、だな」
「ああ。サバクくじらが倒れるまで基本的にはこれを繰り返す。
エルザくんもなるべくこのタイミングで支援魔法とフォースを頼む。土属性以外ならなんでも大丈夫だ」
「りょーかいです!」
ごく無礼な相棒の代わりに敬礼する。
といってもそもそもファーリス王子はハンサムの態度を気にする様子もなかったけれど。
実は相当巨大な器の持ち主なのかも知れない。
「…では作戦も確認したところでそろそろ行くか。怖いのが正直なところだが」
臆病な気質を隠さずファーリスは外に出す。
前回みたいに変に気負われるよりは恐らくマシだ。
そもそも彼は自分というものを相当客観的に把握できているように思われるので、
そんなこともないのだろうが。
政治的なことはもちろんわからないが、少なくともこの男はゆるい雰囲気に反して案外大物だと思う。
打算的に考えれば、仲良くしておくに越したことはない。
「大丈夫ですよ、王子。この傭兵エルザ、ボディーガード業務は慣れてます」
この戦いから生き残れたら、だけど。
すでに何度も感じている死への恐怖を改めて噛みしめつつも、そんな言葉で王子を励ます。
そして覚悟を決め、私が先頭に立つ。
「話は聞かせてもらったよ!」
威勢のいい声がしたのはその時だ。
「誰だ!?」
危機察知能力が優れていると言うのだろうか。ファーリスが一番に反応して、振り返る。ついで、私。
そしてすぐに、驚きに口を覆う。嬉しくて思わずにやけてしまったからだ。
「うそ…!サイデリアちゃんだこんなところで会えるなんて…!!」
「知り合いなのかい?」
「ううん、私ただのファン」
グロッタ名物仮面武闘会の有名美人闘士の一人。剣士サイデリア。
鍛えあげるも女性らしさを忘れない艶やかな肉体を、露出度の高いビキニアーマーで覆うセクシー戦士。
その肢体から放たれる華やかな剣技もさることながら。
セクシーアンドワイルド、しかもキュートな容姿からの投げキッスに悩殺される闘士もファンも多い。
私もされた。だって本当にかわいいんだもの。シルビアさんに出会う前のことだけど。
「おお!我が好敵手にして盟友!サイデリア!!このようなところで会えるとは運命の導きか!!」
そしてそれなりに交流はあるらしい。
両手を広げて大げさな芝居口調でサイデリアちゃんを歓迎してみせるマスク・ザ・ハンサム。
しかしサイデリアちゃんは冷めていた。
「ハンサム。あんたさっき素で喋ってたろ。そういうのいいから、普通でいいから」
「あ、ああ」
そういえばハンサムって仮面武闘会ではあんな口調で喋ってたっけ。…喋ってたっけ?
誰かさんの影響を受けまくったんだろうな。
そして明後日の方に設定が作られていってしまったんだろう。たしかにあのキャラは凡人なら持て余す。
「で、アレの収穫の方はどうだ?」
「…全然さ。ま、せいぜいわかったことは、サマディーにはまだ被害は出てないってことくらいだ」
お互いにざっくばらんとした口調で情報を交わす。アレとは言うまでもなく子ども消失事件のことだろう。
ファーリスは当然そのやり取りに当然ながら反応した。
「サマディー?被害?一体どういうことだい、説明してくれないか?」
サイデリアちゃんは興味なさそうに一瞥すると、盟友(笑)に向き直る。
「…ハンサム、こいつは?」
「この国の王子、ファーリス様だ」
一応様をつけたハンサムに内心拍手を送った。彼はついで、私の方を顎でしゃくる。
「で、ついでだがこっちはエルザ、不本意ながら今組んでいる」
「エルザ?エルザってあのエルザかい!?」
サイデリアちゃんは驚いた様子だった。
とととっと駆け寄り、私の手を取る。
「あんたが妖魔軍王からグロッタを救ったうちの一人、エルザか。噂は聞いてるよぉ!
その節はありがとうね!」
間近でみるとサイデリアちゃんはもっとかわいかった。心臓が高鳴り始める。
「え、えへへどうも…。よかったらあとでサインとかくれると…」
「もちろんだよ!あたいもあんたのがほしいし、交換しようじゃないか!」
と、大好きな女の子が笑顔で応えてくれる。やばいマジでニヤける口許を必死で正していると、ハンサムからツッコミが入った。
「サイデリア、エルザ、やめろそれ以上ははいよいよ収拾がつかなくなる。
ファーリス、この話はサバクくじら戦が終わったら詳しく話させてもらう」
「つまり、それが目的でボクを訪ねたんだね?」
「…そうだ」
ファーリスの問いにハンサムは言葉短く頷くと、サイデリアちゃんが引き継いだ。
「あのレース場にいる巨大な魔物を退治するんだろ?あたいも参加するよ」
「…良いのか?」
「良いよ。妖魔軍王の時はビビっちまったんだ。
これはあたいなりの、あんたやビビアンたちへの贖罪ってヤツさね」
ハンサムの問いに屈託なく答え、サイデリアちゃんはこちらにぱちんとウインクをしてきた。
「それに、エルザだけじゃ盾が足りないだろう?」
尊かった。一瞬、ほんの一瞬だがシルビアさんのことも忘れときめいてしまいかけた。
そしてそれをハンサムが見逃すはずもなかった。
「…良いんじゃないか、エルザ。ボクはお似合いだと思うぞ」
初めて見るレベルの優しい笑顔だった。
「そんなんじゃないから!」
強くハンサムを睨みつけ、すぐに頭を切り替えて前を見る。隣にサイデリアちゃんがつく。
それを確認し、ファーリスが勇ましく声をあげた。
「これよりサバクくじら討伐作戦を開始する!総員進め!!」