それゆけ!ばれんたいん!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
好きという気持ちをシルビアさんに伝えられているだろうか。
という命題にぶつかったので、マルティナさんに相談したら鼻で笑われた。
ベロニカちゃんに聞いたらなぜかドン引きされたし、カミュくんの『お前は何を言ってるんだ……ってカオしてやがるぜ』という決めつけにすら腹を立てる様子もなかった。
しまいにはセーニャさんに、『エルザさまがシルビアさまを愛しておられるというのは、とってもよく伝わってきますわ!』などと、本質に迫っているようで別にそうでもない感想をいただいた。
そして勇者様はお察しの通り、無言で微笑んでいた。
「エルザ。まさかお主がチョコレートをくれるとはのう」
ちょっと引き気味に、でもロウさんはとても喜んでくれる。
こういう時ワシに気があるのかなどと不躾なことを聞いてくるタイプだと、私はこの方を勝手に思っていたのだけど別にそんなことはなかった。
「営業活動の一環で」
何やら今日はお世話になっている人にチョコレートを渡す日だそうで。
同業者などの女性たちは、みんなお客さんに配って回っているらしい。
気合が入っている人は手作りだ。
……私はそこまでじゃないから、店で適当なのを見繕った。
失敗するよりはたぶんいい、きっと。女子力は関係ない。多分。
「こんなにぞんざいに菓子を貰ったのは初めてだ」
グレイグさまがロウさんと同じメタリックな紺色の包みを私から受け取りながらそんなこと感想を漏らす。
デルカダール軍で仕事をしていた頃はさぞかし女性兵士からたくさん貰っていたのだろう。
……と思いきやホメロス以外で、と付け足す。
「……えっと、つまりどういうことです?」
「奴の甘味好きは軍でも有名だった。それがゆえ、この時期は菓子の山ができてな。
さすがに食いきれんと、押しつけられたものだ」
懐かしそうにグレイグさまは目を細める。
たしかにホメロスさま、顔と能力と社会的地位だけは良かったから、この時期はさぞかし女性たちが燃えたものだろう。
私には人の指を嬉々として切り落とそうとする異常者にしか思えなかったけれど。
「さすがはホメロスじゃ。
あいつは昔からデルカダール一の美剣士とモテておった。うらやましいほどにな」
「ええ。うらやましいほどに……」
二人のひどく実感のこもった声。
一応眼前に一回り以上若い女子がいるのだけれど、その言動は恥ずかしくないのだろうかこの二人。
「でも、二人とも貰えてたんでしょ、それなりに」
ロウさんは言うまでもなく親しみやすく、人がとても好い。自然に周りに人が集まってくるタイプだ。
グレイグさまだって一見して強面だの融通が利かないだの言っても、誠実だし人望がとにかく厚い。
モテない理由というのがむしろ見つからない、そのはずだ。
証拠に、ロウさんは少し照れたようなにっこりとした笑みを浮かべる。
「もちろんじゃ。というかワシはそれこそ、一つ…できれば二つあれば充分じゃった」
どこか曖昧な言い回し。それがどういう意味か察するのは簡単で、そして他人事ながら切なくなる。
けれどロウさん自身が明るい話題で終わらせたいのだろうから、頷くに留めるけれど。
その横で。
「……ああ、俺も、その、……一つあれば充分だ……。充分なのだがな……」
なぜかグレイグさまは、どこかはるか遠くを見つめて、目を合わせてくれることはなかった。
という命題にぶつかったので、マルティナさんに相談したら鼻で笑われた。
ベロニカちゃんに聞いたらなぜかドン引きされたし、カミュくんの『お前は何を言ってるんだ……ってカオしてやがるぜ』という決めつけにすら腹を立てる様子もなかった。
しまいにはセーニャさんに、『エルザさまがシルビアさまを愛しておられるというのは、とってもよく伝わってきますわ!』などと、本質に迫っているようで別にそうでもない感想をいただいた。
そして勇者様はお察しの通り、無言で微笑んでいた。
「エルザ。まさかお主がチョコレートをくれるとはのう」
ちょっと引き気味に、でもロウさんはとても喜んでくれる。
こういう時ワシに気があるのかなどと不躾なことを聞いてくるタイプだと、私はこの方を勝手に思っていたのだけど別にそんなことはなかった。
「営業活動の一環で」
何やら今日はお世話になっている人にチョコレートを渡す日だそうで。
同業者などの女性たちは、みんなお客さんに配って回っているらしい。
気合が入っている人は手作りだ。
……私はそこまでじゃないから、店で適当なのを見繕った。
失敗するよりはたぶんいい、きっと。女子力は関係ない。多分。
「こんなにぞんざいに菓子を貰ったのは初めてだ」
グレイグさまがロウさんと同じメタリックな紺色の包みを私から受け取りながらそんなこと感想を漏らす。
デルカダール軍で仕事をしていた頃はさぞかし女性兵士からたくさん貰っていたのだろう。
……と思いきやホメロス以外で、と付け足す。
「……えっと、つまりどういうことです?」
「奴の甘味好きは軍でも有名だった。それがゆえ、この時期は菓子の山ができてな。
さすがに食いきれんと、押しつけられたものだ」
懐かしそうにグレイグさまは目を細める。
たしかにホメロスさま、顔と能力と社会的地位だけは良かったから、この時期はさぞかし女性たちが燃えたものだろう。
私には人の指を嬉々として切り落とそうとする異常者にしか思えなかったけれど。
「さすがはホメロスじゃ。
あいつは昔からデルカダール一の美剣士とモテておった。うらやましいほどにな」
「ええ。うらやましいほどに……」
二人のひどく実感のこもった声。
一応眼前に一回り以上若い女子がいるのだけれど、その言動は恥ずかしくないのだろうかこの二人。
「でも、二人とも貰えてたんでしょ、それなりに」
ロウさんは言うまでもなく親しみやすく、人がとても好い。自然に周りに人が集まってくるタイプだ。
グレイグさまだって一見して強面だの融通が利かないだの言っても、誠実だし人望がとにかく厚い。
モテない理由というのがむしろ見つからない、そのはずだ。
証拠に、ロウさんは少し照れたようなにっこりとした笑みを浮かべる。
「もちろんじゃ。というかワシはそれこそ、一つ…できれば二つあれば充分じゃった」
どこか曖昧な言い回し。それがどういう意味か察するのは簡単で、そして他人事ながら切なくなる。
けれどロウさん自身が明るい話題で終わらせたいのだろうから、頷くに留めるけれど。
その横で。
「……ああ、俺も、その、……一つあれば充分だ……。充分なのだがな……」
なぜかグレイグさまは、どこかはるか遠くを見つめて、目を合わせてくれることはなかった。