DQ11
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「エルザちゃんって笑わないわよね」
シルビアさんは時々そんな突拍子もないことを言ってくる。衣装も大概突飛もない感じだから、まあ彼はそういう人間なのだろう。独特の世界観を持っていて、常人にはついていけない感じの。
そう、芸術家気取にありがちな感じだ、とパズルのピースを当てはめるように彼の人となりを言語化する。いけ好かないとまでは言わないけれど、それが許されてきた彼の華やかな人生には、少し嫉妬するかも知れない。
「そうですか?別にそんなことないと思うけど」
とはいえそう言われるとちっちゃなプライドだって傷がつく。
こちとら何でも屋、もとい傭兵。接客業として笑顔が大事だなんてありがちな考えで、それでもそれなりにやってきた。
だから反射的に反論した。嫌味のようににっこりと笑いながら。
「んー、そうじゃないのよ。エルザちゃん、あなたの営業スマイルはたしかにとっても上手よ、充分魅力的に思うわ。でもねそういうことじゃないの、わかるでしょう?」
いまいち要領を得ないようなシルビアさんの否定。どういう意味なのか顎に手を当て、上向きになって少し考える…わからない。
「シルビアさんって時々変なこと言うよね。私だって面白かったら笑うよ、素で」
「それを見たことがないのだけど」
「じゃ、面白いことがないんでしょ」
シルビアさん曰く営業スマイルを満面に浮かべ、ひらひらと手を振る。
これでもう話は終わりだ。
この人は恩人だ、とは思うけど。何というか色々と豪快で素敵な人間性を持っている人だとも思うけれど。でもそれだけだった。
好ましいか、好ましくないかで言えば断然前者だが、身分違いの恋に身を焼く趣味はないし正直必要以上にかまわないでほしかった。大事なお客様なので、そういうことは絶対言わないけれど。
「ね、エルザちゃん」
「まだ何かあるんですか?」
「見てて」
断ろうと思った。
でも、シルビアさんが動く方が早かった。
複数個ボールを取り出す。旅芸人が得意とするジャグリングをするものであることは、娯楽や芸術の類をあまり知らない自分でもわかった。
「仕込みをしてないから、こういうことしかできないけれど」
彼にしては珍しく言い訳から入る。
そのくせして投げるボールの数は多い。当初3個から始まったボールは、それと彼の手の動きを追うに紛れ、気づけば5個に増えていた。
本当にすごいのはそこから。
ぽんぽんとテンポよく投げてはキャッチするのを繰り返されるボールが、いつの間にかナイフに変化している。ペティナイフというには大ぶりの、カラフルな細工の施されたショー用のものだろう。
まずは一本、投げて受け止めた別のボールが、次に投げた瞬間にはナイフになる。
それもどういう仕組か、種は一切わからない。
しかも考えようとするよりも先に5個のボールはすべて5本のナイフに変身してしまった。
目を丸くする暇も、息をつく暇もない。
赤、青、緑、黄色、そしてピンクの軌跡。5本のナイフを投げ続けてなお余裕が残っているシルビアさんの涼しい微笑み。イケメンだなぁと思うが、おネエさまである彼にとって果たしてそれが褒め言葉になるのだろうか。
そして――仕上げ。
彼が最後に投げたのはナイフ。今度ばかりはゆるやかにも高く投げ上げ、くるりとその場でターン。
再びこちらを向いたシルビアさんが手に持っていたものは、4本の淡いピンクのバラとリボンだった。
「うふ。最後までお付き合いありがとう」
そう言いながら妙技に魅入って茫然自失となる私の手を取り、そのリボンで束ねたバラをシルビアさんは握らせてくる。当然のようにトゲなどなかった。
「アタシの気持ちよ。受け取ってくれると嬉しいわ」
はあ、と生返事。
夢うつつというか、不思議な気分だった。
初めて魔法を見た時みたいな、そういう素直な驚き。そして感動。
まだドキドキと胸が鳴っていた。
「あ…の。もしかして、スベった?」
若干弱々しく、きまり悪そうにシルビアさんは訊ねてくる。彼の想定よりだいぶ私の反応が薄かったらしい。
「違う」
だから私は首を振って否定した。
シルビアさんが私に求める笑顔とはきっとほど遠い顔をしているが、仕方ないのだと今ばかりは諦めてほしい。
「シルビアさんってすごいんだね。私、驚きの方がだいぶ勝っちゃってさ、だから今のところ、まだ笑えないの」
「エルザちゃん…!」
そう言った瞬間、シルビアさんの顔がぱあっと明るくなった。私を笑顔にするのが目的のはずが、むしろ私が彼をそうしたみたいになっている。
かと思っていたら抱き締められた。
「んもう!本当にかわいい子!そのうち絶対、笑顔にしてみせるんだからっ!」
本人にやましい思惑はないというのはわかる。勇者様やベロニカちゃんあたりと(シルビアさんが一方的に)ハグしているのは時々見た。単なるシルビアさん流の愛情表現だ。他意はない、とわかっていても、先ほどとは違う理由で心臓は騒ぎ体温は鳥のひなのように上昇していた。
「必要ないと思うよ。面白かったもん」
彼に顔が見えないのをいいことにくすくすと笑い声をもらす。ようやく感動に感情が追いついてきたのだ。
けれど見せてと言ってこられて急にそれ以上に恥ずかしくなって、その後しばらくシルビアさんと謎の格闘する羽目にはなった。
シルビアさんは時々そんな突拍子もないことを言ってくる。衣装も大概突飛もない感じだから、まあ彼はそういう人間なのだろう。独特の世界観を持っていて、常人にはついていけない感じの。
そう、芸術家気取にありがちな感じだ、とパズルのピースを当てはめるように彼の人となりを言語化する。いけ好かないとまでは言わないけれど、それが許されてきた彼の華やかな人生には、少し嫉妬するかも知れない。
「そうですか?別にそんなことないと思うけど」
とはいえそう言われるとちっちゃなプライドだって傷がつく。
こちとら何でも屋、もとい傭兵。接客業として笑顔が大事だなんてありがちな考えで、それでもそれなりにやってきた。
だから反射的に反論した。嫌味のようににっこりと笑いながら。
「んー、そうじゃないのよ。エルザちゃん、あなたの営業スマイルはたしかにとっても上手よ、充分魅力的に思うわ。でもねそういうことじゃないの、わかるでしょう?」
いまいち要領を得ないようなシルビアさんの否定。どういう意味なのか顎に手を当て、上向きになって少し考える…わからない。
「シルビアさんって時々変なこと言うよね。私だって面白かったら笑うよ、素で」
「それを見たことがないのだけど」
「じゃ、面白いことがないんでしょ」
シルビアさん曰く営業スマイルを満面に浮かべ、ひらひらと手を振る。
これでもう話は終わりだ。
この人は恩人だ、とは思うけど。何というか色々と豪快で素敵な人間性を持っている人だとも思うけれど。でもそれだけだった。
好ましいか、好ましくないかで言えば断然前者だが、身分違いの恋に身を焼く趣味はないし正直必要以上にかまわないでほしかった。大事なお客様なので、そういうことは絶対言わないけれど。
「ね、エルザちゃん」
「まだ何かあるんですか?」
「見てて」
断ろうと思った。
でも、シルビアさんが動く方が早かった。
複数個ボールを取り出す。旅芸人が得意とするジャグリングをするものであることは、娯楽や芸術の類をあまり知らない自分でもわかった。
「仕込みをしてないから、こういうことしかできないけれど」
彼にしては珍しく言い訳から入る。
そのくせして投げるボールの数は多い。当初3個から始まったボールは、それと彼の手の動きを追うに紛れ、気づけば5個に増えていた。
本当にすごいのはそこから。
ぽんぽんとテンポよく投げてはキャッチするのを繰り返されるボールが、いつの間にかナイフに変化している。ペティナイフというには大ぶりの、カラフルな細工の施されたショー用のものだろう。
まずは一本、投げて受け止めた別のボールが、次に投げた瞬間にはナイフになる。
それもどういう仕組か、種は一切わからない。
しかも考えようとするよりも先に5個のボールはすべて5本のナイフに変身してしまった。
目を丸くする暇も、息をつく暇もない。
赤、青、緑、黄色、そしてピンクの軌跡。5本のナイフを投げ続けてなお余裕が残っているシルビアさんの涼しい微笑み。イケメンだなぁと思うが、おネエさまである彼にとって果たしてそれが褒め言葉になるのだろうか。
そして――仕上げ。
彼が最後に投げたのはナイフ。今度ばかりはゆるやかにも高く投げ上げ、くるりとその場でターン。
再びこちらを向いたシルビアさんが手に持っていたものは、4本の淡いピンクのバラとリボンだった。
「うふ。最後までお付き合いありがとう」
そう言いながら妙技に魅入って茫然自失となる私の手を取り、そのリボンで束ねたバラをシルビアさんは握らせてくる。当然のようにトゲなどなかった。
「アタシの気持ちよ。受け取ってくれると嬉しいわ」
はあ、と生返事。
夢うつつというか、不思議な気分だった。
初めて魔法を見た時みたいな、そういう素直な驚き。そして感動。
まだドキドキと胸が鳴っていた。
「あ…の。もしかして、スベった?」
若干弱々しく、きまり悪そうにシルビアさんは訊ねてくる。彼の想定よりだいぶ私の反応が薄かったらしい。
「違う」
だから私は首を振って否定した。
シルビアさんが私に求める笑顔とはきっとほど遠い顔をしているが、仕方ないのだと今ばかりは諦めてほしい。
「シルビアさんってすごいんだね。私、驚きの方がだいぶ勝っちゃってさ、だから今のところ、まだ笑えないの」
「エルザちゃん…!」
そう言った瞬間、シルビアさんの顔がぱあっと明るくなった。私を笑顔にするのが目的のはずが、むしろ私が彼をそうしたみたいになっている。
かと思っていたら抱き締められた。
「んもう!本当にかわいい子!そのうち絶対、笑顔にしてみせるんだからっ!」
本人にやましい思惑はないというのはわかる。勇者様やベロニカちゃんあたりと(シルビアさんが一方的に)ハグしているのは時々見た。単なるシルビアさん流の愛情表現だ。他意はない、とわかっていても、先ほどとは違う理由で心臓は騒ぎ体温は鳥のひなのように上昇していた。
「必要ないと思うよ。面白かったもん」
彼に顔が見えないのをいいことにくすくすと笑い声をもらす。ようやく感動に感情が追いついてきたのだ。
けれど見せてと言ってこられて急にそれ以上に恥ずかしくなって、その後しばらくシルビアさんと謎の格闘する羽目にはなった。
