ウクライナのひまわり(高校生モクバ夢)
童実野高校 音楽室。
放課後の音楽室から軽快なピアノの音とヴァイオリンの音色が響く。
「…うわぁぁ〜!ごめん!俺が間違えた!」
軽快なピアノを奏でているのは海馬モクバ。童実野高校の2年生で海馬コーポレーション(KC)の副社長でもある。
兄であり童実野高校のOBである、海馬コーポレーション(KC)社長の海馬瀬人ほどではないが、鋭くもどこか色気のある、少し切れ長ぎみのダークパープルの瞳をしている。
制服(学ラン)も着崩さず、キチンと着ている、学園の一軍男子だ。
「あはは!モクバはその部分がトッテモ苦手みたいネ!さっきも間違えてたデショ!」
軽快なピアノの伴奏に合わせてヴァイオリンを奏でているのは、モクバと同じく童実野高校の2年生で、激化するロシアとの戦争から逃れてきたウクライナの少女、ソフィヤ・シェフチェンコ。彼女は10歳の時にウクライナで開かれた社交パーティでモクバと出会い、6年ぶりにこの童実野高校でモクバと再会した、モクバの友人…いや、モクバの片思い中の相手である(ソフィヤはモクバの想いに気付いていない)。透き通るような白い肌に、柔らかい金髪、そして明るいトーンの蒼い瞳を持つ、"THE・ウクライナ美女"だ。
「あー…もっと練習する時間増やさなきゃな…。」
「仕方ないネ!仕事忙しいんだかラ。…やっぱり私、お兄サンに言おうカ?」
「や、やめてくれッ!! 兄サマにそんなこと言ったら、俺の副社長としてのキャリアがマジで(物理的に)終わる…!!」
ソフィヤの助太刀(?)をモクバは慌てて牽制すると、ソフィヤが持っているヴァイオリンが目に入った。
「…なぁソフィヤ。そのヴァイオリン、ちょっと見せてくれねーか?ずっと気になってたんだけど、なんか俺が知ってるヴァイオリンと違う気がするんだよな…。」
ソフィヤが「いいヨ!」と言ってモクバにヴァイオリンを渡すと、モクバは受け取ったヴァイオリンをまじまじと観察し始めた。
「…俺が知ってるヴァイオリンってさ、表面がツルツルしてて、こんな装飾なんて無いハズなんだよな…。」
「そうネ。私のヴァイオリンは普通のヴァイオリンとはチョット違うネ。でも違うのは見た目と剛性と重さだけだヨ。音は普通のヴァイオリンと一緒ネ。」
「ふーん…。…このヴァイオリン、だいぶ古そうだけど…お前が買ったのか?」
「No,違うネ。このヴァイオリンは私の祖母の形見ヨ。」
"祖母の形見"この言葉を聞いたモクバはまじまじとヴァイオリンを観察していた手をピタリと止めると、視線をヴァイオリンからソフィヤに移した。
「形見…?」
「…私の祖母は有名なヴァイオリ二ストだったネ。でも3年前に病気で亡くなったヨ。そのヴァイオリンは祖母が何十年もの長イ時間を一緒に過ごシタ、祖母の大切な相棒ネ。そんな大切なヴァイオリンを、祖母は亡くなる数日前に私にくれたのヨ。ダカラ、このヴァイオリンは私の宝物!トッテモ大事ネ!」
ソフィヤがそう言って笑うと、モクバはヴァイオリンをそっとソフィヤに返した。
ソフィヤはモクバからヴァイオリンを受け取ると、祖母との思い出を慈しむような瞳でヴァイオリンを眺めた。
「…私の祖母はいつも言ってたヨ。『音楽に国境はない。芸術は、国を越え、時を越え、言葉を越えて、人の心と心を結ぶ。音楽もまた、そのたった一音で、言葉よりも深く語りかける。孤独の闇に響くひとつの旋律が、世界のどこかの誰かとあなたの魂を共鳴させるのよ。』ってネ。ダカラ私、信じてる。世界の色んな所で戦争や紛争が起きてるケド、そこに音楽ガあれば、心と心、結ばれテ、きっと世界、良くなるネ。ダカラ私、このヴァイオリンでイッパイの音楽、届けるヨ。」
ソフィヤの信念を聞いたモクバは、ソフィヤのその純粋さに当てられて、少し気恥ずかしそうにピアノの鍵盤を一つ、優しく指先で鳴らしながら真摯に答えた。
「……『魂を共鳴させる』、か。……いい言葉だな。……お前が言うと、それがただの綺麗事じゃないって思えるから不思議だよ」
「モクバ、私本気ヨ!綺麗事なんかじゃないネ!」
「分かってるって。…なぁ、ソフィヤ。俺さ、ソフィヤにずっと伝えたかった事があるんだ。」
モクバはそう言うと、ピアノの鍵盤に向いていた視線をソフィヤに向けた。
するとソフィヤはヴァイオリンを抱えたまま、「なぁに?」と小首を傾げた。
「(……昨日は兄サマに邪魔されて言えなかったけど…今なら言えるはず…!今、英語じゃなくて、ソフィヤが愛する母国の言葉で……!)…その…俺は…」
モクバが決死の告白をしようとしたとき、音楽室の扉がバンッ!と開き、教師が入ってきた。
「コラ!お前たち!下校時間はとっくに過ぎてるぞ!早く帰りなさい!」
「Oh!先生スミマセン!急いで帰りマス!」
「(はぁぁぁ!?せっかく言えそうだったのに…嘘だろ……)……マジかよ……」
モクバとソフィヤは教師に「早く帰れ!」と促され、音楽室を後にした。
「……ったく、なんだよ、いいところだったのに……」
黄昏時の校舎裏。モクバはブーブと文句をいいながらヴァイオリンケースを背負ったソフィヤの隣を歩いていた。
「モクバ、元気ナイネ。……先生、怒ってたけど、私たち遅くまで練習しすぎたデス。……ごめんネ、私の練習に付き合わせたから……」
「いや、お前のせいじゃないよ。……俺が勝手に残ってただけだし。……あー、でも、さっき言おうとしたこと……」
モクバは学ランの襟元を少しだけ緩め、ダークパープルの瞳を泳がせた。副社長として世界を相手にする彼も、この黒い制服を着ている間は、ただの「初恋に悩む16歳の少年」だった。
「……なぁ、ソフィヤ。……さっきの続き、だけどさ」
「続き? ……あ! モクバが言いたかった事ネ! 忘れてたヨ、なぁに?」
ソフィヤが歩みを止め、満面の笑顔でモクバを見上げる。学ランの袖越しに、ソフィヤの柔らかい金髪が夕風に揺れるのが見えた。
「……お前さ、そのヴァイオリンで世界を良くしたいって言っただろ? ……俺、それに協力したいんだ。……KCの技術も、俺の力も全部使って、お前の音楽を世界中に届ける手伝いをさせてくれよ」
「モクバ……」
「……それから、えっと……。……俺にとってお前は、ただの『友達』以上の……」
その時、校門の前に一台の真っ白なハイパーカーが、凄まじいタイヤの悲鳴を上げてドリフト停車した。
「フン……。貴様ら、こんな時間まで何をしている。下校時刻は大幅にオーバーしているハズだが?」
「…………兄サマぁぁぁぁぁぁッ!!!!! なんでここにいんだよッ!? しかもその車、目立ちすぎだろ!!」
白いロングコートを風になびかせ、ハンドルを握る瀬人は、サングラス越しに冷徹な視線を二人へ向けた。
「モクバ。……貴様のプロジェクト進行度があまりにも遅すぎたのだ。そこで俺が直接、実戦の場を用意してやった。……ソフィヤ、乗れ。今夜は我が社の最新音響ホールを貴様に開放してやる。……貴様の『音楽の力』を存分に発揮するがいい」
「お兄サン、本当デスカ!? 私、大きなホールで弾くの、夢だったデス! モクバ、行こうヨ!」
「(……ああっ! ソフィヤが兄サマのペースに完全にハックされてる……!!)……っ、分かったよ! 行けばいいんだろ、行けば!!」
モクバが学ランのまま助手席に飛び乗ると、ソフィヤは嬉しそうに後部座席に乗り込んだ。
夕暮れの童実野町を真っ白なハイパーカーが爆音を轟かせて駆け抜けて行った。
放課後の音楽室から軽快なピアノの音とヴァイオリンの音色が響く。
「…うわぁぁ〜!ごめん!俺が間違えた!」
軽快なピアノを奏でているのは海馬モクバ。童実野高校の2年生で海馬コーポレーション(KC)の副社長でもある。
兄であり童実野高校のOBである、海馬コーポレーション(KC)社長の海馬瀬人ほどではないが、鋭くもどこか色気のある、少し切れ長ぎみのダークパープルの瞳をしている。
制服(学ラン)も着崩さず、キチンと着ている、学園の一軍男子だ。
「あはは!モクバはその部分がトッテモ苦手みたいネ!さっきも間違えてたデショ!」
軽快なピアノの伴奏に合わせてヴァイオリンを奏でているのは、モクバと同じく童実野高校の2年生で、激化するロシアとの戦争から逃れてきたウクライナの少女、ソフィヤ・シェフチェンコ。彼女は10歳の時にウクライナで開かれた社交パーティでモクバと出会い、6年ぶりにこの童実野高校でモクバと再会した、モクバの友人…いや、モクバの片思い中の相手である(ソフィヤはモクバの想いに気付いていない)。透き通るような白い肌に、柔らかい金髪、そして明るいトーンの蒼い瞳を持つ、"THE・ウクライナ美女"だ。
「あー…もっと練習する時間増やさなきゃな…。」
「仕方ないネ!仕事忙しいんだかラ。…やっぱり私、お兄サンに言おうカ?」
「や、やめてくれッ!! 兄サマにそんなこと言ったら、俺の副社長としてのキャリアがマジで(物理的に)終わる…!!」
ソフィヤの助太刀(?)をモクバは慌てて牽制すると、ソフィヤが持っているヴァイオリンが目に入った。
「…なぁソフィヤ。そのヴァイオリン、ちょっと見せてくれねーか?ずっと気になってたんだけど、なんか俺が知ってるヴァイオリンと違う気がするんだよな…。」
ソフィヤが「いいヨ!」と言ってモクバにヴァイオリンを渡すと、モクバは受け取ったヴァイオリンをまじまじと観察し始めた。
「…俺が知ってるヴァイオリンってさ、表面がツルツルしてて、こんな装飾なんて無いハズなんだよな…。」
「そうネ。私のヴァイオリンは普通のヴァイオリンとはチョット違うネ。でも違うのは見た目と剛性と重さだけだヨ。音は普通のヴァイオリンと一緒ネ。」
「ふーん…。…このヴァイオリン、だいぶ古そうだけど…お前が買ったのか?」
「No,違うネ。このヴァイオリンは私の祖母の形見ヨ。」
"祖母の形見"この言葉を聞いたモクバはまじまじとヴァイオリンを観察していた手をピタリと止めると、視線をヴァイオリンからソフィヤに移した。
「形見…?」
「…私の祖母は有名なヴァイオリ二ストだったネ。でも3年前に病気で亡くなったヨ。そのヴァイオリンは祖母が何十年もの長イ時間を一緒に過ごシタ、祖母の大切な相棒ネ。そんな大切なヴァイオリンを、祖母は亡くなる数日前に私にくれたのヨ。ダカラ、このヴァイオリンは私の宝物!トッテモ大事ネ!」
ソフィヤがそう言って笑うと、モクバはヴァイオリンをそっとソフィヤに返した。
ソフィヤはモクバからヴァイオリンを受け取ると、祖母との思い出を慈しむような瞳でヴァイオリンを眺めた。
「…私の祖母はいつも言ってたヨ。『音楽に国境はない。芸術は、国を越え、時を越え、言葉を越えて、人の心と心を結ぶ。音楽もまた、そのたった一音で、言葉よりも深く語りかける。孤独の闇に響くひとつの旋律が、世界のどこかの誰かとあなたの魂を共鳴させるのよ。』ってネ。ダカラ私、信じてる。世界の色んな所で戦争や紛争が起きてるケド、そこに音楽ガあれば、心と心、結ばれテ、きっと世界、良くなるネ。ダカラ私、このヴァイオリンでイッパイの音楽、届けるヨ。」
ソフィヤの信念を聞いたモクバは、ソフィヤのその純粋さに当てられて、少し気恥ずかしそうにピアノの鍵盤を一つ、優しく指先で鳴らしながら真摯に答えた。
「……『魂を共鳴させる』、か。……いい言葉だな。……お前が言うと、それがただの綺麗事じゃないって思えるから不思議だよ」
「モクバ、私本気ヨ!綺麗事なんかじゃないネ!」
「分かってるって。…なぁ、ソフィヤ。俺さ、ソフィヤにずっと伝えたかった事があるんだ。」
モクバはそう言うと、ピアノの鍵盤に向いていた視線をソフィヤに向けた。
するとソフィヤはヴァイオリンを抱えたまま、「なぁに?」と小首を傾げた。
「(……昨日は兄サマに邪魔されて言えなかったけど…今なら言えるはず…!今、英語じゃなくて、ソフィヤが愛する母国の言葉で……!)…その…俺は…」
モクバが決死の告白をしようとしたとき、音楽室の扉がバンッ!と開き、教師が入ってきた。
「コラ!お前たち!下校時間はとっくに過ぎてるぞ!早く帰りなさい!」
「Oh!先生スミマセン!急いで帰りマス!」
「(はぁぁぁ!?せっかく言えそうだったのに…嘘だろ……)……マジかよ……」
モクバとソフィヤは教師に「早く帰れ!」と促され、音楽室を後にした。
「……ったく、なんだよ、いいところだったのに……」
黄昏時の校舎裏。モクバはブーブと文句をいいながらヴァイオリンケースを背負ったソフィヤの隣を歩いていた。
「モクバ、元気ナイネ。……先生、怒ってたけど、私たち遅くまで練習しすぎたデス。……ごめんネ、私の練習に付き合わせたから……」
「いや、お前のせいじゃないよ。……俺が勝手に残ってただけだし。……あー、でも、さっき言おうとしたこと……」
モクバは学ランの襟元を少しだけ緩め、ダークパープルの瞳を泳がせた。副社長として世界を相手にする彼も、この黒い制服を着ている間は、ただの「初恋に悩む16歳の少年」だった。
「……なぁ、ソフィヤ。……さっきの続き、だけどさ」
「続き? ……あ! モクバが言いたかった事ネ! 忘れてたヨ、なぁに?」
ソフィヤが歩みを止め、満面の笑顔でモクバを見上げる。学ランの袖越しに、ソフィヤの柔らかい金髪が夕風に揺れるのが見えた。
「……お前さ、そのヴァイオリンで世界を良くしたいって言っただろ? ……俺、それに協力したいんだ。……KCの技術も、俺の力も全部使って、お前の音楽を世界中に届ける手伝いをさせてくれよ」
「モクバ……」
「……それから、えっと……。……俺にとってお前は、ただの『友達』以上の……」
その時、校門の前に一台の真っ白なハイパーカーが、凄まじいタイヤの悲鳴を上げてドリフト停車した。
「フン……。貴様ら、こんな時間まで何をしている。下校時刻は大幅にオーバーしているハズだが?」
「…………兄サマぁぁぁぁぁぁッ!!!!! なんでここにいんだよッ!? しかもその車、目立ちすぎだろ!!」
白いロングコートを風になびかせ、ハンドルを握る瀬人は、サングラス越しに冷徹な視線を二人へ向けた。
「モクバ。……貴様のプロジェクト進行度があまりにも遅すぎたのだ。そこで俺が直接、実戦の場を用意してやった。……ソフィヤ、乗れ。今夜は我が社の最新音響ホールを貴様に開放してやる。……貴様の『音楽の力』を存分に発揮するがいい」
「お兄サン、本当デスカ!? 私、大きなホールで弾くの、夢だったデス! モクバ、行こうヨ!」
「(……ああっ! ソフィヤが兄サマのペースに完全にハックされてる……!!)……っ、分かったよ! 行けばいいんだろ、行けば!!」
モクバが学ランのまま助手席に飛び乗ると、ソフィヤは嬉しそうに後部座席に乗り込んだ。
夕暮れの童実野町を真っ白なハイパーカーが爆音を轟かせて駆け抜けて行った。
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