DQ11
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「あー、エルザいいところに!」
「どうしたの、一体」
勇者様一行の様子がなんだか変だ。
いや、大勢は変わらない。
しかし、一人だけ明らかにおかしい。
ぐったりとしたシルビアさんの大柄な身体が、もう一つ大柄なグレイグさまに支えられている。
肩を貸されてようやく歩いているといった体たらく。
普段からは到底考えられない姿だった。
「シルビアさま…混乱攻撃を受けてしまわれたのですが、私たちでは回復できなくて」
とセーニャさんは語る。
確かに彼女はキラキラポーンの特技で状態異常のほとんど全てを予防できる。
しかしすでに受けてしまったものを回復する技能は、その種類には及ばなかった。
それで確かこの八人の中で混乱状態を直接回復できるのはシルビアさんだけだったはずだ。
とはいえ、混乱ほど強烈な状態異常は有効時間も短かったはずだけれど。
「教会にも行ったんだが、寝てれば治るから心配ないってよ。ま、逆に言うとそれしかねぇんだが」
と、苦笑しながら肩を竦めるカミュくん。
口調がいつもどおり軽いあたり、大事ないこと自体は本当らしい。
「シルビアはこれで普段から気を張っておるから疲れが出たのじゃろう」
「最近特におじいちゃんと競うように早起きしてるもんねー!」
「寝起き顔は意地でも見せない主義みたいよ、シルビア」
ロウさん、ベロニカちゃん、マルティナさんが好き勝手に言う。
しかし女子力でそこまでして倒れてりゃ世話ないとも思う。
大変だなこの人もと、反論もせず虚ろな目で地面を見つめるシルビアさんを見て思う。
言っては悪いが、まるで廃人だ。
それにしても、いくらでも修羅場を潜ってきたからこそのこの反応なんだろうけど、
みんなちょっと冷静すぎないか。
私だったら滅茶苦茶慌てるだろうが――これが器の差なのだと悟る。
こうまで大きく構えられる精神力でもないと、とてもできる旅ではないのだろうと察せられる。
「本来ならワシらがついているべきなのじゃが、生憎どうしても外せん依頼があっての。
…それが終わるまでシルビアを看ていてやってくれんか」
「私が?シルビアさんを?」
無理だよ私やったことないもの。
と、反論しようとしたところを遮られる。
「看病と言うよりもむしろ見張りだ、エルザ」
グレイグさまだ。
「知っていると思うが、こいつは責任感が強くてな。
依頼の途中で置いて行かれたとあっては、
間違いなく牢だろうが破る勢いで追ってくる」
なんとなくわかる気がする。
「そういうことなら、引き受けます」
例え話のくせに完璧超人ことシルビアさんならふつうにやりそうなことを言われて、
結局断ろうとも思えなくなった。
「まぁそれ実際オレとイレブンがやったしな」
カミュくんが何か言った気がする(そしてグレイグさまが苦虫を噛みつぶした顔をした)が、
スルーした方が良さそうだった。
「…とにかく、引き受けてくれて助かる。宿まで俺が送ろう。
しかしこちらの仕事がいつ終わるか見通しが立たない。報酬は後払いでかまわんな?」
「あー、はい。宿代と合わせて請求します」
事務的なやり取り。
一応これでも傭兵(という名の何でも屋に近い)なので、このへんのことはしっかりしておきたい。
今までにない依頼ではあるので料金設定は難しいが、あとから考えればいいか。
恐らく楽な仕事な上に、どうせ友人価格だし。
「ではそろそろ行こう。時間が勿体ないのでな」
「まいど。ではシルビアさんを、責任もってお預かりします」
お客様一同にお辞儀する。
さすがに空気を読んだのか、
小悪魔ことマルティナさんも茶々を入れてこない。
なんだかんだみんなシルビアさんのことが好きなんだなぁと思って踵を返すと、
滅多に聞かない声が追ってきた。
お願いします、と。
「あれ…エルザちゃん…?」
「はいエルザはずっとおりましたよー」
宿の一室。
シルビアさんの寝顔をずっと眺めているのも難なので、今回の依頼の請求書を作っていた。
しかしそれもすぐに終わったので、備え付けの本を読んでいた。
冒険王ヌルスケシリーズ全53巻。…の二冊目。
いわゆる児童書なのだが、読み書きが堪能ではない私にとってはちょうどいい文章レベルだ。
そうして数時間。シルビアさんがようやく意識を取り戻し、私の存在に気づいた。
「ちょっと待って。アタシ、依頼の途中で、なんでベッドで寝て…?」
「私も説明されただけなんだけど、魔物にやられたんだって。で、看病(見張り)するように依頼されたの」
「そうだったの。ありがとう。でも、もう大丈夫よ…戻らなきゃ」
がばり、とシルビアさんは勢い良く起き上がる。
もはや笑えるくらいグレイグさまの言うとおりだった。
「エルザちゃん。ご足労だけどついてきてもらえるかしら。報酬はそっちで」
「だめです。シルビアさんのその姿勢は素敵だけど、
それを阻止するために私はグレイグさまに雇われてるんで」
心苦しいが切って捨てる。
「グレイグが?…ふうん?」
彼の名前を出したことがシルビアさんの何らかの琴線に触れたらしい。
双眸は不満げに細められ、挑発するように口は弧を形づくる。
「じゃあ力づくでって言ったらどうする?
アタシ、エルザちゃんより強いわよ」
「知ってマース」
椅子から立ち上がり、勢い一直線に肩を押す。
いくらシルビアさんが強くたって、
彼自身の体調がよろしくなければ話は別だ。
本来実力が劣るはずの私だって簡単にベッドに押し倒すことができる。
「エルザ、ちゃん…」
「こんな状態のシルビアさんを外に出したら、
冗談抜きで私の信用が問われるのよ。
頼むから大人しく寝てください」
「仕方ないわね…」
シルビアさんはバカではない。
私に負けるほどの自分の不調をうけて納得したのか、
身体から力を抜いた。
「お言葉に甘えることにするわ」
私の下でシルビアさんは苦笑する。
ほっと息をつく。
手のかかる子どもを寝かしつけるのってこんな感じなのだろうか。
いや相手乙女という名のおっさんだけど。
「ねえエルザちゃん、ひとつわがまま良いかしら?」
シルビアさんの上から退けようとした時、ふと呼びかけられる。
「ここから出たい以外ならなんなりと」
とにかく早くここから退けたい。
勢いで押し倒しただけでやましい気持ちは一切ないとはいえ、
…いやだからこそいい加減恥ずかしくなってきた。
「じゃ、遠慮なく」
一瞬何が起きたのかわからなかったが、とにかくバランスを崩したらしい。
シルビアさんの上にいた私はいつの間にやらベッドに転んだ彼の腕の中。
混乱する私の耳もとで囁く。
「アタシがこんなだからって、油断したわね」
ごく楽しげな声が、異様なまでに意地悪く聞こえた。
しかし、自分自身の心音のうるささであまりはっきりと聞こえない。
「それにしてもこんなかわいい子の添い寝サービスなんて、
グレイグもたまには気が利くことしてくれるじゃない」
「シル、ビア…さん?」
「うふふ。心配しないで。
抜け出そうなんてもう考えてないし、ちゃんと寝るから」
先ほどまでとは打って変わって上機嫌である。
それっきり彼は黙ってしまったが。
ほどなくして、静かな寝息が聞こえた。
その後シルビアさんは大人しくしていたものの私も普通に寝てたし、
迎えにきたグレイグさまに(シルビアさんが)怒られたのは言うまでもない。
あとマルティナさんに結局からかわれた。
「どうしたの、一体」
勇者様一行の様子がなんだか変だ。
いや、大勢は変わらない。
しかし、一人だけ明らかにおかしい。
ぐったりとしたシルビアさんの大柄な身体が、もう一つ大柄なグレイグさまに支えられている。
肩を貸されてようやく歩いているといった体たらく。
普段からは到底考えられない姿だった。
「シルビアさま…混乱攻撃を受けてしまわれたのですが、私たちでは回復できなくて」
とセーニャさんは語る。
確かに彼女はキラキラポーンの特技で状態異常のほとんど全てを予防できる。
しかしすでに受けてしまったものを回復する技能は、その種類には及ばなかった。
それで確かこの八人の中で混乱状態を直接回復できるのはシルビアさんだけだったはずだ。
とはいえ、混乱ほど強烈な状態異常は有効時間も短かったはずだけれど。
「教会にも行ったんだが、寝てれば治るから心配ないってよ。ま、逆に言うとそれしかねぇんだが」
と、苦笑しながら肩を竦めるカミュくん。
口調がいつもどおり軽いあたり、大事ないこと自体は本当らしい。
「シルビアはこれで普段から気を張っておるから疲れが出たのじゃろう」
「最近特におじいちゃんと競うように早起きしてるもんねー!」
「寝起き顔は意地でも見せない主義みたいよ、シルビア」
ロウさん、ベロニカちゃん、マルティナさんが好き勝手に言う。
しかし女子力でそこまでして倒れてりゃ世話ないとも思う。
大変だなこの人もと、反論もせず虚ろな目で地面を見つめるシルビアさんを見て思う。
言っては悪いが、まるで廃人だ。
それにしても、いくらでも修羅場を潜ってきたからこそのこの反応なんだろうけど、
みんなちょっと冷静すぎないか。
私だったら滅茶苦茶慌てるだろうが――これが器の差なのだと悟る。
こうまで大きく構えられる精神力でもないと、とてもできる旅ではないのだろうと察せられる。
「本来ならワシらがついているべきなのじゃが、生憎どうしても外せん依頼があっての。
…それが終わるまでシルビアを看ていてやってくれんか」
「私が?シルビアさんを?」
無理だよ私やったことないもの。
と、反論しようとしたところを遮られる。
「看病と言うよりもむしろ見張りだ、エルザ」
グレイグさまだ。
「知っていると思うが、こいつは責任感が強くてな。
依頼の途中で置いて行かれたとあっては、
間違いなく牢だろうが破る勢いで追ってくる」
なんとなくわかる気がする。
「そういうことなら、引き受けます」
例え話のくせに完璧超人ことシルビアさんならふつうにやりそうなことを言われて、
結局断ろうとも思えなくなった。
「まぁそれ実際オレとイレブンがやったしな」
カミュくんが何か言った気がする(そしてグレイグさまが苦虫を噛みつぶした顔をした)が、
スルーした方が良さそうだった。
「…とにかく、引き受けてくれて助かる。宿まで俺が送ろう。
しかしこちらの仕事がいつ終わるか見通しが立たない。報酬は後払いでかまわんな?」
「あー、はい。宿代と合わせて請求します」
事務的なやり取り。
一応これでも傭兵(という名の何でも屋に近い)なので、このへんのことはしっかりしておきたい。
今までにない依頼ではあるので料金設定は難しいが、あとから考えればいいか。
恐らく楽な仕事な上に、どうせ友人価格だし。
「ではそろそろ行こう。時間が勿体ないのでな」
「まいど。ではシルビアさんを、責任もってお預かりします」
お客様一同にお辞儀する。
さすがに空気を読んだのか、
小悪魔ことマルティナさんも茶々を入れてこない。
なんだかんだみんなシルビアさんのことが好きなんだなぁと思って踵を返すと、
滅多に聞かない声が追ってきた。
お願いします、と。
「あれ…エルザちゃん…?」
「はいエルザはずっとおりましたよー」
宿の一室。
シルビアさんの寝顔をずっと眺めているのも難なので、今回の依頼の請求書を作っていた。
しかしそれもすぐに終わったので、備え付けの本を読んでいた。
冒険王ヌルスケシリーズ全53巻。…の二冊目。
いわゆる児童書なのだが、読み書きが堪能ではない私にとってはちょうどいい文章レベルだ。
そうして数時間。シルビアさんがようやく意識を取り戻し、私の存在に気づいた。
「ちょっと待って。アタシ、依頼の途中で、なんでベッドで寝て…?」
「私も説明されただけなんだけど、魔物にやられたんだって。で、看病(見張り)するように依頼されたの」
「そうだったの。ありがとう。でも、もう大丈夫よ…戻らなきゃ」
がばり、とシルビアさんは勢い良く起き上がる。
もはや笑えるくらいグレイグさまの言うとおりだった。
「エルザちゃん。ご足労だけどついてきてもらえるかしら。報酬はそっちで」
「だめです。シルビアさんのその姿勢は素敵だけど、
それを阻止するために私はグレイグさまに雇われてるんで」
心苦しいが切って捨てる。
「グレイグが?…ふうん?」
彼の名前を出したことがシルビアさんの何らかの琴線に触れたらしい。
双眸は不満げに細められ、挑発するように口は弧を形づくる。
「じゃあ力づくでって言ったらどうする?
アタシ、エルザちゃんより強いわよ」
「知ってマース」
椅子から立ち上がり、勢い一直線に肩を押す。
いくらシルビアさんが強くたって、
彼自身の体調がよろしくなければ話は別だ。
本来実力が劣るはずの私だって簡単にベッドに押し倒すことができる。
「エルザ、ちゃん…」
「こんな状態のシルビアさんを外に出したら、
冗談抜きで私の信用が問われるのよ。
頼むから大人しく寝てください」
「仕方ないわね…」
シルビアさんはバカではない。
私に負けるほどの自分の不調をうけて納得したのか、
身体から力を抜いた。
「お言葉に甘えることにするわ」
私の下でシルビアさんは苦笑する。
ほっと息をつく。
手のかかる子どもを寝かしつけるのってこんな感じなのだろうか。
いや相手乙女という名のおっさんだけど。
「ねえエルザちゃん、ひとつわがまま良いかしら?」
シルビアさんの上から退けようとした時、ふと呼びかけられる。
「ここから出たい以外ならなんなりと」
とにかく早くここから退けたい。
勢いで押し倒しただけでやましい気持ちは一切ないとはいえ、
…いやだからこそいい加減恥ずかしくなってきた。
「じゃ、遠慮なく」
一瞬何が起きたのかわからなかったが、とにかくバランスを崩したらしい。
シルビアさんの上にいた私はいつの間にやらベッドに転んだ彼の腕の中。
混乱する私の耳もとで囁く。
「アタシがこんなだからって、油断したわね」
ごく楽しげな声が、異様なまでに意地悪く聞こえた。
しかし、自分自身の心音のうるささであまりはっきりと聞こえない。
「それにしてもこんなかわいい子の添い寝サービスなんて、
グレイグもたまには気が利くことしてくれるじゃない」
「シル、ビア…さん?」
「うふふ。心配しないで。
抜け出そうなんてもう考えてないし、ちゃんと寝るから」
先ほどまでとは打って変わって上機嫌である。
それっきり彼は黙ってしまったが。
ほどなくして、静かな寝息が聞こえた。
その後シルビアさんは大人しくしていたものの私も普通に寝てたし、
迎えにきたグレイグさまに(シルビアさんが)怒られたのは言うまでもない。
あとマルティナさんに結局からかわれた。