ヘイト・ドッジボール
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「なんで私を助けてくれたんですか?」
「助けたのではない、目障りだったからだエルザ殿。ゆめゆめ勘違い召されるな」
きっかり3m離れて私たちは森を抜けていた。たとえばベロニカちゃんあたりが言えば、
ああこの子は素直になれないんだなぁと思えるようなある種微笑ましい台詞も、
ホメロスさまからすれば恐らく本音中の本音だ。
「ウルノーガ様より賜った鎌でお前のような下賤なネズミを斬ったとあらば、まったく申し訳が立たん」
ウルノーガ様、か。
人類共通の敵も、すでに人間を辞めたホメロスという一魔族からすれば崇拝すべき王なのである。
随分と遠くの世界に行ってしまわれたものだ。元々、近くなんかはなかったけれど。
「私からすれば助けてもらったことには変わりないので、一応お礼は言います。ありがとうございます」
「そう思うなら口は閉じていろ。不快でしかない」
憎まれ口というよりも、ただの隠そうともしない本音。いや、私もそうだ。
本当はお礼なんて言いたくもない。
こんなホメロスさまを想い行動した魔物たちがいるんだと思うとなんとも言えない気分にはなった。
「オレはお前が嫌いだ」
ずんずんと一切こちらを気遣わないで進むホメロス様は、やはり振り向かぬままおもむろにそんなことを言い出す。
「生理的に受け付けぬのももちろんだが、それよりも理解できない。…なぜお前は奴らに味方するのか。
なぜ才能に恵まれた自分が、しかし奴らよりはるかに劣ると知りながら、
なお平気な顔をして共に在ることができるのか。
つくづく、お前という存在が気持ち悪くて仕方ない」
「まさか…それが聞きたくて私を助けたんじゃ」
「黙って答えろ。殺すぞ」
どっちだよ、とツッコミを入れるだけの勇気は存在しなかった。
私はそっと嘆息する。
案外この人もかわいいところがあるのかも知れなかった。
それがまた彼に対する嫌悪感になるのだからどこまでも相性が悪いのだけれど。
「…別に、簡単なことです。
私はたしかに彼らよりはずっと弱いけれど、それでも彼らの助けになることができる。
…シルビアさんが喜んでくれると、それなりに自負しているからです」
「なるほど。しかしそれは勘違いではないか?
奴らは案外お前を疎ましく思っていて、けれど遠慮して言い出せないだけだとか、
そういう風に考えたことはないか?」
沈黙。規則正しく地面を蹴る音。
少し考える。
「…信じてるから。自分自身のことも、あの人たちのことも」
「つまらん答えだ」
ホメロス様はすっぱりと斬るとそれっきり黙ってしまった。
私も、基本的には彼と話すことはないので黙っていた。
それから、黙々と代わり映えのしない景色を進み、ついには森を抜ける。
そこでつとホメロスさまは足を止めた。
「…行け」
「まさか案内してくれたんですか」
想像できない相手からのまさかの親切に困惑する。
ホメロスさまは心底嫌そうに答えた。
「ついでだ。オレは他に用がある」
「…それ、止められたら良いのに」
「ほざけ。天地がひっくり返っても不可能だ」
でしょうね、と肯定する。
多分この人はきっとこの人なりに色々あって、結果人間を裏切ったのだろう。
それは許されることではないけれど――あるいはもしかしたら私にした謎の質問に、
何か含まれていたのかもしれない。
いずれにしても、私にはもうどうしようもない。
恐らく、いや間違いなく私には彼を救うことはできないし、何より救う気もない。
「…もう、行きます。本当にありがとうございました」
「早く消えろ。二度とオレの目の前に現れるな。オレの預かり知らぬところで野垂れ死ね」
子供のような口の悪さに苦笑しつつ、踵を返す。
歩き始め、しかし一刻も早くその場を離れたくてすぐに走る。
当然と言うべきかホメロス様は追いかけてこなかったが、
突き刺すような敵意満載の視線はしばらく感じていた。
「助けたのではない、目障りだったからだエルザ殿。ゆめゆめ勘違い召されるな」
きっかり3m離れて私たちは森を抜けていた。たとえばベロニカちゃんあたりが言えば、
ああこの子は素直になれないんだなぁと思えるようなある種微笑ましい台詞も、
ホメロスさまからすれば恐らく本音中の本音だ。
「ウルノーガ様より賜った鎌でお前のような下賤なネズミを斬ったとあらば、まったく申し訳が立たん」
ウルノーガ様、か。
人類共通の敵も、すでに人間を辞めたホメロスという一魔族からすれば崇拝すべき王なのである。
随分と遠くの世界に行ってしまわれたものだ。元々、近くなんかはなかったけれど。
「私からすれば助けてもらったことには変わりないので、一応お礼は言います。ありがとうございます」
「そう思うなら口は閉じていろ。不快でしかない」
憎まれ口というよりも、ただの隠そうともしない本音。いや、私もそうだ。
本当はお礼なんて言いたくもない。
こんなホメロスさまを想い行動した魔物たちがいるんだと思うとなんとも言えない気分にはなった。
「オレはお前が嫌いだ」
ずんずんと一切こちらを気遣わないで進むホメロス様は、やはり振り向かぬままおもむろにそんなことを言い出す。
「生理的に受け付けぬのももちろんだが、それよりも理解できない。…なぜお前は奴らに味方するのか。
なぜ才能に恵まれた自分が、しかし奴らよりはるかに劣ると知りながら、
なお平気な顔をして共に在ることができるのか。
つくづく、お前という存在が気持ち悪くて仕方ない」
「まさか…それが聞きたくて私を助けたんじゃ」
「黙って答えろ。殺すぞ」
どっちだよ、とツッコミを入れるだけの勇気は存在しなかった。
私はそっと嘆息する。
案外この人もかわいいところがあるのかも知れなかった。
それがまた彼に対する嫌悪感になるのだからどこまでも相性が悪いのだけれど。
「…別に、簡単なことです。
私はたしかに彼らよりはずっと弱いけれど、それでも彼らの助けになることができる。
…シルビアさんが喜んでくれると、それなりに自負しているからです」
「なるほど。しかしそれは勘違いではないか?
奴らは案外お前を疎ましく思っていて、けれど遠慮して言い出せないだけだとか、
そういう風に考えたことはないか?」
沈黙。規則正しく地面を蹴る音。
少し考える。
「…信じてるから。自分自身のことも、あの人たちのことも」
「つまらん答えだ」
ホメロス様はすっぱりと斬るとそれっきり黙ってしまった。
私も、基本的には彼と話すことはないので黙っていた。
それから、黙々と代わり映えのしない景色を進み、ついには森を抜ける。
そこでつとホメロスさまは足を止めた。
「…行け」
「まさか案内してくれたんですか」
想像できない相手からのまさかの親切に困惑する。
ホメロスさまは心底嫌そうに答えた。
「ついでだ。オレは他に用がある」
「…それ、止められたら良いのに」
「ほざけ。天地がひっくり返っても不可能だ」
でしょうね、と肯定する。
多分この人はきっとこの人なりに色々あって、結果人間を裏切ったのだろう。
それは許されることではないけれど――あるいはもしかしたら私にした謎の質問に、
何か含まれていたのかもしれない。
いずれにしても、私にはもうどうしようもない。
恐らく、いや間違いなく私には彼を救うことはできないし、何より救う気もない。
「…もう、行きます。本当にありがとうございました」
「早く消えろ。二度とオレの目の前に現れるな。オレの預かり知らぬところで野垂れ死ね」
子供のような口の悪さに苦笑しつつ、踵を返す。
歩き始め、しかし一刻も早くその場を離れたくてすぐに走る。
当然と言うべきかホメロス様は追いかけてこなかったが、
突き刺すような敵意満載の視線はしばらく感じていた。