堪能しすぎたハロウィーン
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私が私じゃないみたい、という言葉は恐らくこの時のためにあったんだと妙に得心がいった。
セーニャさんいわく『仮装みたいな普段着』とか選ばれたらどうしようかと内心不安には思っていたけれど、
ただでさえ完璧超人のシルビアさんは、ファッションセンスまで良いのだと知ってしまうと、もう劣等感がすごいなんてもんじゃない。
「エルザちゃんとっても似合ってるじゃない!控え目に言って最高よ!」
さすがはアタシね、という自賛の言葉は、ここに確かな説得力を持つ。
さし色に血のような赤が入った黒いドレス、頭につけた真っ赤なコサージュ、どす赤い装飾品の数々。
マルティナさんとは別の意味で、ハロウィンで、仮装だからようやく許される領域のど派手で毒々しい衣装だ。いやマルティナさんは許されなかったけど。
しかし(着ている人物はともかく)、そもそも怪物のコスプレをしているのだからむしろこれが正解である。
そして何より、ファッションに疎い私ですら両手を挙げて称賛できるレベルでお洒落なのである。
「シルビアさん」
「はぁあ…素敵だわぁ」
「テーマは」
「貴族よ。吸血鬼ちゃんの、貴族」
ちょっとセーニャちゃんと被っちゃうけどね、とシルビアさんは付け足した。
かぶると言っても世界観がまるで違う。
あちらが童話なら、こちらは耽美な絵画のようだ。(もちろんこの場合着ている人間は考えないものとする)
どちらが良い悪いはないけれど、一つだけ言えるのは、多分本当はこの方マルティナさんと趣味結構合うんだろうな、ということくらいである。閑話休題。
「似合いますか?」
「…どうしたの改まって。アタシがエルザちゃんにって選んだのよ。かわいいに決まってるじゃない」
自信に満ちあふれたシルビアさんの台詞が恥ずかしくて、うつ向く。
シワになったらもったいないとわかっていて、ドレスの生地を握りしめてしまう。
顔が熱い。
「ありがとう…ございます」
「…キャラが違うわね。エルザちゃんってもしかして形から入るタイプかしら?
なら余計に、もっと自信を持って良いのよ。
だってね、こんな素敵な吸血鬼ちゃんに血を吸われたくないオトコがいるわけがないもの」
女性的でもあり、男性的でもあるシルビアさんの笑顔は不思議なくらい説得力と信頼感に満ちあふれていた。
本当に、鵜呑みにしても、身を投げだしても、平気で受け止めてくれそうな、そういう抗えない魅力をこの人は持っていた。
…だからほんと止せばいいのに、(多分ふと先ほどのマルティナさんの過激な言動の影響をうけて)私は嘯いてしまったのだ。
「…さんは、どうなの?」
「ん?」
「シルビアさんは、私が、噛みついても…」
「エルザちゃん?」
「血を吸いたいって言っても、良いの?」
「…本当に形から入っちゃったのね」
何やら理解したらしいシルビアさんの声で、はっと我にかえる。
何言ってたんだ私は。
引かれた、絶対に引かれた。
元々目がないとはいえ好きな人に。
絶望感を味わいながら先ほどの言葉を取り消そうと口を開きかけたが、シルビアさんの方が先だった。
「いいわよ」
「え…ぁ?」
「エルザちゃん、今言ったじゃない。嚙んで良いかって」
シルビアさんは跪き、軽く頭を傾け、首筋を露わにする。
「かわいい吸血鬼ちゃんのお願いよ。断れるわけがないわ」
いつも明るく笑ってばかりいるシルビアさんの目が私を捉える。
普段からセクシーだとは思っていたけど、今ばかりは瞳の奥に熱っぽいものが見えた気がする。
さすがに聞けなかったけれど。
「じゃあ、えっと…失礼します」
そう言ってシルビアさんの肩に手を置くと、初々しいわねと笑われる。
「あ、でもアタシからも一つお願いよ」
「はい」
「これは…エルザちゃんとアタシのヒミツ。他の人にはお願いしないでちょうだい」
返事はしなかった。
無言と、そしてシルビアさんの首筋に噛みつくことをもって肯定とした。
とはいえ傷つける意図はないわけで、力を込めたつもりもない。
しかし、シルビアさんが一瞬呻いた辺り加減を誤ったらしいことはわかった。
「…大丈夫よ。血が出るくらいやったってかまわないわ」
困惑する私の腰にシルビアさんが手を回す。
唐突に触れられ、
「んっ」
びくりと身体に電気が走る。
「あらやだ。ゆるんじゃった」
それは、間違いなく甘い感覚。
「かわいい」
挑発に乗せられて。
また力加減がわからなくなる。
最初はわけのわからなかったシルビアさんの味がひどく甘く感じられた。
それこそ昼間みんなで食べたスイーツのような。
…やっぱり、わけがわかってないに違いない。
人間からそんな味がするわけがないのだから。
「シルビアさん。おいし」
「それは…光栄ね」
一度口を離して言う。
出血こそないものの…しっかり歯型はついていた。
そこをなぞるように舐める。シルビアさんの身体が震えた。
「…全く、どこで覚えてきたんだか」
どことなく心当たりのある口調でシルビアさんが言ったが、私もどことなく心当たりはあった。
しかし核心をつくような無粋なことはせず。ほぼほぼ密着しているのに顔の見えない格好のまま、シルビアさんが言った。
「アタシも食べたくなっちやったわ…エルザちゃんの、こと。痛いようにはしないけど、どうかしら」
同じく、断る理由は存在しなかった。
セーニャさんいわく『仮装みたいな普段着』とか選ばれたらどうしようかと内心不安には思っていたけれど、
ただでさえ完璧超人のシルビアさんは、ファッションセンスまで良いのだと知ってしまうと、もう劣等感がすごいなんてもんじゃない。
「エルザちゃんとっても似合ってるじゃない!控え目に言って最高よ!」
さすがはアタシね、という自賛の言葉は、ここに確かな説得力を持つ。
さし色に血のような赤が入った黒いドレス、頭につけた真っ赤なコサージュ、どす赤い装飾品の数々。
マルティナさんとは別の意味で、ハロウィンで、仮装だからようやく許される領域のど派手で毒々しい衣装だ。いやマルティナさんは許されなかったけど。
しかし(着ている人物はともかく)、そもそも怪物のコスプレをしているのだからむしろこれが正解である。
そして何より、ファッションに疎い私ですら両手を挙げて称賛できるレベルでお洒落なのである。
「シルビアさん」
「はぁあ…素敵だわぁ」
「テーマは」
「貴族よ。吸血鬼ちゃんの、貴族」
ちょっとセーニャちゃんと被っちゃうけどね、とシルビアさんは付け足した。
かぶると言っても世界観がまるで違う。
あちらが童話なら、こちらは耽美な絵画のようだ。(もちろんこの場合着ている人間は考えないものとする)
どちらが良い悪いはないけれど、一つだけ言えるのは、多分本当はこの方マルティナさんと趣味結構合うんだろうな、ということくらいである。閑話休題。
「似合いますか?」
「…どうしたの改まって。アタシがエルザちゃんにって選んだのよ。かわいいに決まってるじゃない」
自信に満ちあふれたシルビアさんの台詞が恥ずかしくて、うつ向く。
シワになったらもったいないとわかっていて、ドレスの生地を握りしめてしまう。
顔が熱い。
「ありがとう…ございます」
「…キャラが違うわね。エルザちゃんってもしかして形から入るタイプかしら?
なら余計に、もっと自信を持って良いのよ。
だってね、こんな素敵な吸血鬼ちゃんに血を吸われたくないオトコがいるわけがないもの」
女性的でもあり、男性的でもあるシルビアさんの笑顔は不思議なくらい説得力と信頼感に満ちあふれていた。
本当に、鵜呑みにしても、身を投げだしても、平気で受け止めてくれそうな、そういう抗えない魅力をこの人は持っていた。
…だからほんと止せばいいのに、(多分ふと先ほどのマルティナさんの過激な言動の影響をうけて)私は嘯いてしまったのだ。
「…さんは、どうなの?」
「ん?」
「シルビアさんは、私が、噛みついても…」
「エルザちゃん?」
「血を吸いたいって言っても、良いの?」
「…本当に形から入っちゃったのね」
何やら理解したらしいシルビアさんの声で、はっと我にかえる。
何言ってたんだ私は。
引かれた、絶対に引かれた。
元々目がないとはいえ好きな人に。
絶望感を味わいながら先ほどの言葉を取り消そうと口を開きかけたが、シルビアさんの方が先だった。
「いいわよ」
「え…ぁ?」
「エルザちゃん、今言ったじゃない。嚙んで良いかって」
シルビアさんは跪き、軽く頭を傾け、首筋を露わにする。
「かわいい吸血鬼ちゃんのお願いよ。断れるわけがないわ」
いつも明るく笑ってばかりいるシルビアさんの目が私を捉える。
普段からセクシーだとは思っていたけど、今ばかりは瞳の奥に熱っぽいものが見えた気がする。
さすがに聞けなかったけれど。
「じゃあ、えっと…失礼します」
そう言ってシルビアさんの肩に手を置くと、初々しいわねと笑われる。
「あ、でもアタシからも一つお願いよ」
「はい」
「これは…エルザちゃんとアタシのヒミツ。他の人にはお願いしないでちょうだい」
返事はしなかった。
無言と、そしてシルビアさんの首筋に噛みつくことをもって肯定とした。
とはいえ傷つける意図はないわけで、力を込めたつもりもない。
しかし、シルビアさんが一瞬呻いた辺り加減を誤ったらしいことはわかった。
「…大丈夫よ。血が出るくらいやったってかまわないわ」
困惑する私の腰にシルビアさんが手を回す。
唐突に触れられ、
「んっ」
びくりと身体に電気が走る。
「あらやだ。ゆるんじゃった」
それは、間違いなく甘い感覚。
「かわいい」
挑発に乗せられて。
また力加減がわからなくなる。
最初はわけのわからなかったシルビアさんの味がひどく甘く感じられた。
それこそ昼間みんなで食べたスイーツのような。
…やっぱり、わけがわかってないに違いない。
人間からそんな味がするわけがないのだから。
「シルビアさん。おいし」
「それは…光栄ね」
一度口を離して言う。
出血こそないものの…しっかり歯型はついていた。
そこをなぞるように舐める。シルビアさんの身体が震えた。
「…全く、どこで覚えてきたんだか」
どことなく心当たりのある口調でシルビアさんが言ったが、私もどことなく心当たりはあった。
しかし核心をつくような無粋なことはせず。ほぼほぼ密着しているのに顔の見えない格好のまま、シルビアさんが言った。
「アタシも食べたくなっちやったわ…エルザちゃんの、こと。痛いようにはしないけど、どうかしら」
同じく、断る理由は存在しなかった。