短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
雲ひとつ無い真っ青な空。
砲弾の音も船内の怒号も耳には届いているはずなのに、あたしの脳には届いてない。
うちの船に喧嘩を売る馬鹿な海賊団は、いつまで経っても後を絶たないみたい。
毎回先陣をきって飛び出すマルコ。
船首に立つマルコの大きな背中が大好きなんだよね。
「先に行く!!」
その声にハッとして、戦闘準備中だったことを思い出した。
一番隊のみんなが「ご武運を!」と返している中、出遅れたわたしは腕だけを不死鳥にして、ニヤリと笑って飛び立つマルコを見ているだけしかできなかった。
あっという間に戦闘が終わり、日が高いうちから宴が始まる。
サッチを始め、四番隊のコック達が大急ぎで準備をしているのが見えたけれど、宴に参加する気分じゃなかった。
「宴…あたしは、今日いいや。」
愛刀を振り、血を飛ばす。
敵の血がこびり付いていて気持ち悪い。一刻も早く綺麗にしてあげたい。
「なんで?生理?」
隣で、宝石を選んでいる腹黒王子のハルタがヘラヘラ笑ってきた。
「ハルタ!!失礼だろう。」
そう言ってハルタの後ろから声をかけてきたの、うちの海賊団一美人のイゾウ。
この人見てると、自分の女性らしさというものを疑いたくなる。いや、疑ってるんだけど。
答えるのが面倒になり「そういうことにしておいて〜」と、後ろ手にバイバイし、水場へ向かった。
「ナマエー!一緒に呑もーぜー」とハルタが言っている。いつもなら一緒にバカみたいに呑むけれど、今日はどうも無理そう。
愛刀に付着したドス黒い血液を水で流しながら、考えるのはマルコのこと。
念願の恋人になれたのに、今更怖気づいている。
あの一番隊隊長 不死鳥マルコ。
あたしは、一番隊のただの隊員で、たまたま女だった。
確かに彼に対して恋心はあった。
今日の戦闘の時、見た姿。
船首に立ち、広げた腕を不死鳥に変えると、真っ青な空と翼に、彼の金髪がキラキラと映える。
左後方を見て、船員達に声をかけるその表情は、ギラギラした瞳の海賊の顔。
暴れることが大好きなわけでは無いマルコでも、戦闘となると気持ちが昂ぶる。
戦うことが純粋に好きなことが見て取れる。
海賊の顔をしたマルコは一層色気があって、たった一度だけ「あの表情で迫られたいなー」と呑気に思ったことがことの始まり。
アプローチすることも無く、誰にも言わずに秘めていた。
快晴の時に敵襲があると喜んで甲板に出ていっていたな。みんなに知られたらヤバいけれど。
ドス黒い血液は粗方落ち、美しい輝きが戻った。
仕上げに磨いて鞘に収め自室に籠もろうと顔を上げれば、よく知る金髪が目に入った。
「ナマエお疲れ。怪我はねぇか?」
へニャっと効果音が鳴りそうなマルコの笑顔。
いつもなら無事に帰ってきた事を実感して胸に飛び込むのだけれど……
ドクンドクンと心臓がうるさい。
足の力が抜けそうなのに、頭が熱い。
今は顔を見たくないんだ。ごめん。マルコ。
「お疲れ様。大丈夫だよ。」
俯いてマルコの横をすり抜けた。
どうして、わかりやすい態度しか取れないんだろう。感情をもっと上手くコントロールしたいのに。
こんな態度じゃ怪しまれる。
その場に居られなくて、逃げるように歩くしか出来ない。
「おい!ナマエ!どうした?何があった?」
さすがは隊長。
後ろからしっかり腕を掴んできた。
「何かされたか?怪我してんのかい?」
貼り付けた笑顔で精一杯の「大丈夫。ちょっと疲れただけだよ。」これがマルコに通用するかわからないが…
マルコの表情が一瞬で無表情に変わって、手の力を強める。
そのままあたしの部屋へズンズンと引っ張っていく。
「ちょっと!マルコ!痛いって!!!」
痴話喧嘩にしか見えないし、そもそも呑みだしてるから、誰かが助けてくれる感じは皆無。
乱暴に部屋に押し込められて、勢いよくドアを閉められた。
壊れたら船大工に怒られるのに…あと、修理費がかさむじゃないか…
「ナマエ、何があったんだい?俺に言えねぇことか?」
あたしの目線に合わせて屈んだマルコは、さっきまでの無表情とは違って、努めて穏やかな声で質問してくる。
「あたしの問題だから…」
マルコの恋人で居る自信が無いと言えたらいいけれど、余計なプライドが邪魔をする。
ナース達がマルコを狙っていること、あたしは釣り合ってないと笑われていること…陸に上がれば知らぬ女達が色めき立つこと…
女としてはソコソコ強いかもしれないが、男相手では強い部類に入れない自分の実力…
自信がない理由はいくらでも出てくる。
ただ抱かれるだけの女になりたくて、あなたの恋人になったんじゃない。
船首で見惚れたあなたに見合う女でありたいのに…
「お前の問題でも、俺は何か手伝えんじゃねぇかなと思うんだが?
好きな女が悩んでて話すらも聞けねぇ男じゃないと勝手に思ってたんだがねぃ。
俺のこと、信頼できねぇかい?」
相変わらず同じ目線で、しっかりとあたしを見てくれている蒼い瞳。
「じ…じし…自信が…持て…ない」
「うん」と相槌するマルコは後ろにあるチェストに浅く座り、あたしを自身の脚の間へ促した。
あたしはポツポツと言葉にしていくしか無かった。頭を巡る自信が無い理由を言葉にするのは簡単ではなかったから。
マルコは時折相槌をしながら、あたしの言葉を根気よく聞いてくれた。
笑ったりバカにしたりせず、一言一言を聞き留めてくれていった。
「ん。ありがとうねぃ。ナマエが感じる不安は、わかったよぃ。」
マルコの右手があたしの頬に触れ、親指で涙を掬ってくれた。
「1つ聞きてぇ。ナマエは俺と別れたいかぃ?」
心臓がドキリっと鳴った。
更に体に力が入り、口を動かせばギギギっと音が鳴りそうだ。
「勘違いしてほしくは無いんだけどねぃ。俺は別れる気はねぇし、お前がどれだけ俺を好きなのかもわかって…正直言うと嬉しいんだ。」
「だから、力抜けよぃ」と微笑まれて、またポロッと涙が出た。
「あ〜。せっかく泣き止んだのにすまねぇな。泣かせちまって。俺は自信のねぇ[#dc=1#]も好きだよぃ。」
涙だけじゃなくて、鼻水まで止まらないあたしは、グシャグシャの顔だったはず。それでも「俺は愛されてるねぃ。」と優しく抱き締められた。
「あた…し‥のほうが…好き‥…だし」
「よいよい」笑って抱き締めながら、右手で頭を優しく撫でられる。
大好きなマルコの背中に腕を回して抱き締め返す。胸に耳を押しつければ、心臓の音がトクトクと心地よくて、世界一安心できる場所だと思った。
「自信無くてごめんね。でも、好きなの。」
腕の中でモゴモゴ言ったら「俺を好きな証拠だろぃ?俺は幸せモンだねぃ。」とクスクス笑われた。
船首に立つ鮮やかな蒼と金。
何度見ても恋に落ちる。
その背中に、その表情に。
砲弾の音も船内の怒号も耳には届いているはずなのに、あたしの脳には届いてない。
うちの船に喧嘩を売る馬鹿な海賊団は、いつまで経っても後を絶たないみたい。
毎回先陣をきって飛び出すマルコ。
船首に立つマルコの大きな背中が大好きなんだよね。
「先に行く!!」
その声にハッとして、戦闘準備中だったことを思い出した。
一番隊のみんなが「ご武運を!」と返している中、出遅れたわたしは腕だけを不死鳥にして、ニヤリと笑って飛び立つマルコを見ているだけしかできなかった。
あっという間に戦闘が終わり、日が高いうちから宴が始まる。
サッチを始め、四番隊のコック達が大急ぎで準備をしているのが見えたけれど、宴に参加する気分じゃなかった。
「宴…あたしは、今日いいや。」
愛刀を振り、血を飛ばす。
敵の血がこびり付いていて気持ち悪い。一刻も早く綺麗にしてあげたい。
「なんで?生理?」
隣で、宝石を選んでいる腹黒王子のハルタがヘラヘラ笑ってきた。
「ハルタ!!失礼だろう。」
そう言ってハルタの後ろから声をかけてきたの、うちの海賊団一美人のイゾウ。
この人見てると、自分の女性らしさというものを疑いたくなる。いや、疑ってるんだけど。
答えるのが面倒になり「そういうことにしておいて〜」と、後ろ手にバイバイし、水場へ向かった。
「ナマエー!一緒に呑もーぜー」とハルタが言っている。いつもなら一緒にバカみたいに呑むけれど、今日はどうも無理そう。
愛刀に付着したドス黒い血液を水で流しながら、考えるのはマルコのこと。
念願の恋人になれたのに、今更怖気づいている。
あの一番隊隊長 不死鳥マルコ。
あたしは、一番隊のただの隊員で、たまたま女だった。
確かに彼に対して恋心はあった。
今日の戦闘の時、見た姿。
船首に立ち、広げた腕を不死鳥に変えると、真っ青な空と翼に、彼の金髪がキラキラと映える。
左後方を見て、船員達に声をかけるその表情は、ギラギラした瞳の海賊の顔。
暴れることが大好きなわけでは無いマルコでも、戦闘となると気持ちが昂ぶる。
戦うことが純粋に好きなことが見て取れる。
海賊の顔をしたマルコは一層色気があって、たった一度だけ「あの表情で迫られたいなー」と呑気に思ったことがことの始まり。
アプローチすることも無く、誰にも言わずに秘めていた。
快晴の時に敵襲があると喜んで甲板に出ていっていたな。みんなに知られたらヤバいけれど。
ドス黒い血液は粗方落ち、美しい輝きが戻った。
仕上げに磨いて鞘に収め自室に籠もろうと顔を上げれば、よく知る金髪が目に入った。
「ナマエお疲れ。怪我はねぇか?」
へニャっと効果音が鳴りそうなマルコの笑顔。
いつもなら無事に帰ってきた事を実感して胸に飛び込むのだけれど……
ドクンドクンと心臓がうるさい。
足の力が抜けそうなのに、頭が熱い。
今は顔を見たくないんだ。ごめん。マルコ。
「お疲れ様。大丈夫だよ。」
俯いてマルコの横をすり抜けた。
どうして、わかりやすい態度しか取れないんだろう。感情をもっと上手くコントロールしたいのに。
こんな態度じゃ怪しまれる。
その場に居られなくて、逃げるように歩くしか出来ない。
「おい!ナマエ!どうした?何があった?」
さすがは隊長。
後ろからしっかり腕を掴んできた。
「何かされたか?怪我してんのかい?」
貼り付けた笑顔で精一杯の「大丈夫。ちょっと疲れただけだよ。」これがマルコに通用するかわからないが…
マルコの表情が一瞬で無表情に変わって、手の力を強める。
そのままあたしの部屋へズンズンと引っ張っていく。
「ちょっと!マルコ!痛いって!!!」
痴話喧嘩にしか見えないし、そもそも呑みだしてるから、誰かが助けてくれる感じは皆無。
乱暴に部屋に押し込められて、勢いよくドアを閉められた。
壊れたら船大工に怒られるのに…あと、修理費がかさむじゃないか…
「ナマエ、何があったんだい?俺に言えねぇことか?」
あたしの目線に合わせて屈んだマルコは、さっきまでの無表情とは違って、努めて穏やかな声で質問してくる。
「あたしの問題だから…」
マルコの恋人で居る自信が無いと言えたらいいけれど、余計なプライドが邪魔をする。
ナース達がマルコを狙っていること、あたしは釣り合ってないと笑われていること…陸に上がれば知らぬ女達が色めき立つこと…
女としてはソコソコ強いかもしれないが、男相手では強い部類に入れない自分の実力…
自信がない理由はいくらでも出てくる。
ただ抱かれるだけの女になりたくて、あなたの恋人になったんじゃない。
船首で見惚れたあなたに見合う女でありたいのに…
「お前の問題でも、俺は何か手伝えんじゃねぇかなと思うんだが?
好きな女が悩んでて話すらも聞けねぇ男じゃないと勝手に思ってたんだがねぃ。
俺のこと、信頼できねぇかい?」
相変わらず同じ目線で、しっかりとあたしを見てくれている蒼い瞳。
「じ…じし…自信が…持て…ない」
「うん」と相槌するマルコは後ろにあるチェストに浅く座り、あたしを自身の脚の間へ促した。
あたしはポツポツと言葉にしていくしか無かった。頭を巡る自信が無い理由を言葉にするのは簡単ではなかったから。
マルコは時折相槌をしながら、あたしの言葉を根気よく聞いてくれた。
笑ったりバカにしたりせず、一言一言を聞き留めてくれていった。
「ん。ありがとうねぃ。ナマエが感じる不安は、わかったよぃ。」
マルコの右手があたしの頬に触れ、親指で涙を掬ってくれた。
「1つ聞きてぇ。ナマエは俺と別れたいかぃ?」
心臓がドキリっと鳴った。
更に体に力が入り、口を動かせばギギギっと音が鳴りそうだ。
「勘違いしてほしくは無いんだけどねぃ。俺は別れる気はねぇし、お前がどれだけ俺を好きなのかもわかって…正直言うと嬉しいんだ。」
「だから、力抜けよぃ」と微笑まれて、またポロッと涙が出た。
「あ〜。せっかく泣き止んだのにすまねぇな。泣かせちまって。俺は自信のねぇ[#dc=1#]も好きだよぃ。」
涙だけじゃなくて、鼻水まで止まらないあたしは、グシャグシャの顔だったはず。それでも「俺は愛されてるねぃ。」と優しく抱き締められた。
「あた…し‥のほうが…好き‥…だし」
「よいよい」笑って抱き締めながら、右手で頭を優しく撫でられる。
大好きなマルコの背中に腕を回して抱き締め返す。胸に耳を押しつければ、心臓の音がトクトクと心地よくて、世界一安心できる場所だと思った。
「自信無くてごめんね。でも、好きなの。」
腕の中でモゴモゴ言ったら「俺を好きな証拠だろぃ?俺は幸せモンだねぃ。」とクスクス笑われた。
船首に立つ鮮やかな蒼と金。
何度見ても恋に落ちる。
その背中に、その表情に。
1/4ページ