短編
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月明かりが、主のいない部屋へ優しく差し込んでいる。
何度も来たことがあるこの部屋は、男性の割に小綺麗で、センスがいいインテリアが並ぶ。所々にあるコースターはきっとお気に入りのものだろう。いつ来てもお洒落な部屋。
微かに香るのは彼が好む香水の香り。
ここはマルコの部屋。
わたしは2日後にある上陸の際、購入する補給物資の確認をする為にこの部屋に来ている。
ソファに座り、部屋を出ていくマルコが冷えるだろうからと貸してくれたブランケットを膝に掛けて、部屋を見回していた。
ブランケットは薄手なのに暖かく手触りが良い。同じブランドの物を買おうと思っていたのを思い出す。
次は秋島だから探してみよう。
見るものも無くなってしまい、いい加減に仕事をしようと大きなデスクへ移動し、書類をパラパラ捲る。
サッチやエース、ラクヨウの汚い文字を読みやすいように訂正していく。加えてイゾウの達筆過ぎる文字を解読する。初めて見た時は全く読めず、わざわざイゾウに聞きに行っていたが、慣れたものでサラサラと読めるようになった。マルコは読む気が無いらしい。
毎度のことだが、文字は性格が出るなーと思う。何番隊のか確認しなくとも、隊長の文字でわかる。
文字の訂正を終える頃、ウトウトと微睡んでしまった。小さく聞こえる波音とモビーの揺れは心地よく、シャワー上がりの私を眠りへと誘う。
そろそろ戻ってくるはずなんだけど…
瞼がゆっくり閉じていった。
「ナマエ」
「ナマエ」
「ナマエ」
髪を梳かれる感覚がした。
耳に届いた声はマルコのはずだが、どこか聞きなれない甘い声。
マルコはいつだって優しいけど、こんな風に触れてくれた事も甘い声で呼んでくれた事もない。
「仕方ないねぃ。」
髪を梳いていた手は、後頭部へ移動した。擽ったいようなゾクゾクするような感覚がした後、髪に柔らかいモノが触れた気がした。
小さなリップ音が響く。
壊れ物を扱うような優しい手。
温かいぬくもりに包まれ、おでこ、頬、まぶた、首にキスをされた。
気持ち良くてフワフワする……
フワ…フワ…する????
「はっ!!!」
勢いよく飛び起きた。
寝てた?マルコ?
回らない頭で室内を所狭しと見回すが、先程まで抱きしめててくれたはずのマルコは居ない。
夢か。夢だよね。夢であってほしい……。
ドキドキと心臓が煩い。
思わず胸を抑えて盛大なため息を吐き、天井を仰いだ。
マルコの事は好きだけど、こんな生々しい夢はダメだ。意識しちゃう…
普段夢なんて覚えていないくせに、こういう時に限って覚えている。
いや、覚えてていいんだけどタイミングが悪すぎる。これからマルコと会うんだよ。
マルコの部屋だから夢を見たのか?
ガチャとドアが開く音に、ビクッと猫みたいに体が跳ねた。
「お。起きたかい?」
夢で聞いた甘い声に心臓が破裂するほど高鳴っている。
今、起きたかって聞いたよね?
声がした方へ顔を向けることは出来ず、窓を見る振りをしながら適当に返事をした。
もちろん「起きたかい」って聞いたのかは確認していない。
「目覚めのコーヒーだよい。」
顔の前に現れたわたし専用のマグカップ。
マルコを見上げれば、「甘めのカフェオレだ。好きだろ?」と。
「ありがとう」と、両手で受け取り、カップの熱でじんわりと温まる指先。
マルコは、自分のマグカップを持ってベッドに腰掛けた。
カフェオレを口に含み、いつもサッチが淹れてくれるものに似てるけど甘みが強いような気がした。もしかして…。
「これマルコが淹れた?」
「あぁ。サッチに聞いたんだけどねい。口に合わなかったかい?」
照れたような困ったような顔で笑うから、煩かった心臓が更に煩くなった。マルコをずっと見ていたい自分と、耳まで熱くなっているのを知られたくない自分が居て、慌てて視線をカップへ戻す。
「ううん。ハチミツ多くて美味しい。」
もちろんサッチが作るカフェオレは、お店ででてくるのような本格的な味。しっかりコーヒーの香りがしてほんのり甘い。
マルコが作ってくれたのは、ミルクの香りが強めで、フワフワにフォームされたミルクの上にはハチミツがたっぷりと掛かっていた。
「そりゃ良かったよい。飲んだら確認しようかねい。」と笑顔を向けられ、またドキリとした。
補給物資は各隊によって決められ、マルコが確認し、承諾されれば購入。
わたしは、補給リスト作成と予算などのお手伝い。数字に強いわたしは自然とこの役割を与えられた。
ちなみに、4番隊の飲食物管理だけは、全て4番隊に任せてある。
先程までマルコが不在だったのも、オヤジと日程調整などをしていたからだ。
「今回は4日間停泊予定だか、4日目の早朝には出航予定だねい。」
「はーい。船番の割振りは?」
決めなければいけない事が多いのは、この船のクルーが多いから。それでも全員が1日ば陸で過ごせるようにとマルコは気を遣う。
わたしは船番のリスト作りを任せられ、その間にマルコが補給物資を決める。
ペンを走らせ、船番リストと補給用リストを完成させる頃には深夜12時を回っていた。
「終わったぁ。」
椅子からひっくり返りそうなくらい背伸びをしてから、リストを整理する。「いつも助かるよい。」と、ちょっと疲れ顔のマルコ。早く寝たほうがいいな。
「じゃあ、わたしは部屋戻るねー。」
「部屋まで送るよい。」
「大丈夫だよ。マルコこそ疲れてるんだからしっかり休んでね。」
カップを両手に持ち、まずは食堂へ。それから自室に戻ろう。
立ち上がったわたしの服が何かに引っかかたみたいに弱い力で斜め下へ引っ張られる。
その方向を見れば、熱が籠もった瞳のマルコと目が合う。
「なあ、一緒に寝てくれよい?」
「え?」
「朝まで一緒に居てくれって。」
懇願するような声。
その声にドクンッと心臓が大きな音をたてた。今日だけで何度目なのか…心臓発作かと思ってしまう。
言葉の意味がわからないような年齢ではないから、朝までと言う意味は理解している。
なのに、彼が本気で言ったのか冗談なのか理解出来ず黙ってしまった。
初めて向けられた色っぽい瞳。
マルコは摘んでいた服の裾をパッと離し、頬杖をつき、途端に遠い目をした。
「寝てる時は名前呼んだり、好き好き言ってくれてたのにねぃ。寝ぼけた振りして、おれで遊んでたのかい?」
忘れていた。仕事に集中していて忘れていた。
あれは夢じゃなかったわけ?
夢に見たマルコのぬくもりを思い出し、顔も耳も熱くなる。バレているのはわかっているが、何たる羞恥心だ。顔を隠しくて視線を外したが、慌てるわたしが面白いのかマルコからは至極楽しそうに笑っているのが聞こえた。
「悲しいねい。俺はナマエのこと好きなのにねい。」
その声は悲しいと思ってないよね?
好きとか言ってない!!と思う。
今は、何か重要なことを言われた気がする…
「ん?どうした?」
情報量が多すぎてついていけずに固まるわたしを見たマルコは、とてもとても満足そうに顔を綻ばせている。
マルコがわたしを好……き……
好……
もうダメだ…考えられない…
「セ……セ…セクハラされたってオヤジに言いつけやる!!」と大声で叫んで廊下へ逃げた。
オヤジの部屋のドアを壊れるくらい叩いて、返事も待たずに入室した。
驚くオヤジを無視して、事の経緯をオヤジの膝の上で話す。
なんでもオヤジに相談してしまうわたし。
「ナマエ、マルコの照れ隠しだろう。」
「わかってるけど!!」
「なんだ?」
「…好き過ぎて話せなくなっちゃった…」
オヤジは最近で1番の笑い声を上げていた。
何度も来たことがあるこの部屋は、男性の割に小綺麗で、センスがいいインテリアが並ぶ。所々にあるコースターはきっとお気に入りのものだろう。いつ来てもお洒落な部屋。
微かに香るのは彼が好む香水の香り。
ここはマルコの部屋。
わたしは2日後にある上陸の際、購入する補給物資の確認をする為にこの部屋に来ている。
ソファに座り、部屋を出ていくマルコが冷えるだろうからと貸してくれたブランケットを膝に掛けて、部屋を見回していた。
ブランケットは薄手なのに暖かく手触りが良い。同じブランドの物を買おうと思っていたのを思い出す。
次は秋島だから探してみよう。
見るものも無くなってしまい、いい加減に仕事をしようと大きなデスクへ移動し、書類をパラパラ捲る。
サッチやエース、ラクヨウの汚い文字を読みやすいように訂正していく。加えてイゾウの達筆過ぎる文字を解読する。初めて見た時は全く読めず、わざわざイゾウに聞きに行っていたが、慣れたものでサラサラと読めるようになった。マルコは読む気が無いらしい。
毎度のことだが、文字は性格が出るなーと思う。何番隊のか確認しなくとも、隊長の文字でわかる。
文字の訂正を終える頃、ウトウトと微睡んでしまった。小さく聞こえる波音とモビーの揺れは心地よく、シャワー上がりの私を眠りへと誘う。
そろそろ戻ってくるはずなんだけど…
瞼がゆっくり閉じていった。
「ナマエ」
「ナマエ」
「ナマエ」
髪を梳かれる感覚がした。
耳に届いた声はマルコのはずだが、どこか聞きなれない甘い声。
マルコはいつだって優しいけど、こんな風に触れてくれた事も甘い声で呼んでくれた事もない。
「仕方ないねぃ。」
髪を梳いていた手は、後頭部へ移動した。擽ったいようなゾクゾクするような感覚がした後、髪に柔らかいモノが触れた気がした。
小さなリップ音が響く。
壊れ物を扱うような優しい手。
温かいぬくもりに包まれ、おでこ、頬、まぶた、首にキスをされた。
気持ち良くてフワフワする……
フワ…フワ…する????
「はっ!!!」
勢いよく飛び起きた。
寝てた?マルコ?
回らない頭で室内を所狭しと見回すが、先程まで抱きしめててくれたはずのマルコは居ない。
夢か。夢だよね。夢であってほしい……。
ドキドキと心臓が煩い。
思わず胸を抑えて盛大なため息を吐き、天井を仰いだ。
マルコの事は好きだけど、こんな生々しい夢はダメだ。意識しちゃう…
普段夢なんて覚えていないくせに、こういう時に限って覚えている。
いや、覚えてていいんだけどタイミングが悪すぎる。これからマルコと会うんだよ。
マルコの部屋だから夢を見たのか?
ガチャとドアが開く音に、ビクッと猫みたいに体が跳ねた。
「お。起きたかい?」
夢で聞いた甘い声に心臓が破裂するほど高鳴っている。
今、起きたかって聞いたよね?
声がした方へ顔を向けることは出来ず、窓を見る振りをしながら適当に返事をした。
もちろん「起きたかい」って聞いたのかは確認していない。
「目覚めのコーヒーだよい。」
顔の前に現れたわたし専用のマグカップ。
マルコを見上げれば、「甘めのカフェオレだ。好きだろ?」と。
「ありがとう」と、両手で受け取り、カップの熱でじんわりと温まる指先。
マルコは、自分のマグカップを持ってベッドに腰掛けた。
カフェオレを口に含み、いつもサッチが淹れてくれるものに似てるけど甘みが強いような気がした。もしかして…。
「これマルコが淹れた?」
「あぁ。サッチに聞いたんだけどねい。口に合わなかったかい?」
照れたような困ったような顔で笑うから、煩かった心臓が更に煩くなった。マルコをずっと見ていたい自分と、耳まで熱くなっているのを知られたくない自分が居て、慌てて視線をカップへ戻す。
「ううん。ハチミツ多くて美味しい。」
もちろんサッチが作るカフェオレは、お店ででてくるのような本格的な味。しっかりコーヒーの香りがしてほんのり甘い。
マルコが作ってくれたのは、ミルクの香りが強めで、フワフワにフォームされたミルクの上にはハチミツがたっぷりと掛かっていた。
「そりゃ良かったよい。飲んだら確認しようかねい。」と笑顔を向けられ、またドキリとした。
補給物資は各隊によって決められ、マルコが確認し、承諾されれば購入。
わたしは、補給リスト作成と予算などのお手伝い。数字に強いわたしは自然とこの役割を与えられた。
ちなみに、4番隊の飲食物管理だけは、全て4番隊に任せてある。
先程までマルコが不在だったのも、オヤジと日程調整などをしていたからだ。
「今回は4日間停泊予定だか、4日目の早朝には出航予定だねい。」
「はーい。船番の割振りは?」
決めなければいけない事が多いのは、この船のクルーが多いから。それでも全員が1日ば陸で過ごせるようにとマルコは気を遣う。
わたしは船番のリスト作りを任せられ、その間にマルコが補給物資を決める。
ペンを走らせ、船番リストと補給用リストを完成させる頃には深夜12時を回っていた。
「終わったぁ。」
椅子からひっくり返りそうなくらい背伸びをしてから、リストを整理する。「いつも助かるよい。」と、ちょっと疲れ顔のマルコ。早く寝たほうがいいな。
「じゃあ、わたしは部屋戻るねー。」
「部屋まで送るよい。」
「大丈夫だよ。マルコこそ疲れてるんだからしっかり休んでね。」
カップを両手に持ち、まずは食堂へ。それから自室に戻ろう。
立ち上がったわたしの服が何かに引っかかたみたいに弱い力で斜め下へ引っ張られる。
その方向を見れば、熱が籠もった瞳のマルコと目が合う。
「なあ、一緒に寝てくれよい?」
「え?」
「朝まで一緒に居てくれって。」
懇願するような声。
その声にドクンッと心臓が大きな音をたてた。今日だけで何度目なのか…心臓発作かと思ってしまう。
言葉の意味がわからないような年齢ではないから、朝までと言う意味は理解している。
なのに、彼が本気で言ったのか冗談なのか理解出来ず黙ってしまった。
初めて向けられた色っぽい瞳。
マルコは摘んでいた服の裾をパッと離し、頬杖をつき、途端に遠い目をした。
「寝てる時は名前呼んだり、好き好き言ってくれてたのにねぃ。寝ぼけた振りして、おれで遊んでたのかい?」
忘れていた。仕事に集中していて忘れていた。
あれは夢じゃなかったわけ?
夢に見たマルコのぬくもりを思い出し、顔も耳も熱くなる。バレているのはわかっているが、何たる羞恥心だ。顔を隠しくて視線を外したが、慌てるわたしが面白いのかマルコからは至極楽しそうに笑っているのが聞こえた。
「悲しいねい。俺はナマエのこと好きなのにねい。」
その声は悲しいと思ってないよね?
好きとか言ってない!!と思う。
今は、何か重要なことを言われた気がする…
「ん?どうした?」
情報量が多すぎてついていけずに固まるわたしを見たマルコは、とてもとても満足そうに顔を綻ばせている。
マルコがわたしを好……き……
好……
もうダメだ…考えられない…
「セ……セ…セクハラされたってオヤジに言いつけやる!!」と大声で叫んで廊下へ逃げた。
オヤジの部屋のドアを壊れるくらい叩いて、返事も待たずに入室した。
驚くオヤジを無視して、事の経緯をオヤジの膝の上で話す。
なんでもオヤジに相談してしまうわたし。
「ナマエ、マルコの照れ隠しだろう。」
「わかってるけど!!」
「なんだ?」
「…好き過ぎて話せなくなっちゃった…」
オヤジは最近で1番の笑い声を上げていた。
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