DQ11
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喉が渇いた。
まだ夜明け前にも関わらず目がさめたのは、それが原因だと思う。実際気になる程度にはカラカラだ。
まだ当然けだるい体ではあるが水分補給をしようと決意し、闇の中身を起こそうとする。
…と、身体の上に掛け布団以外の何かが乗っていることに気づいた。
その正体はすぐにわかった。腕だ。もっと正確に言えば何者かに抱き締められている。
え、ちょ、なんで。と一瞬思いかけたが、すぐに数時間、あるいは数十分前を思い出す。
シルビアさん。
「そうだ…」
声にならない声が思わず口をつく。
私この人に抱かれて、そしてそのまま眠ったのか。
混濁していた意識がクリアになりながら、羞恥心が増していく。
そりゃ常日ごろから抱かれたい抱かれたい言っていたが。
イキがってマルティナさんにそんなことを言っていたが。
いざ現実になると中々かなり相当くるものがある。
悪い気分ではもちろんないけれど、不思議と現実感もなかった。
浮遊感というか、よくわからないが、そういうやつ。
…そういう思い悩みは一先ず置いておくとして。
とにかく水がほしい。
一度意識してしまうと強く欲してしまうのが人の性と言うものだ。
この場合、あくまで飲料水の話だが。
でも今私はシルビアさんの腕に拘束されている。
すうすうとかわいい寝息を立てているくせにやたらとがっちりだ。
背中に思ったよりたくましい胸板を感じる。
普段はやや華奢に思えなくもないのは着痩せするタイプだからなのか、
あえてそう見える服を着ているからなのか。
そういえばストライプって痩せて見える視覚効果があるとかどこかで聞いたことがある。
もしかしたら当たってるかも知れない考察だった。
だって彼、おとめだもの。
そしてそのおとめに抱かれたのは私だけれど。
結局どう飛ばそうと現実にまで思考は戻ってくる。
実際には何も口にしていないにも関わらず、
甘いような苦いようななんとも言えない味のようなものを感じながら、
起き上が――れなかった。
そういえばシルビアさんの腕の中だった。
完全に閉じ込められていた。
こう、それだけで幸せな気持ちで一杯にはなるのだけれど今は水の方が重要で。
なんとか幸せそうに眠り続ける彼を起こさないように、細心の注意を払いながらそっとベッドを抜け出す。
「ん…」
もぞもぞとした動きが不快だったのだろう。
シルビアさんは僅かにうめき声をあげる。
不可抗力とはいえ申し訳なくなりながら自分の荷物から水筒を取り出し、生ぬるい中身をくっと飲みこむ。
もちろんなんの変哲もない水なので無味なのだが、それでもよほど渇いていたからか。充分おいしかった。
「エルザ…ちゃん…?」
水筒を元あった場所に戻したタイミングで、シルビアさんが目を覚ましてしまった。
「どこか行ったの?」
ぼんやりと虚ろなかすれた声で呼びかけられる。
そういう意図はもちろんないのだろうけれど、妙に色っぽくてどきりとする。
「ここにいます」
「あら」
「喉が渇いちゃって」
「そう」
普段のシルビアさんを考えると失礼ながら恐ろしいくらいに口数が少ない。
若干の違和感を覚えつつまあ寝起きだし、と納得しつつ、
そういえば全裸だったことを思い出す。
まだ夜明け前でほとんど真っ暗だったし、シルビアさんも寝ていたからさほど気にはならなかったけれど。
――起きたら別だ、恥ずかしい。
そういうわけで着てから寝ようと服を出そうとした矢先。
「もう起きるの?いくらなんでもまだ早いわよ」
とくるわけである。シルビアさんから。
彼に背を向けたまま答える。
「その前に服着ようと思って。その…恥ずかしいから」
「今更なこと言うのね。もっと恥ずかしいことしたのに」
そりゃそうだけど。身も蓋もない正論に黙り込む羽目になる。
案外、無理矢理起こされて気が悪いのかも知れない。
謝ろうかと口を開いた時。
「…でもそういうシャイなところがかわいいわ」
まさかのオッケーだった。
…たぶん今顔が真っ赤になっているだろうけど、しょせん闇の中。わかりはしない。
だからなんだという話だが。
「エルザちゃん」
はい、と返事して最低限振り向く。
シルビアさんはベッドに寝転がったまま、少しだけ布団を捲る動作をしてから腕を伸ばしてきた。
「おいで」
闇のせいで彼がどんな顔をしているのかわからない。
どんな意図でそんなことを言っているのか知るすべもない。
けれども短い誘いの言葉はやはり色っぽく、甘美で、どうにも抗いがたい。
内心で首を必死に振った。
「でも。服…」
「あら、ヤボなのはナシよ。…どうしてもイヤなら良いけど。これは単に、アタシのワガママだから」
シルビアさんはどんな顔をしているか知れない。
彼の心情は現状のように闇に紛れさせなくたってわかりようもない。
『私を誘う』以外のなんの感情も悟らせない甘い甘い蜜を使った罠のような声。
「でもできれば、ずっとエルザちゃんを感じて眠りたいの。さっきすっごく幸せだったから」
そんな言い方をされて誰が断れるのだろうか。
「シルビアさん…ちょっとズルすぎない?」
ぺたんという足音すら聞こえるくらい静かで、ある種研ぎ澄まされた空間。
大切なところを隠しながら不器用にベッドまで歩み寄った私を、
シルビアさんはいらっしゃいと出迎えてくれる。
「アタシは、本当のことを言っただけよ」
寝転び、寄り添った私をぎゅっと抱きしめて、そんなことを囁かれる。
吐息が優しく耳を撫でる。
布すら邪魔できない、正真正銘のゼロ距離。
性欲が抑えられなかったという言い訳が通用しそうな密着感。
しかしシルビアさんは何をするでもなく、私のおでこにひとつキスをした。
「とっても嬉しいわ、エルザちゃん。大好きよ、おやすみ」
私も同じようなことを返して、目を閉じた。
まだ夜明け前にも関わらず目がさめたのは、それが原因だと思う。実際気になる程度にはカラカラだ。
まだ当然けだるい体ではあるが水分補給をしようと決意し、闇の中身を起こそうとする。
…と、身体の上に掛け布団以外の何かが乗っていることに気づいた。
その正体はすぐにわかった。腕だ。もっと正確に言えば何者かに抱き締められている。
え、ちょ、なんで。と一瞬思いかけたが、すぐに数時間、あるいは数十分前を思い出す。
シルビアさん。
「そうだ…」
声にならない声が思わず口をつく。
私この人に抱かれて、そしてそのまま眠ったのか。
混濁していた意識がクリアになりながら、羞恥心が増していく。
そりゃ常日ごろから抱かれたい抱かれたい言っていたが。
イキがってマルティナさんにそんなことを言っていたが。
いざ現実になると中々かなり相当くるものがある。
悪い気分ではもちろんないけれど、不思議と現実感もなかった。
浮遊感というか、よくわからないが、そういうやつ。
…そういう思い悩みは一先ず置いておくとして。
とにかく水がほしい。
一度意識してしまうと強く欲してしまうのが人の性と言うものだ。
この場合、あくまで飲料水の話だが。
でも今私はシルビアさんの腕に拘束されている。
すうすうとかわいい寝息を立てているくせにやたらとがっちりだ。
背中に思ったよりたくましい胸板を感じる。
普段はやや華奢に思えなくもないのは着痩せするタイプだからなのか、
あえてそう見える服を着ているからなのか。
そういえばストライプって痩せて見える視覚効果があるとかどこかで聞いたことがある。
もしかしたら当たってるかも知れない考察だった。
だって彼、おとめだもの。
そしてそのおとめに抱かれたのは私だけれど。
結局どう飛ばそうと現実にまで思考は戻ってくる。
実際には何も口にしていないにも関わらず、
甘いような苦いようななんとも言えない味のようなものを感じながら、
起き上が――れなかった。
そういえばシルビアさんの腕の中だった。
完全に閉じ込められていた。
こう、それだけで幸せな気持ちで一杯にはなるのだけれど今は水の方が重要で。
なんとか幸せそうに眠り続ける彼を起こさないように、細心の注意を払いながらそっとベッドを抜け出す。
「ん…」
もぞもぞとした動きが不快だったのだろう。
シルビアさんは僅かにうめき声をあげる。
不可抗力とはいえ申し訳なくなりながら自分の荷物から水筒を取り出し、生ぬるい中身をくっと飲みこむ。
もちろんなんの変哲もない水なので無味なのだが、それでもよほど渇いていたからか。充分おいしかった。
「エルザ…ちゃん…?」
水筒を元あった場所に戻したタイミングで、シルビアさんが目を覚ましてしまった。
「どこか行ったの?」
ぼんやりと虚ろなかすれた声で呼びかけられる。
そういう意図はもちろんないのだろうけれど、妙に色っぽくてどきりとする。
「ここにいます」
「あら」
「喉が渇いちゃって」
「そう」
普段のシルビアさんを考えると失礼ながら恐ろしいくらいに口数が少ない。
若干の違和感を覚えつつまあ寝起きだし、と納得しつつ、
そういえば全裸だったことを思い出す。
まだ夜明け前でほとんど真っ暗だったし、シルビアさんも寝ていたからさほど気にはならなかったけれど。
――起きたら別だ、恥ずかしい。
そういうわけで着てから寝ようと服を出そうとした矢先。
「もう起きるの?いくらなんでもまだ早いわよ」
とくるわけである。シルビアさんから。
彼に背を向けたまま答える。
「その前に服着ようと思って。その…恥ずかしいから」
「今更なこと言うのね。もっと恥ずかしいことしたのに」
そりゃそうだけど。身も蓋もない正論に黙り込む羽目になる。
案外、無理矢理起こされて気が悪いのかも知れない。
謝ろうかと口を開いた時。
「…でもそういうシャイなところがかわいいわ」
まさかのオッケーだった。
…たぶん今顔が真っ赤になっているだろうけど、しょせん闇の中。わかりはしない。
だからなんだという話だが。
「エルザちゃん」
はい、と返事して最低限振り向く。
シルビアさんはベッドに寝転がったまま、少しだけ布団を捲る動作をしてから腕を伸ばしてきた。
「おいで」
闇のせいで彼がどんな顔をしているのかわからない。
どんな意図でそんなことを言っているのか知るすべもない。
けれども短い誘いの言葉はやはり色っぽく、甘美で、どうにも抗いがたい。
内心で首を必死に振った。
「でも。服…」
「あら、ヤボなのはナシよ。…どうしてもイヤなら良いけど。これは単に、アタシのワガママだから」
シルビアさんはどんな顔をしているか知れない。
彼の心情は現状のように闇に紛れさせなくたってわかりようもない。
『私を誘う』以外のなんの感情も悟らせない甘い甘い蜜を使った罠のような声。
「でもできれば、ずっとエルザちゃんを感じて眠りたいの。さっきすっごく幸せだったから」
そんな言い方をされて誰が断れるのだろうか。
「シルビアさん…ちょっとズルすぎない?」
ぺたんという足音すら聞こえるくらい静かで、ある種研ぎ澄まされた空間。
大切なところを隠しながら不器用にベッドまで歩み寄った私を、
シルビアさんはいらっしゃいと出迎えてくれる。
「アタシは、本当のことを言っただけよ」
寝転び、寄り添った私をぎゅっと抱きしめて、そんなことを囁かれる。
吐息が優しく耳を撫でる。
布すら邪魔できない、正真正銘のゼロ距離。
性欲が抑えられなかったという言い訳が通用しそうな密着感。
しかしシルビアさんは何をするでもなく、私のおでこにひとつキスをした。
「とっても嬉しいわ、エルザちゃん。大好きよ、おやすみ」
私も同じようなことを返して、目を閉じた。