In the room
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ダンジョンを攻略していたところ、シルビアさんと謎の部屋に閉じ込められた。
そびえ立つ巨大な図書館の内部はいかにも埃っぽくかび臭い様相だったが、
一転隠し部屋と思われるこの場所はコンパクトながらも壁も床も白く清潔で、何より新しかった。
おそらく何らかの目的で、後から増設されたものだろうことは明らかだ。
「変わった場所ね。図書館なのに、本が一冊もない」
シルビアさんの観察の通り、この部屋はとにかく奇妙だった。
彼の言うことを筆頭に、家具すらもほとんどなく、殺風景な室内にダブルのベッドが一つ置かれているのみ。
あとは本当に何もない。
私たちが入ったと思われるドアさえも。
「確かこのへんから入っちゃったはずだけど…」
ペタペタと壁を触っていくシルビアさん。
私も真似する。
回転扉とか、この手のダンジョンにありがちなからくり仕掛けの類だろうと踏んだからだ。
しかし予想に反し、壁のどこを触っても不審な点には当たらない。
「困ったな…。どうなってんだろ…」
「古代人によるオーバーテクノロジーに満ちた部屋!
なんてロマンに溢れてステキなのでしょう!とは思うけど…」
シルビアさんはよくわからないことをきらきらした顔で語り、しかし打って変わって淡々と続けた。
「面倒だから壊しちゃいましょ」
「うん」
「バイキルトは自分でやるから、エルザちゃんは火のフォースをお願い」
「はーい。でもなんで火?」
「こういうのってぶっ壊して火つけるのが相場でしょ?」
「なるほどシルビアさん賢い」
言うなり、シルビアさんに火のフォースを付与する。
簡単に言えば、彼の攻撃を常に火炎斬りにするようなものだ。
この手のサポートの迅速さには自信がある。
それからやや遅れて自分にバイキルトをかけ終えたシルビアさんが、グリンガムのムチをかまえた。
カジノで獲得したという、最高級にして最強ランクの物騒な逸品だ。
「いくわよっ!」
シルビアさんは大きく振りかぶった。
とにかく力任せの一撃。
彼にしてはスキだらけだったが、何も問題はない。
なにせ相手にしているのはただの壁だ。
これを壊すためだけというならば、別段ほかに注意をする必要はない。
それに、危険なものがあるとすれば私が排除すれば済む話なのだから。
かくして壁は強かに打ち付けられる。
バシーーーーンと耳を覆いたくなるような強烈な音を立てて。
壁が炎の魔力で一瞬赤く染まる。
…だがしかし。
「ウソでしょ?全力出したわよ…?」
シルビアさんは呆然と呟く。
壁は壊れるどころか、傷一つついていなかった。
まるで何事もなかったかのように、清潔で白い容貌を保っている。
「シルビアさん…?」
「あ、ああ、大丈夫よ、エルザちゃん。ちょっとフォースをかけ直してもらえる?
今度はそうね、氷あたりで」
私が従うなり、シルビアさんがまた壁を打ちつける。
駄目だとわかるやいなや剣で斬りつける。
ジャスティスを使う。
ゴールドを投げつける。
そのうち見ているばかりでいられなくなった私も、途中から攻撃魔法で参戦を始めた。
一刻も早く出なければいけない。
ここはやばい、という感覚に支配されていたが、それほど考えすぎでもないだろう。
この部屋には確実に常識を超えた何かがあった。
「無理ね」
試行錯誤の末、シルビアさんはついに音を上げた。
汗だくの身体で、ぺたんと床に座り込む。
その様相は努力の結果を如実に語っていた。
しかしながら、相変わらず真っ白の壁。
実はほとんど全く結ばなかったようだ。
「コダイジンのおーばーてくのろじーってやつですか」
「本当にそうかもしれないわね。
っていうかそもそも壊せるなら、もうとっくにグレイグやイレブンちゃんあたりがそうしてる気がするし」
ごもっともなことを言ってため息をつくシルビアさんに、ベッドを勧める。
でも、と彼は遠慮するが、私とは明らかに消耗の度合いが違った。
…もちろん私がサボっていたわけではない。
シルビアさんががんばりすぎたのだ。
いざというとき頼りにしたいから休めるうちに休んでおいてほしい、
とまで言ってようやくシルビアさんはその気になった。
「あら、何かしら」
ベッドの上に紙片があったらしい。
いざそこに横たわろうとした直前にそんなものを発見したシルビアさんは、今一度起き上がる。
そうするなり、はあ?と声をあげた。
「何よコレ」
「どうしたの?」
「…来て」
呼びつけられるままに、紙を見せられる。
そこには淡々とした文字(少なくとも手書きではなかった)でこう書かれていた。
『セックスしないと出られない部屋』
今度は私がはあ?と声をあげる番だった。
そしてすぐ、その非常識的な設定に震えた。
全く意味がわからない。
謎の部屋。
歴戦の猛者がどうしたって壊せないどころか、傷一つつけられない壁。
そしてこの不気味なメモ。
一体誰が何の目的で存在するかもわからないが、少なくともろくなものではないということだけはよくわかった。
「ていうかこれって…私たちまさか監視されてる?」
とはいえ、覗き穴のようなものは壁を調べた時点では少なくとも見当たらなかった。
あるとすれば天井だが、壁と同じく真っ白で、汚れ一つ見当たらない。
さしものシルビアさんも、動揺していた。
「本当に、何なのよここ…」
多分これまでの戦闘も含め、散々全力を出した疲れからもあるだろう。
シルビアさんの若干嫌気がさしたらしい声はいつもより明確に低い。
「シルビアさん…」
「ごめんなさい、アナタがいるのに…」
「…寝ましょ。きっと私たち、疲れてるんだよ」
それ以上でも以下でもなかった。
ベッドに座ったままだったシルビアさんが、ようやく横たわる。
彼がいるのとは反対側の縁に、とりあえず私は腰を落ち着ける。
「大丈夫よ、エルザちゃん…」
どことなく震えた声だった。
「きっと、すぐにでも…イレブンちゃんたちが助けてくれるわ」
無言で頷いた。
そびえ立つ巨大な図書館の内部はいかにも埃っぽくかび臭い様相だったが、
一転隠し部屋と思われるこの場所はコンパクトながらも壁も床も白く清潔で、何より新しかった。
おそらく何らかの目的で、後から増設されたものだろうことは明らかだ。
「変わった場所ね。図書館なのに、本が一冊もない」
シルビアさんの観察の通り、この部屋はとにかく奇妙だった。
彼の言うことを筆頭に、家具すらもほとんどなく、殺風景な室内にダブルのベッドが一つ置かれているのみ。
あとは本当に何もない。
私たちが入ったと思われるドアさえも。
「確かこのへんから入っちゃったはずだけど…」
ペタペタと壁を触っていくシルビアさん。
私も真似する。
回転扉とか、この手のダンジョンにありがちなからくり仕掛けの類だろうと踏んだからだ。
しかし予想に反し、壁のどこを触っても不審な点には当たらない。
「困ったな…。どうなってんだろ…」
「古代人によるオーバーテクノロジーに満ちた部屋!
なんてロマンに溢れてステキなのでしょう!とは思うけど…」
シルビアさんはよくわからないことをきらきらした顔で語り、しかし打って変わって淡々と続けた。
「面倒だから壊しちゃいましょ」
「うん」
「バイキルトは自分でやるから、エルザちゃんは火のフォースをお願い」
「はーい。でもなんで火?」
「こういうのってぶっ壊して火つけるのが相場でしょ?」
「なるほどシルビアさん賢い」
言うなり、シルビアさんに火のフォースを付与する。
簡単に言えば、彼の攻撃を常に火炎斬りにするようなものだ。
この手のサポートの迅速さには自信がある。
それからやや遅れて自分にバイキルトをかけ終えたシルビアさんが、グリンガムのムチをかまえた。
カジノで獲得したという、最高級にして最強ランクの物騒な逸品だ。
「いくわよっ!」
シルビアさんは大きく振りかぶった。
とにかく力任せの一撃。
彼にしてはスキだらけだったが、何も問題はない。
なにせ相手にしているのはただの壁だ。
これを壊すためだけというならば、別段ほかに注意をする必要はない。
それに、危険なものがあるとすれば私が排除すれば済む話なのだから。
かくして壁は強かに打ち付けられる。
バシーーーーンと耳を覆いたくなるような強烈な音を立てて。
壁が炎の魔力で一瞬赤く染まる。
…だがしかし。
「ウソでしょ?全力出したわよ…?」
シルビアさんは呆然と呟く。
壁は壊れるどころか、傷一つついていなかった。
まるで何事もなかったかのように、清潔で白い容貌を保っている。
「シルビアさん…?」
「あ、ああ、大丈夫よ、エルザちゃん。ちょっとフォースをかけ直してもらえる?
今度はそうね、氷あたりで」
私が従うなり、シルビアさんがまた壁を打ちつける。
駄目だとわかるやいなや剣で斬りつける。
ジャスティスを使う。
ゴールドを投げつける。
そのうち見ているばかりでいられなくなった私も、途中から攻撃魔法で参戦を始めた。
一刻も早く出なければいけない。
ここはやばい、という感覚に支配されていたが、それほど考えすぎでもないだろう。
この部屋には確実に常識を超えた何かがあった。
「無理ね」
試行錯誤の末、シルビアさんはついに音を上げた。
汗だくの身体で、ぺたんと床に座り込む。
その様相は努力の結果を如実に語っていた。
しかしながら、相変わらず真っ白の壁。
実はほとんど全く結ばなかったようだ。
「コダイジンのおーばーてくのろじーってやつですか」
「本当にそうかもしれないわね。
っていうかそもそも壊せるなら、もうとっくにグレイグやイレブンちゃんあたりがそうしてる気がするし」
ごもっともなことを言ってため息をつくシルビアさんに、ベッドを勧める。
でも、と彼は遠慮するが、私とは明らかに消耗の度合いが違った。
…もちろん私がサボっていたわけではない。
シルビアさんががんばりすぎたのだ。
いざというとき頼りにしたいから休めるうちに休んでおいてほしい、
とまで言ってようやくシルビアさんはその気になった。
「あら、何かしら」
ベッドの上に紙片があったらしい。
いざそこに横たわろうとした直前にそんなものを発見したシルビアさんは、今一度起き上がる。
そうするなり、はあ?と声をあげた。
「何よコレ」
「どうしたの?」
「…来て」
呼びつけられるままに、紙を見せられる。
そこには淡々とした文字(少なくとも手書きではなかった)でこう書かれていた。
『セックスしないと出られない部屋』
今度は私がはあ?と声をあげる番だった。
そしてすぐ、その非常識的な設定に震えた。
全く意味がわからない。
謎の部屋。
歴戦の猛者がどうしたって壊せないどころか、傷一つつけられない壁。
そしてこの不気味なメモ。
一体誰が何の目的で存在するかもわからないが、少なくともろくなものではないということだけはよくわかった。
「ていうかこれって…私たちまさか監視されてる?」
とはいえ、覗き穴のようなものは壁を調べた時点では少なくとも見当たらなかった。
あるとすれば天井だが、壁と同じく真っ白で、汚れ一つ見当たらない。
さしものシルビアさんも、動揺していた。
「本当に、何なのよここ…」
多分これまでの戦闘も含め、散々全力を出した疲れからもあるだろう。
シルビアさんの若干嫌気がさしたらしい声はいつもより明確に低い。
「シルビアさん…」
「ごめんなさい、アナタがいるのに…」
「…寝ましょ。きっと私たち、疲れてるんだよ」
それ以上でも以下でもなかった。
ベッドに座ったままだったシルビアさんが、ようやく横たわる。
彼がいるのとは反対側の縁に、とりあえず私は腰を落ち着ける。
「大丈夫よ、エルザちゃん…」
どことなく震えた声だった。
「きっと、すぐにでも…イレブンちゃんたちが助けてくれるわ」
無言で頷いた。