デフォルト名は「柚木八重(ゆずきやえ)」です。
悪魔の花嫁
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放課後、アメフト部の手伝いに来いと蛭魔から呼び出しを受けた八重が部室へ向かっていると、部室の近くに丸い何かが落ちていることに気が付いた。
「? 多分犬、だよね…あれ」
思わず足を止め、その正体を確かめるべく近付いてみると、どうやら茶色い犬らしき生き物が丸まって眠っているようだ。
気持ち良さそうに寝息を立てているので起こさないよう慎重に近付いた八重だったが、こちらに気が付きむくりと起き上がった犬とバッチリ目が合ってしまった。
「起こしちゃった…ごめんね。君、迷子かな…? あ、でも首輪してるしリードも付いてる」
あまり見かけない犬種のようなので、恐らくは雑種だろうか。
険しい目に鋭い牙を持ったその犬は小さな身体のわりに存在感がかなりあり、首に巻かれた鋲付きの首輪には重々しい鎖がしっかりと繋がれている。
普通なら近付くのを少々躊躇うくらい獰猛な雰囲気の犬なのだが、八重を見上げ尻尾を振る姿は心なしか彼女を歓迎してくれているように見えた。
これは、と思った八重は驚かせないように近くにしゃがみ込み、犬へ優しく声をかけた。
「…あの、こんにちは。君のこと撫でても平気?」
ハッハッと元気な息遣いで八重を見上げていたその犬は人間の言葉が分かるのか、フンス!と息を吐いて彼女の方へペタペタと近付いてきた。
どうやら撫でても良いとお許しくださったらしい。
「凄い…私の言葉が分かるのかな?賢い子だね〜。えっと、それじゃあ失礼します…わぁぁ…なんとしっかりとした毛並み…か、可愛い…」
恐る恐る手を犬の鼻先に近付けてから怖がらせないようにそっと頭を撫でると、少し固い毛が八重の手のひらに当たる。
くすぐったくて温かな感触にむずむずと口角が上がりそうになるのを懸命に堪え、毛並みに沿って頭を撫でていると…なんと向こうからグイグイと頭を手のひらに押し付けてくるではないか。
「え、え、もっと撫でていいの?…じゃあ、お耳も触っちゃおうかな…ひゃ〜ふわふわだぁ…可愛いね〜」
ぴょこぴょこと動く耳を触ってから付け根をマッサージするように両手で撫でると、犬はムフー!と満足そうに息を吐き八重の足元に溶けるようにして寄りかかってくる。
そしてなんと、コロリと地面に転がり無防備にも八重に向かってお腹を見せてきた。
「え、うそ、そんな……お、お腹まで…いいんですか?…では遠慮なく……んん、思ったよりみっしりしている…もっとフカフカかと思いきや予想外……さては君、とても鍛えてるね?可愛さと力強さを兼ね備えてる感じだね?ふふ、ふふふ」
ここまできたら遠慮は不要だろうとワシワシと少し荒っぽく撫でてみても、犬は全く動じることなく気持ち良さそうに目をつぶっている。
手のひらに伝わるしっかりとした質量とぬくもりが嬉しくて、八重はとうとう堪えきれず口元を緩ませると笑い声を零した。
「ふふふ、本当に可愛いなぁ。この子、誰が飼ってるんだろ「俺が飼ってる」――わぁっ!?」
突然、頭上から聞き覚えのある声が降ってきて八重は驚きのあまりビクリと身体を跳ねさせ大声を上げた。
咄嗟に口元をおさえた八重は大きな声でびっくりさせちゃったかも!と慌てて犬を見たが、相変わらず満足そうに目をつぶりピスピスと鼻を鳴らしている。
その頼もしい姿にほっと息をつき、声のした方へと顔を上げると、一体どこで何をしていたのか…大きなマシンガンを抱えた蛭魔が楽しそうに笑みを浮かべて立っていた。
「びっくりした……蛭魔くん、いつからいたの?」
「オメーがコイツに挨拶しだした辺りだな、ケケッ」
「つまり、ほぼ最初からいたってこと?…見てないで声かけてくれればいいのに…」
「ケケケケケ!楽しそうな八重チャンの邪魔しちゃわりぃかと思ってよ」
流石、人の弱みを握るプロ。
全く気配を感じさせず、こちらの動向を観察していたとは。
いや、単純に八重が犬の可愛さに集中しすぎて周りに意識がいっていなかっただけかもしれない。
先程までのはしゃぎっぷりを思い出した八重は恥ずかしさのあまり顔を顰めて大きく溜息をついた。
「…にしても、随分と懐いてんなコイツ」
「え?この子かなり人懐っこいと思ってたんだけど、そうでもないの?」
気まずげな八重をニヤニヤと眺めていた蛭魔だったが、ふと彼女の足元に転がっている犬を見て感心したように呟いた。
意外な事実を告げられた八重は目を丸くして蛭魔の方を見上げると、彼は顎に手を当て何かを思い出すように視線を彷徨わせたあと再び犬の方へと視線を向ける。
「大体は初手噛みつきだな」
想定の3倍くらい物騒な返答に えっ、と声を上げて犬に目をやると、彼は撫でられながらも誇らしげな顔でギラリと鋭く尖った牙を見せつけてきた。
気のせいかもしれないが『オレ ハ ヤルゼ!』という頼もしい声まで聴こえてきそうだ。
「初手噛みつき…君、かなりワイルドな子なんだね。そうだ、この子って名前はなんていうの?」
「ケルベロス」
「ケルベロス!かっこいい名前だね。可愛いし強いしかっこいいし、可愛いし、とんでもない子だねぇ…ふふふふふ」
蛭魔は夢中になってケルベロスのお腹を撫で続けている八重の隣にしゃがむと、嬉しそうに小さく笑い声を零し始めた彼女の顔を覗き込んだ。
「…オメーにしちゃ珍しいくらいテンションたけーじゃねぇか」
「あ゙。…ごめん…犬に触るの久しぶりすぎてつい…」
「いやいーけどよ。…オメーがそこまで犬好きだったとはな」
「意外かな? 私、小さい頃から犬を飼うの憧れだったの。小学生の時に飼ってもいいよって親に言ってもらったんだけど…色々あってそれどころじゃなくなって、結局それっきり。…だから、今日はこの子に触れて嬉しい…えへへ」
一瞬、八重は昔のことを思い出して胸が詰まるような感覚になったが、すぐに気持ちを切り替えてケルベロスを撫でることに集中する。
せっかくこんなに可愛い子に触れているのだから、しっかりと堪能しなければ。
そんな八重の様子を見て蛭魔は片眉を上げたが、敢えて気にしないようにして軽く息を吐いた。
「……そうか。んじゃ今日からコイツの世話係もやるか?」
「え!?…いいの?」
「俺は別に構わねぇ。なんかコイツも異様に懐いてるしな。……てかオメー、コイツに変なモンとか喰わせてねーだろうな?」
「た、食べさせてないよ!見てたんでしょ!たぶん匂いで私が蛭魔くんの身内だって分かったんじゃないかな?賢い子だもん。ねー?」
物凄く疑わしいものを見る目で見られた八重は、身の潔白を証明すべく大慌てでケルベロスに話し掛けると、その通りと言わんばかりにガウッ!と鼻息荒く返事をしてくれた。
頼もしいにも程がある。
「、…………そーかもな」
「ねぇ、お世話係ってことは、ご飯とかお散歩とかお風呂とかの面倒見ていいの?」
「おー、好きにしろ。こっちとしても俺以外にコイツの面倒見れる奴がいるのは助かる。なんなら時々オメーん家に連れてっても構わねーぞ」
「うそ!?ほんと!?いいの!? う、うれしい〜!蛭魔くんありがとう!」
「……おー」
もの凄い勢いで顔を上げ蛭魔の方へと振り向いた八重は満面の笑顔でお礼を言うと、すぐにケルベロスの方へ向き直り彼の顔を覗き込んだ。
「えへへへへ!ケルベロス〜!これからよろしくね! あ!そうだ!ちょっと図書室で犬の食事についての本を借りてくる!犬のこともっと勉強しなきゃ!」
八重はそう言って立ち上がると、素早くスカートの埃を払い駆け足で校舎へと戻って行く。
すぐ戻るから待ってて!と、いつになく大きな声で蛭魔へ呼び掛け、弾むような足取りで走る姿を見るにアメフト部の手伝いのためにここまで来たということを彼女はすっかり忘れてしまったようだ。
「ケケケ、騒がしいこって。………おい、ケルベロス」
そんな彼女の後ろ姿を見送りながら楽しそうに目を細めた蛭魔だったが、ふと表情を消してケルベロスの方へと視線を向ける。
呼びかける声のトーンから重要な任務の空気を感じ取ったケルベロスはむっくりと立ち上がり蛭魔の方へ向き直ると、姿勢を正して彼の言葉を待った。
「…もしアイツに近付く変なヤローがいたら、ブッッ殺す気で噛みつけ。いいな?」
「オ゙ォン!」
「よし、頼んだぞ」
承知したと言わんばかりに大きな唸り声を上げギラリと牙を光らせるケルベロスを見て満足そうに頷いた蛭魔は、ポケットから犬用オヤツを取り出すとポンとケルベロスの方へと放り投げた。
「? 多分犬、だよね…あれ」
思わず足を止め、その正体を確かめるべく近付いてみると、どうやら茶色い犬らしき生き物が丸まって眠っているようだ。
気持ち良さそうに寝息を立てているので起こさないよう慎重に近付いた八重だったが、こちらに気が付きむくりと起き上がった犬とバッチリ目が合ってしまった。
「起こしちゃった…ごめんね。君、迷子かな…? あ、でも首輪してるしリードも付いてる」
あまり見かけない犬種のようなので、恐らくは雑種だろうか。
険しい目に鋭い牙を持ったその犬は小さな身体のわりに存在感がかなりあり、首に巻かれた鋲付きの首輪には重々しい鎖がしっかりと繋がれている。
普通なら近付くのを少々躊躇うくらい獰猛な雰囲気の犬なのだが、八重を見上げ尻尾を振る姿は心なしか彼女を歓迎してくれているように見えた。
これは、と思った八重は驚かせないように近くにしゃがみ込み、犬へ優しく声をかけた。
「…あの、こんにちは。君のこと撫でても平気?」
ハッハッと元気な息遣いで八重を見上げていたその犬は人間の言葉が分かるのか、フンス!と息を吐いて彼女の方へペタペタと近付いてきた。
どうやら撫でても良いとお許しくださったらしい。
「凄い…私の言葉が分かるのかな?賢い子だね〜。えっと、それじゃあ失礼します…わぁぁ…なんとしっかりとした毛並み…か、可愛い…」
恐る恐る手を犬の鼻先に近付けてから怖がらせないようにそっと頭を撫でると、少し固い毛が八重の手のひらに当たる。
くすぐったくて温かな感触にむずむずと口角が上がりそうになるのを懸命に堪え、毛並みに沿って頭を撫でていると…なんと向こうからグイグイと頭を手のひらに押し付けてくるではないか。
「え、え、もっと撫でていいの?…じゃあ、お耳も触っちゃおうかな…ひゃ〜ふわふわだぁ…可愛いね〜」
ぴょこぴょこと動く耳を触ってから付け根をマッサージするように両手で撫でると、犬はムフー!と満足そうに息を吐き八重の足元に溶けるようにして寄りかかってくる。
そしてなんと、コロリと地面に転がり無防備にも八重に向かってお腹を見せてきた。
「え、うそ、そんな……お、お腹まで…いいんですか?…では遠慮なく……んん、思ったよりみっしりしている…もっとフカフカかと思いきや予想外……さては君、とても鍛えてるね?可愛さと力強さを兼ね備えてる感じだね?ふふ、ふふふ」
ここまできたら遠慮は不要だろうとワシワシと少し荒っぽく撫でてみても、犬は全く動じることなく気持ち良さそうに目をつぶっている。
手のひらに伝わるしっかりとした質量とぬくもりが嬉しくて、八重はとうとう堪えきれず口元を緩ませると笑い声を零した。
「ふふふ、本当に可愛いなぁ。この子、誰が飼ってるんだろ「俺が飼ってる」――わぁっ!?」
突然、頭上から聞き覚えのある声が降ってきて八重は驚きのあまりビクリと身体を跳ねさせ大声を上げた。
咄嗟に口元をおさえた八重は大きな声でびっくりさせちゃったかも!と慌てて犬を見たが、相変わらず満足そうに目をつぶりピスピスと鼻を鳴らしている。
その頼もしい姿にほっと息をつき、声のした方へと顔を上げると、一体どこで何をしていたのか…大きなマシンガンを抱えた蛭魔が楽しそうに笑みを浮かべて立っていた。
「びっくりした……蛭魔くん、いつからいたの?」
「オメーがコイツに挨拶しだした辺りだな、ケケッ」
「つまり、ほぼ最初からいたってこと?…見てないで声かけてくれればいいのに…」
「ケケケケケ!楽しそうな八重チャンの邪魔しちゃわりぃかと思ってよ」
流石、人の弱みを握るプロ。
全く気配を感じさせず、こちらの動向を観察していたとは。
いや、単純に八重が犬の可愛さに集中しすぎて周りに意識がいっていなかっただけかもしれない。
先程までのはしゃぎっぷりを思い出した八重は恥ずかしさのあまり顔を顰めて大きく溜息をついた。
「…にしても、随分と懐いてんなコイツ」
「え?この子かなり人懐っこいと思ってたんだけど、そうでもないの?」
気まずげな八重をニヤニヤと眺めていた蛭魔だったが、ふと彼女の足元に転がっている犬を見て感心したように呟いた。
意外な事実を告げられた八重は目を丸くして蛭魔の方を見上げると、彼は顎に手を当て何かを思い出すように視線を彷徨わせたあと再び犬の方へと視線を向ける。
「大体は初手噛みつきだな」
想定の3倍くらい物騒な返答に えっ、と声を上げて犬に目をやると、彼は撫でられながらも誇らしげな顔でギラリと鋭く尖った牙を見せつけてきた。
気のせいかもしれないが『オレ ハ ヤルゼ!』という頼もしい声まで聴こえてきそうだ。
「初手噛みつき…君、かなりワイルドな子なんだね。そうだ、この子って名前はなんていうの?」
「ケルベロス」
「ケルベロス!かっこいい名前だね。可愛いし強いしかっこいいし、可愛いし、とんでもない子だねぇ…ふふふふふ」
蛭魔は夢中になってケルベロスのお腹を撫で続けている八重の隣にしゃがむと、嬉しそうに小さく笑い声を零し始めた彼女の顔を覗き込んだ。
「…オメーにしちゃ珍しいくらいテンションたけーじゃねぇか」
「あ゙。…ごめん…犬に触るの久しぶりすぎてつい…」
「いやいーけどよ。…オメーがそこまで犬好きだったとはな」
「意外かな? 私、小さい頃から犬を飼うの憧れだったの。小学生の時に飼ってもいいよって親に言ってもらったんだけど…色々あってそれどころじゃなくなって、結局それっきり。…だから、今日はこの子に触れて嬉しい…えへへ」
一瞬、八重は昔のことを思い出して胸が詰まるような感覚になったが、すぐに気持ちを切り替えてケルベロスを撫でることに集中する。
せっかくこんなに可愛い子に触れているのだから、しっかりと堪能しなければ。
そんな八重の様子を見て蛭魔は片眉を上げたが、敢えて気にしないようにして軽く息を吐いた。
「……そうか。んじゃ今日からコイツの世話係もやるか?」
「え!?…いいの?」
「俺は別に構わねぇ。なんかコイツも異様に懐いてるしな。……てかオメー、コイツに変なモンとか喰わせてねーだろうな?」
「た、食べさせてないよ!見てたんでしょ!たぶん匂いで私が蛭魔くんの身内だって分かったんじゃないかな?賢い子だもん。ねー?」
物凄く疑わしいものを見る目で見られた八重は、身の潔白を証明すべく大慌てでケルベロスに話し掛けると、その通りと言わんばかりにガウッ!と鼻息荒く返事をしてくれた。
頼もしいにも程がある。
「、…………そーかもな」
「ねぇ、お世話係ってことは、ご飯とかお散歩とかお風呂とかの面倒見ていいの?」
「おー、好きにしろ。こっちとしても俺以外にコイツの面倒見れる奴がいるのは助かる。なんなら時々オメーん家に連れてっても構わねーぞ」
「うそ!?ほんと!?いいの!? う、うれしい〜!蛭魔くんありがとう!」
「……おー」
もの凄い勢いで顔を上げ蛭魔の方へと振り向いた八重は満面の笑顔でお礼を言うと、すぐにケルベロスの方へ向き直り彼の顔を覗き込んだ。
「えへへへへ!ケルベロス〜!これからよろしくね! あ!そうだ!ちょっと図書室で犬の食事についての本を借りてくる!犬のこともっと勉強しなきゃ!」
八重はそう言って立ち上がると、素早くスカートの埃を払い駆け足で校舎へと戻って行く。
すぐ戻るから待ってて!と、いつになく大きな声で蛭魔へ呼び掛け、弾むような足取りで走る姿を見るにアメフト部の手伝いのためにここまで来たということを彼女はすっかり忘れてしまったようだ。
「ケケケ、騒がしいこって。………おい、ケルベロス」
そんな彼女の後ろ姿を見送りながら楽しそうに目を細めた蛭魔だったが、ふと表情を消してケルベロスの方へと視線を向ける。
呼びかける声のトーンから重要な任務の空気を感じ取ったケルベロスはむっくりと立ち上がり蛭魔の方へ向き直ると、姿勢を正して彼の言葉を待った。
「…もしアイツに近付く変なヤローがいたら、ブッッ殺す気で噛みつけ。いいな?」
「オ゙ォン!」
「よし、頼んだぞ」
承知したと言わんばかりに大きな唸り声を上げギラリと牙を光らせるケルベロスを見て満足そうに頷いた蛭魔は、ポケットから犬用オヤツを取り出すとポンとケルベロスの方へと放り投げた。
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