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「マルコー。これって使うの?」
マルコと一緒に彼の部屋を掃除していると、使っていない引き出しから懐中時計が出てきた。
「おっ!……前からずっと探してたんだよい。壊れちまってねぃ……修理出さねぇとな」
懐かしむように柔らかく微笑む。
「思い出の品?」
「あぁ……モビーに乗って初めて貰った分け前で買ったやつだねい。」
大きな掌に収まる懐中時計。モビーに乗って初めてのということは、マルコが10代の頃。きっとその頃は、掌にちょうど良く収まったのかもしれない。今は、懐中時計が小さく見えた。
シャラ……シャラ……とチェーンが小さく音を立てる。
「その頃からセンスいいんだね。この装飾、細かくて凄く素敵」
懐中時計の蓋を指先で撫でる。使っていないから鈍い色をしているが、磨けば綺麗に輝きそう。所々に小さな傷やへこみがあるのは、マルコと歩んできた歴史なんだろう。
部屋の窓から差し込む光に照らし、カチンっと開けると中の時計も素敵だった。ただ、ガラス面にヒビが入っている。
「ねぇ……直してみてもいい?」
「構わねえけど、やったことあんのか?」
「時計は直せるけど、懐中時計はやったことない……勉強してからならいいでしょ?」
「あぁ。細かい作業好きだもんな。ここも割れてたから、一緒に直してもらえると助かるよい」
こことは、文字盤のガラス面のヒビ。
「小せぇとガラスは変えられねぇか」
「加工すればいけるけど……ここまで小さいと時間かかりそう。というか、私にそこまで技術ないかも」
「文字盤は、次の島で頼むとするよい」
「時間かかるけど、責任もって直すからね」
なんて会話したのが、4月頃だった気がする。
互いに忙しすぎて、懐中時計のことなどすっかり頭から抜け落ちていた。……いや、これはただの言い訳か。
「直してくれると助かるよい」と言った、少し嬉しそうな表情を思い出して、目元を抑える。
懐中時計の仕組みの勉強から始めて……10月の誕生日までに仕上げよう。あと2ヶ月。なんとかなるだろう。
――必ず仕上げる。今日から毎晩でも、少しずつでも。
懐中時計の仕組みの勉強、素材の確保、島に寄港したおかげで必要なものは揃った。そして、希少な天然石――ラズライトも手に入った。本来はアクセサリーなどには向かない、この天然石を文字盤に仕込む予定。
机に散らばる懐中時計の図解、夜更けに灯すランプの灯り、ラズライトを小さく削る硬質な音。
別に誕生日に渡さなくてもいいのだけど……これからもマルコとの時間を刻みたいと、この懐中時計に想いを乗せたかった。
懐中時計の修理はすぐ終わったが、加工が難しい。毎晩、作業場に籠もってラズライトを削り、硬化剤を使ってみたり、ガラスを嵌め込んでみたり……試行錯誤が続いた。
ラズライトの青は、深いアオ、エメラルドを思わせるアオ、透き通るようなアオ……光の加減でいくつもの表情を見せる。それはまるで彼が見せる様々な表情そのもののようだった。
クルーたちと笑いあう無邪気な横顔、戦闘での獰猛さ、そして……私だけに見せる優しくて甘い瞳も。どんなマルコも私には輝いて見えた。
どのアオも美しくて、削りだすたびに胸の奥が暖かくなる。
カリカリとラズライトを削る音に耳を澄ます。
夜更けの静けさと重なって、そのひとときは誰にも邪魔されない、ひそやかな幸せだった。
――――ある日のこと
マルコと船縁に座り、釣りをしていた昼下がり。
「ナマエ、最近忙しいのかい?」
「え? なんで?」
「オレの部屋に全然来ねぇから」
「あ……ちょっと忙しくて……って、拗ねてる?」
「拗ねてなんかねぇよい。……多分…」
下唇を突き出して、少しだけ眉間に皺を寄せるマルコが少し可愛い。
本当は一緒に過ごしている時間すら使って懐中時計を仕上げたいが……あからさまに拗ねる彼が愛おしくて、自然と目を細める。
「あとで部屋に行ってもいい?」
「断るわけねぇだろい」
マルコは目を細めて、口角をキュッとあげて笑い、その大きな手で私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
この笑顔の為にも、誕生日までに仕上げたいな。
「イチャついてねぇで、デカい魚釣れよ」
「ナマエに愛想尽かされなくて良かった〜マルコ!」
サッチとラクヨウに笑われて、恥ずかしそう。
「寂しかった?」と聞けば
「まぁな」と笑う。
その笑顔の奥に、ほんの少し拗ねた名残が見えて、胸の奥がじんわりと熱くなった。
――10月4日23:00を過ぎた頃
甲板の明かりが遠くで瞬き、船内は静まり返っている。
マルコの部屋の前に立つと、扉の隙間から柔らかな灯りがこぼれていた。
コン、と軽くノックをすると、
「開いてるよい」と、いつもの穏やかな声が返ってくる。
部屋に入ると、マルコは寝間着姿で本を読んでいた。
その横顔がランプの明かりに照らされて、青い影が落ちている。
「遅い時間にごめんね」
「お前なら、いつだって構わねぇよ……どうした?」
手に持っていた小さな箱を、そっと差し出す。
「ちょっと早いけど……お誕生日、おめでとう」
マルコは目を瞬かせ、箱を受け取ると丁寧に蓋を開けた。
中にあったのは、修理を終えたあの懐中時計。
ガラスの向こうで、止まっていたはずの針が規則正しく動いている。
そして、ラズライトの青が静かに光を返している。
「……直してくれたのかい?」
「うん。時間かかったけど、やっと完成したの」
マルコは手のひらに懐中時計を乗せ、そっと親指で撫でる。
「こんなに綺麗だったかねぃ……」
「ラズライト、仕込んでみたんだ。光の加減で色が変わるの。初めてその石を見た時にマルコみたいだなって思って」
――ラズライトのように、どんな時も変わらぬ蒼で、そばにいられたらいい。
しばらく沈黙が落ちる。
時計の針の音が、部屋の中にちいさく響く。
「加工に手間取って……というか、マルコの懐中時計なのにプレゼントっておかしいよね?」
「……ありがとうよい。大事にする」
「勝手に加工したの、怒ってない?」
マルコは微笑んで、腕を伸ばし、ギュッと抱き締める。
「オレの時間も、お前の時間も、同じ針で進んでいくのがいいよい。それにお前が手を加えてくれたんだろい?そんなの嬉しいに決まってるよい!」
腕の中で、マルコの掌に包まれた懐中時計が、静かに針を刻む。
トク、トクと小さな音が、ふたりの間の静けさに溶けていく。
「……ありがとな」
その声は、照れくさそうに笑う気配と一緒に落ちてきた。
胸の奥がじんわりと温かくなる。
ラズライトの蒼が、ランプの灯に反射して、ふたりを包み込むように光った。
止まっていた時間が、静かに動き出す。
――そんなマルコの誕生日。
マルコと一緒に彼の部屋を掃除していると、使っていない引き出しから懐中時計が出てきた。
「おっ!……前からずっと探してたんだよい。壊れちまってねぃ……修理出さねぇとな」
懐かしむように柔らかく微笑む。
「思い出の品?」
「あぁ……モビーに乗って初めて貰った分け前で買ったやつだねい。」
大きな掌に収まる懐中時計。モビーに乗って初めてのということは、マルコが10代の頃。きっとその頃は、掌にちょうど良く収まったのかもしれない。今は、懐中時計が小さく見えた。
シャラ……シャラ……とチェーンが小さく音を立てる。
「その頃からセンスいいんだね。この装飾、細かくて凄く素敵」
懐中時計の蓋を指先で撫でる。使っていないから鈍い色をしているが、磨けば綺麗に輝きそう。所々に小さな傷やへこみがあるのは、マルコと歩んできた歴史なんだろう。
部屋の窓から差し込む光に照らし、カチンっと開けると中の時計も素敵だった。ただ、ガラス面にヒビが入っている。
「ねぇ……直してみてもいい?」
「構わねえけど、やったことあんのか?」
「時計は直せるけど、懐中時計はやったことない……勉強してからならいいでしょ?」
「あぁ。細かい作業好きだもんな。ここも割れてたから、一緒に直してもらえると助かるよい」
こことは、文字盤のガラス面のヒビ。
「小せぇとガラスは変えられねぇか」
「加工すればいけるけど……ここまで小さいと時間かかりそう。というか、私にそこまで技術ないかも」
「文字盤は、次の島で頼むとするよい」
「時間かかるけど、責任もって直すからね」
なんて会話したのが、4月頃だった気がする。
互いに忙しすぎて、懐中時計のことなどすっかり頭から抜け落ちていた。……いや、これはただの言い訳か。
「直してくれると助かるよい」と言った、少し嬉しそうな表情を思い出して、目元を抑える。
懐中時計の仕組みの勉強から始めて……10月の誕生日までに仕上げよう。あと2ヶ月。なんとかなるだろう。
――必ず仕上げる。今日から毎晩でも、少しずつでも。
懐中時計の仕組みの勉強、素材の確保、島に寄港したおかげで必要なものは揃った。そして、希少な天然石――ラズライトも手に入った。本来はアクセサリーなどには向かない、この天然石を文字盤に仕込む予定。
机に散らばる懐中時計の図解、夜更けに灯すランプの灯り、ラズライトを小さく削る硬質な音。
別に誕生日に渡さなくてもいいのだけど……これからもマルコとの時間を刻みたいと、この懐中時計に想いを乗せたかった。
懐中時計の修理はすぐ終わったが、加工が難しい。毎晩、作業場に籠もってラズライトを削り、硬化剤を使ってみたり、ガラスを嵌め込んでみたり……試行錯誤が続いた。
ラズライトの青は、深いアオ、エメラルドを思わせるアオ、透き通るようなアオ……光の加減でいくつもの表情を見せる。それはまるで彼が見せる様々な表情そのもののようだった。
クルーたちと笑いあう無邪気な横顔、戦闘での獰猛さ、そして……私だけに見せる優しくて甘い瞳も。どんなマルコも私には輝いて見えた。
どのアオも美しくて、削りだすたびに胸の奥が暖かくなる。
カリカリとラズライトを削る音に耳を澄ます。
夜更けの静けさと重なって、そのひとときは誰にも邪魔されない、ひそやかな幸せだった。
――――ある日のこと
マルコと船縁に座り、釣りをしていた昼下がり。
「ナマエ、最近忙しいのかい?」
「え? なんで?」
「オレの部屋に全然来ねぇから」
「あ……ちょっと忙しくて……って、拗ねてる?」
「拗ねてなんかねぇよい。……多分…」
下唇を突き出して、少しだけ眉間に皺を寄せるマルコが少し可愛い。
本当は一緒に過ごしている時間すら使って懐中時計を仕上げたいが……あからさまに拗ねる彼が愛おしくて、自然と目を細める。
「あとで部屋に行ってもいい?」
「断るわけねぇだろい」
マルコは目を細めて、口角をキュッとあげて笑い、その大きな手で私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
この笑顔の為にも、誕生日までに仕上げたいな。
「イチャついてねぇで、デカい魚釣れよ」
「ナマエに愛想尽かされなくて良かった〜マルコ!」
サッチとラクヨウに笑われて、恥ずかしそう。
「寂しかった?」と聞けば
「まぁな」と笑う。
その笑顔の奥に、ほんの少し拗ねた名残が見えて、胸の奥がじんわりと熱くなった。
――10月4日23:00を過ぎた頃
甲板の明かりが遠くで瞬き、船内は静まり返っている。
マルコの部屋の前に立つと、扉の隙間から柔らかな灯りがこぼれていた。
コン、と軽くノックをすると、
「開いてるよい」と、いつもの穏やかな声が返ってくる。
部屋に入ると、マルコは寝間着姿で本を読んでいた。
その横顔がランプの明かりに照らされて、青い影が落ちている。
「遅い時間にごめんね」
「お前なら、いつだって構わねぇよ……どうした?」
手に持っていた小さな箱を、そっと差し出す。
「ちょっと早いけど……お誕生日、おめでとう」
マルコは目を瞬かせ、箱を受け取ると丁寧に蓋を開けた。
中にあったのは、修理を終えたあの懐中時計。
ガラスの向こうで、止まっていたはずの針が規則正しく動いている。
そして、ラズライトの青が静かに光を返している。
「……直してくれたのかい?」
「うん。時間かかったけど、やっと完成したの」
マルコは手のひらに懐中時計を乗せ、そっと親指で撫でる。
「こんなに綺麗だったかねぃ……」
「ラズライト、仕込んでみたんだ。光の加減で色が変わるの。初めてその石を見た時にマルコみたいだなって思って」
――ラズライトのように、どんな時も変わらぬ蒼で、そばにいられたらいい。
しばらく沈黙が落ちる。
時計の針の音が、部屋の中にちいさく響く。
「加工に手間取って……というか、マルコの懐中時計なのにプレゼントっておかしいよね?」
「……ありがとうよい。大事にする」
「勝手に加工したの、怒ってない?」
マルコは微笑んで、腕を伸ばし、ギュッと抱き締める。
「オレの時間も、お前の時間も、同じ針で進んでいくのがいいよい。それにお前が手を加えてくれたんだろい?そんなの嬉しいに決まってるよい!」
腕の中で、マルコの掌に包まれた懐中時計が、静かに針を刻む。
トク、トクと小さな音が、ふたりの間の静けさに溶けていく。
「……ありがとな」
その声は、照れくさそうに笑う気配と一緒に落ちてきた。
胸の奥がじんわりと温かくなる。
ラズライトの蒼が、ランプの灯に反射して、ふたりを包み込むように光った。
止まっていた時間が、静かに動き出す。
――そんなマルコの誕生日。
