マスク・ザ・ハンサム
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「…先ほどは悪かったな。ボクは仮面がないと、まともに話せない性分なんだ」
限りなく面倒な性格をさも当然のように語るハンサムは、すっかり機嫌を直していた。
割られた自分の仮面の代わりに、愛しのシルビアさんから自前(なぜ持っているかは触れないのが優しさ)
のものをもらったためである。
それを身につけ、彼はとても高圧的に謝罪してきた。
これだけで充分閉口ものである。
「でも…、ふたりはなんでケンカなんてしていたの?」
顔見知り二人がいがみ合っていることがシルビアさんは残念なのだろう。
むしろこちらの心が痛むくらいしょんぼりした表情で聞いてくる。
「それは…」
お姫様を二人の騎士が取り合ってました。
…なんてまさか根っからの騎士を前に冗談でも言えるわけがない。
考えあぐね、でも泣かせてしまった手前ハンサムに対しても遠慮が出てしまい、声が裏返った。
「な、んていうか、ハンサムさんが酔っ払って絡んできたっていうか、
ってどうしたんだろー?、カジノで負けたのかなぁ〜?」
「ああ、腹いせだよ。…お前、ケンカ馴れしてそうだったしな。
実力もありそうだし、そう大した怪我もさせないだろうと踏んだ」
ハンサムと視線がかち合う。
が、先ほどまでのような悪意に塗れたモノではない。
まさか会うとは思わなかったシルビアさんに会ってしまったことで、共通の目的を持ってしまったのだ。
彼に嫌われたくないという、非常に根源的な願望。
ライバル同士蹴落とし合いをするよりも、今だけは共同戦線を張ったほうが良いことは心得ていた。
この人の前では。特に。
「そう。それなら仕方ないわね」
シルビアさんは短く返す。
「と、言うとでも思った?」
納得してくれたと思ったらそうでもなかった。
シルビアさんは人は良いが簡単に騙されるようなタイプではない。
それに私も多分ハンサムも、基本的にはそこまで策を弄せない。
「アタシもずいぶん舐められたものね。そんなので納得するわけないじゃないの。
ハンサムちゃんは簡単に人に絡んで行く子じゃないって知ってるんだから!
…エルザちゃんはまあ…うん、そうね」
「えっ」
喜びと焦りが入り交じるハンサムの傍ら、私は謎の肯定をされた。
「とにかく…本当のことを教えてちょうだい。
いい年した大人のイザコザに首を突っ込むのもヤボかもしれないけど…
でも…このまま放っておくこともできないわ」
胸に手を当て、シルビアさんは沈鬱な顔をする。
その優しさや人としての美しさそのものが、今回の争いの原因になったのだからなんとも皮肉な話である。
と他人事のように思う。
「…気にいらなかったんだよ」
その悲しげな視線に耐えかねたのか、ハンサムの告解。
「その女が!ボクは気にいらなかった。
大した器量でもないのにシルビアさんの彼女みたいな顔して…当たり前のようにいつでも側にいて、
なんでだよって思ったものさ…。シルビアさんはボクのカレシなのに……」
最後はもう、恋敵という立場も忘れ同情して
しまいそうになるくらいに声が震えていた。
新たな仮面を被ってなお彼は泣きそうになっていた。
「…私もはっきり言えば良かったんだけど、結局売り言葉に買い言葉で、決闘することになったの」
そんな哀れな彼を突き放すことが私にはできなかった。
同じく細かい経緯は伏せ、しかしありのままを語る。
「どちらが、シルビアさんに相応しいか」
「ちょっと待って」
まさかのストップが入った。
「どうしたの、シルビアさん。人の話を遮るなんて、らしくない」
「え、ええ、ごめんなさい。…なんていうか、アナタたちそんな昔の恋の物語みたいなことやってたの?
その、なんていうかお姫様を巡って争う騎士みたいな…」
その例えはありだったのかということに多少の驚きを覚えつつ答える。
「うんなんか…そんな感じ」
シルビアさんは基本的にこの手のある種ロマンチックなことは好きなようだ。
しかし今回ばかりは別なのだろう。
これ以上ないくらい困惑している。
ケンカの仲裁に入ったら原因が自分だった、なんてふつう夢にも思わない。
普段は良くも悪くも周囲を巻き込むタイプの人間が、完全に巻き込まれていたのである。
「とにかく、私が勝った。ハンサムが負けた。そこにちょうどシルビアさんたちが来たってわけ」
そ、そう、とシルビアさんは言ったっきり黙り、考え込む。
そのあまりにも真剣な視線は、あるいは魔物と対峙した時より勝った。
ひょっとすると、彼のショーよりもだろうか。
たっぷりと黙り、たっぷりと間をとって深呼吸して尚、シルビアさんの顔から困惑は抜けない。
「ねえ、ハンサムちゃん。本当にごめんなさい。
アタシそもそも、ハンサムちゃんの恋人になった覚えがないのだけど…」
これ以上なく申し訳なさそうに眉尻を下げ謝罪する。
そこにもし嘘があるなら、シルビアさんはこの上なく恐ろしい人物だ。
そう思わせるくらい真摯な言い回しだった。
「は?え?」
そして当のハンサムの声は裏返っていた。
全く理解できないといった風だ。
顔を赤く青くしながら、なんでと声を絞り出す。
シルビアさんは首を傾げつつも、それに答える。
「アタシ…もしかしたらアナタが誤解してしまうようなことを言ったのかも知れないわね…。
そうだとしたら、…本当に申し訳がないわ」
そこでシルビアさんは一度言葉を切る。
でも、と付け足し私の方を見る。
二三歩歩み寄り、軽く肩を抱かれる。
確固たる口調で、続けた。
「アタシ、この子が大事なの」
その時こそ申し訳なさそうな、しおらしい態度をしていたシルビアさんだが、
このあと下記の理由でめちゃくちゃ説教された。
第一にプロの闘士からの不要な喧嘩を買ったこと(勝ったことは褒められた)。
そして第二に話の流れとはいえ、シルビアさんをトロフィー扱いしたこと。
とばっちりもいいところである。
限りなく面倒な性格をさも当然のように語るハンサムは、すっかり機嫌を直していた。
割られた自分の仮面の代わりに、愛しのシルビアさんから自前(なぜ持っているかは触れないのが優しさ)
のものをもらったためである。
それを身につけ、彼はとても高圧的に謝罪してきた。
これだけで充分閉口ものである。
「でも…、ふたりはなんでケンカなんてしていたの?」
顔見知り二人がいがみ合っていることがシルビアさんは残念なのだろう。
むしろこちらの心が痛むくらいしょんぼりした表情で聞いてくる。
「それは…」
お姫様を二人の騎士が取り合ってました。
…なんてまさか根っからの騎士を前に冗談でも言えるわけがない。
考えあぐね、でも泣かせてしまった手前ハンサムに対しても遠慮が出てしまい、声が裏返った。
「な、んていうか、ハンサムさんが酔っ払って絡んできたっていうか、
ってどうしたんだろー?、カジノで負けたのかなぁ〜?」
「ああ、腹いせだよ。…お前、ケンカ馴れしてそうだったしな。
実力もありそうだし、そう大した怪我もさせないだろうと踏んだ」
ハンサムと視線がかち合う。
が、先ほどまでのような悪意に塗れたモノではない。
まさか会うとは思わなかったシルビアさんに会ってしまったことで、共通の目的を持ってしまったのだ。
彼に嫌われたくないという、非常に根源的な願望。
ライバル同士蹴落とし合いをするよりも、今だけは共同戦線を張ったほうが良いことは心得ていた。
この人の前では。特に。
「そう。それなら仕方ないわね」
シルビアさんは短く返す。
「と、言うとでも思った?」
納得してくれたと思ったらそうでもなかった。
シルビアさんは人は良いが簡単に騙されるようなタイプではない。
それに私も多分ハンサムも、基本的にはそこまで策を弄せない。
「アタシもずいぶん舐められたものね。そんなので納得するわけないじゃないの。
ハンサムちゃんは簡単に人に絡んで行く子じゃないって知ってるんだから!
…エルザちゃんはまあ…うん、そうね」
「えっ」
喜びと焦りが入り交じるハンサムの傍ら、私は謎の肯定をされた。
「とにかく…本当のことを教えてちょうだい。
いい年した大人のイザコザに首を突っ込むのもヤボかもしれないけど…
でも…このまま放っておくこともできないわ」
胸に手を当て、シルビアさんは沈鬱な顔をする。
その優しさや人としての美しさそのものが、今回の争いの原因になったのだからなんとも皮肉な話である。
と他人事のように思う。
「…気にいらなかったんだよ」
その悲しげな視線に耐えかねたのか、ハンサムの告解。
「その女が!ボクは気にいらなかった。
大した器量でもないのにシルビアさんの彼女みたいな顔して…当たり前のようにいつでも側にいて、
なんでだよって思ったものさ…。シルビアさんはボクのカレシなのに……」
最後はもう、恋敵という立場も忘れ同情して
しまいそうになるくらいに声が震えていた。
新たな仮面を被ってなお彼は泣きそうになっていた。
「…私もはっきり言えば良かったんだけど、結局売り言葉に買い言葉で、決闘することになったの」
そんな哀れな彼を突き放すことが私にはできなかった。
同じく細かい経緯は伏せ、しかしありのままを語る。
「どちらが、シルビアさんに相応しいか」
「ちょっと待って」
まさかのストップが入った。
「どうしたの、シルビアさん。人の話を遮るなんて、らしくない」
「え、ええ、ごめんなさい。…なんていうか、アナタたちそんな昔の恋の物語みたいなことやってたの?
その、なんていうかお姫様を巡って争う騎士みたいな…」
その例えはありだったのかということに多少の驚きを覚えつつ答える。
「うんなんか…そんな感じ」
シルビアさんは基本的にこの手のある種ロマンチックなことは好きなようだ。
しかし今回ばかりは別なのだろう。
これ以上ないくらい困惑している。
ケンカの仲裁に入ったら原因が自分だった、なんてふつう夢にも思わない。
普段は良くも悪くも周囲を巻き込むタイプの人間が、完全に巻き込まれていたのである。
「とにかく、私が勝った。ハンサムが負けた。そこにちょうどシルビアさんたちが来たってわけ」
そ、そう、とシルビアさんは言ったっきり黙り、考え込む。
そのあまりにも真剣な視線は、あるいは魔物と対峙した時より勝った。
ひょっとすると、彼のショーよりもだろうか。
たっぷりと黙り、たっぷりと間をとって深呼吸して尚、シルビアさんの顔から困惑は抜けない。
「ねえ、ハンサムちゃん。本当にごめんなさい。
アタシそもそも、ハンサムちゃんの恋人になった覚えがないのだけど…」
これ以上なく申し訳なさそうに眉尻を下げ謝罪する。
そこにもし嘘があるなら、シルビアさんはこの上なく恐ろしい人物だ。
そう思わせるくらい真摯な言い回しだった。
「は?え?」
そして当のハンサムの声は裏返っていた。
全く理解できないといった風だ。
顔を赤く青くしながら、なんでと声を絞り出す。
シルビアさんは首を傾げつつも、それに答える。
「アタシ…もしかしたらアナタが誤解してしまうようなことを言ったのかも知れないわね…。
そうだとしたら、…本当に申し訳がないわ」
そこでシルビアさんは一度言葉を切る。
でも、と付け足し私の方を見る。
二三歩歩み寄り、軽く肩を抱かれる。
確固たる口調で、続けた。
「アタシ、この子が大事なの」
その時こそ申し訳なさそうな、しおらしい態度をしていたシルビアさんだが、
このあと下記の理由でめちゃくちゃ説教された。
第一にプロの闘士からの不要な喧嘩を買ったこと(勝ったことは褒められた)。
そして第二に話の流れとはいえ、シルビアさんをトロフィー扱いしたこと。
とばっちりもいいところである。