イエストリック!ノータッチ!
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「邪魔するぞ、クソビッチ」
いつものようにチャイム責め。ご近所迷惑を考えるとたまらずドアを開けざるを得なかった。
絹のような金髪の細面。けれど口はハチャメチャに悪いどチンピラ。
マスク・ザ・ハンサムは無礼も詫びず、更に何の遠慮もすることなくずかずかと我が家に上がり込んでくる。
「お茶も出ないのかこの家は?マナーも品もあったものじゃないな」
勝手知ったる我が家というか。テーブルにまさしく勝手につき勝手なことを言って私を睨む。
「いや、っていうか用もないのにうちに来るのいい加減やめてくれる?
シルビアさんにいらない疑いかけられたくないんだけど」
「は?ボクはそのいらない疑いをかけさせたくてわざと来ている。
それでお前らの仲にヒビでも入れば良いんだ」
…最終的に私がシルビアさんと別れたら最高だ、とでも言うのだろうか。
でも仮にうまくいったとしても、それでは彼の性格上、ハンサムの方は向かない気がする。
そこまで考えてるのかな――いやなさそうだ。
悪い笑みを浮かべているあたり、多分彼は本気で、そしてとてもポジティブにも思っている…。
まあ、いいか。さっさとお茶を飲んで帰ってもらおう。幸いハロウィン行事も近い。
トリック・オア・トリートと近所の悪ガキが家に菓子をねだりに来た時の対策もすでに済んでいる。
保存していたかぼちゃクリームのロールケーキを切る。
さえずりのみつ入りのいつもの紅茶に添えるには甘すぎるかもしれないけれど、ハンサムはかなり甘党だからこれで良い。
ちなみにシルビアさんや私はそこまでではないから、お茶菓子がこういうケーキの時は少なくともさえずりのみつは抜いている。
…もしくはシルビアさんが持ち込んでくるコーヒーなんかも最近は多かった。ミルを回すのが少々面倒だけれども。
「へえ。今日は悪くない茶菓子だ。…いただきます」
わざわざきちんと手を合わせるあたり育ちは悪くないのだろう。
あれだけぎゃんぎゃんとうるさかった空間が、ロールケーキひとつで静かになる。
「…それ食べたら帰ってね。何の用事で来てるのか知らないけど」
「だからさっき言っただろう。お前と、シルビアさんの仲を引き裂く作戦を。ボクは敢行している」
「もしかして呑んでる?」
「いいや。ボクはあまり強くないからな。ビビアンかサイデリアがいないところでは呑まないことにしてるんだ」
ふたりとも信用がおける人物なのだろうけど、それこそ異性の前で潰れるほど呑むのはどうなんだろうと思う。
…ハンサムはこれでシルビアさんよりよほどガチの人だから、実際は無問題なのかも知れないけれど。
自己管理ができているのかいないのかよくわからない態度に呆れながら、自分のぶんのケーキを口に運ぶ。
かぼちゃ風味のスポンジとクリームの中に、かぼちゃのシロップ煮を刻んだものが入っている。かぼちゃ尽くし。これはおいしい。
プチ現実逃避をしながらハンサムを窺う。
やっぱりきれいな顔はしてるんだよなぁ。
フォークを口に運ぶ所作の、それだけで絵になる程度には。
お茶を飲むときは少し目もとが和らぐ。まさに黙ってさえいればイケメン。
シルビアさんを愛してやまないという揺るぎない大前提はある。…とはいっても私は元・彼のファンだ。
顔だけ言えばどちらかというと結構好みだなと思ってしまう。
「…何をジロジロ見ている。気持ち悪い」
「いや、本当に黙ってればイケメンなのに惜しいなって」
「お前に容姿を褒められてもな」
少しきまり悪そうにハンサムは言葉を切った。いつものごくかわいくない反応。
吐き捨てるように、たとえばこんなふうに続けることが想像できる。
【シルビアさんに言われるならともかく】
そんな感じの台詞は、しかしいつまで経ってもやって来ない。
もう一度彼の方を窺えば、荒かったはずの態度はまるでなかったかのように視線を逸らし、カップで口元を隠すハンサムがいた。
「え」
「うるさい」
「もしかして照れてる?」
「黙れ。犯すぞ」
「…前シルビアさん以外じゃ勃たないとか言ってなかった?」
下ネタに下ネタで返す。
お互いにシルビアさんの前では絶対できない発言をしたと自覚し、もう一度沈黙が支配する。
すでにハンサムの皿の上も、カップの中身も空だ。私も同様。
いつものようにチャイム責め。ご近所迷惑を考えるとたまらずドアを開けざるを得なかった。
絹のような金髪の細面。けれど口はハチャメチャに悪いどチンピラ。
マスク・ザ・ハンサムは無礼も詫びず、更に何の遠慮もすることなくずかずかと我が家に上がり込んでくる。
「お茶も出ないのかこの家は?マナーも品もあったものじゃないな」
勝手知ったる我が家というか。テーブルにまさしく勝手につき勝手なことを言って私を睨む。
「いや、っていうか用もないのにうちに来るのいい加減やめてくれる?
シルビアさんにいらない疑いかけられたくないんだけど」
「は?ボクはそのいらない疑いをかけさせたくてわざと来ている。
それでお前らの仲にヒビでも入れば良いんだ」
…最終的に私がシルビアさんと別れたら最高だ、とでも言うのだろうか。
でも仮にうまくいったとしても、それでは彼の性格上、ハンサムの方は向かない気がする。
そこまで考えてるのかな――いやなさそうだ。
悪い笑みを浮かべているあたり、多分彼は本気で、そしてとてもポジティブにも思っている…。
まあ、いいか。さっさとお茶を飲んで帰ってもらおう。幸いハロウィン行事も近い。
トリック・オア・トリートと近所の悪ガキが家に菓子をねだりに来た時の対策もすでに済んでいる。
保存していたかぼちゃクリームのロールケーキを切る。
さえずりのみつ入りのいつもの紅茶に添えるには甘すぎるかもしれないけれど、ハンサムはかなり甘党だからこれで良い。
ちなみにシルビアさんや私はそこまでではないから、お茶菓子がこういうケーキの時は少なくともさえずりのみつは抜いている。
…もしくはシルビアさんが持ち込んでくるコーヒーなんかも最近は多かった。ミルを回すのが少々面倒だけれども。
「へえ。今日は悪くない茶菓子だ。…いただきます」
わざわざきちんと手を合わせるあたり育ちは悪くないのだろう。
あれだけぎゃんぎゃんとうるさかった空間が、ロールケーキひとつで静かになる。
「…それ食べたら帰ってね。何の用事で来てるのか知らないけど」
「だからさっき言っただろう。お前と、シルビアさんの仲を引き裂く作戦を。ボクは敢行している」
「もしかして呑んでる?」
「いいや。ボクはあまり強くないからな。ビビアンかサイデリアがいないところでは呑まないことにしてるんだ」
ふたりとも信用がおける人物なのだろうけど、それこそ異性の前で潰れるほど呑むのはどうなんだろうと思う。
…ハンサムはこれでシルビアさんよりよほどガチの人だから、実際は無問題なのかも知れないけれど。
自己管理ができているのかいないのかよくわからない態度に呆れながら、自分のぶんのケーキを口に運ぶ。
かぼちゃ風味のスポンジとクリームの中に、かぼちゃのシロップ煮を刻んだものが入っている。かぼちゃ尽くし。これはおいしい。
プチ現実逃避をしながらハンサムを窺う。
やっぱりきれいな顔はしてるんだよなぁ。
フォークを口に運ぶ所作の、それだけで絵になる程度には。
お茶を飲むときは少し目もとが和らぐ。まさに黙ってさえいればイケメン。
シルビアさんを愛してやまないという揺るぎない大前提はある。…とはいっても私は元・彼のファンだ。
顔だけ言えばどちらかというと結構好みだなと思ってしまう。
「…何をジロジロ見ている。気持ち悪い」
「いや、本当に黙ってればイケメンなのに惜しいなって」
「お前に容姿を褒められてもな」
少しきまり悪そうにハンサムは言葉を切った。いつものごくかわいくない反応。
吐き捨てるように、たとえばこんなふうに続けることが想像できる。
【シルビアさんに言われるならともかく】
そんな感じの台詞は、しかしいつまで経ってもやって来ない。
もう一度彼の方を窺えば、荒かったはずの態度はまるでなかったかのように視線を逸らし、カップで口元を隠すハンサムがいた。
「え」
「うるさい」
「もしかして照れてる?」
「黙れ。犯すぞ」
「…前シルビアさん以外じゃ勃たないとか言ってなかった?」
下ネタに下ネタで返す。
お互いにシルビアさんの前では絶対できない発言をしたと自覚し、もう一度沈黙が支配する。
すでにハンサムの皿の上も、カップの中身も空だ。私も同様。