戦わなければ生き残れない!
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「おイタはそこまでよ!砂漠の殺し屋ちゃんたち!」
その時私に届いたのはそんな凛とした力強い声。
もちろん全然期待なんてしてなかったのに、一番嬉しい口上。…え、口上?
「愛と正義の美青年剣士!!レディーーーー!!!マッシヴ!!!!!!」
その時小さな奇跡が起きた。
「え?は?」
声が出るようになるまで身体が回復したのだ。
ただしその上で疑問符しか出なかったが。
格好良くポーズをキメるレディ・マッシヴの横を、ピンク色の暴風がすり抜ける。
「いくら敵を怯ませるためだって言っても、さすがにふざけすぎよシルビア」
バニーの姿をした小悪魔が、私たちがあれほど苦戦していたサソリたちを嵐のようになぎ倒していく。
「全く、同感です。姫様」
マルティナさんのピンクタイフーンが取りこぼしたサソリたちは、グレイグ様が天下無双の大剣で各個撃破していく。
その圧倒的な力と連携、更にあまりの手際の良さに、傭兵を含めたサマディー軍はただただ呆然とするばかりだ。
「んもう、わかってないわね。こういうのは勢いが大事なのよ、勢いが」
むくれるレディ・マッシヴことシルビアさんが、ちょうど私の元にやってくる。
「あら」
「シルビアさん…」
「アタシ、シルビアじゃないから返事しないわよ」
「えっ」
「ウソウソ。冗談よ、エルザちゃん。あなたも戦ってたのね」
「結果は不甲斐ないけど」
「謙遜しないで。よく頑張ったわね」
優しく微笑み、私の頭を撫でてくれる。
ひどくほっとした。
さて、とシルビアさんは辺りを見渡す。
「うん。ちょっと怪我人ちゃんが多いわね。…ここは手っ取り早くいきましょう!」
言うなり、どこにしまっていたのか巨大な笛を取り出し、踊りながら演奏する。
見た者を励ますかのようなその溌剌としたダンスは実際に、この辺り一体の怪我人たちを瞬時に癒やしていく。
もちろん、私も例外ではなかった。
「エルザちゃん」
「ありがと、シルビアさん。これで戦える」
魔法の聖水を飲み捨てる。
もう一つ瓶を取り出し、それはあの回復してくれた僧侶にお礼として渡した。
…そして。
「最後のはシルビアさんにあげる」
「受け取れないわ」
「受け取って?」
ちょっと可愛らしく語尾をあげてみたりなんかして。
それを景気に、身体が青白く発光していく。
比例するように力がみなぎってくる。
ゾーンの領域。
この戦いを経て、私もついに入れたのかと感慨深く思う。
「だってなんかいけそうな気がするから」
今一度、杖に持ち替える。
回復した魔力全てで、魔法陣を描く。
魔法戦士の必殺技『マジカルルーレット』。
精々雑誌で見て憧れる程度で、まさか自分が使う日が来るなんて思わなかったけれど。
的の上で小さな光がくるくる回る。
ここからどうすれば良いのかは初見にしてよくわかる一方で、グロッタカジノのルーレットのイメージが色濃く出てることに苦笑した。
これはギャンブルだ。
己の魔力を賭け、ルーレットのように止まった倍率分魔力を回復する。
当たればオイシイ、外れたらマズイという博打でしかないそれを、必ず殺す技と呼んでいいのか疑問はあるが。
はたして、適当と思われるところでルーレットを止める。
当たりだった。
自分一人の分だけとはいえ、魔力が満ちていくのがわかる。
「すごい特技ね」
「ありがと。こういうことだから」
シルビアさんに杖を向け、回復したばかりの魔力でバイキルトと炎のフォースを付与する。
ついでにピオリムも。
「だから、魔力が尽きたらいつでも来てって、…ついででいいからみんなに伝えておいてほしいの」
「エルザちゃんの頼みなら…でも無理しないでね」
「そっくり、お返しします」
言うようになったわと肩をすくめてからシルビアさんと別れた。
同じ支援型でも細かい方向性が彼とは違う。
旅芸人は戦場狭しと華やかに飛び回り、私のようなタイプの魔法戦士はもっぱら目立たたず後方支援。
その格差を少しは不満に思ったこともあるが、それはとっくに昔の話だ。
名前も知らない僧侶を引き連れ、出会った仲間全部に支援魔法をかけまくる。
その道中で見た。
ハッスルダンスやベホマラーで回復に務めるロウさんやシルビアさん。
ピンクタイフーンや天下無双で敵を倒すマルティナさんとグレイグさま。
相棒だというだけあって抜群のコンビネーションを見せる勇者様とカミュくん。
唯一、イオナズンを連発するセーニャさんの側にはいつもいるはずのちっちゃい子がやはりいなくて、ひどく違和感は覚えてしまったけれど。
それでも大発生したサソリたちはみるみる数を減らしていった。
私も負けてられない。
僧侶と頷きあった。