ウクライナのひまわり(高校生モクバ夢)
屋上に着いたソフィヤは扉を押し開けると、屋上には突き抜けるような青空と、鋭い潮風が待っていた。
だが、そこにいたのは「ヴァイオリンを届けてくれた親切な誰か」ではない。
「……Ah! 私のヴァイオリン! 探してたデスヨ!」
屋上のフェンス際。女子Aが、ソフィヤの宝物であるケースを無造作に地面に放り出していた。横には女子BとCが、腕を組んで冷ややかな笑みを浮かべて立っている。
「へぇ、これ? 随分ボロいケースね。中身も大したことないんじゃないの?」
女子Aがソフィヤを見下すようにニヤニヤしながら言った。
「Oh、それはトッテモ大事なものネ! 私の、おばあちゃんの形見デス!」
ソフィヤが笑顔でそう言って、ヴァイオリンに駆け寄ろうとした瞬間、女子Bがその進路を塞いだ。
「はぁ〜?形見ぃ? だから何? 難民のくせに、なにいつもモクバ君の隣で当然のように笑ってんの?超目障りなんだよねぇ。」
「そうそう。日本語すら怪しいクセにさ、海馬君に音楽室でピアノ弾いてもらったり?バカじゃねーの?身の程をわきまえろって話。」
「私とモクバは昔からの友達ネ!友達と仲良くして何が悪いヨ!」
女子Bに続いて女子Cが口撃し、ソフィヤが反論すると、グループのリーダー格である、女子Aがソフィヤのヴァイオリンを蹴り、ソフィヤに1歩近づいた。
「うるせーな! あんたが日本に来てから、クラスの空気が変わったんだよ!それまではアタシが一軍女子だったのに……このヴァイオリンさえなきゃ、あんたの『特別』も終わりでしょ?」
女子Aがソフィヤに言うと、女子Bが歪んだ笑みを浮かべ、ケースからヴァイオリンを取り出した。
日光に照らされて、祖母が愛した木目が美しく輝く。
「Oh………!」
――バキィッッ!!!
乾いた、残酷な音が屋上に響き渡った。
女子Bが力任せに、ヴァイオリンのネックを固いコンクリートの地面にに叩きつけたのだ。
弦が弾け、魂の宿っていた楽器が、無惨な木片へと姿を変えてコンクリートに散らばる。
ソフィヤは声にならない悲鳴を上げ、崩れ落ちた。
散乱した木片を震える手で拾い集めようとするが、溢れる涙で視界が滲み、指先が定まらない。
「あっ、ごめーんww手が滑っちゃったぁww…アハハ!そんなボロい楽器、新しいの買えばいいじゃん。海馬君におねだりしてさ?アハハハハ!!」
女子グループの品のない笑い声が屋上に響く。ソフィヤはやっとの思いで拾い上げたヴァイオリンの欠片を抱きしめながら、涙を流した。
「……お金の問題、違うヨ……。これは、私のHeart……。魂そのものだったのに!!!」
女子グループの笑い声を遮るように、ソフィヤは号泣しながら強く叫ぶと、その叫びを聞いたかのように屋上の扉がバァァァンッ!!と蹴破られると、そこには息を切らし、ネクタイを緩め、フラワーホールにKCのバッジが冷たく光るスリーピースのビジネススーツを纏ったモクバが立っていた。
それから少し遅れてソフィヤの友人の女子達がやってきた。
「モ、モクバ君!? どうしてここに!?」
女子Cが叫ぶと、他のふたりも目を大きく見開き、動揺と焦りで目を白黒させている。
「…私達が呼んだんだよ…。ソフィヤがアンタたちに目をつけられてることに気付いたから…。だから海馬コーポレーションに電話して、海馬君に繋いで貰ったの。」
ソフィヤの友人Aが言うと、モクバは泣き崩れているソフィヤと、床に散らばったヴァイオリンの破片を無言で見渡し、全てを悟ると、ダークパープルの瞳からスーッと静かに光が消えていった。
そして友人達に肩を抱かれながら泣き崩れているソフィヤの横を静かに通り過ぎ、ヴァイオリンの破片をひとつ拾うと、いじめグループの女子Bに一歩、また一歩と歩み寄った。…冷徹な殺気を纏いながら。
「……おい。今、なんて言った。……『新しいの買えばいい』……だと?」
「……え、あ、モクバ君、これはその、事故で……」
「黙れッ!!!」
モクバは屋上が震えるほどの怒号を轟かせた。いじめグループの女子達がその怒号にビクっと体を強張らせる。
「お前らが壊したのはただの木材じゃねぇ。……ソフィヤの家族の記憶、そして、戦火のウクライナから必死で守り抜いてきた、彼女の誇りそのものだッ!!」
光が消えたモクバの瞳には怒りに満ちた赤黒い焔が宿っている。これはモクバが本気で怒っている時にのみ見せる、羅刹激昂の目だ。
するといじめグループの主犯格である女子Aがビクビクしながらモクバに弁解をしようと声をかけた。
「か、海馬君……!? 違うの、これは……!」
「違わねぇよ!!!」
モクバは再び屋上が震えるほどの怒号を轟かせた。
「……お前ら、自分達のスペックの低さをソフィヤにぶつけて楽しいか? ……俺はなァ、お前らみたいな醜い嫉妬の塊になんて1ミクロンも興味ねぇんだよ!!」
モクバはそう怒鳴りつけると、するりとジャケットを脱ぎ、それをそっとソフィヤに羽織らせた。
「…モクバ…私ダイジョブだから…仕事、戻ってイイヨ……」
やっとの思いで顔を上げたソフィヤがモクバに涙ながらにそう言った。
涙で濡れた青い瞳が陽の光を反射して輝いている。
「…バカヤロウ…大丈夫な訳ないだろ。……仕事なんて代わりはいくらでもいる。……けど、お前の涙の代わり(壊されたヴァイオリンの代わり)なんて、世界中どこを探しても……俺には見つけられないんだよ!!」
モクバは目に涙を溜めながらそう言って、ソフィヤを抱きしめると、そのままゆっくり立ち上がり、再び冷徹な殺気を纏いながらいじめグループの方を羅刹激昂の目で睨みつけた。
そしていじめグループの方を睨みつけながらスマホを取り出し、怒りに震える声で事務的に命令を下した。
「……磯野か。今すぐあのグループ全員の姓名と保護者の情報を照合しろ。……ああ、徹底的にだ。……この学校への寄付金? そんなもん、今この瞬間から全額カットだ!! 設備ごと買い取って、こいつらを即日退学処分にしろ。……文句があるなら、海馬コーポレーションの法務部隊を相手にさせる!!」
モクバはそう言い放つと、乱暴に通話を切り、スマホをスラックスのポケットに押し込んだ。
「…お前ら覚悟しておけよ?俺はお前らを絶対に許さないからな…。」
さっきまでの怒号とはうって変わり、モクバの絶対零度まで冷え込んだ冷たい声がいじめグループを貫いた。
だが、そこにいたのは「ヴァイオリンを届けてくれた親切な誰か」ではない。
「……Ah! 私のヴァイオリン! 探してたデスヨ!」
屋上のフェンス際。女子Aが、ソフィヤの宝物であるケースを無造作に地面に放り出していた。横には女子BとCが、腕を組んで冷ややかな笑みを浮かべて立っている。
「へぇ、これ? 随分ボロいケースね。中身も大したことないんじゃないの?」
女子Aがソフィヤを見下すようにニヤニヤしながら言った。
「Oh、それはトッテモ大事なものネ! 私の、おばあちゃんの形見デス!」
ソフィヤが笑顔でそう言って、ヴァイオリンに駆け寄ろうとした瞬間、女子Bがその進路を塞いだ。
「はぁ〜?形見ぃ? だから何? 難民のくせに、なにいつもモクバ君の隣で当然のように笑ってんの?超目障りなんだよねぇ。」
「そうそう。日本語すら怪しいクセにさ、海馬君に音楽室でピアノ弾いてもらったり?バカじゃねーの?身の程をわきまえろって話。」
「私とモクバは昔からの友達ネ!友達と仲良くして何が悪いヨ!」
女子Bに続いて女子Cが口撃し、ソフィヤが反論すると、グループのリーダー格である、女子Aがソフィヤのヴァイオリンを蹴り、ソフィヤに1歩近づいた。
「うるせーな! あんたが日本に来てから、クラスの空気が変わったんだよ!それまではアタシが一軍女子だったのに……このヴァイオリンさえなきゃ、あんたの『特別』も終わりでしょ?」
女子Aがソフィヤに言うと、女子Bが歪んだ笑みを浮かべ、ケースからヴァイオリンを取り出した。
日光に照らされて、祖母が愛した木目が美しく輝く。
「Oh………!」
――バキィッッ!!!
乾いた、残酷な音が屋上に響き渡った。
女子Bが力任せに、ヴァイオリンのネックを固いコンクリートの地面にに叩きつけたのだ。
弦が弾け、魂の宿っていた楽器が、無惨な木片へと姿を変えてコンクリートに散らばる。
ソフィヤは声にならない悲鳴を上げ、崩れ落ちた。
散乱した木片を震える手で拾い集めようとするが、溢れる涙で視界が滲み、指先が定まらない。
「あっ、ごめーんww手が滑っちゃったぁww…アハハ!そんなボロい楽器、新しいの買えばいいじゃん。海馬君におねだりしてさ?アハハハハ!!」
女子グループの品のない笑い声が屋上に響く。ソフィヤはやっとの思いで拾い上げたヴァイオリンの欠片を抱きしめながら、涙を流した。
「……お金の問題、違うヨ……。これは、私のHeart……。魂そのものだったのに!!!」
女子グループの笑い声を遮るように、ソフィヤは号泣しながら強く叫ぶと、その叫びを聞いたかのように屋上の扉がバァァァンッ!!と蹴破られると、そこには息を切らし、ネクタイを緩め、フラワーホールにKCのバッジが冷たく光るスリーピースのビジネススーツを纏ったモクバが立っていた。
それから少し遅れてソフィヤの友人の女子達がやってきた。
「モ、モクバ君!? どうしてここに!?」
女子Cが叫ぶと、他のふたりも目を大きく見開き、動揺と焦りで目を白黒させている。
「…私達が呼んだんだよ…。ソフィヤがアンタたちに目をつけられてることに気付いたから…。だから海馬コーポレーションに電話して、海馬君に繋いで貰ったの。」
ソフィヤの友人Aが言うと、モクバは泣き崩れているソフィヤと、床に散らばったヴァイオリンの破片を無言で見渡し、全てを悟ると、ダークパープルの瞳からスーッと静かに光が消えていった。
そして友人達に肩を抱かれながら泣き崩れているソフィヤの横を静かに通り過ぎ、ヴァイオリンの破片をひとつ拾うと、いじめグループの女子Bに一歩、また一歩と歩み寄った。…冷徹な殺気を纏いながら。
「……おい。今、なんて言った。……『新しいの買えばいい』……だと?」
「……え、あ、モクバ君、これはその、事故で……」
「黙れッ!!!」
モクバは屋上が震えるほどの怒号を轟かせた。いじめグループの女子達がその怒号にビクっと体を強張らせる。
「お前らが壊したのはただの木材じゃねぇ。……ソフィヤの家族の記憶、そして、戦火のウクライナから必死で守り抜いてきた、彼女の誇りそのものだッ!!」
光が消えたモクバの瞳には怒りに満ちた赤黒い焔が宿っている。これはモクバが本気で怒っている時にのみ見せる、羅刹激昂の目だ。
するといじめグループの主犯格である女子Aがビクビクしながらモクバに弁解をしようと声をかけた。
「か、海馬君……!? 違うの、これは……!」
「違わねぇよ!!!」
モクバは再び屋上が震えるほどの怒号を轟かせた。
「……お前ら、自分達のスペックの低さをソフィヤにぶつけて楽しいか? ……俺はなァ、お前らみたいな醜い嫉妬の塊になんて1ミクロンも興味ねぇんだよ!!」
モクバはそう怒鳴りつけると、するりとジャケットを脱ぎ、それをそっとソフィヤに羽織らせた。
「…モクバ…私ダイジョブだから…仕事、戻ってイイヨ……」
やっとの思いで顔を上げたソフィヤがモクバに涙ながらにそう言った。
涙で濡れた青い瞳が陽の光を反射して輝いている。
「…バカヤロウ…大丈夫な訳ないだろ。……仕事なんて代わりはいくらでもいる。……けど、お前の涙の代わり(壊されたヴァイオリンの代わり)なんて、世界中どこを探しても……俺には見つけられないんだよ!!」
モクバは目に涙を溜めながらそう言って、ソフィヤを抱きしめると、そのままゆっくり立ち上がり、再び冷徹な殺気を纏いながらいじめグループの方を羅刹激昂の目で睨みつけた。
そしていじめグループの方を睨みつけながらスマホを取り出し、怒りに震える声で事務的に命令を下した。
「……磯野か。今すぐあのグループ全員の姓名と保護者の情報を照合しろ。……ああ、徹底的にだ。……この学校への寄付金? そんなもん、今この瞬間から全額カットだ!! 設備ごと買い取って、こいつらを即日退学処分にしろ。……文句があるなら、海馬コーポレーションの法務部隊を相手にさせる!!」
モクバはそう言い放つと、乱暴に通話を切り、スマホをスラックスのポケットに押し込んだ。
「…お前ら覚悟しておけよ?俺はお前らを絶対に許さないからな…。」
さっきまでの怒号とはうって変わり、モクバの絶対零度まで冷え込んだ冷たい声がいじめグループを貫いた。