DQ11
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シルビアさんの人格は素晴らしいと思う。
しかし彼は相当アバンギャルドな人間だ。
…仮にも芸人なんだし、それが悪いわけではもちろんないのだが、時として常人には本当に理解し難い行動を取ることがある。
「…あの」
今がまさにそれだ。
しなやかな手つきで私の髪を梳いては三つ編みを作る。
そして完成した横からほどく。
そんなよくわからない行動をシルビアさんは上機嫌で繰り返していた。
「これ、どういう状況なんですかね」
そんな奇行を奇っ怪な目で眺めるみなさんの視線に晒されて奇妙に居た堪れない。
しかもシルビアさんはご機嫌なばかりで、まるで意にも介さない。
ただただ、べろべろに酔っているという表現がぴったりだった。
ホムラの村特有の、座敷と呼ばれる形態の座席を擁した酒場では、畳という草を編んだ床に直接座る。
最初は違和感もあったが馴れれば非常にくつろげるから、私個人としては気に入っていたのだが、良し悪しだとたった今認識を変えた。
だってシルビアさんに後ろから抱きつかれても、逃げも隠れもできないんだもの。
おかげで先程からひたすらに羞恥心と戦うばかりである。
「シルビア様…どうなさったんでしょう」
「ここの酒が――焼酎とかが合わなかった、からかのう?」
セーニャさんが微妙に狼狽えている。
ロウさんがいつものシルビアさんとは全く違う様子に引きつつも、不安そうに心配そうに自分の分析を告げる。
「…いやあのオッサン、さっきあっちの客とテキーラをショットで飲み比べしてたぜ」
しかしカミュくんの否定。
さすが盗賊だけあって(?)洞察力がある。
って原因焼酎ですらないのかよ何してんだこいつ、という空気がまたたく間に流れる。
何がどうしてこうなったのか全くわからないが、深くため息をついたグレイグさまがシルビアさんの腕を取る。
この時ばかりは盾という役割であるはずの彼が勇者に見えた。
「何をやっているんだお前はいい年して。先に宿屋に行ってはどうだ?というか行け」
「るっさいわね!今とってもいい気分なのよぶち壊さないで。…ねぇ?エルザちゃん」
グレイグさまにはとっても当たりがきつく。そして私には、ごろにゃんと擦り寄り甘えてくるシルビアさんにぞわっとした寒気が走った。
初めて、本当に初めてシルビアさんが気持ち悪いと思った。
まさかこんな日が来るとは思わなかった真剣に。
いや、うん、あれ?
混乱する私の元につつっとマルティナさんが寄ってくる。
この人はこの人で、かなり酔っているようだ。
目が据わっている。
「エルザ」
「はい」
多少は分別が残っているらしい。
耳元で囁いてくる。
「もうこのまま抱いてもらっちゃえば?チャンスよチャンス」
小悪魔は酔っ払っても通常運転だった。
「やあねマルティナちゃん、何言ってんのよ」
でもここで、いつも実は常識人であるシルビアさんの鋭いツッコミが冴え渡る。
「いいわねそれ」
あかんかった。
いえーいと、アホな学生のノリでハイタッチする酔っ払いに挟まれる状況がいい加減怖い。
なんか震えてくる。
涙出てきた。
その涙が、拭われる。
というか、舐めとられる。
「あ、シルビアさんだと思った?残念私でしたー」
畜生ことマルティナさんだった。
「あーんマルティナちゃん、ずーるーいー!」
そしてなぜか悔しがるシルビアさん。
最初こそおいしいかと思った状況も早々に限界なので、二人の保護者的ポジションのグレイグさまに視線で訴える。
「助けてやりたいが、その」
以下続かない。逃げられた。
ここで私はグレイグ将軍という人物は二人の保護者ではなく、むしろおもちゃだということを察してしまうのであった。
なんか哀れである。
「ちょっと、もういい加減に…!」
ここで登場したのはツッコミ隊長ベロニカちゃん。
最初は無視を決め込んでいたらしいが、恐怖で携帯電話のバイブのように(世界観を無視した比喩)震えていた私をさすがに見かねたらしい。
「あらベロニカ。なぁに?キスする?」
そして、次の瞬間には小悪魔に押し倒されていた小さな身体。
「ひっ!やめなさいよ!」
気丈なはずのベロニカちゃん瞬時に涙目。
「おいマジでいい加減にしろって」
カミュくんのヘルプが入る。
お膳立てが必要とはいえ、マルティナさんに力で対抗できる数少ない存在が彼女を羽交い締めにする。
その隙をついてセーニャさんが素早くベロニカちゃんを助け出した。
「怖かった…」
「可哀想なお姉様…!」
カミュくんもセーニャさんも優しいなー。
ベロニカちゃん愛されてるなー。
「ついでに私のことも助けてくれないかなー」
「なんでなの?そもそもエルザちゃんピンチでもなんでもないじゃなぁい?」
シルビアさんに後ろからもはや普通に抱きしめられていると言って良い状況。
若干の慣れが入ってきた自分が嫌だ。
「…ベロニカちゃんと私、どこで差がついたんだろう」
「そりゃあアナタ、本気で嫌がってないからよ」
くすくすという笑い声が、妙に耳に残った。
未だにまったく収拾がつかないカオスな宴会を勇者はにこにこと眺めていた。
自分より年上の人間たちが酔いに任せてバカなことをするのは呆れないでもなかったが、それでも彼にとっては面白いものだった。
しかし彼は相当アバンギャルドな人間だ。
…仮にも芸人なんだし、それが悪いわけではもちろんないのだが、時として常人には本当に理解し難い行動を取ることがある。
「…あの」
今がまさにそれだ。
しなやかな手つきで私の髪を梳いては三つ編みを作る。
そして完成した横からほどく。
そんなよくわからない行動をシルビアさんは上機嫌で繰り返していた。
「これ、どういう状況なんですかね」
そんな奇行を奇っ怪な目で眺めるみなさんの視線に晒されて奇妙に居た堪れない。
しかもシルビアさんはご機嫌なばかりで、まるで意にも介さない。
ただただ、べろべろに酔っているという表現がぴったりだった。
ホムラの村特有の、座敷と呼ばれる形態の座席を擁した酒場では、畳という草を編んだ床に直接座る。
最初は違和感もあったが馴れれば非常にくつろげるから、私個人としては気に入っていたのだが、良し悪しだとたった今認識を変えた。
だってシルビアさんに後ろから抱きつかれても、逃げも隠れもできないんだもの。
おかげで先程からひたすらに羞恥心と戦うばかりである。
「シルビア様…どうなさったんでしょう」
「ここの酒が――焼酎とかが合わなかった、からかのう?」
セーニャさんが微妙に狼狽えている。
ロウさんがいつものシルビアさんとは全く違う様子に引きつつも、不安そうに心配そうに自分の分析を告げる。
「…いやあのオッサン、さっきあっちの客とテキーラをショットで飲み比べしてたぜ」
しかしカミュくんの否定。
さすが盗賊だけあって(?)洞察力がある。
って原因焼酎ですらないのかよ何してんだこいつ、という空気がまたたく間に流れる。
何がどうしてこうなったのか全くわからないが、深くため息をついたグレイグさまがシルビアさんの腕を取る。
この時ばかりは盾という役割であるはずの彼が勇者に見えた。
「何をやっているんだお前はいい年して。先に宿屋に行ってはどうだ?というか行け」
「るっさいわね!今とってもいい気分なのよぶち壊さないで。…ねぇ?エルザちゃん」
グレイグさまにはとっても当たりがきつく。そして私には、ごろにゃんと擦り寄り甘えてくるシルビアさんにぞわっとした寒気が走った。
初めて、本当に初めてシルビアさんが気持ち悪いと思った。
まさかこんな日が来るとは思わなかった真剣に。
いや、うん、あれ?
混乱する私の元につつっとマルティナさんが寄ってくる。
この人はこの人で、かなり酔っているようだ。
目が据わっている。
「エルザ」
「はい」
多少は分別が残っているらしい。
耳元で囁いてくる。
「もうこのまま抱いてもらっちゃえば?チャンスよチャンス」
小悪魔は酔っ払っても通常運転だった。
「やあねマルティナちゃん、何言ってんのよ」
でもここで、いつも実は常識人であるシルビアさんの鋭いツッコミが冴え渡る。
「いいわねそれ」
あかんかった。
いえーいと、アホな学生のノリでハイタッチする酔っ払いに挟まれる状況がいい加減怖い。
なんか震えてくる。
涙出てきた。
その涙が、拭われる。
というか、舐めとられる。
「あ、シルビアさんだと思った?残念私でしたー」
畜生ことマルティナさんだった。
「あーんマルティナちゃん、ずーるーいー!」
そしてなぜか悔しがるシルビアさん。
最初こそおいしいかと思った状況も早々に限界なので、二人の保護者的ポジションのグレイグさまに視線で訴える。
「助けてやりたいが、その」
以下続かない。逃げられた。
ここで私はグレイグ将軍という人物は二人の保護者ではなく、むしろおもちゃだということを察してしまうのであった。
なんか哀れである。
「ちょっと、もういい加減に…!」
ここで登場したのはツッコミ隊長ベロニカちゃん。
最初は無視を決め込んでいたらしいが、恐怖で携帯電話のバイブのように(世界観を無視した比喩)震えていた私をさすがに見かねたらしい。
「あらベロニカ。なぁに?キスする?」
そして、次の瞬間には小悪魔に押し倒されていた小さな身体。
「ひっ!やめなさいよ!」
気丈なはずのベロニカちゃん瞬時に涙目。
「おいマジでいい加減にしろって」
カミュくんのヘルプが入る。
お膳立てが必要とはいえ、マルティナさんに力で対抗できる数少ない存在が彼女を羽交い締めにする。
その隙をついてセーニャさんが素早くベロニカちゃんを助け出した。
「怖かった…」
「可哀想なお姉様…!」
カミュくんもセーニャさんも優しいなー。
ベロニカちゃん愛されてるなー。
「ついでに私のことも助けてくれないかなー」
「なんでなの?そもそもエルザちゃんピンチでもなんでもないじゃなぁい?」
シルビアさんに後ろからもはや普通に抱きしめられていると言って良い状況。
若干の慣れが入ってきた自分が嫌だ。
「…ベロニカちゃんと私、どこで差がついたんだろう」
「そりゃあアナタ、本気で嫌がってないからよ」
くすくすという笑い声が、妙に耳に残った。
未だにまったく収拾がつかないカオスな宴会を勇者はにこにこと眺めていた。
自分より年上の人間たちが酔いに任せてバカなことをするのは呆れないでもなかったが、それでも彼にとっては面白いものだった。