DQ11
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「カミハルムイっていう国ではね、サクラっていう木に薄ピンクのお花がたくさん咲くのよ。
特に今日みたいな風がある日には花びらがすごくきれいに、それこそ舞うみたいに落ちるわ。
なんていうか、そういう儚さっていうのかしら…とってもいいなって思うの」
シルビアさんの説明とは裏腹に、今二人で根元に座っている木にはただ青々と力強く葉が茂っている。
色々なところを旅してきた彼がそんなにまで言うということはサクラというのはよほど美しい花なのだろう。
ロトゼタシアの自然も充分に美しいが、一度お目にかかりたいものだ。
…もっとも、カミハルムイがあるのはアストルティアと呼ばれる異世界だから、難しいどころかまず無理だ、というのは重々承知だが。
「シルビアさんって意外とお花好きだよね。意外と詳しい」
「意外とってどういう意味よ。
…ま、好きだからかしらね。好きなものって自然と詳しくなっちゃわない?」
「好きなもの、か…」
ざあっと風が吹く。
その心地よさに目を細めながら考えてみた。
思えば、私に好きなものなどあっただろうか。
いや、シルビアさんのことは間違いなく大好きだ。彼といるとそれだけで心が安らいで、暖かくなる。
陽気ながらもどことなくミステリアスなこの人の趣味嗜好や気質にも確かにずいぶんと詳しくなった。
未だにたまにわけわかんないけど。
そして、彼ほどではないが、勇者様たちのことに関しても同様だ。
確かに私はシルビアさんたちを根拠にそういう情緒は持っていると言える。
でも、私はそれ以前に何かを好きになったことはあっただろうか。
ううんと真剣に思い悩み始める私に、シルビアさんは苦笑する。
「無理しなくても良いわよ」
「ごめんなさい、昔はそんな余裕なかったから」
「大丈夫、これからよ」
「これからですか」
「時間はいくらでもあるわ」
いくらでも。
シルビアさんの力強い言葉を心の中で反芻する。
実際あまり不安にも思っていなかった。
だってこの人といれば、きっと何か素敵なことに出会える。
根拠はないけれど、自然とそんな前向きな気分にこの人はさせてくれるのだ。
再び風が吹き抜ける。
サクラは落ちないが、その心地よさに目を閉じる。
シルビアさんの説明によって作り上げた想像のピンクの花びらが、まぶたの裏でひらひらと舞う。
「…ね、エルザちゃん」
「うん…?」
囁くようにシルビアさんに呼びかけられ再び目を開くと、
彼は何かを楽しいことを思いついてしまった子どものような、
そんな満面の笑みを浮かべていた。
「眠いなら、膝枕するわよ」
「いや別に眠いわけじゃ…うん?ひざ?」
シルビアさんは時たま本当に理解を超える。
今がそうだ。
眠そうにしている(と思い込んでいる)相手に対して結構なテンション。
そして自らの膝をぽんぽんと叩いている。
「膝よ。前からやってみたかったの、遠慮はいらないわ!」
ええ。そんな意味不明にかっこ良く言い切られましても。
思い切り困惑しているがシルビアさんは露知らず。…まあわかるはずもないのだ。
なんだかんだでごくごく自然にこの人のこういうところを、自分でも気づかないうちに受け入れているのだから。
「そこまでいうなら、お願いします…」
「そうこなくっちゃ!ふふ、どうぞ」
一度立ち上がり、シルビアさんのすぐ傍で目星をつけてから腰をおろす。
それから後ろにゆっくりと倒れ込んだ。
後頭部に硬い、けれども心地のいい感触がする。
仰向けになった視線の先では、私を見下ろすシルビアさんが嬉しそうに目を細めている。
なんていうか、これは…。
「予想以上に恥ずかしい…」
「あらそう?アタシはとっても楽しいわ」
「そ、そう!それは良かった。じゃ、そろそろ…」
ほんの数秒で精神が保たなくなり、起き上がることにする。
そうしようとした私を、しかしシルビアさんは邪魔してきた。
ふつうに抑えつけられた。
「遠慮しないでって言ったでしょ。寝ちゃっても大丈夫よ。だから、ね?」
「ええ…。ん…」
ほとんど強制的に与えられる癒やし。
嫌じゃないはずなのに、自分の何かがゴリゴリと削られていく。
しかしそれがどういうわけかドロドロに甘い。
この状況に耐えきれるはずもなくて、目を閉じる。
そんな私の前髪をシルビアさんはさらさらと指先で弄ぶ。
微かにくすぐったい。
っていうか寝かせる気ないだろ。
「んふふ。カノジョに膝枕できる日がくるなんて…まったくおとめ冥利に尽きるわね」
何言ってんのかわかるようでわからないようでわからないが、そもそもわかる必要がない。
私はただ彼を受容するだけだ。
今はそれが何よりも私の幸せと化している。
「そんなこと言うなら私にもさせてよ。シルビアさんほんとそういうとこズルいよ」
それでも片目だけを開き、抗議めいたことを言ってみる。
シルビアさんははいはいと大人っぽく大人げない理由で却下するのだ。
「また今度ね。でも今日はダメ。
だってアタシ、エルザちゃんの寝顔見たくなっちゃったから」
「そんなの、私だって」
「イヤよ。恥ずかしいもの」
有無を言わせない。
そんな恥ずかしいことを今まさに私にさせてるのか。
なんて理不尽極まりない。
「…もういい」
「エルザちゃん怒った?」
「怒った。寝る。おやすみ!」
口ではそんなことを言いつつ、しかししっかり膝枕はされたままで目を閉じる。
言うまでもないことだが、本当は全然怒ってない。
いや、仮に怒ってたとしてもシルビアさんになら安心して身を委ねられるわけだが、とにかく。
「ふふ。おやすみなさい」
私の偽りの怒りなんてお見通しだろう。
シルビアさんはくすくすと笑いながらそう言った。
特に今日みたいな風がある日には花びらがすごくきれいに、それこそ舞うみたいに落ちるわ。
なんていうか、そういう儚さっていうのかしら…とってもいいなって思うの」
シルビアさんの説明とは裏腹に、今二人で根元に座っている木にはただ青々と力強く葉が茂っている。
色々なところを旅してきた彼がそんなにまで言うということはサクラというのはよほど美しい花なのだろう。
ロトゼタシアの自然も充分に美しいが、一度お目にかかりたいものだ。
…もっとも、カミハルムイがあるのはアストルティアと呼ばれる異世界だから、難しいどころかまず無理だ、というのは重々承知だが。
「シルビアさんって意外とお花好きだよね。意外と詳しい」
「意外とってどういう意味よ。
…ま、好きだからかしらね。好きなものって自然と詳しくなっちゃわない?」
「好きなもの、か…」
ざあっと風が吹く。
その心地よさに目を細めながら考えてみた。
思えば、私に好きなものなどあっただろうか。
いや、シルビアさんのことは間違いなく大好きだ。彼といるとそれだけで心が安らいで、暖かくなる。
陽気ながらもどことなくミステリアスなこの人の趣味嗜好や気質にも確かにずいぶんと詳しくなった。
未だにたまにわけわかんないけど。
そして、彼ほどではないが、勇者様たちのことに関しても同様だ。
確かに私はシルビアさんたちを根拠にそういう情緒は持っていると言える。
でも、私はそれ以前に何かを好きになったことはあっただろうか。
ううんと真剣に思い悩み始める私に、シルビアさんは苦笑する。
「無理しなくても良いわよ」
「ごめんなさい、昔はそんな余裕なかったから」
「大丈夫、これからよ」
「これからですか」
「時間はいくらでもあるわ」
いくらでも。
シルビアさんの力強い言葉を心の中で反芻する。
実際あまり不安にも思っていなかった。
だってこの人といれば、きっと何か素敵なことに出会える。
根拠はないけれど、自然とそんな前向きな気分にこの人はさせてくれるのだ。
再び風が吹き抜ける。
サクラは落ちないが、その心地よさに目を閉じる。
シルビアさんの説明によって作り上げた想像のピンクの花びらが、まぶたの裏でひらひらと舞う。
「…ね、エルザちゃん」
「うん…?」
囁くようにシルビアさんに呼びかけられ再び目を開くと、
彼は何かを楽しいことを思いついてしまった子どものような、
そんな満面の笑みを浮かべていた。
「眠いなら、膝枕するわよ」
「いや別に眠いわけじゃ…うん?ひざ?」
シルビアさんは時たま本当に理解を超える。
今がそうだ。
眠そうにしている(と思い込んでいる)相手に対して結構なテンション。
そして自らの膝をぽんぽんと叩いている。
「膝よ。前からやってみたかったの、遠慮はいらないわ!」
ええ。そんな意味不明にかっこ良く言い切られましても。
思い切り困惑しているがシルビアさんは露知らず。…まあわかるはずもないのだ。
なんだかんだでごくごく自然にこの人のこういうところを、自分でも気づかないうちに受け入れているのだから。
「そこまでいうなら、お願いします…」
「そうこなくっちゃ!ふふ、どうぞ」
一度立ち上がり、シルビアさんのすぐ傍で目星をつけてから腰をおろす。
それから後ろにゆっくりと倒れ込んだ。
後頭部に硬い、けれども心地のいい感触がする。
仰向けになった視線の先では、私を見下ろすシルビアさんが嬉しそうに目を細めている。
なんていうか、これは…。
「予想以上に恥ずかしい…」
「あらそう?アタシはとっても楽しいわ」
「そ、そう!それは良かった。じゃ、そろそろ…」
ほんの数秒で精神が保たなくなり、起き上がることにする。
そうしようとした私を、しかしシルビアさんは邪魔してきた。
ふつうに抑えつけられた。
「遠慮しないでって言ったでしょ。寝ちゃっても大丈夫よ。だから、ね?」
「ええ…。ん…」
ほとんど強制的に与えられる癒やし。
嫌じゃないはずなのに、自分の何かがゴリゴリと削られていく。
しかしそれがどういうわけかドロドロに甘い。
この状況に耐えきれるはずもなくて、目を閉じる。
そんな私の前髪をシルビアさんはさらさらと指先で弄ぶ。
微かにくすぐったい。
っていうか寝かせる気ないだろ。
「んふふ。カノジョに膝枕できる日がくるなんて…まったくおとめ冥利に尽きるわね」
何言ってんのかわかるようでわからないようでわからないが、そもそもわかる必要がない。
私はただ彼を受容するだけだ。
今はそれが何よりも私の幸せと化している。
「そんなこと言うなら私にもさせてよ。シルビアさんほんとそういうとこズルいよ」
それでも片目だけを開き、抗議めいたことを言ってみる。
シルビアさんははいはいと大人っぽく大人げない理由で却下するのだ。
「また今度ね。でも今日はダメ。
だってアタシ、エルザちゃんの寝顔見たくなっちゃったから」
「そんなの、私だって」
「イヤよ。恥ずかしいもの」
有無を言わせない。
そんな恥ずかしいことを今まさに私にさせてるのか。
なんて理不尽極まりない。
「…もういい」
「エルザちゃん怒った?」
「怒った。寝る。おやすみ!」
口ではそんなことを言いつつ、しかししっかり膝枕はされたままで目を閉じる。
言うまでもないことだが、本当は全然怒ってない。
いや、仮に怒ってたとしてもシルビアさんになら安心して身を委ねられるわけだが、とにかく。
「ふふ。おやすみなさい」
私の偽りの怒りなんてお見通しだろう。
シルビアさんはくすくすと笑いながらそう言った。