翌日、私の装備を盗み代わりに裸エプロンを置いて行った犯人は宿屋の店主であることが判明した。
マルティナさんが大浴場を利用した際に、
私の時と同じことをしようとした場面を彼女が取り押さえたのである。
どうもこの宿屋、サービスの割にやたら安いと思ったら裏があったようで、
主に若い女性の利用者から装備や下着を盗み、
それをヤミで売りさばくことでかなりの利益を得ていたらしい。
もう少し犯行内容を具体的に言うと、マスタールームと脱衣場が直接繋がっており、
大浴場の利用者が独りの際に一気に装備品などをいただいていったんだとか。
ベロニカちゃんとセーニャさんが被害に合わなかったのは二人セットかつ他に利用者がいたためであるが、
まさに単純明快にして確実。
そのためにこの構造の宿屋を作ったらしく、怒りもしたがそれ以上に呆れるばかりだ。
なお、地元の人間からはあの宿はやばいというような噂は随分前からされていたらしいが、
私たち旅人は中々そういうところには中々気づけないところに漬け込んだ、なんとも卑劣な犯罪だった。
ちなみに後に裸エプロンなどの代わりの物が置かれていたのは、
変態店主のせめてもの情け（と趣味と実益）だったんだそうだ。
以上の事実に最も激怒したのはシルビアさんだった。
言うまでもなく彼が一番嫌悪するタイプだし仕方ないだろう。
とはいえ彼自身昨晩はお楽しみだったのを棚に上げていた気するのだが、
恐ろしくてそんなところにはとてもつっこめなかった。
そして普段のシルビアさんなら、即刻憲兵に突き出すして終いなのだが、今回ばかりは違った。
カミュくんやグレイグさまが引き留めるのを振り切り、厳しく尋問し、今回の一部始終を吐かせたらしい。

「尋問？やぁね、みんなが思ってるような、そんな野蛮なことしないわよぉ。
ちょ――――っと、やさし――――く何をやったのって聞いただけよ。
そしたら店主ちゃん、素直に教えてくれたわん」

と、騒動が収まってから妙にすっきりした顔のシルビアさんは語った。
その後『何か』が行われたマスタールームに入ることは、
女性陣はマルティナさんすら含めてグレイグさまによって固く禁じられた。
また憲兵に捕まった店主はその後、『新しいセカイに目覚めた』とか言っていたらしい。
本当に一体マスタールームで何があったのか。
一つ言えることは、シルビアさんを絶対怒らせてはいけないことくらいである。


ちなみに、余談だがそんなシルビアさんのおかげで下着もインナーも返ってきた。
やはり盗まれていたのだ。
しかし申し訳ないが、さすがにアウター（店主曰くマスカレード装備はクソダサいから
という理由で返したんだそうだ。でも部屋を間違えたらしい）と違って
洗濯してもさすがに身に付ける気が起きないので、泣く泣く処分した。