｢残念だけど、諦めてくれるかしら？｣

目の前の美人は言った。それはまるで死刑宣告のようだった。

彼女はヒールをカツカツと鳴らして去っていった。私の目から涙が溢れた。

どうして。どうして、こんなことに。

今日は前々から予定していた記念日のデートだったのだ。そう、ミスタと付き合って1年の。

それなのに彼は、わりぃ遅くなる。そう短文でメッセージを送っただけだった。返事を送ったけど、返ってこなかった。

記念日は2人で私の家で過ごすことになっていたから、私は家で飾り付けをして、食事を作って、予定の時間を待っていた。

ギリギリで、言わなくったっていいのに。温かかった食事も冷めてしまった。

そんな中、鳴ったのがインターホン。やっと来たのね、そう嬉しくなって駆けた玄関。いたのは女の人。そうして言われた言葉。

｢こんなの、受け入れられないよっ...。｣

間接的に、振られたことを伝えられたのだ。もう悲しみしか無かったし、楽しみにしていた私は馬鹿らしくなってきた。

もう片そう、1人でこんな料理、食べる気にならない。そうリビングへ行こうとしたとき、

｢私はいやよ！！！！！絶対別れてあげない！！！！｣

そう叫ぶ女の人の声。しかもさっきの人...？

気になった私は扉に手をかけた。だがそれより早く扉が開いた。

｢ッ名前！！！！！！！！！｣

そこに居たのはいつの間にか降っていた雨に濡れ、切羽詰まった顔のミスタだった。

｢どうして...｣

｢話は後でするッ！わりぃがひとまず入れてくれ！｣

そういうとミスタは後ろ手に鍵を閉めた。外からは扉を叩く音と、女の人の怒号。

訳が分からなくて、動揺しているとミスタは私を抱きしめた。

｢怖い思いさせたな...。それに、記念日なのにすまねぇ。｣

彼の体温と、優しい抱擁にまた涙が零れた。

聞けば彼女は何年も前に別れた人で、最近になって付きまとわれていたらしい。
それで今日、ミスタがうちに来ることを知った彼女は私に危害を加えようした。それを止めるためミスタは遅れた、だが遅かった。これが事の顛末であった。

｢そう、だったの...。私、もう振られたんだとばかり...｣

｢ンなわけねエ！！...誤解させて悪かった。オレはお前を愛してる...。もし別れるって時があったらよォ、それはお前に飽きられたときだ。｣

そう言うとミスタは私にちゅっとキスをした。