DQ11
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
頭から魔物に食べられる悪夢。
誇張はない、が命の危険も(たぶん)ない。
昨日出会ったなめくじモンスターことリップスに、未だにくっつかれていた。
そこそこのサイズのくせに無理やり背中に乗り、ちゅっちゅやられている。
控えめに言って大変気持ち悪い。
「エルザちゃん…?またずいぶんと斬新な帽子ね…?」
リップスにとり憑かれているに等しい状況だから、町に入るに入れず滞在しているキャンプ場周辺。
こんな誰にも見せられない装飾品をつけている時に限って出会ってしまうシルビアさん(多分野営のために必要なものを調達しに来たのだろう)も、さすがにドン引きだ。
いやでもちょっと待って。
今回のファッションセンスはいくらなんでも私のせいじゃない。
「なんていうか、悪意はないみたいなんだけど…」
広い世の中には、脳みそを主食として吸う魔物がいるなんていう、なんとも恐ろしい話を聞いたりもする。
しかしながらリップスはこちらを(物理的には)害する気はないらしい。
といってもその体重で長時間乗られると中々腰にくるものがあるのだが、私の事情を考えられる知性があるのならば多分はじめからそんなことはしないだろう。
「そうね、むしろこれは…エルザちゃん愛されちゃってるってやつかしら?」
こだわりの角度で可愛らしく首を傾げるシルビアさんは、私が言いにくくかつ認めたくないことをズバッと言ってのけた。
完全に人生経験の差が出ている。…もっとも当事者じゃないから、というのもあるのだろうけど。
そんな中リップスは自分が話題になっていることなどおかまいなしに、ちゅうちゅうと熱烈すぎるキスをくれる。
びっくりするくらい嬉しくないし、その若干受け入れがたいビジュアルから精神的にもゴリゴリ削られるのだが、なんか拒絶するのもかわいそうな気がしてしまうのだ。
人間と違って言葉を喋らないからとも、健気な姿に感動のようなものを覚えたからとも言えるかも知れない。
「…アナタ、この子に何かしたの?」
「全く覚えがないです」
「あら」
ぱあっとシルビアさんの顔が明るくなる。なんでだよ。
「リップスちゃん、もしかして一目惚れってやつかしら?魔物なのに見る目あるじゃなーい!」
あっ、完全にダメな時のシルビアさんだ。
察したところで何をすることもできず。
多分撫でようとしたのだろう。嬉しそうにリップスに手を伸ばすシルビアさんは、
「いったーい。何よこの子」
魔物に触るなとばかり拒絶され、叩かれる羽目になる。
「何なんだろうねほんと…」
内心うっかりシルビアさんも含めてしまった。何この。
「…話は戻るけど、どうしようこいつ」
「倒しちゃうんじゃだめなの?」
叩かれた手を擦るシルビアさんの問いを受け、数秒逡巡する。
その間もリップスは愛情たっぷりに頭を吸う。
「なんかさすがに躊躇う」
魔物とはいえ、これだけ好意を向けられては。
そうねぇ、とシルビアさんは返して、リップスの方に視線を投げる。
「エルザちゃんの優しいところはステキよ。…でもそのままじゃ町にも入れないわ」
「そうなんだよねぇ…」
褒めてくれて嬉しいはずなのに、大きくため息が出る。
どうしたものかと頭をひねる。頭痛がしそうだ。
シルビアさんの言う通り倒してしまうのがセオリーかつ早いのはもちろん理解している。
けれど、ある意味他の魔物よりよほど無害なこいつを斬るのは、なんていうかさすがにかわいそうな気がした。
いや私にとってはふつうに有害な気もするが。
「仕方ないわね。今日はアタシが悪役になりましょう!」
そうこうしていると、シルビアさんが突如としてそう言った。
そして仕方ないと言うその割に妙にはりきっている。
どう見てもダメな時のシルビアさん継続中だった。
「一体何を…」
「リップスちゃん、よくご覧なさい」
私の質問を遮りシルビアさんは妙に凛とした態度で言うと、突然私の唇を奪う。
舌先で突かれ反射的に受け入れてしまう。
短く、でも濃厚に口内を蹂躙されて一気に力が抜けた。
くたりとなりかける身体を支えられる頃には、ずっと重かった背中が解放されていた。
その軽さを噛み締めたかったがさすがに文句を言うのが先立った。
「なんてことしてくれるの…」
周囲は鬱蒼と草が生い茂って前人未踏の地みたいな顔をしているとはいえ、屋外は屋外。
私には色々とハードルが高かった。
「エルザちゃんも結構ノッてたくせに、何言ってるのよ」
そんな苦情を一蹴したシルビアさんは、楽しげに口もとを歪める。
それから地上に降り立ったリップスに、声をかけた。
「こういうことだから。この子はとっくにア・タ・シ・の♡
リップスちゃんが付け入るスキは、どこにもないのよん」
その時のリップスの表情たるや。
人こそ選ぶが普段は(遠目で見るぶんには)愛嬌すら感じるコミカルな顔つきを憎悪に歪め、目は血走っていた。
神をも射殺さんとする迫力がそこにはあった。リップスなのに。
「なにヨ!」
リップスはいきなり声を上げた。
「魔物のワタシですらクチビルは遠慮したのに!アンタ何!?
こんな女のコ相手に強引すぎるわ!サイテー!!
あと、そのコ諦めないから。覚えてなさい!!」
妙に野太い声でそれだけ罵り、なめくじでありながら脱兎。
草色の背中はあっという間に背景に混じり見えなくなってしまった。
それをぽかんと二人して見つめる人間の片割れ――少なくとも私は理解が追いつかない。
「リップスって喋れたんだ…」
「ナカマ…いやライバル出現ね」
「え?」
聞き返すも意味不明。
非常にもやもやしたものを抱えつつ、なんとなく流れで今日は勇者様たちのお世話になることになったのであった。
誇張はない、が命の危険も(たぶん)ない。
昨日出会ったなめくじモンスターことリップスに、未だにくっつかれていた。
そこそこのサイズのくせに無理やり背中に乗り、ちゅっちゅやられている。
控えめに言って大変気持ち悪い。
「エルザちゃん…?またずいぶんと斬新な帽子ね…?」
リップスにとり憑かれているに等しい状況だから、町に入るに入れず滞在しているキャンプ場周辺。
こんな誰にも見せられない装飾品をつけている時に限って出会ってしまうシルビアさん(多分野営のために必要なものを調達しに来たのだろう)も、さすがにドン引きだ。
いやでもちょっと待って。
今回のファッションセンスはいくらなんでも私のせいじゃない。
「なんていうか、悪意はないみたいなんだけど…」
広い世の中には、脳みそを主食として吸う魔物がいるなんていう、なんとも恐ろしい話を聞いたりもする。
しかしながらリップスはこちらを(物理的には)害する気はないらしい。
といってもその体重で長時間乗られると中々腰にくるものがあるのだが、私の事情を考えられる知性があるのならば多分はじめからそんなことはしないだろう。
「そうね、むしろこれは…エルザちゃん愛されちゃってるってやつかしら?」
こだわりの角度で可愛らしく首を傾げるシルビアさんは、私が言いにくくかつ認めたくないことをズバッと言ってのけた。
完全に人生経験の差が出ている。…もっとも当事者じゃないから、というのもあるのだろうけど。
そんな中リップスは自分が話題になっていることなどおかまいなしに、ちゅうちゅうと熱烈すぎるキスをくれる。
びっくりするくらい嬉しくないし、その若干受け入れがたいビジュアルから精神的にもゴリゴリ削られるのだが、なんか拒絶するのもかわいそうな気がしてしまうのだ。
人間と違って言葉を喋らないからとも、健気な姿に感動のようなものを覚えたからとも言えるかも知れない。
「…アナタ、この子に何かしたの?」
「全く覚えがないです」
「あら」
ぱあっとシルビアさんの顔が明るくなる。なんでだよ。
「リップスちゃん、もしかして一目惚れってやつかしら?魔物なのに見る目あるじゃなーい!」
あっ、完全にダメな時のシルビアさんだ。
察したところで何をすることもできず。
多分撫でようとしたのだろう。嬉しそうにリップスに手を伸ばすシルビアさんは、
「いったーい。何よこの子」
魔物に触るなとばかり拒絶され、叩かれる羽目になる。
「何なんだろうねほんと…」
内心うっかりシルビアさんも含めてしまった。何この。
「…話は戻るけど、どうしようこいつ」
「倒しちゃうんじゃだめなの?」
叩かれた手を擦るシルビアさんの問いを受け、数秒逡巡する。
その間もリップスは愛情たっぷりに頭を吸う。
「なんかさすがに躊躇う」
魔物とはいえ、これだけ好意を向けられては。
そうねぇ、とシルビアさんは返して、リップスの方に視線を投げる。
「エルザちゃんの優しいところはステキよ。…でもそのままじゃ町にも入れないわ」
「そうなんだよねぇ…」
褒めてくれて嬉しいはずなのに、大きくため息が出る。
どうしたものかと頭をひねる。頭痛がしそうだ。
シルビアさんの言う通り倒してしまうのがセオリーかつ早いのはもちろん理解している。
けれど、ある意味他の魔物よりよほど無害なこいつを斬るのは、なんていうかさすがにかわいそうな気がした。
いや私にとってはふつうに有害な気もするが。
「仕方ないわね。今日はアタシが悪役になりましょう!」
そうこうしていると、シルビアさんが突如としてそう言った。
そして仕方ないと言うその割に妙にはりきっている。
どう見てもダメな時のシルビアさん継続中だった。
「一体何を…」
「リップスちゃん、よくご覧なさい」
私の質問を遮りシルビアさんは妙に凛とした態度で言うと、突然私の唇を奪う。
舌先で突かれ反射的に受け入れてしまう。
短く、でも濃厚に口内を蹂躙されて一気に力が抜けた。
くたりとなりかける身体を支えられる頃には、ずっと重かった背中が解放されていた。
その軽さを噛み締めたかったがさすがに文句を言うのが先立った。
「なんてことしてくれるの…」
周囲は鬱蒼と草が生い茂って前人未踏の地みたいな顔をしているとはいえ、屋外は屋外。
私には色々とハードルが高かった。
「エルザちゃんも結構ノッてたくせに、何言ってるのよ」
そんな苦情を一蹴したシルビアさんは、楽しげに口もとを歪める。
それから地上に降り立ったリップスに、声をかけた。
「こういうことだから。この子はとっくにア・タ・シ・の♡
リップスちゃんが付け入るスキは、どこにもないのよん」
その時のリップスの表情たるや。
人こそ選ぶが普段は(遠目で見るぶんには)愛嬌すら感じるコミカルな顔つきを憎悪に歪め、目は血走っていた。
神をも射殺さんとする迫力がそこにはあった。リップスなのに。
「なにヨ!」
リップスはいきなり声を上げた。
「魔物のワタシですらクチビルは遠慮したのに!アンタ何!?
こんな女のコ相手に強引すぎるわ!サイテー!!
あと、そのコ諦めないから。覚えてなさい!!」
妙に野太い声でそれだけ罵り、なめくじでありながら脱兎。
草色の背中はあっという間に背景に混じり見えなくなってしまった。
それをぽかんと二人して見つめる人間の片割れ――少なくとも私は理解が追いつかない。
「リップスって喋れたんだ…」
「ナカマ…いやライバル出現ね」
「え?」
聞き返すも意味不明。
非常にもやもやしたものを抱えつつ、なんとなく流れで今日は勇者様たちのお世話になることになったのであった。