約束の残香
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
マルコがキッチンで倒れてしまって、慌てて電伝虫でサッチを呼んだ。マルコの体は熱くて、少し息も荒い。疲労からの発熱だろうか。隈が酷いし、どことなく痩せた感じもある。しかし、こんなに気付かないものだろうか……。本人も、彼の隊のクルー達も、そして彼女も。わかりやすいと思ってしまうのは、自分だけなのかもしれないと思うと、少しため息が出る……
一緒に過ごした時間の分だけ、わかってしまうことが多い。
「ナマエ!マルコは?」
私に抱えられてスヤスヤ眠るマルコを見て「ったく。ガキかよ」と言いながら、サッチはマルコを軽々と抱え上げた。
「あれ?痩せたか?こいつ飯食ってねぇな…」
サッチも言うだから、やはり痩せたのだろう。
忙しさにかまけて、食事を摂らない癖は相変わらずなんだな。自己管理って何度も……いや、考えるのは止めよう。
「ナマエ、1番隊にはオレが伝えるから、寝てくれよ」
「うん。ありがとう。よろしくね、おやすみ」
サッチとマルコを見送り、自室へ戻る準備を始めて「あっ」と気づいた。
マルコに出したデキャンタ……。
まだ、部屋にサッチ居るかな。
出しっぱなしだったデキャンタに氷を入れ、もう1本追加。コップも1つ。トレーに乗せてマルコの部屋へ。サッチに渡しておけば大丈夫だろう。
コンコンとノックしたが、返事が無い。
サッチは自室に戻ったのかな?ここに置いていけないから…もう一度ノックをしてみるが、やはり反応はない。
仕方ない…ドアノブを回してみる。が、ここから手も脚も動けなかった。
彼の部屋の扉は、今も苦手だ。ここは、私の居場所ではない。
けれど、体調のほうが心配だから……そして、扉の前で悩んでいるほうが不審者だなと思い、意を決して入室を決めた。
ギィ……
懐かしい香りと見慣れた部屋。嗅ぎなれたマルコの香水の香りに、胸が苦しくなって、目頭が熱くなる……。
――ダメだ。
重いトレーをテーブルに置いて、私は急いで入口へ向かった。一秒でも早く、ここから出なければ。この部屋の空気は、私の心を押し潰しそうだった。
「……ナマエ……」
ベッドの方から小さな声で呼ばれた。その声に足が止まってしまい、耳を澄ます。どんな小さな音でも逃さないように、目を閉じて集中する。
「……ナマエ……」
やはりマルコの声だ。熱にうなされているんだろう。弱々しい声で、何度も私の名前を呼ぶ。それは、許しを請うような、なくし物を探すような、切ない響きだった。
その声が、私を呼んでいる。呼ばれる度に、息がうまくできなくなる。どうして、彼女ではなく、私なの?
両手にギュっと力が入り、閉じている瞼から涙が一筋溢れる。
ダメだ……ダメ。
マルコは私の恋人じゃない。それに、彼がうなされている悪夢に、もしかしたら私が出てくるのかもしれない、などとあり得ないことばかり考えた。
苦しそうな呼吸と、私を呼ぶ声に、いつまでも足が動かない。涙を左手の甲で拭って、ひとつ深く呼吸をする。
「シンプルに自分がしたいことをすると、結構な確率で上手くいくよい!」
何の話をしていた時だったかな?マルコに言われたことがある。自分がしたいこと……。
うなされるマルコが心配だから、様子を見に行く。
誰に聞かれるでもないのに、言い訳を考えた。
でも、本当に……ただ心配なのだ。きっと、これがサッチでも、ジョズでも、他のクルーでも私はそうすると思う。そう言い聞かせて、自分の胸に湧き上がる言い訳じみた感情を押し殺した。そして、心に浮かんだマルコの彼女にそっと謝った。
静かにベッドサイドへ行く。
マルコは、額に汗をびっしょりかいて、眉間には深いしわを寄せて少し粗めの呼吸をし、唸りながら眠っていた。
「……」
はぁ……はぁ……と苦しそうに呼吸しながら、私の名前を呼ぶ。その度、胸の奥がズキンと締めつけられる。
申し訳ないけど……チェストからタオルとマルコの寝間着を出す。シャワールームにある洗面器にぬるま湯とタオルを入れる。
ごめんね、と言いながら、額、首、胸元を拭いていく。
彼の素肌に触れるたび、心臓がトクンと跳ねる。汗を吸って重たくなったシャツを脱がせる時に、ほんの少しだけ、彼の胸に顔を埋めたくなった。──でも、それはもう許されないことだ。
私は、ぐっとその衝動を抑え込んだ。
「マルコ、右手はこっちに。」「少しだけこっちに身体倒して」と声を掛けると、無意識にでも動いてくれる彼に安堵してしまう。
ふと彼の顔を見ると、胸が締め付けられる。
自分を裏切ったはずのマルコを、未だに心配している自分に腹が立つ。甲斐甲斐しく世話を焼く自分にも。
スムーズに上半身の汗は拭き取ることも出来、寝間着も交換できた。
最後に冷たい水でタオルを冷やし、先ほどよりも穏やかな顔で眠るマルコの額へ、そっとタオルを乗せる。
「……早く回復するといいね」
少し顔色の良くなったマルコの額を撫でようと、伸ばしかけた自分の手に気づき、はっと息をのむ。
そして、触れる寸前でその手を引っ込めた。
ため息が出る。
私の手は、まだ、マルコに触れたいと願っている。そして、この部屋に居たいと……。
――早く部屋を出よう
サッとランプを消して、すぐにマルコの部屋を出た。
はぁ……もうすぐ夜明けが近い。東の海が少しずつ明るくなってきて、西の空はまだまだ真っ暗。
このグラデーションが好きだなと思った。今の自分みたい。
――早く寝なきゃ、私が寝込んじゃう
両手を組んでグーっと大きく背伸びをして、自室へまでの廊下をのんびりと歩いた。
一緒に過ごした時間の分だけ、わかってしまうことが多い。
「ナマエ!マルコは?」
私に抱えられてスヤスヤ眠るマルコを見て「ったく。ガキかよ」と言いながら、サッチはマルコを軽々と抱え上げた。
「あれ?痩せたか?こいつ飯食ってねぇな…」
サッチも言うだから、やはり痩せたのだろう。
忙しさにかまけて、食事を摂らない癖は相変わらずなんだな。自己管理って何度も……いや、考えるのは止めよう。
「ナマエ、1番隊にはオレが伝えるから、寝てくれよ」
「うん。ありがとう。よろしくね、おやすみ」
サッチとマルコを見送り、自室へ戻る準備を始めて「あっ」と気づいた。
マルコに出したデキャンタ……。
まだ、部屋にサッチ居るかな。
出しっぱなしだったデキャンタに氷を入れ、もう1本追加。コップも1つ。トレーに乗せてマルコの部屋へ。サッチに渡しておけば大丈夫だろう。
コンコンとノックしたが、返事が無い。
サッチは自室に戻ったのかな?ここに置いていけないから…もう一度ノックをしてみるが、やはり反応はない。
仕方ない…ドアノブを回してみる。が、ここから手も脚も動けなかった。
彼の部屋の扉は、今も苦手だ。ここは、私の居場所ではない。
けれど、体調のほうが心配だから……そして、扉の前で悩んでいるほうが不審者だなと思い、意を決して入室を決めた。
ギィ……
懐かしい香りと見慣れた部屋。嗅ぎなれたマルコの香水の香りに、胸が苦しくなって、目頭が熱くなる……。
――ダメだ。
重いトレーをテーブルに置いて、私は急いで入口へ向かった。一秒でも早く、ここから出なければ。この部屋の空気は、私の心を押し潰しそうだった。
「……ナマエ……」
ベッドの方から小さな声で呼ばれた。その声に足が止まってしまい、耳を澄ます。どんな小さな音でも逃さないように、目を閉じて集中する。
「……ナマエ……」
やはりマルコの声だ。熱にうなされているんだろう。弱々しい声で、何度も私の名前を呼ぶ。それは、許しを請うような、なくし物を探すような、切ない響きだった。
その声が、私を呼んでいる。呼ばれる度に、息がうまくできなくなる。どうして、彼女ではなく、私なの?
両手にギュっと力が入り、閉じている瞼から涙が一筋溢れる。
ダメだ……ダメ。
マルコは私の恋人じゃない。それに、彼がうなされている悪夢に、もしかしたら私が出てくるのかもしれない、などとあり得ないことばかり考えた。
苦しそうな呼吸と、私を呼ぶ声に、いつまでも足が動かない。涙を左手の甲で拭って、ひとつ深く呼吸をする。
「シンプルに自分がしたいことをすると、結構な確率で上手くいくよい!」
何の話をしていた時だったかな?マルコに言われたことがある。自分がしたいこと……。
うなされるマルコが心配だから、様子を見に行く。
誰に聞かれるでもないのに、言い訳を考えた。
でも、本当に……ただ心配なのだ。きっと、これがサッチでも、ジョズでも、他のクルーでも私はそうすると思う。そう言い聞かせて、自分の胸に湧き上がる言い訳じみた感情を押し殺した。そして、心に浮かんだマルコの彼女にそっと謝った。
静かにベッドサイドへ行く。
マルコは、額に汗をびっしょりかいて、眉間には深いしわを寄せて少し粗めの呼吸をし、唸りながら眠っていた。
「……」
はぁ……はぁ……と苦しそうに呼吸しながら、私の名前を呼ぶ。その度、胸の奥がズキンと締めつけられる。
申し訳ないけど……チェストからタオルとマルコの寝間着を出す。シャワールームにある洗面器にぬるま湯とタオルを入れる。
ごめんね、と言いながら、額、首、胸元を拭いていく。
彼の素肌に触れるたび、心臓がトクンと跳ねる。汗を吸って重たくなったシャツを脱がせる時に、ほんの少しだけ、彼の胸に顔を埋めたくなった。──でも、それはもう許されないことだ。
私は、ぐっとその衝動を抑え込んだ。
「マルコ、右手はこっちに。」「少しだけこっちに身体倒して」と声を掛けると、無意識にでも動いてくれる彼に安堵してしまう。
ふと彼の顔を見ると、胸が締め付けられる。
自分を裏切ったはずのマルコを、未だに心配している自分に腹が立つ。甲斐甲斐しく世話を焼く自分にも。
スムーズに上半身の汗は拭き取ることも出来、寝間着も交換できた。
最後に冷たい水でタオルを冷やし、先ほどよりも穏やかな顔で眠るマルコの額へ、そっとタオルを乗せる。
「……早く回復するといいね」
少し顔色の良くなったマルコの額を撫でようと、伸ばしかけた自分の手に気づき、はっと息をのむ。
そして、触れる寸前でその手を引っ込めた。
ため息が出る。
私の手は、まだ、マルコに触れたいと願っている。そして、この部屋に居たいと……。
――早く部屋を出よう
サッとランプを消して、すぐにマルコの部屋を出た。
はぁ……もうすぐ夜明けが近い。東の海が少しずつ明るくなってきて、西の空はまだまだ真っ暗。
このグラデーションが好きだなと思った。今の自分みたい。
――早く寝なきゃ、私が寝込んじゃう
両手を組んでグーっと大きく背伸びをして、自室へまでの廊下をのんびりと歩いた。
4/4ページ
