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パチン。パチン。
部屋に響くのは、爪切りが奏でる小さな金属音。
短く切りそろえられた爪達。切り残しがあれば、ヤスリで優しく削る。
最後に削りカスを軽く吹き飛ばす。
数日前に立ち寄ったの島で見つけたベルガモットとローズマリーの香りのクリームを傷だらけの手に塗り込む。指の1本1本を丁寧にマッサージ。
クリームが浸透した手はしっとりとして、少しだけ透明感が出た。
傷やマメ、タコに日焼けで女らしくない手……自分が望んだ結果だと少しの自嘲と誇らしさが入り混じり、複雑な気持ちになりつつ、腕や脚にクリームを滑らせていく。
今までの私なら、この手や足にある傷達も愛おしく思っていた。
恋は人を変えるらしい……。自分の好みやタイプすら変えてしまう。
私の好みのタイプは、お調子者で太陽みたいな笑顔で、豪快で一見すれば軽そうに見えて、実は周りよく見ていて、冷静で策士な人。裏の顔があれば尚良し!
体型は、骨太で筋肉もしっかりしていてほしい。まぁ、サッチみたいな人がタイプだけど、彼は私にとって兄でしかない。
私が好きで好きで止まない相手は、マルコ。
冷静で時に冷酷。酔えば笑うけれど、どこか近寄り難い。いつだって気難しい顔をしていて、しょっちゅう怒鳴っている。
それなのに、人望は厚くて、1番隊の隊員だけじゃなくて他の隊員達にも慕われ、好かれている。
キラキラとした金髪に、海賊とは思えぬ色素が薄く傷ひとつない綺麗な肌。羨ましい限りだ……。靭やかで長い手脚も。
私の好みとは正反対。
それでも、私はマルコを好きになった。
かっこいいし、いい男なのは確かだが、何がきっかけだったのか思い出そうにも、思い出せない。
そして……マルコの好きなタイプは、私と正反対。
酔っ払ったマルコが嬉しそうに言っていた。
小さくて守りたくなる子が好きだと聞いた事がある。
そもそも海賊船にそんな女クルーもナースも居ない。
加護心なのかな?しかし、あんな仏頂面な男を、小さくて守りたくなるような子が好きになるのだろうか?……とにかく、私みたいに先陣切って戦いに行くような人はタイプでは無いのは確かだった。
私に当てはまるのは【小さい】だけ。
食堂に居るマルコは、今日も書類片手に眉間には皺が寄っていた。
その表情すら「かっこいい」と思う私は相当だと思う。
見られてる書類になりたいくらいだ。
「何か用事か?」
「ううん。いつもに増して眉間のシワひどいなーって思って」
ランチの食器を拭きながら、心にもないことを言う。いや、眉間のシワの件は本当だけど……。
「そう思うなら、お前のとこの隊長に報告書出せって言っとけよい」
「サッチ、また出してないの?私手伝ったのに」
「あいつの手伝いなんかしなくていいんだよい。すぐ甘えやがる」
「後で持っていくように伝えるね。隊長のお詫びに、美味しいコーヒー淹れるよ」
「ふっ。わりぃな」
「あとさ、スイーツの試作あるけど食べる?」
「機嫌取りがうまくなったねい」
「サッチに似てきたかな」
大笑いするのではなく、少し目を細めて笑うから、心臓がドキリと大きな音を立てる。マルコはすぐに書類へ視線を戻す。
私も、何食わぬ顔をしてコーヒー豆を挽くが、少しだけ手が震えていた。
あの後、コーヒーを淹れて一緒に試食スイーツを食べて、少しだけ書類を手伝った。
よく考えると、マルコは最近食堂で仕事することが多くなっていた。
私は話すことが増えて嬉しい。
仲がいいほうではあるけど、隊が違えば会うことは少ない。
一緒の任務にならなければ、こうやって一緒に何かすることも少ない。
私は、マルコを見つけるのは得意だけど、それは彼を好きで探すのが上手くなったから。
彼の視界に、私が入ることはどれくらいあるのだろうか……
一時でも彼の視界に入れるなら、この上ない幸せだ。
欲張りは良くないと思いつつも、募る思いは時折溢れ、涙を流してみたり、奥歯を噛み締めたり、上手く笑えない日だってある。
もう少し一緒に居たい……と切に願う日だってある。
ナースと仲良く笑いあうマルコを見て、胸が苦しくなるような小さな嫉妬も。
――「この海域じゃ、今日の満月に願い事をすると叶うらしい」
こんなおとぎ話みたいな話に期待するくらい私は、マルコにのめり込んでいる。
少しでもクルー以上の気持ちを持ってもらえたら、うれしい。恋愛であれば最高だけど……。
ありがたいことに、今日は不寝番。あの噂の満月を思う存分に楽しめる。
クルー達が寝静まった頃、メインマストの見張り台から大きな大きな満月を眺めていた。黄色というか、オレンジというか……とにかく大きくて、月明かりがいつも以上に眩しく感じる。
「……マルコが同じ気持ちになってくれますように……」
ポツリ呟く。
チラリと医務室を見ると、まだ明かりがついている。マルコは今日も夜更かしなのかな?
ポケットから電伝虫を出し、マルコへ繋ぐ。
「どうした?」
「マルコ、まだ起きてるの?」
「そろそろ寝る予定だよい。お前はサボりか?」
「見張り台から医務室の明かりが見えたから、早く寝なよって言おうと思って。たまには早く寝てね」
「ははは。わかってるよい。でもなぁ、今日の満月はすげえなと思ってな。今からそっち行ってもいいかい?」
「見張り台に?」
「あぁ。ナマエひとりかい?」
「今はひとりだよ」
「医務室が見えるなら。メインマストだよな?」
「そう」
「差し入れ持って行くから待ってろい」
「え?」
ガチャと切られてしまった。
カタンっ
振り返るとマルコは、大きな籠とタンブラーを持って見張り台へ飛んできた。
「お疲れい。差し入れな」
「ありがとうー」
並んで満月を見て少し話す。
「今日の満月に、願い事をすると叶うんだってー。マルコもお願い事したら?」
「そんなの迷信だろい?」
「わかんないじゃん」
「願い事したの?」
「あぁ」
「何?教えて!」
「お前も教えろよい」
「えー……好きな人が同じ気持ちで居てくれますようにって」
「お前、好きな奴いるのか?」
「えぇ。まぁ。マルコの、お願いは?」
「あーー。好きなヤツに、キスしたい」
「それは…他力本願過ぎるよー」
マルコ…好きな人いるんだ…
どんな子なんだろう?小さくて守りたくなる可愛らしい女の子を想像する。
タンブラーを両手に持ち、もう一度満月を見上げる。
やっぱり迷信だよね……
ふぅと小さく息を吐いた。
「……そうでもねぇよ」
切なげな声が聞こえてマルコを見ると、満月じゃなくてこちらを見ていた。
「……マルコ?」
言いかけた唇に、ちゅっと温かいものが触れた。
「お前の恋、叶わなきゃいいと思ってる」
部屋に響くのは、爪切りが奏でる小さな金属音。
短く切りそろえられた爪達。切り残しがあれば、ヤスリで優しく削る。
最後に削りカスを軽く吹き飛ばす。
数日前に立ち寄ったの島で見つけたベルガモットとローズマリーの香りのクリームを傷だらけの手に塗り込む。指の1本1本を丁寧にマッサージ。
クリームが浸透した手はしっとりとして、少しだけ透明感が出た。
傷やマメ、タコに日焼けで女らしくない手……自分が望んだ結果だと少しの自嘲と誇らしさが入り混じり、複雑な気持ちになりつつ、腕や脚にクリームを滑らせていく。
今までの私なら、この手や足にある傷達も愛おしく思っていた。
恋は人を変えるらしい……。自分の好みやタイプすら変えてしまう。
私の好みのタイプは、お調子者で太陽みたいな笑顔で、豪快で一見すれば軽そうに見えて、実は周りよく見ていて、冷静で策士な人。裏の顔があれば尚良し!
体型は、骨太で筋肉もしっかりしていてほしい。まぁ、サッチみたいな人がタイプだけど、彼は私にとって兄でしかない。
私が好きで好きで止まない相手は、マルコ。
冷静で時に冷酷。酔えば笑うけれど、どこか近寄り難い。いつだって気難しい顔をしていて、しょっちゅう怒鳴っている。
それなのに、人望は厚くて、1番隊の隊員だけじゃなくて他の隊員達にも慕われ、好かれている。
キラキラとした金髪に、海賊とは思えぬ色素が薄く傷ひとつない綺麗な肌。羨ましい限りだ……。靭やかで長い手脚も。
私の好みとは正反対。
それでも、私はマルコを好きになった。
かっこいいし、いい男なのは確かだが、何がきっかけだったのか思い出そうにも、思い出せない。
そして……マルコの好きなタイプは、私と正反対。
酔っ払ったマルコが嬉しそうに言っていた。
小さくて守りたくなる子が好きだと聞いた事がある。
そもそも海賊船にそんな女クルーもナースも居ない。
加護心なのかな?しかし、あんな仏頂面な男を、小さくて守りたくなるような子が好きになるのだろうか?……とにかく、私みたいに先陣切って戦いに行くような人はタイプでは無いのは確かだった。
私に当てはまるのは【小さい】だけ。
食堂に居るマルコは、今日も書類片手に眉間には皺が寄っていた。
その表情すら「かっこいい」と思う私は相当だと思う。
見られてる書類になりたいくらいだ。
「何か用事か?」
「ううん。いつもに増して眉間のシワひどいなーって思って」
ランチの食器を拭きながら、心にもないことを言う。いや、眉間のシワの件は本当だけど……。
「そう思うなら、お前のとこの隊長に報告書出せって言っとけよい」
「サッチ、また出してないの?私手伝ったのに」
「あいつの手伝いなんかしなくていいんだよい。すぐ甘えやがる」
「後で持っていくように伝えるね。隊長のお詫びに、美味しいコーヒー淹れるよ」
「ふっ。わりぃな」
「あとさ、スイーツの試作あるけど食べる?」
「機嫌取りがうまくなったねい」
「サッチに似てきたかな」
大笑いするのではなく、少し目を細めて笑うから、心臓がドキリと大きな音を立てる。マルコはすぐに書類へ視線を戻す。
私も、何食わぬ顔をしてコーヒー豆を挽くが、少しだけ手が震えていた。
あの後、コーヒーを淹れて一緒に試食スイーツを食べて、少しだけ書類を手伝った。
よく考えると、マルコは最近食堂で仕事することが多くなっていた。
私は話すことが増えて嬉しい。
仲がいいほうではあるけど、隊が違えば会うことは少ない。
一緒の任務にならなければ、こうやって一緒に何かすることも少ない。
私は、マルコを見つけるのは得意だけど、それは彼を好きで探すのが上手くなったから。
彼の視界に、私が入ることはどれくらいあるのだろうか……
一時でも彼の視界に入れるなら、この上ない幸せだ。
欲張りは良くないと思いつつも、募る思いは時折溢れ、涙を流してみたり、奥歯を噛み締めたり、上手く笑えない日だってある。
もう少し一緒に居たい……と切に願う日だってある。
ナースと仲良く笑いあうマルコを見て、胸が苦しくなるような小さな嫉妬も。
――「この海域じゃ、今日の満月に願い事をすると叶うらしい」
こんなおとぎ話みたいな話に期待するくらい私は、マルコにのめり込んでいる。
少しでもクルー以上の気持ちを持ってもらえたら、うれしい。恋愛であれば最高だけど……。
ありがたいことに、今日は不寝番。あの噂の満月を思う存分に楽しめる。
クルー達が寝静まった頃、メインマストの見張り台から大きな大きな満月を眺めていた。黄色というか、オレンジというか……とにかく大きくて、月明かりがいつも以上に眩しく感じる。
「……マルコが同じ気持ちになってくれますように……」
ポツリ呟く。
チラリと医務室を見ると、まだ明かりがついている。マルコは今日も夜更かしなのかな?
ポケットから電伝虫を出し、マルコへ繋ぐ。
「どうした?」
「マルコ、まだ起きてるの?」
「そろそろ寝る予定だよい。お前はサボりか?」
「見張り台から医務室の明かりが見えたから、早く寝なよって言おうと思って。たまには早く寝てね」
「ははは。わかってるよい。でもなぁ、今日の満月はすげえなと思ってな。今からそっち行ってもいいかい?」
「見張り台に?」
「あぁ。ナマエひとりかい?」
「今はひとりだよ」
「医務室が見えるなら。メインマストだよな?」
「そう」
「差し入れ持って行くから待ってろい」
「え?」
ガチャと切られてしまった。
カタンっ
振り返るとマルコは、大きな籠とタンブラーを持って見張り台へ飛んできた。
「お疲れい。差し入れな」
「ありがとうー」
並んで満月を見て少し話す。
「今日の満月に、願い事をすると叶うんだってー。マルコもお願い事したら?」
「そんなの迷信だろい?」
「わかんないじゃん」
「願い事したの?」
「あぁ」
「何?教えて!」
「お前も教えろよい」
「えー……好きな人が同じ気持ちで居てくれますようにって」
「お前、好きな奴いるのか?」
「えぇ。まぁ。マルコの、お願いは?」
「あーー。好きなヤツに、キスしたい」
「それは…他力本願過ぎるよー」
マルコ…好きな人いるんだ…
どんな子なんだろう?小さくて守りたくなる可愛らしい女の子を想像する。
タンブラーを両手に持ち、もう一度満月を見上げる。
やっぱり迷信だよね……
ふぅと小さく息を吐いた。
「……そうでもねぇよ」
切なげな声が聞こえてマルコを見ると、満月じゃなくてこちらを見ていた。
「……マルコ?」
言いかけた唇に、ちゅっと温かいものが触れた。
「お前の恋、叶わなきゃいいと思ってる」
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