第一回壁ドン選手権
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「…痴話喧嘩とかマジで迷惑だからなアンタら」
「シルビアさんもキャラ作りしにくくなって大変ねー」
「本当よまったく」
「ちょっと人を重い女みたいにー!」
「あはははは」
皆すでに飽きがきていた。
ひたすら壁ドンを眺めるだけの控え目に言ってクソイベントだから当然だが。
今のだって恐らく地上一つまらない内輪漫才だと自分でも思ったけど、それですらまあまあ笑いが取れる。
仲間内だけで。
それでも運営側の私はともかく。
誰一人帰ろうとしなかったのは、仲間であるグレイグさまの勇姿を見るためで。
やがて、その時がきた。
「グレイグ様ですわ!」
セーニャさんが彼の名前を大きな声で呼び、手を振る。
白スーツに髪を結わえたおしゃれなグレイグさま(希少価値が半端ではない)
はこういう場では威風堂々としたもので、悠然と微笑み手を振り返す。
「ったく普段とはまるで別人ね」
「やる気のスイッチでもつけてんだろ」
「オフの時ももう少ししっかりしてほしいんじゃがの」
ここぞとばかりに毒づく男性陣。
そして唐突なおじさんの登場に、会場は一度静まりかえるも。
「なあ、あれデルカダールのグレイグ様じゃね?」
「ああ、どう見てもグレイグ様だ」
まさかの有名人の登場に一気に沸き立つ会場。
やはり英雄・グレイグ半端ない伝説。
しかしそもそもそんな男がこんな所で何やってんだという話だが。
しかし、誰も気にしない。
ふふんとシルビアさんが得意気に笑った。
「完全に読み通りだわ」
さて、所定の位置までたどり着いたグレイグさまと割と美人なパートナーの女性。
ここからどう立ち回るのだろうか。
先ほどの歓声はどこへやら。
会場は固唾を呑んでグレイグ将軍を見守る。
「では始めてください!」
司会者も、まさかの大物を相手に緊張を隠せない様子で開始の合図を告げた。
しかし、グレイグさまはその場を動かず。
ただ静かに佇む。
深く呼気を繰り返しながら。
「なーにやってんのかしらあいつ。…まさか」
マルティナさんが何か思い当たったようだ。
「ふんっ!」
とその時グレイグさまはかっと目を開き、気合とともに服を破る。
ついでに髪も解ける。
露わになった筋骨隆々の身体。
歴戦の傷跡。
捨て身の体勢。
このバトルマスターの特技は、文字通り守りを捨て、攻撃のみに徹する危険かつ有用なものだ。
「ぐ、グレイグ選手どうした!?」
これには司会者も大混乱。
女性も大混乱。
会場も大混乱。
むしろ私たちが大混乱。
しかし私は確かに見た。
それでもほとんど動じず、ただ真剣に見守るシルビアさんの姿を。
「危ないからどいていろ」
「はあ…」
壁ドンをするというのに、公衆の面前で半裸の男は何を勘違いしたのか女性をどける。
そして次の瞬間。
「おおおおおおお!!!!!!」
グレイグさまが、吠えた。
守りも考えぬ全力の一撃は、壁をドンするどころか粉砕する。
素手であるにも関わらず!
恐ろしいまでのパワーだ。
無残に崩れ落ちる壁。
間近で見たあまり呆然とするしかない司会者と女性。そして衝撃の展開に凍りつく会場。
しかし。
「なんてパワー…」
「すごい!さすがグレイグ様!」
「その調子で世界救ってくれー!!」
「抱いて!もういっそ抱いて!!」
それは興奮の坩堝に落ちる前兆だった。
一瞬で会場の全てを掻っ攫っていく英雄グレイグは堂々と拳をあげる。
その肉体美。
そのパワー。
その男らしさ。
元上司の大活躍に、私も思わず拍手していた。
傍らではシルビアさんが、小さくガッツポーズをしている。
普段は喧嘩ばかりの彼も、なんだかんだで幼なじみの活躍が嬉しいのだろう。
だから何かと世話を焼くのであって。
とにかく、もう優勝は決まったようなものだった。
不思議と――いや、もはやこれは必然だろう。
そう思った私の脳裏に、ふとある疑問が思い浮かんでしまう。
あれ?でもこれってそういえばなんの競技だっけ…?
「シルビアさんもキャラ作りしにくくなって大変ねー」
「本当よまったく」
「ちょっと人を重い女みたいにー!」
「あはははは」
皆すでに飽きがきていた。
ひたすら壁ドンを眺めるだけの控え目に言ってクソイベントだから当然だが。
今のだって恐らく地上一つまらない内輪漫才だと自分でも思ったけど、それですらまあまあ笑いが取れる。
仲間内だけで。
それでも運営側の私はともかく。
誰一人帰ろうとしなかったのは、仲間であるグレイグさまの勇姿を見るためで。
やがて、その時がきた。
「グレイグ様ですわ!」
セーニャさんが彼の名前を大きな声で呼び、手を振る。
白スーツに髪を結わえたおしゃれなグレイグさま(希少価値が半端ではない)
はこういう場では威風堂々としたもので、悠然と微笑み手を振り返す。
「ったく普段とはまるで別人ね」
「やる気のスイッチでもつけてんだろ」
「オフの時ももう少ししっかりしてほしいんじゃがの」
ここぞとばかりに毒づく男性陣。
そして唐突なおじさんの登場に、会場は一度静まりかえるも。
「なあ、あれデルカダールのグレイグ様じゃね?」
「ああ、どう見てもグレイグ様だ」
まさかの有名人の登場に一気に沸き立つ会場。
やはり英雄・グレイグ半端ない伝説。
しかしそもそもそんな男がこんな所で何やってんだという話だが。
しかし、誰も気にしない。
ふふんとシルビアさんが得意気に笑った。
「完全に読み通りだわ」
さて、所定の位置までたどり着いたグレイグさまと割と美人なパートナーの女性。
ここからどう立ち回るのだろうか。
先ほどの歓声はどこへやら。
会場は固唾を呑んでグレイグ将軍を見守る。
「では始めてください!」
司会者も、まさかの大物を相手に緊張を隠せない様子で開始の合図を告げた。
しかし、グレイグさまはその場を動かず。
ただ静かに佇む。
深く呼気を繰り返しながら。
「なーにやってんのかしらあいつ。…まさか」
マルティナさんが何か思い当たったようだ。
「ふんっ!」
とその時グレイグさまはかっと目を開き、気合とともに服を破る。
ついでに髪も解ける。
露わになった筋骨隆々の身体。
歴戦の傷跡。
捨て身の体勢。
このバトルマスターの特技は、文字通り守りを捨て、攻撃のみに徹する危険かつ有用なものだ。
「ぐ、グレイグ選手どうした!?」
これには司会者も大混乱。
女性も大混乱。
会場も大混乱。
むしろ私たちが大混乱。
しかし私は確かに見た。
それでもほとんど動じず、ただ真剣に見守るシルビアさんの姿を。
「危ないからどいていろ」
「はあ…」
壁ドンをするというのに、公衆の面前で半裸の男は何を勘違いしたのか女性をどける。
そして次の瞬間。
「おおおおおおお!!!!!!」
グレイグさまが、吠えた。
守りも考えぬ全力の一撃は、壁をドンするどころか粉砕する。
素手であるにも関わらず!
恐ろしいまでのパワーだ。
無残に崩れ落ちる壁。
間近で見たあまり呆然とするしかない司会者と女性。そして衝撃の展開に凍りつく会場。
しかし。
「なんてパワー…」
「すごい!さすがグレイグ様!」
「その調子で世界救ってくれー!!」
「抱いて!もういっそ抱いて!!」
それは興奮の坩堝に落ちる前兆だった。
一瞬で会場の全てを掻っ攫っていく英雄グレイグは堂々と拳をあげる。
その肉体美。
そのパワー。
その男らしさ。
元上司の大活躍に、私も思わず拍手していた。
傍らではシルビアさんが、小さくガッツポーズをしている。
普段は喧嘩ばかりの彼も、なんだかんだで幼なじみの活躍が嬉しいのだろう。
だから何かと世話を焼くのであって。
とにかく、もう優勝は決まったようなものだった。
不思議と――いや、もはやこれは必然だろう。
そう思った私の脳裏に、ふとある疑問が思い浮かんでしまう。
あれ?でもこれってそういえばなんの競技だっけ…?