DQ11
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「明日からしばらく会えない…?」
そうなの。とシルビアさんの肯定。
正直愕然とする思いだった。
いや、毎日いつも彼とべったりしているわけではないし、
難なら二三週間くらい会わないことだってザラといえばそうだから寂しいとまでは思わないけれど。
でもそれはシルビアさんがこのロトゼタシアのどこかで活躍している、とわかっているからこそのことで。
つまり、
「アストルティア…さすがに遠すぎるでしょ」
彼の今度の旅先はまさかの異世界である。(と言っても、彼にとっては二度目のことらしいが)
「んもうっ、エルザちゃん。離れてても心はいつも一緒よ」
ちゅっとおでこにキスされる。
それとなんというか、常套句がふつうに嬉しい自分が憎い。
とはいえ。いつもなら笑顔で送り出せる自負がある私だが、今日はなぜか違った。
「でもさ…、シルビアさんはそういうけど…なんか、やだな」
「…やだ?」
「ごめん。反対したいわけじゃないんだけど。でも、なぜか嫌なの。自分でもわからないけど……」
なんというかセンチメンタルに過ぎる。
自分の全く想像も及ばないところにシルビアさんが行ってしまうからだろうか。
もしかしたらなにがしかの理由でもう帰ってこないのではなかろうかとまで、
思考が飛躍してしまうことにひっそりと絶望する。
これほどまでに自分は嫌な女だったのだろうとか。
「ごめんなさい。こんなこと言われても、シルビアさんだって困るよね」
どうして笑顔で送り出せないんだろう。
本心を隠して、表情を作って、空気に馴染む。
そういうのは本当は得意な方だ。
アストルティアを楽しんできてね。でも無事こちらに帰ってきてね、とシルビアさんの手でも握りながら、
どうしてそれが言えないのだろうか。
「シルビアさん。その…」
「エルザちゃん」
ひどく真剣な声だ。
はっとなり見上げると、やはりというか困ったような顔をするシルビアさんがいた。
「アナタは、もしかしてアタシにあっちに行ってほしくないって思ってる?」
「え!?いや、別にそんなことは…」
思わず、そして自覚しようともしなかった本心を突然に言い当てられて困惑する。
とにかく逃げなければならない、とどこかで思ったのだろう。
私が顔を逸らそうとするのを、シルビアさんはがっちりと頬を両手で挟むことで阻止してきた。
「逃げないで。答えて」
目をじっとのぞき込まれる。
灰色が美しいと思ったのは、彼の瞳を見たことがきっかけだったことを不意に思い出す。
いやそうでなければ恐ろしいまでの緊張感だった。
別に取って食ったりはされないだろうけれどそういう印象は受けたかも知れない。
「…少しだけ」
そういうわけで嘘など吐けなかった。
「嘘よ」
「なんでそう思うの」
「だってエルザちゃん、嘘つきだもの」
この人はとにかく、私の扱い方をよく心得ている。
本来は好きなくせに、こういう時は回りくどい言い方を用いない。
私が冷静な時ならまだしも少しでもテンパると頭の回りが非常に遅くなるからだ。
だからそんな私にも理解しやすいように、わかりやすい言葉をシルビアさんはあえて使ってくれる。
「アナタの自分に素直じゃないところ、とってもかわいいのだけれどね。
…限度があってよ」
限りなく真剣な面持ち。
身体は硬くなるのに、目の奥の方は弛んでゆく。そのせいでじわりと涙が溢れる。
こぼれ落ちる前に舐め取られたけれど。
「…行ってほしくないに決まってる」
こうして驚くほど簡単に己の仮面はひっペがされてしまうのだ。
シルビアさんの前で初めて服を脱いだ時のような恥ずかしい思いに似たものを感じながら、
つらつらと続けてしまう。
「だって異世界だよ。いくらシルビアさんだって言っても心配になるよ…ってそれも違うか」
自嘲的な笑みでも浮かべたいのに、私の本心を見透かしたように黙ったままでいる彼のプレッシャーの前では
さすがに無理だ。
観念して、…それでも躊躇いながら、最後の理由を述べる。
「これでもずっと我慢してるんだよ、私。本当はもっとシルビアさんと一緒にいたいのに。
自分がしたいことしてるから、わがまま言っちゃダメだって思ってたけどさ…正直さすがに」
キツいよ。
そう言いたかったけれど、それすら許されなかった。
がばりと、抱き締められたから。
シルビアさんの胸に顔が押し付けられて、彼の甘いにおいが肺いっぱいに満ちる。
それですぐひどく幸せな気分にいつもならなるのだけど、今はただ切なかった。
「…アタシ、それが聞きたかったの」
妙にのっぺりとした声だなというのがすぐの感想だけれど、感情をあえて抑えているんだなというものにすぐにとって変わった。
「エルザちゃんはいつも聞き分けがよすぎるから、逆に時々不安になるわ。アナタは何も悪くないのに」
「シルビアさん……」
「本当の気持ちが聞けて嬉しかった。大好きよ」
私も、と短く返すとシルビアさんの腕に力がこもる。
それからしばらくの時間、お互いに無言。
シルビアさんも寂しいと思ってくれていたということに驚きと愛しさとを覚える。
それで恐ろしいくらいにもう二度と離れたくないほどの欲求がわき上がる。
目を閉じ、今度こそそれと向き合ってみようかなどと考えた矢先。
「ここだけの話」
「うん」
「本当はね、言ってしまいたいの。アストルティア行きをやめるわ、エルザちゃんのためにって」
彼のぬくもりの内側でまた驚き、臥せかけ目蓋が大きく開いた。
「らしくないよ」
「そうであってもよ。それくらい今のエルザちゃんは魅力的」
なんていうか、悪ガキと言ってしまいたくなるようなそんな含み笑いが漏れる。
「っていうか無理って言われることほどしたくなっちゃうわ。むしろそっちの方がアタシらしくない?」
そうだね、と言いかけるが、はたと止まる。
何かがおかしい。
シルビアさんは時々わけのわからないことを言う。
いや確かに、不可能を可能とするために邁進する姿は彼らしいと言えばその通りなのだけど、何が無理なのか。
己の決めたことを曲げることか?
いや、それは別にかまわないと今言ったばかりじゃないか。
「シルビアさん、それって一体…?」
「ね、エルザちゃん。これはイレブンちゃんにもアリスちゃんにも…グレイグにだって言っちゃダメよ。
…アストルティア行きはね、アタシだけが決めたことじゃないの」
まったく意味がわからない。
普段だって彼はそういうところはあるが、今回ばかりはその謎めいた言い回しに恐怖すら覚えた。
思わず顔を上げる。
「ど、どういう…っ」
そんな私の唇にシルビアさんはそっと指を押し当てて黙らせてくる。
優しい優しい微笑みと共に。
「これ以上はエルザちゃんでもだーめ」
言葉の奔流に急ブレーキをかけられて目を白黒させる私のそこをなぞってからキス。
離れて、わずかに落ち着いて、無粋とわかってても問わずにはいられなかった。
「…じゃあなんでそんなこと言ったの」
シルビアさんはなんでもないように答えた。
「アタシ独りで背負う荷物にしては、そろそろ重すぎるの。だからつい、ね」
確かにさらっとした言い回しだ。
けれどそこに薄っすらわかりにくく、不安か重圧のようなものを乗せていると感じ取れたのは、
恐らく私だからなのだと内心ドヤ顔したい気分になった。
いずれにしても……好きすぎる!
それ以外の感想がもはや出てこず、ようやく彼の体に手を回す決心がつく。
じっと上目遣いでもはや睨むように彼を見つめながら私はきっぱりと言いきることにした。
「持つよ、いくらでも。持たせて」
「エルザちゃん…っ」
明るくなるシルビアさんの声。
どこまでも強いと思っていた彼に頼ってもらえるほど信用してくれていることに、
確かな充足感とそれ以上の愛情を覚える。
この先にどんな恐ろしい事実が待ち受けていようとも必ず最後まで支えきる決意を固めるのだった。
そうなの。とシルビアさんの肯定。
正直愕然とする思いだった。
いや、毎日いつも彼とべったりしているわけではないし、
難なら二三週間くらい会わないことだってザラといえばそうだから寂しいとまでは思わないけれど。
でもそれはシルビアさんがこのロトゼタシアのどこかで活躍している、とわかっているからこそのことで。
つまり、
「アストルティア…さすがに遠すぎるでしょ」
彼の今度の旅先はまさかの異世界である。(と言っても、彼にとっては二度目のことらしいが)
「んもうっ、エルザちゃん。離れてても心はいつも一緒よ」
ちゅっとおでこにキスされる。
それとなんというか、常套句がふつうに嬉しい自分が憎い。
とはいえ。いつもなら笑顔で送り出せる自負がある私だが、今日はなぜか違った。
「でもさ…、シルビアさんはそういうけど…なんか、やだな」
「…やだ?」
「ごめん。反対したいわけじゃないんだけど。でも、なぜか嫌なの。自分でもわからないけど……」
なんというかセンチメンタルに過ぎる。
自分の全く想像も及ばないところにシルビアさんが行ってしまうからだろうか。
もしかしたらなにがしかの理由でもう帰ってこないのではなかろうかとまで、
思考が飛躍してしまうことにひっそりと絶望する。
これほどまでに自分は嫌な女だったのだろうとか。
「ごめんなさい。こんなこと言われても、シルビアさんだって困るよね」
どうして笑顔で送り出せないんだろう。
本心を隠して、表情を作って、空気に馴染む。
そういうのは本当は得意な方だ。
アストルティアを楽しんできてね。でも無事こちらに帰ってきてね、とシルビアさんの手でも握りながら、
どうしてそれが言えないのだろうか。
「シルビアさん。その…」
「エルザちゃん」
ひどく真剣な声だ。
はっとなり見上げると、やはりというか困ったような顔をするシルビアさんがいた。
「アナタは、もしかしてアタシにあっちに行ってほしくないって思ってる?」
「え!?いや、別にそんなことは…」
思わず、そして自覚しようともしなかった本心を突然に言い当てられて困惑する。
とにかく逃げなければならない、とどこかで思ったのだろう。
私が顔を逸らそうとするのを、シルビアさんはがっちりと頬を両手で挟むことで阻止してきた。
「逃げないで。答えて」
目をじっとのぞき込まれる。
灰色が美しいと思ったのは、彼の瞳を見たことがきっかけだったことを不意に思い出す。
いやそうでなければ恐ろしいまでの緊張感だった。
別に取って食ったりはされないだろうけれどそういう印象は受けたかも知れない。
「…少しだけ」
そういうわけで嘘など吐けなかった。
「嘘よ」
「なんでそう思うの」
「だってエルザちゃん、嘘つきだもの」
この人はとにかく、私の扱い方をよく心得ている。
本来は好きなくせに、こういう時は回りくどい言い方を用いない。
私が冷静な時ならまだしも少しでもテンパると頭の回りが非常に遅くなるからだ。
だからそんな私にも理解しやすいように、わかりやすい言葉をシルビアさんはあえて使ってくれる。
「アナタの自分に素直じゃないところ、とってもかわいいのだけれどね。
…限度があってよ」
限りなく真剣な面持ち。
身体は硬くなるのに、目の奥の方は弛んでゆく。そのせいでじわりと涙が溢れる。
こぼれ落ちる前に舐め取られたけれど。
「…行ってほしくないに決まってる」
こうして驚くほど簡単に己の仮面はひっペがされてしまうのだ。
シルビアさんの前で初めて服を脱いだ時のような恥ずかしい思いに似たものを感じながら、
つらつらと続けてしまう。
「だって異世界だよ。いくらシルビアさんだって言っても心配になるよ…ってそれも違うか」
自嘲的な笑みでも浮かべたいのに、私の本心を見透かしたように黙ったままでいる彼のプレッシャーの前では
さすがに無理だ。
観念して、…それでも躊躇いながら、最後の理由を述べる。
「これでもずっと我慢してるんだよ、私。本当はもっとシルビアさんと一緒にいたいのに。
自分がしたいことしてるから、わがまま言っちゃダメだって思ってたけどさ…正直さすがに」
キツいよ。
そう言いたかったけれど、それすら許されなかった。
がばりと、抱き締められたから。
シルビアさんの胸に顔が押し付けられて、彼の甘いにおいが肺いっぱいに満ちる。
それですぐひどく幸せな気分にいつもならなるのだけど、今はただ切なかった。
「…アタシ、それが聞きたかったの」
妙にのっぺりとした声だなというのがすぐの感想だけれど、感情をあえて抑えているんだなというものにすぐにとって変わった。
「エルザちゃんはいつも聞き分けがよすぎるから、逆に時々不安になるわ。アナタは何も悪くないのに」
「シルビアさん……」
「本当の気持ちが聞けて嬉しかった。大好きよ」
私も、と短く返すとシルビアさんの腕に力がこもる。
それからしばらくの時間、お互いに無言。
シルビアさんも寂しいと思ってくれていたということに驚きと愛しさとを覚える。
それで恐ろしいくらいにもう二度と離れたくないほどの欲求がわき上がる。
目を閉じ、今度こそそれと向き合ってみようかなどと考えた矢先。
「ここだけの話」
「うん」
「本当はね、言ってしまいたいの。アストルティア行きをやめるわ、エルザちゃんのためにって」
彼のぬくもりの内側でまた驚き、臥せかけ目蓋が大きく開いた。
「らしくないよ」
「そうであってもよ。それくらい今のエルザちゃんは魅力的」
なんていうか、悪ガキと言ってしまいたくなるようなそんな含み笑いが漏れる。
「っていうか無理って言われることほどしたくなっちゃうわ。むしろそっちの方がアタシらしくない?」
そうだね、と言いかけるが、はたと止まる。
何かがおかしい。
シルビアさんは時々わけのわからないことを言う。
いや確かに、不可能を可能とするために邁進する姿は彼らしいと言えばその通りなのだけど、何が無理なのか。
己の決めたことを曲げることか?
いや、それは別にかまわないと今言ったばかりじゃないか。
「シルビアさん、それって一体…?」
「ね、エルザちゃん。これはイレブンちゃんにもアリスちゃんにも…グレイグにだって言っちゃダメよ。
…アストルティア行きはね、アタシだけが決めたことじゃないの」
まったく意味がわからない。
普段だって彼はそういうところはあるが、今回ばかりはその謎めいた言い回しに恐怖すら覚えた。
思わず顔を上げる。
「ど、どういう…っ」
そんな私の唇にシルビアさんはそっと指を押し当てて黙らせてくる。
優しい優しい微笑みと共に。
「これ以上はエルザちゃんでもだーめ」
言葉の奔流に急ブレーキをかけられて目を白黒させる私のそこをなぞってからキス。
離れて、わずかに落ち着いて、無粋とわかってても問わずにはいられなかった。
「…じゃあなんでそんなこと言ったの」
シルビアさんはなんでもないように答えた。
「アタシ独りで背負う荷物にしては、そろそろ重すぎるの。だからつい、ね」
確かにさらっとした言い回しだ。
けれどそこに薄っすらわかりにくく、不安か重圧のようなものを乗せていると感じ取れたのは、
恐らく私だからなのだと内心ドヤ顔したい気分になった。
いずれにしても……好きすぎる!
それ以外の感想がもはや出てこず、ようやく彼の体に手を回す決心がつく。
じっと上目遣いでもはや睨むように彼を見つめながら私はきっぱりと言いきることにした。
「持つよ、いくらでも。持たせて」
「エルザちゃん…っ」
明るくなるシルビアさんの声。
どこまでも強いと思っていた彼に頼ってもらえるほど信用してくれていることに、
確かな充足感とそれ以上の愛情を覚える。
この先にどんな恐ろしい事実が待ち受けていようとも必ず最後まで支えきる決意を固めるのだった。