プリンではない
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
結局あのチョコレートの魔物の正体はわからなかった。茶色い方を退治した勇者様たちもやっぱりわかっていなかった。
一つ思うことには、少なくともたぶん、奴はプリンという名前ではない気がする。
…なんとなくだけど。チョコレートなのにプリンってややこしいし。あとなんとなくだ。
今となってはどうでもいい話題を頭の中でループさせていたのは、これから自分を待ち受ける運命に恐怖していたからだ。
町長がお礼と別にぜひにと手配してくれた宿。
シルビアさんの部屋に、呼び出されている。
深呼吸する。
絶対ろくな目にあわないやつだこれ。
さすがに振られたりはしないと自惚れ半分信じてるけれど、絶対ろくな目にあわないやつだ。
覚悟を決めてドアを叩く。
ほどなくどうぞと返ってきた。
「シルビアさん…」
「待ってたわよ、エルザちゃん」
嫌なもとい妙な予感はしていたが、シルビアさんはすでにベッドに座っていた。
そこで花のように笑う。
おいでと彼の手の招くまま、ふらふらと吸い寄せられる。
そのまま、抱き締められた。
「甘い…」
「お風呂には入ったけど、とれなかったのよ。しばらくはこのままね」
そういってシルビアさんは苦笑する。
あの魔物のむせ返るような甘い匂い。
それを被ったシルビアさんは当初ものすごい匂い(どうやらあの粘液は魔物の身体を離れてしばらくすると、匂いが強烈になるらしい)になっていた。
それこそあのマルティナさんも気を使うレベルだ。
それがお風呂に入るだけで相当にマシになったのだから逆にすごいと思う。
…いやこの人のことだから、『だけ』どころかかなり必死で頑張った気もするが。
「これじゃ香水もつけられないわ。やになっちゃう」
「…たまにはいいかも。私は好きだな」
「あらそう?いや、ありがとう」
シルビアさんの体臭と甘い匂いが混じり合って、たまらない気持ちになってくる。
もっと思い切り吸い込みたいという変態的な発想をどうにかこうにか飲み込む。
…湧き上がる劣情と一緒に。
「エルザちゃん」
私の返事を待たず、彼はそっと言う。
「あのとき、ベロニカちゃんは一生懸命でわからなかったみたいだけど…アタシ、実は聞こえてたの」
瞬時に酔ったような気分は醒める。
そしてぴしり、と体中の筋肉が強張った感覚。人はそれを、緊張と言う。
「ねえ、エルザちゃん」
恐る恐る顔をあげると、本心なんてうかがい知れるはずもないほどの笑みをうかべたシルビアさんがいた。
「あ、あの…やっぱり、怒ってる?」
「怒ってないわよ」
おどけもせず、語気が強いわけではない。
変などす黒いオーラとかが見えるわけでもない。
表面上だけとればとても怒っているようには見えないシルビアさんが、なぜかかえって恐ろしかった。
「ところで、ねーえ?エルザちゃんは誰を抱きたいって?もしかして、アタシ?」
「あの…」
声が震えた。語尾を濁すだけ濁して、それ以上肯定も否定もできなかった。
「十年早くてよ、お嬢ちゃん」
ぞくん、と強い口調に、視線に、刺激が走る。
え、あれ、何これ。
と思う間もなく、キスをされる。
先程の言葉に反するように、難ならシルビアさんの今の匂いよりずっと甘いやつ。時が止まったようにそれを享受する。
「やっぱり怒って…」
「ないわよ。ほんとに。助けてくれて嬉しかったのも本当。だからこれは、ただのやつあたり」
シルビアさんはにっこりと笑いながら、ゆっくりとベッドに倒れ込む。…私ごと。
「段々嫌になってきたの、この匂いもずっとしてるとね…。だから、エルザちゃんも同じになるまでしちゃおうって」
「もっとひどい発想だった」
「うふふ。道連れよ」
爛々と瞳を輝かせてなお紳士的…と言っていいのかもはやわからないが、そんなシルビアさんとまたキスをする。
このあと本当に一晩中抱かれた(体力おばけか)けれど、匂いが移った感じはそんなにしなかったのが気の毒というか何というか…。
本当にやつあたりか、口実だったんだろうと思って差し上げたい。
一つ思うことには、少なくともたぶん、奴はプリンという名前ではない気がする。
…なんとなくだけど。チョコレートなのにプリンってややこしいし。あとなんとなくだ。
今となってはどうでもいい話題を頭の中でループさせていたのは、これから自分を待ち受ける運命に恐怖していたからだ。
町長がお礼と別にぜひにと手配してくれた宿。
シルビアさんの部屋に、呼び出されている。
深呼吸する。
絶対ろくな目にあわないやつだこれ。
さすがに振られたりはしないと自惚れ半分信じてるけれど、絶対ろくな目にあわないやつだ。
覚悟を決めてドアを叩く。
ほどなくどうぞと返ってきた。
「シルビアさん…」
「待ってたわよ、エルザちゃん」
嫌なもとい妙な予感はしていたが、シルビアさんはすでにベッドに座っていた。
そこで花のように笑う。
おいでと彼の手の招くまま、ふらふらと吸い寄せられる。
そのまま、抱き締められた。
「甘い…」
「お風呂には入ったけど、とれなかったのよ。しばらくはこのままね」
そういってシルビアさんは苦笑する。
あの魔物のむせ返るような甘い匂い。
それを被ったシルビアさんは当初ものすごい匂い(どうやらあの粘液は魔物の身体を離れてしばらくすると、匂いが強烈になるらしい)になっていた。
それこそあのマルティナさんも気を使うレベルだ。
それがお風呂に入るだけで相当にマシになったのだから逆にすごいと思う。
…いやこの人のことだから、『だけ』どころかかなり必死で頑張った気もするが。
「これじゃ香水もつけられないわ。やになっちゃう」
「…たまにはいいかも。私は好きだな」
「あらそう?いや、ありがとう」
シルビアさんの体臭と甘い匂いが混じり合って、たまらない気持ちになってくる。
もっと思い切り吸い込みたいという変態的な発想をどうにかこうにか飲み込む。
…湧き上がる劣情と一緒に。
「エルザちゃん」
私の返事を待たず、彼はそっと言う。
「あのとき、ベロニカちゃんは一生懸命でわからなかったみたいだけど…アタシ、実は聞こえてたの」
瞬時に酔ったような気分は醒める。
そしてぴしり、と体中の筋肉が強張った感覚。人はそれを、緊張と言う。
「ねえ、エルザちゃん」
恐る恐る顔をあげると、本心なんてうかがい知れるはずもないほどの笑みをうかべたシルビアさんがいた。
「あ、あの…やっぱり、怒ってる?」
「怒ってないわよ」
おどけもせず、語気が強いわけではない。
変などす黒いオーラとかが見えるわけでもない。
表面上だけとればとても怒っているようには見えないシルビアさんが、なぜかかえって恐ろしかった。
「ところで、ねーえ?エルザちゃんは誰を抱きたいって?もしかして、アタシ?」
「あの…」
声が震えた。語尾を濁すだけ濁して、それ以上肯定も否定もできなかった。
「十年早くてよ、お嬢ちゃん」
ぞくん、と強い口調に、視線に、刺激が走る。
え、あれ、何これ。
と思う間もなく、キスをされる。
先程の言葉に反するように、難ならシルビアさんの今の匂いよりずっと甘いやつ。時が止まったようにそれを享受する。
「やっぱり怒って…」
「ないわよ。ほんとに。助けてくれて嬉しかったのも本当。だからこれは、ただのやつあたり」
シルビアさんはにっこりと笑いながら、ゆっくりとベッドに倒れ込む。…私ごと。
「段々嫌になってきたの、この匂いもずっとしてるとね…。だから、エルザちゃんも同じになるまでしちゃおうって」
「もっとひどい発想だった」
「うふふ。道連れよ」
爛々と瞳を輝かせてなお紳士的…と言っていいのかもはやわからないが、そんなシルビアさんとまたキスをする。
このあと本当に一晩中抱かれた(体力おばけか)けれど、匂いが移った感じはそんなにしなかったのが気の毒というか何というか…。
本当にやつあたりか、口実だったんだろうと思って差し上げたい。