女三人寄れば姦しいと言います。
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グロッタカジノ。
私はスロットを回すでもなく、バーで果実酒をちびちびと舐めながら舞台を眺めていた。
そこでは派手な格好をした男女が楽しそうに踊っている。
知った顔もあった。
それもあって混ざりたかったりはしたのだが、正直ダンスは苦手だ。
「あ、つまんなさそーな顔してる子はっけーん」
その一言だけでマルティナさんが、すでにだいぶ酔っ払ってることはとてもよくわかった。
心底楽しそうな、これ以上どうやって楽しんでやろうか画策するとっても危険な、小悪魔ならではの声色だ。
彼女は私がつくテーブルの向かい側に座り、給仕のバニーに酒を注文する。
おおうまだ飲む気か。
「つまんなさそーに見えますか」
「すっごい見える。一緒に踊ってくればいいのに」
「いやあ、無理。私あんなのついていけない」
マルティナさんが視線で示す先にいるのは、一同の中で明らかに最もダンスがうまいシルビアさんだ。
なんだかもう素人にはどうやっているのかすらよくわからないとにかくすごいテクニックの数々を、
惜しげもなく披露しまくっている。さすがは最強の旅芸人。
傍らのマスク・ザ・ハンサム氏のお目々も、
憧憬を通り越してもはや恋するおとめのようにきらきらと輝いている。
「エルザって結構不器用なとこあるわよね。魔力の扱いだけはとっても上手いけど」
「マルティナさんだって肉弾戦超強いのに魔法使えないのもはや不思議だよね。今更だけど」
「エルザちゃんちょっと表出ましょうか」
「うん私も今それ言おうかなって思ってた」
がたり、とほぼ同時に音を鳴らし、席を立つ。
喧嘩か、と周囲の視線が集まる。
「…やめましょうやっぱ気力ないわー」
「ないない。お酒ももったいない」
改めて席に座る。
とちょうどそのタイミングで、給仕のバニーさんがマルティナさんのお酒とつまみを持ってくる。
メニューは手羽先や豚トロをはじめとして、とにかく肉だ。
「わーさすが肉食系女子」
「やっぱ女は肉よ、肉。わけてあげるからエルザも肉食べて強くなりなさい」
「ありがとー。でも先に体型崩壊しそー」
とか憎まれ口を叩きつつ手羽先をいただく。
香辛料のきつい臭い。
皮に閉じ込められた肉汁が口の中に流れ込む。
肉質は柔らかく、脂も多いので食べやすいが、前述した香辛料のお陰でしつこくない。
総じて相当に濃い味付けだが、酒のアテにするにはむしろちょうどいい塩梅だ。
「おいしーい」
「でっしゃろー」
嬉しそうにマルティナさんもいつの間にか手羽先を食べては酒をぐびぐびいっていた。
彼女は割とすぐ酔うのに飲めるという、周囲からすればかなり厄介なタイプである。
「私結構ここの料理好きなのよ。
ジャンクでいかにも身体に悪そうって感じが。罪深さがスパイスみたいな?」
「なにそれー」
けたけたと笑う。
しかし、朝起きて酔いが冷めたら真っ青になってトレーニングをするマルティナさんの姿が容易に浮かんだ。
普段の運動量が尋常でないとはいえ、
本当によく体型維持できてるなこの人と真剣に思うくらいにはすごいペースで彼女は食べている。
…私も人のことは言えないけれど。
「でもやっぱりいいわねー。おいしい料理食べてお酒飲んで。ダンス見て。結構これ幸せな気がするわ」
「わかるー。こういうのないともう生きていけませーん」
「ところでエルザって踊り子誰が好み?」
「シルビアさん」
「まーがーおー!!!!」
特に笑いどころもないのにきゃあきゃあ笑いまくる女子だった(過去形)生き物二人。
現在ただの酔っ払い。
理性の部分ではもしこの光景を素面のときに見せられたら死にたくなるんだろうなーなどと思っていたが、
今は酔っているのでノーダメージだった。
「で、エルザもう一つ聞きたいんだけど」
「はいはい」
「シルビアとはどこまでいったの?」
酔っていても普通に大ダメージの爆弾をマルティナさんはぶん投げてきた。
「な、な、ななお姫様一体何を仰って」
「こないだなんかわけがわからない部屋に閉じ込められてたでしょう。
『セックスしないと出られない部屋』だっけ。あの時グレイグのせいで聞きそびれたから」
小悪魔の蠱惑的な笑み。
「教えてほしいなーって」
「なんで」
「んー?ただの好奇心。それに助けてあげたじゃない」
そうなのである。
私はこの小悪魔に先日のアレを含め結構借りがあった。
本当は心の中でですら悪魔呼ばわりできる立場ではない。
が、色々と限度はあった。
例えばこういう風に普通に交渉材料にしてくるところとか。
しかもこちらがギリギリ譲歩しようと思う辺りを狙ってくるあたりがたちが悪い。
「誰にも言わないでよ」
「もちろん」
女性なら誰もが一度は経験するあの信用ならない茶番を経て、私はついに吐く。
「キスまで」
「ウソでしょ」
「シルビアさんに確認してきて。その勇気があるなら」
「えー」
さしものマルティナさんにもそこまでの気概はないらしい。それ以上の追求はなかった。
「っていうかほんと冗談でしょ?ちょっとあなた可哀想すぎない?」
「同情するなら愛をくださーい」
「すっごくわかるわー。ていうか私のも聞いてよー。
なんかこないだデルカタールの街でなんて言われたと思う?
グレイグさまとお似合いですねって。いやいやいやいやw」
「不敬罪だわー。それもう不敬罪だわー」
「グレイグのことは嫌いじゃないけど結婚しますかっていうとちょっとねー」
乙女の暴走は留まることをまるで知らない。
体現するように話題は次々と変わるが、そのいずれもが色めいたものであることには変わりなく。
やれカミュくんは結局双子のどっちを取りそうかだの、
かと思えば勇者様が知らないうちに結婚してた、
などという衝撃的な事実をさらっと聞かされたりして楽しく時間は過ぎていった。
「それにしても勇者様の結婚式行きたかったなー。なんで連絡くれなかったの」
「しなかったんじゃなくてできなかったの。
そういう時に限って、エルザったら行方不明になるんだもの。こっちはむしろ来てほしかったわよ」
マルティナさんの言葉に偽りはないらしく、ちょっとまじめに不満そうだ。
結婚式の主役でもないくせにどうしてか、と聞くこともできたが、それはやめにしてごめーんと軽く謝るに留めた。
私はスロットを回すでもなく、バーで果実酒をちびちびと舐めながら舞台を眺めていた。
そこでは派手な格好をした男女が楽しそうに踊っている。
知った顔もあった。
それもあって混ざりたかったりはしたのだが、正直ダンスは苦手だ。
「あ、つまんなさそーな顔してる子はっけーん」
その一言だけでマルティナさんが、すでにだいぶ酔っ払ってることはとてもよくわかった。
心底楽しそうな、これ以上どうやって楽しんでやろうか画策するとっても危険な、小悪魔ならではの声色だ。
彼女は私がつくテーブルの向かい側に座り、給仕のバニーに酒を注文する。
おおうまだ飲む気か。
「つまんなさそーに見えますか」
「すっごい見える。一緒に踊ってくればいいのに」
「いやあ、無理。私あんなのついていけない」
マルティナさんが視線で示す先にいるのは、一同の中で明らかに最もダンスがうまいシルビアさんだ。
なんだかもう素人にはどうやっているのかすらよくわからないとにかくすごいテクニックの数々を、
惜しげもなく披露しまくっている。さすがは最強の旅芸人。
傍らのマスク・ザ・ハンサム氏のお目々も、
憧憬を通り越してもはや恋するおとめのようにきらきらと輝いている。
「エルザって結構不器用なとこあるわよね。魔力の扱いだけはとっても上手いけど」
「マルティナさんだって肉弾戦超強いのに魔法使えないのもはや不思議だよね。今更だけど」
「エルザちゃんちょっと表出ましょうか」
「うん私も今それ言おうかなって思ってた」
がたり、とほぼ同時に音を鳴らし、席を立つ。
喧嘩か、と周囲の視線が集まる。
「…やめましょうやっぱ気力ないわー」
「ないない。お酒ももったいない」
改めて席に座る。
とちょうどそのタイミングで、給仕のバニーさんがマルティナさんのお酒とつまみを持ってくる。
メニューは手羽先や豚トロをはじめとして、とにかく肉だ。
「わーさすが肉食系女子」
「やっぱ女は肉よ、肉。わけてあげるからエルザも肉食べて強くなりなさい」
「ありがとー。でも先に体型崩壊しそー」
とか憎まれ口を叩きつつ手羽先をいただく。
香辛料のきつい臭い。
皮に閉じ込められた肉汁が口の中に流れ込む。
肉質は柔らかく、脂も多いので食べやすいが、前述した香辛料のお陰でしつこくない。
総じて相当に濃い味付けだが、酒のアテにするにはむしろちょうどいい塩梅だ。
「おいしーい」
「でっしゃろー」
嬉しそうにマルティナさんもいつの間にか手羽先を食べては酒をぐびぐびいっていた。
彼女は割とすぐ酔うのに飲めるという、周囲からすればかなり厄介なタイプである。
「私結構ここの料理好きなのよ。
ジャンクでいかにも身体に悪そうって感じが。罪深さがスパイスみたいな?」
「なにそれー」
けたけたと笑う。
しかし、朝起きて酔いが冷めたら真っ青になってトレーニングをするマルティナさんの姿が容易に浮かんだ。
普段の運動量が尋常でないとはいえ、
本当によく体型維持できてるなこの人と真剣に思うくらいにはすごいペースで彼女は食べている。
…私も人のことは言えないけれど。
「でもやっぱりいいわねー。おいしい料理食べてお酒飲んで。ダンス見て。結構これ幸せな気がするわ」
「わかるー。こういうのないともう生きていけませーん」
「ところでエルザって踊り子誰が好み?」
「シルビアさん」
「まーがーおー!!!!」
特に笑いどころもないのにきゃあきゃあ笑いまくる女子だった(過去形)生き物二人。
現在ただの酔っ払い。
理性の部分ではもしこの光景を素面のときに見せられたら死にたくなるんだろうなーなどと思っていたが、
今は酔っているのでノーダメージだった。
「で、エルザもう一つ聞きたいんだけど」
「はいはい」
「シルビアとはどこまでいったの?」
酔っていても普通に大ダメージの爆弾をマルティナさんはぶん投げてきた。
「な、な、ななお姫様一体何を仰って」
「こないだなんかわけがわからない部屋に閉じ込められてたでしょう。
『セックスしないと出られない部屋』だっけ。あの時グレイグのせいで聞きそびれたから」
小悪魔の蠱惑的な笑み。
「教えてほしいなーって」
「なんで」
「んー?ただの好奇心。それに助けてあげたじゃない」
そうなのである。
私はこの小悪魔に先日のアレを含め結構借りがあった。
本当は心の中でですら悪魔呼ばわりできる立場ではない。
が、色々と限度はあった。
例えばこういう風に普通に交渉材料にしてくるところとか。
しかもこちらがギリギリ譲歩しようと思う辺りを狙ってくるあたりがたちが悪い。
「誰にも言わないでよ」
「もちろん」
女性なら誰もが一度は経験するあの信用ならない茶番を経て、私はついに吐く。
「キスまで」
「ウソでしょ」
「シルビアさんに確認してきて。その勇気があるなら」
「えー」
さしものマルティナさんにもそこまでの気概はないらしい。それ以上の追求はなかった。
「っていうかほんと冗談でしょ?ちょっとあなた可哀想すぎない?」
「同情するなら愛をくださーい」
「すっごくわかるわー。ていうか私のも聞いてよー。
なんかこないだデルカタールの街でなんて言われたと思う?
グレイグさまとお似合いですねって。いやいやいやいやw」
「不敬罪だわー。それもう不敬罪だわー」
「グレイグのことは嫌いじゃないけど結婚しますかっていうとちょっとねー」
乙女の暴走は留まることをまるで知らない。
体現するように話題は次々と変わるが、そのいずれもが色めいたものであることには変わりなく。
やれカミュくんは結局双子のどっちを取りそうかだの、
かと思えば勇者様が知らないうちに結婚してた、
などという衝撃的な事実をさらっと聞かされたりして楽しく時間は過ぎていった。
「それにしても勇者様の結婚式行きたかったなー。なんで連絡くれなかったの」
「しなかったんじゃなくてできなかったの。
そういう時に限って、エルザったら行方不明になるんだもの。こっちはむしろ来てほしかったわよ」
マルティナさんの言葉に偽りはないらしく、ちょっとまじめに不満そうだ。
結婚式の主役でもないくせにどうしてか、と聞くこともできたが、それはやめにしてごめーんと軽く謝るに留めた。