堪能しすぎたハロウィーン
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ダーハルーネの町を襲う魔物がいるというのでやれバイトだと行ってみたら勇者様ご一行と鉢合わせした。
ということで、これ幸いと久しぶりに彼らと組んで戦った。
倒しても倒しても湧いてくるガルゴル辺りには、(恐らく一人で挑んでいたら心が折れていただろうレベルで)うんざりさせられたが、やはり協力した相手が優秀なお陰もあり、首尾よく魔物を殲滅させることができた。
話はここから始まる。
ダーハルーネは平常は賑やかな港街で、年中祭りでもしているかのように露店が多く、ショッピングが楽しめる。
それは勇者様御一行という、大層な肩書きをもった女の子たちとおとめにとっても例外でなく、今日は街の平和を守ったという大仕事を終えたという大義名分の元、
男たちを放ったらかしにして、お洒落にスイーツに堪能しまくっていた。
で、私もそこにまじっていた。
いやほら場違いって自覚はあるけど、せっかくマルティナさんが誘ってくれたし。
断るのも悪いかなって。
とそんなどうでもいい思案に暮れていると、きゃあと高い声が不意に邪魔をした。
「似合ってるわよぉ、ベロニカちゃん。すっごくかわいいわぁ」
うっとりとした顔でその声の主――シルビアさんが称賛をするのは魔法使いの少女ベロニカちゃん。
どう見ても旅をしていい年齢ではないのだが、本人曰く実年齢は異なる。
その理由をざっくばらんに言えば、魔物の呪いで今の小さな姿になっているとのこと。
(正直あまり信じてないけど)
そんな彼女がお披露目する今日の戦利品は、黒猫の魔法使いといった風情の魔女衣装。
可愛らしい三角耳がついた帽子と尻尾と、かぼちゃパンツ。
サイズ感はどう見ても子供服だが全体的に黒を基調として大人っぽくまとめられていた。
シルビアさんの言うとおり、確かに滅茶苦茶かわいい。
「そうかしら。ちょっと子どもっぽすぎるかなって思ったけど…でも、シルビアさんが褒めてくれるなら間違いないわね!ありがとう!」
にっこりと笑うベロニカちゃん。
そんな彼女の次に口を開いたのはシルビアさんではなかった。
「そうですわよお姉様。その衣装とっても愛らしくて、優勝間違いないですわぁ」
語尾が常にお花で飾られてそうなくらいおっとりとした口調の女性。
外見はどう見てもベロニカちゃんのお姉さんなのだけど、実際は逆どころか双子らしい。
「でもセーニャも中々じゃない。ちょっとあたしも危ういかもね」
そんなことありませんよぉ、と言うセーニャさんの衣装は、彼女が好むふんわり路線。
膝丈のスカートに大量にあしらわれたフリルが印象的だ。
彼女のふわふわした雰囲気と相まって脳が蕩ける感じが――さほどしないのは、大きな装飾品の賜物だろう。
ベロニカさんのそれより大きな耳と、大きなふさふさの尻尾がついている。
「ありがとうございます。人狼のお姫様をテーマにしてみましたの」
ふわふわでワイルド。一見ちぐはぐな衣装。しかし妙にマッチしていたのは奇跡なのかセーニャさんの才能なのか。
その判断にセーニャさん本人を除いた全員がとても悩んだ。
悩んだ結果まあセーニャさんだしという結論に落ち着くことにした。
「面白い発想で素敵よ、セーニャちゃん。ちょっとアタシには思いつかないわね」
結局、シルビアさんの言が一番的を得ていた。私も隣でこくこくと頷く。
セーニャさんはありがとうございます、ともう一度笑った。
ベロニカちゃんと同じ顔だった。
「さてあと一人…」
最後の人物は、見かける度に衣装が違っていた(しかもどれも刺激が強い)から、どんな服で出てきてもあまり新鮮味がないかも知れない。
そんな若干失礼なことを思う私の想像を、マルティナ姫は大きく超えてきた。
「あら、私が最後だったのね」
まさかのビキニアーマー(流行りの真紅色)である。
美しい顔に妖艶な大人の笑みを浮かべる彼女のプロポーションは完璧の中の完璧で、本職以上にこの難しい衣装を着こなしていた。
「一度着てみたかったのよね。でも中々機会がなくて」
悩ましげにため息を吐くマルティナ姫。
確かに身軽な格好で飛び回り徒手空拳で戦う彼女にとって、ビキニとはいえ金属を纏うという行為はおふざけもいいところだろう。
楽しい仮装という体でしか着ることは許されないのもわかる。
で、実際似合ってもいる。
が、でもこれはさすがに――。
「さすがに目のやり場に困るわよ」
こういう時のシルビアさんは実に頼もしい。みんな、少なくとも私が思っても言えないことをすっぱり言ってのける。強い。
そしてベロニカちゃんもセーニャさんも無言。つまり肯定。
察したマルティナさんはぷくっと可愛らしく頬を膨らませる。
「だって少しは実用性も兼ねたかったんだもの」
このビキニアーマー。
自主規制必至というのが真っ先に頭に浮かぶほど身体を覆う面積は実は少ない。
実用性とかこのお姫様は宣っていたけど、実際は動いたらいつ零れても不思議じゃないレベルの過激なものだった。
あのね、と説得にかかろうとする紳士で淑女のシルビアさんを遮ってマルティナさんはからかうように言う。
「…もしかしておっきした?」
「しないわよ失礼ね」
たぶんシルビアさんが怒るの初めて見たと思う。
ただ、まあ、彼女らの間では楽しい冗談で済まされる範疇なのだろう。
それで空気が悪くなることもなく。
「とにかく、マルティナちゃんは似合ってるけどボツよ。アタシはともかくグレイグには刺激が強すぎるわ」
と、グレイグ将軍が唐突に貶められるという謎の着地点にてこの話題は終了した。
いいけど、とビキニアーマーが素で気に入っていたらしいマルティナさんは唇を尖らせつつ、不意にこちらに話題をふる。
「で、エルザは?私実は結構期待してるんだけど、まだ着替えてないの?」
「私?」
ダーハルーネの街では実は今日の夜から感謝祭が開かれる。
これは周辺の村を巻き込んだ一年の内でももっとも盛大なもので、収穫祭も兼ねているのだと町人に聞いたのはつい先程だ。
…魔物のせいで中止になりかかっていたけれど。
で、その中のイベントの一つとして怪物などの仮装をしてそのオシャレさを競う一風変わったコンテストをするのだ。
確かハロウィーンと言ったか。
なんだかんだで見目麗しいこの女子三名は今晩に向けはりきって仮装に勤しんでいたわけだ。
(ちなみにはっきり書かれたNGとして『肌の露出が多すぎるもの』という項目がある。
シルビアさんがマルティナさんを容赦なく斬ったのは多分これのせいだ)
「私は、いいよ。みんなみたいに美人じゃないし…シルビアさんこそ出ないの?」
こういう催し物が好きそうな人に振るも、
「あら、アタシは出場資格がないのよ。年齢制限。20代までなの」
と、かくも残念そうに返された。これもはっきり書かれたNGの一つだ。
「シルビア様は、いつも仮装みたいな格好していらっしゃいますしね」
セーニャさんのさらっとした毒づきにみんなの視線が一斉に集まった。この人のこういうところが怖いといつも思う。
しかも自覚がないところがたちが悪い。
「…は、話を戻すけどさ、」
ベロニカお姉様の声が若干裏返っていた。
「エルザは本当にでないの?そりゃ優勝はできないかもしれないけどさ、記念にはなるわよ」
本当に話を戻されて少し戸惑った。けれども、ゆっくりと返した。
「服の選び方、わかんないんだ」
戦えるようになってからずっと戦ってきた私にとってオシャレしたいみたいないかにも女の子らしい動機で服を選んだことなどほとんどなかった。
いつだって機能が最優先。
次いで値段、あとはせいぜい嫌いなデザインじゃなければオッケーくらいなノリで服も鎧も選んできた。
今でこそ魔法戦士という大層な肩書をいただいているが、ビキニアーマーなんて当然着たことはない。
当然こんな非日常的な服の選び方なんてわかるわけもなかった。
「じゃあこうしましょう」
若干空気が落ち込んだことを察したか、割って入ったのはシルビアさんだった。
「アタシにコーディネートさせてちょうだい。エルザちゃんってばとってもかわいいからきっと素敵に仕上がるわ!」
「いいわねそれ!」
称賛するベロニカちゃん。セーニャさんもマルティナさんも、次いで賛成の声をあげる。
決まりね、と誰も私の意見も聞かず(反対する気はなかったといえばなかったけれど)話の流れがまとまったところで、シルビアさんはふと真顔になる。
「…ベロニカちゃんとセーニャちゃんはマルティナちゃんの監督をお願いするわね」
「なっ」
「最近色々と奔放すぎるのよ」
「えっ…ええ…!?」
「承知しましたわ」
「任せて」
年下の姉妹に連行されていくビキニアーマーを見送ってから、悪い子じゃないんだけどと呟くシルビアさんと私は服を選びに黄昏の街へと改めて繰り出すのであった。
ということで、これ幸いと久しぶりに彼らと組んで戦った。
倒しても倒しても湧いてくるガルゴル辺りには、(恐らく一人で挑んでいたら心が折れていただろうレベルで)うんざりさせられたが、やはり協力した相手が優秀なお陰もあり、首尾よく魔物を殲滅させることができた。
話はここから始まる。
ダーハルーネは平常は賑やかな港街で、年中祭りでもしているかのように露店が多く、ショッピングが楽しめる。
それは勇者様御一行という、大層な肩書きをもった女の子たちとおとめにとっても例外でなく、今日は街の平和を守ったという大仕事を終えたという大義名分の元、
男たちを放ったらかしにして、お洒落にスイーツに堪能しまくっていた。
で、私もそこにまじっていた。
いやほら場違いって自覚はあるけど、せっかくマルティナさんが誘ってくれたし。
断るのも悪いかなって。
とそんなどうでもいい思案に暮れていると、きゃあと高い声が不意に邪魔をした。
「似合ってるわよぉ、ベロニカちゃん。すっごくかわいいわぁ」
うっとりとした顔でその声の主――シルビアさんが称賛をするのは魔法使いの少女ベロニカちゃん。
どう見ても旅をしていい年齢ではないのだが、本人曰く実年齢は異なる。
その理由をざっくばらんに言えば、魔物の呪いで今の小さな姿になっているとのこと。
(正直あまり信じてないけど)
そんな彼女がお披露目する今日の戦利品は、黒猫の魔法使いといった風情の魔女衣装。
可愛らしい三角耳がついた帽子と尻尾と、かぼちゃパンツ。
サイズ感はどう見ても子供服だが全体的に黒を基調として大人っぽくまとめられていた。
シルビアさんの言うとおり、確かに滅茶苦茶かわいい。
「そうかしら。ちょっと子どもっぽすぎるかなって思ったけど…でも、シルビアさんが褒めてくれるなら間違いないわね!ありがとう!」
にっこりと笑うベロニカちゃん。
そんな彼女の次に口を開いたのはシルビアさんではなかった。
「そうですわよお姉様。その衣装とっても愛らしくて、優勝間違いないですわぁ」
語尾が常にお花で飾られてそうなくらいおっとりとした口調の女性。
外見はどう見てもベロニカちゃんのお姉さんなのだけど、実際は逆どころか双子らしい。
「でもセーニャも中々じゃない。ちょっとあたしも危ういかもね」
そんなことありませんよぉ、と言うセーニャさんの衣装は、彼女が好むふんわり路線。
膝丈のスカートに大量にあしらわれたフリルが印象的だ。
彼女のふわふわした雰囲気と相まって脳が蕩ける感じが――さほどしないのは、大きな装飾品の賜物だろう。
ベロニカさんのそれより大きな耳と、大きなふさふさの尻尾がついている。
「ありがとうございます。人狼のお姫様をテーマにしてみましたの」
ふわふわでワイルド。一見ちぐはぐな衣装。しかし妙にマッチしていたのは奇跡なのかセーニャさんの才能なのか。
その判断にセーニャさん本人を除いた全員がとても悩んだ。
悩んだ結果まあセーニャさんだしという結論に落ち着くことにした。
「面白い発想で素敵よ、セーニャちゃん。ちょっとアタシには思いつかないわね」
結局、シルビアさんの言が一番的を得ていた。私も隣でこくこくと頷く。
セーニャさんはありがとうございます、ともう一度笑った。
ベロニカちゃんと同じ顔だった。
「さてあと一人…」
最後の人物は、見かける度に衣装が違っていた(しかもどれも刺激が強い)から、どんな服で出てきてもあまり新鮮味がないかも知れない。
そんな若干失礼なことを思う私の想像を、マルティナ姫は大きく超えてきた。
「あら、私が最後だったのね」
まさかのビキニアーマー(流行りの真紅色)である。
美しい顔に妖艶な大人の笑みを浮かべる彼女のプロポーションは完璧の中の完璧で、本職以上にこの難しい衣装を着こなしていた。
「一度着てみたかったのよね。でも中々機会がなくて」
悩ましげにため息を吐くマルティナ姫。
確かに身軽な格好で飛び回り徒手空拳で戦う彼女にとって、ビキニとはいえ金属を纏うという行為はおふざけもいいところだろう。
楽しい仮装という体でしか着ることは許されないのもわかる。
で、実際似合ってもいる。
が、でもこれはさすがに――。
「さすがに目のやり場に困るわよ」
こういう時のシルビアさんは実に頼もしい。みんな、少なくとも私が思っても言えないことをすっぱり言ってのける。強い。
そしてベロニカちゃんもセーニャさんも無言。つまり肯定。
察したマルティナさんはぷくっと可愛らしく頬を膨らませる。
「だって少しは実用性も兼ねたかったんだもの」
このビキニアーマー。
自主規制必至というのが真っ先に頭に浮かぶほど身体を覆う面積は実は少ない。
実用性とかこのお姫様は宣っていたけど、実際は動いたらいつ零れても不思議じゃないレベルの過激なものだった。
あのね、と説得にかかろうとする紳士で淑女のシルビアさんを遮ってマルティナさんはからかうように言う。
「…もしかしておっきした?」
「しないわよ失礼ね」
たぶんシルビアさんが怒るの初めて見たと思う。
ただ、まあ、彼女らの間では楽しい冗談で済まされる範疇なのだろう。
それで空気が悪くなることもなく。
「とにかく、マルティナちゃんは似合ってるけどボツよ。アタシはともかくグレイグには刺激が強すぎるわ」
と、グレイグ将軍が唐突に貶められるという謎の着地点にてこの話題は終了した。
いいけど、とビキニアーマーが素で気に入っていたらしいマルティナさんは唇を尖らせつつ、不意にこちらに話題をふる。
「で、エルザは?私実は結構期待してるんだけど、まだ着替えてないの?」
「私?」
ダーハルーネの街では実は今日の夜から感謝祭が開かれる。
これは周辺の村を巻き込んだ一年の内でももっとも盛大なもので、収穫祭も兼ねているのだと町人に聞いたのはつい先程だ。
…魔物のせいで中止になりかかっていたけれど。
で、その中のイベントの一つとして怪物などの仮装をしてそのオシャレさを競う一風変わったコンテストをするのだ。
確かハロウィーンと言ったか。
なんだかんだで見目麗しいこの女子三名は今晩に向けはりきって仮装に勤しんでいたわけだ。
(ちなみにはっきり書かれたNGとして『肌の露出が多すぎるもの』という項目がある。
シルビアさんがマルティナさんを容赦なく斬ったのは多分これのせいだ)
「私は、いいよ。みんなみたいに美人じゃないし…シルビアさんこそ出ないの?」
こういう催し物が好きそうな人に振るも、
「あら、アタシは出場資格がないのよ。年齢制限。20代までなの」
と、かくも残念そうに返された。これもはっきり書かれたNGの一つだ。
「シルビア様は、いつも仮装みたいな格好していらっしゃいますしね」
セーニャさんのさらっとした毒づきにみんなの視線が一斉に集まった。この人のこういうところが怖いといつも思う。
しかも自覚がないところがたちが悪い。
「…は、話を戻すけどさ、」
ベロニカお姉様の声が若干裏返っていた。
「エルザは本当にでないの?そりゃ優勝はできないかもしれないけどさ、記念にはなるわよ」
本当に話を戻されて少し戸惑った。けれども、ゆっくりと返した。
「服の選び方、わかんないんだ」
戦えるようになってからずっと戦ってきた私にとってオシャレしたいみたいないかにも女の子らしい動機で服を選んだことなどほとんどなかった。
いつだって機能が最優先。
次いで値段、あとはせいぜい嫌いなデザインじゃなければオッケーくらいなノリで服も鎧も選んできた。
今でこそ魔法戦士という大層な肩書をいただいているが、ビキニアーマーなんて当然着たことはない。
当然こんな非日常的な服の選び方なんてわかるわけもなかった。
「じゃあこうしましょう」
若干空気が落ち込んだことを察したか、割って入ったのはシルビアさんだった。
「アタシにコーディネートさせてちょうだい。エルザちゃんってばとってもかわいいからきっと素敵に仕上がるわ!」
「いいわねそれ!」
称賛するベロニカちゃん。セーニャさんもマルティナさんも、次いで賛成の声をあげる。
決まりね、と誰も私の意見も聞かず(反対する気はなかったといえばなかったけれど)話の流れがまとまったところで、シルビアさんはふと真顔になる。
「…ベロニカちゃんとセーニャちゃんはマルティナちゃんの監督をお願いするわね」
「なっ」
「最近色々と奔放すぎるのよ」
「えっ…ええ…!?」
「承知しましたわ」
「任せて」
年下の姉妹に連行されていくビキニアーマーを見送ってから、悪い子じゃないんだけどと呟くシルビアさんと私は服を選びに黄昏の街へと改めて繰り出すのであった。