負けん気と現実
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やりすぎたかとは思ったがガレムソンはなんだかんだで無事らしい。
ほっと一息つく間もなく決勝戦に向かう。
回復は医療スタッフが行ってくれたから、体力に関しては万全だ。
準決勝で思わぬ苦戦を強いられたが、そうは言ってもここまで来られたのだからあとは優勝を狙うしかない。
最高潮の歓声の中武舞台にあがった先にいたのは。
「む。エルザか」
「グレイグさま…」
思いつき得る限り最悪の相手だった。
「なんで…出場なさってるんですか」
びっくりだよ。勝てるわけないよこんなの。
思った以上のクソ展開に恨み言を内心吐き続けていることは露知らず、グレイグさまはなんでもないことのように答える。
「腕試しだ、あと景品も割と魅力的だったのでな」
優勝賞品のロイヤルチャームとロイヤルバッジのことだろう。
確かにあると便利な類だし現に私もちょっとほしかったのだが…諦めざるを得ない。
なるほど、と返したあと考え込む。
なんとか勝つ手段はないか、と。
あるわけがなかった。
相手はあのデルカダールの将軍にして勇者の盾である。
そして何よりマルティナさんとまともにやりあえる。設定山盛り、控え目に言っても化け物だ。
「俺は嬉しいぞ、エルザ」
「…はい?」
「初戦で姫様をくだした以外はまったくレベルが低い大会でいささかがっかりしたものだが、まさか決勝戦でお前と会えるとはな」
いや仕える相手だろくだすなよと言う間もなく、グレイグ将軍は馬を模した真っ白な大剣を悠然と構える。
「その強さ、俺が試してやろう」
普段こそ残念な部分が目立つ元上司だが、こと戦いにおいては別だ。
2メートルあるんじゃないかという高身長による威圧感は元より、その気迫だけとっても充分押しつぶされそうだ。
不遜なまでの微笑みは一周して優しさすら感じる。
獲物をどうすれば苦しませずに殺せるかというような、完全に捕食者のそれだが。
実力に関しては今更語るまでもない。
勝てるわけがなかった。
私は占い師ではない。予知能力もない。
が、多分天馬の大剣にガレムソンよりも無惨に斬り転がされる未来はよく見えた。
医療スタッフもいるし、グレイグさま自身回復魔法を使うことはできるから、死ぬことはないのだろうけれど。
「グレイグさま…」
「なんだ」
「降参しても良いですか」
「駄目に決まっているだろう」
グレイグさまは眉間に皺を寄せる。
この方は私を割と過大評価している。試合になんかなるわけないのだ。
ある程度実力が拮抗している相手なら工夫ができる。
実力に差があっても地形や道具を駆使すればグレイグさますら出し抜けることもあるかも知れない。
しかしここは戦うための戦いの舞台だ。
平坦な土地に余計なものは一切ない殺風景では、得意の小細工は介入し得ない。
ピオリムやバイキルトといったがガレムソン戦でのバフもとっくに切れている。
かけ直さなくてはならないが――果たして私の手の内を粗方知り尽くしているグレイグさまがそれを大人しくさせてくれるかは甚だ疑問だ。
というか考えるまでもない。当たった時点で、否この方が参加していた時点でほぼ詰みである。
「なんでですか。グレイグさまは弱いものいじめする趣味でもあるんですか?」
剣に手をかけつつも、かわいらしく頬を膨らませてみる。
できれば戦闘に入る前に終わらせたい一心だ。負けでいいから。
こっちの負けでいいからもう怪我とかしたくない。
「……あー。やはり言わねばわからんか」
一方でグレイグさまは嫌そうな顔になった。
なぜかとても言いにくそうに、しかしはっきりと予想はできたがとんでもない事実を告げられる。
「ゴリアテも観ているぞ」
一瞬、観客席は静かになった気がした。
多分本当はそんなことはなかったのだけど、そしてその時彼のその声だけはこちらに届いた。のかも知れない。
『きゃーん!エルザちゃんがんばってぇ!そんな筋肉おじさんなんかぶっ飛ばしちゃってーん!!』
あ、力が漲ってくる。
光に包まれ、ゾーンの境地に突入。
マジか、と自分でも思ったけれど、(嫌な意味で)奇跡を目の当たりにしたグレイグさまはドン引きしていた。
これでまともにやりあえる――わけでもないのだろうが。
「特攻じゃあああああ!!!!!」
「エルザ!?」
キャラも何もかも無視してグレイグさまに飛びかかる。
死ぬ気で勝つことだけを目標にして。
だって私も恋する乙女。
どうせ負けるにしたって、シルビアさんにかっこ悪いところは見せられない。
ほっと一息つく間もなく決勝戦に向かう。
回復は医療スタッフが行ってくれたから、体力に関しては万全だ。
準決勝で思わぬ苦戦を強いられたが、そうは言ってもここまで来られたのだからあとは優勝を狙うしかない。
最高潮の歓声の中武舞台にあがった先にいたのは。
「む。エルザか」
「グレイグさま…」
思いつき得る限り最悪の相手だった。
「なんで…出場なさってるんですか」
びっくりだよ。勝てるわけないよこんなの。
思った以上のクソ展開に恨み言を内心吐き続けていることは露知らず、グレイグさまはなんでもないことのように答える。
「腕試しだ、あと景品も割と魅力的だったのでな」
優勝賞品のロイヤルチャームとロイヤルバッジのことだろう。
確かにあると便利な類だし現に私もちょっとほしかったのだが…諦めざるを得ない。
なるほど、と返したあと考え込む。
なんとか勝つ手段はないか、と。
あるわけがなかった。
相手はあのデルカダールの将軍にして勇者の盾である。
そして何よりマルティナさんとまともにやりあえる。設定山盛り、控え目に言っても化け物だ。
「俺は嬉しいぞ、エルザ」
「…はい?」
「初戦で姫様をくだした以外はまったくレベルが低い大会でいささかがっかりしたものだが、まさか決勝戦でお前と会えるとはな」
いや仕える相手だろくだすなよと言う間もなく、グレイグ将軍は馬を模した真っ白な大剣を悠然と構える。
「その強さ、俺が試してやろう」
普段こそ残念な部分が目立つ元上司だが、こと戦いにおいては別だ。
2メートルあるんじゃないかという高身長による威圧感は元より、その気迫だけとっても充分押しつぶされそうだ。
不遜なまでの微笑みは一周して優しさすら感じる。
獲物をどうすれば苦しませずに殺せるかというような、完全に捕食者のそれだが。
実力に関しては今更語るまでもない。
勝てるわけがなかった。
私は占い師ではない。予知能力もない。
が、多分天馬の大剣にガレムソンよりも無惨に斬り転がされる未来はよく見えた。
医療スタッフもいるし、グレイグさま自身回復魔法を使うことはできるから、死ぬことはないのだろうけれど。
「グレイグさま…」
「なんだ」
「降参しても良いですか」
「駄目に決まっているだろう」
グレイグさまは眉間に皺を寄せる。
この方は私を割と過大評価している。試合になんかなるわけないのだ。
ある程度実力が拮抗している相手なら工夫ができる。
実力に差があっても地形や道具を駆使すればグレイグさますら出し抜けることもあるかも知れない。
しかしここは戦うための戦いの舞台だ。
平坦な土地に余計なものは一切ない殺風景では、得意の小細工は介入し得ない。
ピオリムやバイキルトといったがガレムソン戦でのバフもとっくに切れている。
かけ直さなくてはならないが――果たして私の手の内を粗方知り尽くしているグレイグさまがそれを大人しくさせてくれるかは甚だ疑問だ。
というか考えるまでもない。当たった時点で、否この方が参加していた時点でほぼ詰みである。
「なんでですか。グレイグさまは弱いものいじめする趣味でもあるんですか?」
剣に手をかけつつも、かわいらしく頬を膨らませてみる。
できれば戦闘に入る前に終わらせたい一心だ。負けでいいから。
こっちの負けでいいからもう怪我とかしたくない。
「……あー。やはり言わねばわからんか」
一方でグレイグさまは嫌そうな顔になった。
なぜかとても言いにくそうに、しかしはっきりと予想はできたがとんでもない事実を告げられる。
「ゴリアテも観ているぞ」
一瞬、観客席は静かになった気がした。
多分本当はそんなことはなかったのだけど、そしてその時彼のその声だけはこちらに届いた。のかも知れない。
『きゃーん!エルザちゃんがんばってぇ!そんな筋肉おじさんなんかぶっ飛ばしちゃってーん!!』
あ、力が漲ってくる。
光に包まれ、ゾーンの境地に突入。
マジか、と自分でも思ったけれど、(嫌な意味で)奇跡を目の当たりにしたグレイグさまはドン引きしていた。
これでまともにやりあえる――わけでもないのだろうが。
「特攻じゃあああああ!!!!!」
「エルザ!?」
キャラも何もかも無視してグレイグさまに飛びかかる。
死ぬ気で勝つことだけを目標にして。
だって私も恋する乙女。
どうせ負けるにしたって、シルビアさんにかっこ悪いところは見せられない。