白銀の氷河(10年後瀬人夢)
《―病院に頼れる人も、頼れない人も、命の重みは一緒のはず。だったら私は一人でも多くの命を救いたい―……》
――ある冬の日、海馬コーポレーション社長室。
一人の青年が社長室の大きな窓から童実野シティの夜景を見下ろしていた。
白いビジネススーツにブラウンの髪。そして青い瞳をした青年。
海馬コーポレーション社長、海馬瀬人。
彼は16歳でこの巨大企業、「海馬コーポレーション」の社長に就任して10年、若干26歳の若きカリスマ天才経営者だ。
そんな彼の元に、もう一人の青年がやって来た。
「兄様!頼まれてた資料、持ってきたよ!」
紺色のスリーピースのビジネススーツに身を包み、肩にかかるかどうかの長さの黒髪。そしてダークパープルの切れ長ぎみの瞳。
海馬瀬人の実弟にして、海馬コーポレーションの副社長、海馬モクバ。彼は海馬コーポレーションの副社長でありながら、20歳の現役の大学生でもある。
「…モクバか。随分と時間が掛かったようだな。」
「え?そうかな?そうでもないと思うけど…」
瀬人はモクバから受け取ったUSBをパソコンに差すと空中にホログラム投影し、中のデータをモクバと一緒に確認し始めた。
「…ふむ…なるほどな…」
「どう?兄様。ピンとくるような医者、居そう?」
「…フン…確かに悪くはないが…俺が求めている人物像に合致するような医者は居ないな…」
「…そっか…じゃあこっちは?ピックアップリストに入れるかどうか迷って保留にした医者達のデータなんだけど…。」
モクバはそう言いながら瀬人に別のUSBを手渡した。瀬人はそのUSBを繋ぐと、再びモクバと確認し始めた。
すると、見覚えのある一人の医師の名前が瀬人の目に飛び込んできた。
《Kassandra Luik von Welzenbauer》
「カサンドラ・ルイク・フォン・ヴェルツェンバウアー……」
瀬人の眉がピクリと動いた。
「保留に入れた理由は?」
「うーん…まぁ確かに実力も実績も問題ない…むしろ最高だし、俺からしたらウェルカムなんだけど…」
モクバはそこまで言うと言葉を詰まらせて言いにくそうに瀬人から視線を逸らした。
「…カーサは兄様の元カノだから…それにヘッドハンティングしたところでカーサは"YES"とは言わなさそうだし…。そもそも二人が別れた理由も理由だしさ…」
「……フン……」
瀬人は鼻でそう笑うと、モクバがまとめていたこの「Kassandra Luik von Welzenbauer」という医者のデータに目を通し始めた。
"【Kassandra Luik von Welzenbauer】
26歳、外科医。ドイツに本社を置くヴェルツェンバウアー社の社長令嬢。エストニア系ドイツ人。身長170cm。
日本の童実野高校を卒業後、現役で日本の有名大学の医学部に進学し、その並外れた天才的な頭脳(=ギフテッド)を武器に大学を飛び級して、わずか22歳で医師免許を取得。23歳で「国境なき医師団」のメンバーに加入し、アフリカの紛争地域にある難民キャンプで医師として数々の偉業を成し遂げた。その実績と確かな実力から医学界では「アスクレピオスの化身」「最強の外科医」などと言われている。彼女の実績は以下の通りである・・・・・・(略)"
「…ほう……」
瀬人はデータに目を通しながらフッと不敵な笑みを浮かべた。
すると開いていたデータを閉じ、デスクに戻るなりすぐさまパソコンを開いた。
「…兄…様…?」
「やるぞ、モクバ。」
「やるって…まさか…」
「その通りだ。あの女を…カサンドラをアフリカから連れ戻す。ヘッドハンティングをして我が社の新しいプロジェクト組み込むのだ。…このプロジェクトを完成させるための優秀な医者…それはあの女以外に適任者おらん。アフリカにはこの俺が直々に出向いてやる。」
瀬人がそう言うと、モクバは目を丸くして絶句した。
「アフリカから連れ戻す」それはつまり現在進行形で大規模な紛争が続いている危険地帯に自ら乗り込むということ。身の安全の保証が出来ないのだ。
「…兄様…正気かよ…」
「フン…人間の最大の価値は、人間が外界の事情にできるだけ左右されずに、これをできるだけ左右するところにある。…そういう事だ。」
瀬人はそれだけいうとデスクを立ち、社長室から静かに去っていった。
「…周りの環境や状況に振り回されて生きるのではなく、自分の意志で環境を動かし、人生をコントロールしていくことこそが、人間の本当の強さであり価値である…ってか。…ゲーテかよ。どんだけカーサの影響を受けてるんだよ兄様は。」
モクバは社長室を去る瀬人の背中を見送りながら呆れ顔で小さくそう呟いた。
――ある冬の日、海馬コーポレーション社長室。
一人の青年が社長室の大きな窓から童実野シティの夜景を見下ろしていた。
白いビジネススーツにブラウンの髪。そして青い瞳をした青年。
海馬コーポレーション社長、海馬瀬人。
彼は16歳でこの巨大企業、「海馬コーポレーション」の社長に就任して10年、若干26歳の若きカリスマ天才経営者だ。
そんな彼の元に、もう一人の青年がやって来た。
「兄様!頼まれてた資料、持ってきたよ!」
紺色のスリーピースのビジネススーツに身を包み、肩にかかるかどうかの長さの黒髪。そしてダークパープルの切れ長ぎみの瞳。
海馬瀬人の実弟にして、海馬コーポレーションの副社長、海馬モクバ。彼は海馬コーポレーションの副社長でありながら、20歳の現役の大学生でもある。
「…モクバか。随分と時間が掛かったようだな。」
「え?そうかな?そうでもないと思うけど…」
瀬人はモクバから受け取ったUSBをパソコンに差すと空中にホログラム投影し、中のデータをモクバと一緒に確認し始めた。
「…ふむ…なるほどな…」
「どう?兄様。ピンとくるような医者、居そう?」
「…フン…確かに悪くはないが…俺が求めている人物像に合致するような医者は居ないな…」
「…そっか…じゃあこっちは?ピックアップリストに入れるかどうか迷って保留にした医者達のデータなんだけど…。」
モクバはそう言いながら瀬人に別のUSBを手渡した。瀬人はそのUSBを繋ぐと、再びモクバと確認し始めた。
すると、見覚えのある一人の医師の名前が瀬人の目に飛び込んできた。
《Kassandra Luik von Welzenbauer》
「カサンドラ・ルイク・フォン・ヴェルツェンバウアー……」
瀬人の眉がピクリと動いた。
「保留に入れた理由は?」
「うーん…まぁ確かに実力も実績も問題ない…むしろ最高だし、俺からしたらウェルカムなんだけど…」
モクバはそこまで言うと言葉を詰まらせて言いにくそうに瀬人から視線を逸らした。
「…カーサは兄様の元カノだから…それにヘッドハンティングしたところでカーサは"YES"とは言わなさそうだし…。そもそも二人が別れた理由も理由だしさ…」
「……フン……」
瀬人は鼻でそう笑うと、モクバがまとめていたこの「Kassandra Luik von Welzenbauer」という医者のデータに目を通し始めた。
"【Kassandra Luik von Welzenbauer】
26歳、外科医。ドイツに本社を置くヴェルツェンバウアー社の社長令嬢。エストニア系ドイツ人。身長170cm。
日本の童実野高校を卒業後、現役で日本の有名大学の医学部に進学し、その並外れた天才的な頭脳(=ギフテッド)を武器に大学を飛び級して、わずか22歳で医師免許を取得。23歳で「国境なき医師団」のメンバーに加入し、アフリカの紛争地域にある難民キャンプで医師として数々の偉業を成し遂げた。その実績と確かな実力から医学界では「アスクレピオスの化身」「最強の外科医」などと言われている。彼女の実績は以下の通りである・・・・・・(略)"
「…ほう……」
瀬人はデータに目を通しながらフッと不敵な笑みを浮かべた。
すると開いていたデータを閉じ、デスクに戻るなりすぐさまパソコンを開いた。
「…兄…様…?」
「やるぞ、モクバ。」
「やるって…まさか…」
「その通りだ。あの女を…カサンドラをアフリカから連れ戻す。ヘッドハンティングをして我が社の新しいプロジェクト組み込むのだ。…このプロジェクトを完成させるための優秀な医者…それはあの女以外に適任者おらん。アフリカにはこの俺が直々に出向いてやる。」
瀬人がそう言うと、モクバは目を丸くして絶句した。
「アフリカから連れ戻す」それはつまり現在進行形で大規模な紛争が続いている危険地帯に自ら乗り込むということ。身の安全の保証が出来ないのだ。
「…兄様…正気かよ…」
「フン…人間の最大の価値は、人間が外界の事情にできるだけ左右されずに、これをできるだけ左右するところにある。…そういう事だ。」
瀬人はそれだけいうとデスクを立ち、社長室から静かに去っていった。
「…周りの環境や状況に振り回されて生きるのではなく、自分の意志で環境を動かし、人生をコントロールしていくことこそが、人間の本当の強さであり価値である…ってか。…ゲーテかよ。どんだけカーサの影響を受けてるんだよ兄様は。」
モクバは社長室を去る瀬人の背中を見送りながら呆れ顔で小さくそう呟いた。